家に帰って ~祐の家~
今回は精神面で色々過激(?)な要素が含まれます。苦手な方はブラウザバック推奨です。
そして短いです。
祐は家に帰ると、小さく
「ただいま…」
と呟く。そしてスタスタと自分の部屋に向かった。部屋に入り、ドアを閉めて息を吐く。
(ずっと学校に居たい…於菟さんと一緒に居たい…)
そう思いながらベッドに座る。於菟と友達になってから、学校に行く楽しみが増えた。正直、家には居たくなかった。
(親なんか…僕の事なんか…)
早く明日になって欲しいと思いベッドに倒れ込むと、ドアをノックする音が聞こえた。祐はノックを無視して目を瞑る。するとドアが開き、祐の父 巧真が入ってきた。
「お前は返事も出来ないのか?」
「…………」
渋々ベッドから起き上がると、巧真が
「母さんが呼んでいる。」
と腕を掴んだ。祐はその腕を振り払い、リビングに向かう。今日は早く終わるといいな、と思いながら。
「来たのね。」
「………」
リビングでは祐の母 享子がソファに座っていた。祐はドアの前から動かない。
「早くここに来なさい。来なかったら分かってるわよね?」
「っ……」
その言葉にビクッと肩を震わせ、享子の元に行く。享子は祐の腕を掴むと、祐の服の右袖を捲った。
そして祐の右腕に縫い針を宛てがった。
「親の言う事は聞きなさい。」
「ごめ、なさい…」
震えながら謝る祐の右腕に、享子は縫い針を刺す。
「っ…!!」
「……………」
痛みに泣く祐の顔をじっと見つめた後、享子は縫い針を抜いた。右腕の傷口から少し血が出る。
「もういいわ。早く出ていきなさい。」
「っ、はい…」
祐は足早にリビングを出た。自分の部屋に入りドアに鍵をかけると、傷口に絆創膏を貼った。
(っ…今日は、まだマシ…やだ…学校に居たい…)
祐は、毎日学校から帰った後に親から虐待を受けていた。家から出たいがそれをする勇気も無く、ただ親の虐待に耐えるだけだった。
床に座って泣いていた祐は、思い出したように鞄を開けてあの時の手帳を取り出す。
(於菟さん…この手帳に書いて貰った…僕と友達になりたいって、言ってくれた…)
思わず涙が溢れる。初めて出来た友達。自分を好きって言ってくれた友達。自分に優しくしてくれる友達。自分を守ろうとしてくれる友達…
(於菟さん…於菟さんが居てくれるから…頑張れる気がする…家が辛くても、明日になれば、於菟さんに会える…)
祐は手帳を眺め、鞄にしまう。この手帳には於菟に書いて貰った言葉以外何も書かれていないが、祐はその方がいい気がした。
(早く明日になって…)
祐はベッドにうつ伏せになり、何度もそう願った。