第3話出合い
元東京本部の森林スタジアムで本部決定戦一回戦目。
各支部、元東京本部の代表二名の合計94人はランダムな場所に振り分けられ、戦いが繰り広げられる中、元東京本部代表、二ポイントを持つ氷川氷は青森支部代表、一ポイントを持つ岸谷風と出会っていた。
が、岸谷は一目散に逃走を選び、実行していた。
青森支部で自身の家を氷の城へと変化させ、母親と父親の遺体を守り続けた氷を相手に青森支部は誰も氷に勝てる事が出来ずに、氷との戦いで敗北を恐れた青森支部防衛局、局長、副局長の二名は部下に氷の城へと攻めさせ、自身達は闘い事はなかった。
岸谷は青森支部防衛局の特殊戦闘員をまとめる部隊長をしているが、氷を噂を聞いて逃げる事を選んだ。
氷とは戦った事は無かったが、戦闘を見たわけでも無いが、戦っても勝てるか分からない相手とその大会で戦う意味を見出だせない岸谷は逃げ続けていた。
「……どこ行った?あの緑色の髪の奴は」
岸谷を探す氷の前に静岡支部の二ポイントを持つ水川春也が立ち塞がる。
青髪に整った容姿のその少年は警戒心もなく、氷へと近づく。
「そちらに見えるは、[レジスタンス]の氷川氷噂はかねがね。……私は静岡支部高等部異能クラス三年水川春也だ。氷川の分家の人間だ……言わなくても分かるか」
「……知らねぇよ。本家の氷川も俺と兄貴の二人だけだ」
「……君達の両親はチーム[シード]のメンバーだったからね。色々と狙われるのだろう。今なら、水川家が本家を名乗れそうだ」
「興味ねぇ。本家だの、分家には……名乗りたければ、勝手しろ。俺の目の前に立ったからには、雑談で終わらせねぇよ」
「闘いか。その為に私はここに立つ!」
春也は体内に宿る神器を出現させる。
「これぞ、氷神の三叉槍」
異能であり、体内に宿るその神器を手にした春也のその表情は自身に満ち溢れていた。
静岡支部の高等部なら知らない者はいないとされる強者であり、チーム「スリー」のリーダーを務めている男である。
結成当初は三人だけだったチーム[スリー]も現在では二十八人まで増えており、それらをまとめるリーダーである春也の実力は静岡支部防衛局にも届いており、高校卒業後は静岡支部の防衛局に入団する事が決定しているなど、彼の活躍は留まる事が無い。
「私が岸谷風の様に逃げないのは、君の異能を知っても尚、逃げる必要がないと判断しているからだ。それに理解して、どうだ?」
「……何がだ?」
「君は逃げないのか?」
「俺が逃げる事はない。……俺の前に立ったことを後悔しろ」