第7話 暴崩氷神竜(アバランチ・ブリザード )
「でかくなったなぁ。やはり、吸収した分だけ大きくなるみたいだな」
「……見える情報は隠しようもない。その通り、氷以外を取り込むと、この氷神の三叉槍はでかくなってしまう。人間はせいぜい二人までしか吸収は出来ない。しかし、この槍がデカイほど、私の体の蘇生に繋がる。さぁ、どうする?」
氷はずっと観察を続け、一つの答えを出す。
氷の全身からは黒いオーラが一度放出しただけで終わった。
「……覚醒か」
「見える情報は隠しようもない。否定はしない」
「……良いだろう。どんな覚醒で私と戦う」
春也は巨大化した氷神の三叉槍を氷に向ける。
氷神の三叉槍を向けられた氷は無言のまま右手をつき出す。
「……どんな覚醒でも氷属性の特性の変化は無いだろう。氷は全てこの槍に吸収される。そして、氷が接触したものを吸収は可能!君の攻撃は全て吸収される。この槍の巨大化は氷に付着した不純物を吸収した時のみ、大量の氷で巨大化させて持てなくさせるなんて事は出来ないよ」
「……俺は一体の氷竜を出すだけで勝てる」
「……氷竜は氷だって理解出来ているのかい?」
「当たり前だ。だからこそ、氷竜なんだ」
「面白い。この槍に吸収出来ない氷は無い。君が放った氷竜を吸収させ、その後、この槍で発生させた氷で君を凍らせ、凍った箇所をこの槍で触れれば、君も吸収出来る。勝負はそれでは終わる」
「……良いから……さっさと来いよ」
「では、行こう」
春也は氷に向かって、走り出す。
氷は宣言通り、突き出した右手から一体の氷竜を出現させる。
(無駄だ。氷川氷この氷神の三叉槍に触れた瞬間、その氷竜は吸収される)
春也の予想通り、氷が放った氷竜は氷神の三叉槍に吸収される。
(……やはり、覚醒しても氷竜、そして氷。君の最後の手は無駄に終わった!)
勝利を確信した春也は止まる事なく、氷神の三叉槍を氷に向けて突き刺す。
「何故だ?」
そう告げた春也は口から血を吐き、手にしていた氷神の三叉槍は砕けていた。
「お前は確認を怠った」
「何故、暴滅氷神竜の時には何も起こらなかったのに」
「起きていた。お前が見ていなかっただけだ。吸収された氷竜は一度、槍の一ヶ所を切断すると、切断箇所を氷で繋ぎ止めると、直ぐ様、形が再生された。元々、氷を吸収させるその槍だ繋ぎ止めた箇所も元に戻るのは頷ける」
「氷竜による切断を見落としていたのは、私の落ち度だ。だからこそ、何故だ。何故、覚醒した氷竜は」
「……暴滅氷神竜の覚醒は暴崩氷神竜……氷竜に接触したものを氷付けにして、崩壊させる異能だ」