ショートホラー第7弾「一夜にして白髪になる」
「てことでさ、その青年は恐怖のあまり一夜にして白髪になってしまったらしいんだよ」
俺が語った怪談を友人は険しい表情で聞いていた。
意外と怖がりなんだな、こいつ。
「……で、どうよ?」
「え!?」
「いや、俺の怪談だよ。感想とか無いの?」
親友はその言葉に目を泳がせる。
「あ、ああ……怖かった。怖かったよ。思わずちびっちゃうかと思ったわ」
ちびるって小学生かよ。
「あのさぁ、お前わかってるの?この話の胆が何なのか」
「え……えっと……」
やれやれ勘の鈍い奴だな。
「お前さ、冷静に考えてみろよ。どんだけ凄い恐怖を感じたからって一夜で白髪になるとかおかしいだろうが」
「そ、そうなの……か?」
「いいか?確かにストレスが白髪の元になる事はある。ストレスが続くと毛細血管が収縮してしまうから色素細胞の働きも悪くなってしまい白髪になり易くなる。でもな、だからって一晩で白髪になるとかありえないだろ。そんなのコメディーだよ」
「ご、ごめん……」
本当にわかってないやつだなぁ。
これじゃあツッコミ貰えない俺が色素の事を知らない間抜けみたいじゃないか。
俺の友人って揃いも揃ってこういうやつが多いんだよな。
「それじゃあ、次の話をしようか。これはある工場で働いている人の実体験で……」
「あ、あのさ……その、話の腰を折るの悪いと思うんだけど……その……」
「何だよ。何を遠慮してるんだ?俺達『親友』だろ?どうしたんだ?」
「あのさ……君、本当に……『誰』なんだ?」
椅子に縛り付けてある『親友』は泣きそうな顔で俺に聞いてくる。
は?
こいつ何言ってるんだ?
「いや、誰って俺達『親友』だろ?」
「な、なぁ。金が欲しいなら持って行ってくれていいからさ。だから……」
「おいおい、急にどうしたんだよ?悩みがあるなら俺が聞いてやるからさ」
何せ俺達、『親友』だからさ。
□
「はぁ、今月でもう3件目ですよ。誰がこんなむごいことを……」
刑事は椅子に縛りつけられた遺体を見て眉を潜めた。
生気を宿していない瞳、そしてその髪は『真っ白』に染まっていた。
「被害者を殺害してから髪を脱色するなんて、頭がイカれてるとしか思えん」
□□
何か『親友』の部屋に警察が来ている。
どうやら事件に巻き込まれて死んでしまったらしい。
何で俺の『親友』ばかり死んでしまうんだろう。
もう今月で3人も亡くなっている。
もしかして、次は俺の番かもしれない……ヤバイ、震えが止まらない……