第5話 氷を有する体
氷は素早く、右手を春也に向け、氷竜を放つ。
「氷神竜一線」
氷竜は真っ直ぐ、放たれた一本の矢の様に鋭く、早く、春也の左肩を直撃する。本部決定戦では殺しが禁止されている事から、氷は氷神の三叉槍を持っている右手を避け、左肩を狙った。
そして、氷の思惑通りに氷竜は春也の左肩を貫き、止まる事なく、春也の後方の木までも貫いていた。
左肩を貫かれた春也の左肩は切断され、氷で繋ぎ止められていた。
春也は現状を確認をするため、左肩を動かす。
「……肩の間接に氷が挟まっているこの感覚は違和感しか無いな」
「氷竜による切断は、痛みはない。溶ければ、痛みを出てくるぞ」
「……一つ、教えておこう。氷神の三叉槍を手にしている場合、体に付着している氷も吸収出来る」
春也は氷神の三叉槍による氷の吸収を初め、左肩にある氷を吸収させる。氷が無くなった事によって、繋ぎ止められていた左腕が地面へと落下する。
「……くっ。……思っていた以上に痛いな」
「バカなのか?わざわざ、そんな事をするなんて」
「……そう、思うかい?」
痛みに耐えながら告げる春也の左腕は氷で覆われ、氷が破壊されると、左腕が再生していた。
「……悪いが、私が君に戦いを挑めた理由はここにある。体が破壊されても、私には君の異能は通じない」
(……通じないか……なら何故、初手の攻撃を受けなかった?それに……氷神の三叉槍ブリザード・トライデントが小さくなっている。)
氷は春也の不自然な箇所を見逃すことなく、観察を続ける事にした。
氷は自身が抱いた疑問を確かめる為、両手を突き出し、その両手から氷竜を出現させ、春也へと放つ。
春也は氷竜をかわしながら、氷の元へと向かい走っていた。
(攻撃を受けても、氷神の三叉槍の効果で氷を覆わせ、再生あるいは、回復されるはず……なら、何故避ける?確かにかわせるなら、かわしたほうが良いだろうが、体を無理にひねりギリギリでかわしている。再生に限りが無いなら、無理して避ける事も無い。恐らく俺の予想通りなら、氷神の三叉槍による再生は氷の槍を消費して行われる筈だ。そして、全てを消費すると奴の体内に戻る筈だ)
走っていた春也は二体の氷竜をかわすと、立ち止まる。
「……何故、素早く放たれる氷神竜一線って技を使わなかった?あの速さなら、私はかわせなかった。だからこそ、氷川氷何故、遅い二体の氷竜を放った?」
「理由なんて、無い。あったとしても、お前に告げる事は無い」
「そうですか。では、行きましょう」