冬の雨のかえり道
高校2年の冬。雨。
今日も一人で下校。駅への道はいつもより人が多い。
(なんで雨なんだよ。)
ビニール傘をかわした雨粒が脚と手を冷やす。
僕は傘を首でおさえながら、スマホとワイヤレスイヤホンを取り出す。
(もっと速く歩けよ。)
J-POPと濡れた地面が靴の底から僕を冷やす。
僕は傘の群れをかわして、人通りの少ない線路沿いの道に出る。
ビュッという強い風。急に視野が明るくなる。
スマホの画面に水滴が落ちる。目を離すと、傘がグチャグチャになっている。
捨てていこうかと思ったが、レールの上に飛ばされることを考えてやめた。
大通りに出たところで、遮るように僕はフードを深くかぶった。
音楽のリズムに合わせて体を揺らす。
(このサビ、まじで神だわ。)
流れていく人や車がだんだんと速くなり、冷たい風がフードの中へ入り込む。
足先から温かい血液がどくどくと流れてきて、白い息が僕のメガネをくもらせる。
駅に着き、フードをあげる。
シャツでメガネを拭き、ふと顔をあげる。
「おお(もうこんな時期か)。」
水滴が滴り、美しく輝くクリスマスイルミネーション。
いつもの駅前が、まるで別世界のように見えた。