第6話 氷神の三叉槍(ブリザード・トライデント)の仕組み
春也は氷神の三叉槍を振るい周囲を凍てつかせる。
「……何してるんだ?」
「凍らせている」
「見れば、分かる」
「だったら、見ていると良い。見れば理解出来る」
春也は凍てついた木を氷神の三叉槍を突き刺す。すると、氷と氷に覆われた木までも氷神の三叉槍は吸収した。
(……小さくなった槍が元の大きさに……出した氷ではなく、木を吸収した事で元の大きさに戻ったのか?)
氷ひょうが考え込んでいると、春也は氷神の三叉槍を向ける。
「……君なら、この氷神の三叉槍の仕組みについて、おおよそ理解出来た頃では?」
「……どうかな?理解してようが、出来ていなかろうが、勝つのは俺だ。その事実は何も変わらない」
「その自信はどこから来るのか……私の人生では得られないものだ。この戦いは私の中で大きな試練となる。静岡支部の防衛局に入る事は決まっているが、漠然としていてね。私は流れに身を委ねていただけだった。だが、君に勝てれば、それは大きく変わる。分家である水川は常に氷川家と比べれる。何よりも、先代の水川は青森支部から逃げ、静岡支部を拠点としている事から、逃げた一族として、知られる情けない一族だ。だが、水川家の人間として、氷川家の人間に勝てれば、これは打開される」
「長い事何をほざくのかと思えば、自身ではなく、一族か?下らねぇ。お前は何だ?」
「私?」
「教えてやる。俺は……氷川氷だ!」
氷ひょうは両手を突き出し、その両手から氷竜を放出させる。
水川の歴史は常に敗北がついて回る。そして、青森支部から逃げ事によって、日本中から逃げた一族として知られる数少ない一族であり、その運命の中にある春也は抗う事はしなかった。春也は流れに身を委ねて、必要な時に必要な事だけしかしていなかった。余計な事は何もせずに、やるべき事のみだけをやって来た春也は自身の思いとは裏腹に周りの評価は高く、水川家の歴史で唯一負けを知らない男と呼ばれる様になった。そんな彼は今までの人生を思い返していた。
「……私は、水川春也だ!」
水川家の為に一度も動かず、ただ目の前の状況を打破する為だけに動き続けたのは、誰かの為ではなく春也自身の為だけに動いていた。
春也は氷神の三叉槍を両手で激しく回転させると、冷気が漂い始める。
すると、次第に辺りは氷始める。
「来い!氷川氷全てをかけて、お前を倒す」
「何をしても構わない。何をしてもお前は勝てねぇからなぁ」
「……君の氷竜はもう無意味となる」
激しく回転させている氷神の三叉槍から発生している風圧に触れた氷竜、凍りついた木、地面までも一瞬で、氷神の三叉槍に吸収される。