体育祭 昼
午前の部が終わり、昼食の時間になった。於菟はレジャーシートと弁当箱と箸を持って祐を見る。祐はレジャーシートと弁当箱の入った袋を持ってニコニコと於菟の所に来た。
「外で食べるなんてなかなか無いですから、楽しみましょう!」
「そうだな…はー可愛すぎる…」
「?」
首を傾げる祐に何でもないと言い、昇降口に向かう。外で昼食を食べようと生徒がゾロゾロと昇降口に向かって歩いていた。
「けっこう人居るな…全員校庭に向かうんだろうな…」
「ですね…あ、明朱加さんだ!」
祐が人混みの奥を指さす。スマホを眺めている明朱加が居た。しかしすぐにスマホをポケットの中にしまい、人混みと反対方向に歩いていった。
「行っちゃった…」
「スマホ見てたな…何かSNSでもしてたのか?」
「どうでしょう…教室に戻ったら明朱加さんに聞いてみましょうか?」
「いや、絡まれるの嫌だからやめておこう。昇降口に居た人も少なくなってきたし校庭で昼飯食おう。」
「は、はい…」
於菟の言葉に戸惑う祐の手を引っ張り、靴に履き替えて校庭に向かった。
校庭に行くと、そこかしこに昼食を食べる生徒が居た。
「うぉ、めっちゃ居る!」
「す、スペースありますかね?」
周りを見渡すが人が多すぎてスペースが見つからない。校庭で食べたいが無理かもしれないと思っていると
「おーい2人共ー!」
と誰かが於菟と祐を呼ぶ声が聞こえた。
「「?」」
於菟と祐は声のする方を見る。すると
「こっち空いてるぞー!一緒に食うかー?」
と辰双が手を振っていた。於菟は嫌そうな顔をするが祐は手を振り返してから於菟を見て
「あっち空いてるみたいです!行きましょう!」
と言った。於菟はすぐに頷き、祐と一緒に人混みを何とか抜けて辰双の所まで行く。
「でかっ…」
辰双の所まで行くと、レジャーシートの大きさに驚いた。於菟が5人は座れるだろうという大きさに若干引いていると、辰双が
「本当は家族が来る予定だったんだけど、来れなくなって。こんなデカいレジャーシート持ってきたのに酷くない!?俺これ持ってくるの大変だったんだよ!?」
と言った。
(俺に言われても…)
「もしかして、空いてるのってそのレジャーシートのスペースが…?」
「だろうねー」
「迷惑になりますよそんなデカいの敷いてたら」
於菟がそう言うと辰双はだよなーと言いながらレジャーシートを半分に折り畳んだ。それでも人2人は座れるぐらいのスペースがある。
「大きいですね…辰双さんの家族、全員来る予定だったんですか?」
「………まぁ、一応。」
(…何で少し間が空いたんだ…?忘れてた…?)
辰双の言葉に疑問を抱くが、昼食を食べようとレジャーシートを広げる。祐もレジャーシートを広げた。
「何も柄無いなんてつまんないねー」
「うるさいですね…祐の、水玉だな。可愛い…」
「えへへ…ありがとうございます!」
(んんんんんいつも通りめっちゃ可愛い!!)
「お?どうした於菟くん?」
「黙っててください!」
「!?」
「あぁぁごめん祐!」
3人でレジャーシートの話で盛り上がっていると、
「楽しそうだね♪」
と明朱加も来た。於菟と祐は驚き、辰双はニコッと笑う明朱加を見つめている。
「明朱加さんも僕達とお昼ご飯を食べに来たんですか?」
「まぁそれ以外でここに来る理由無いしね…」
「そうなんですね!じゃあ僕の隣、スペース空いてるのでどうぞ!」
明朱加は祐にありがとう♪と言うとレジャーシートを広げた。レジャーシートに座り、弁当箱を取り出す。
「皆弁当だ…!於菟さん、クリームパンじゃないなんて珍しいですね!」
「まぁ、体育祭だからな…親が張り切って作ってたみたいだし。」
「於菟くんは自分で作らないんだね。親の作るご飯が好きだから?」
「めんどくさいからです。」
明朱加の言葉にそう返すと、卵焼きを食べる。少ししょっぱかったが美味しかった。
「いいですね、親にお弁当作って貰えるなんて!羨ましいです!」
祐の言葉に於菟は祐を見る。祐は笑ったが、於菟は心配そうに祐を見つめる。
「そういや辰双は何の競技やったの?最初の借り物競走以外で見かけなかったけど。」
明朱加が辰双に聞く。
「俺?係あったから借り物競走以外の個人競技には参加してねぇ。参加したかったけどさーセンセーが係やれってうるさくてやる羽目になって。」
愚痴を零す辰双に適当に相槌を打った明朱加は弁当を食べながら周りを見渡す。まだ人が多く、動くのが難しそうだった。
「あちゃー…俺この後3年の学級委員長の集まりあるんだけど…この人混みを抜けるのキツくね?」
「じゃあ俺が抜け道教えてあげようか?」
「「抜け道?」」
於菟と祐が反応する。辰双はニヤリと笑い
「そう。俺がこの場所取った理由でもあんだけど…」
と自分の後ろを指さした。辰双が寄りかかっている木がある。祐が気になって木の後ろを見ると、フェンスに人1人が通れるくらいの穴が空いていた。
「おぉ!ここが抜け道なんですね!」
「そうそう。こんな人混みじゃ学校の敷地外出てもバレないっしょ。この抜け道って意外と知られてないんだよー何でだろうね?」
「確かにけっこうデカい穴なのに…横から見ても気づきそうなもんですしね…」
於菟が試しに穴を通ってみる。
「あ、そこ高さあるから気をつけ…」
「うおっ!!?」
足場が無くそのままコンクリートまで落ちる。尻もちをついた於菟を見て明朱加が
「wwwwちゃんと足元確認しないとwww」
と笑った。於菟は羞恥で顔を赤くし、明朱加の方を見て
「うるさいですね!足滑らせただけです!」
と叫んだ。祐が明朱加の後ろから
「大丈夫ですか於菟さん!?」
と言う。於菟は祐に
「大丈夫!」
と言うと、立ち上がって周りを見る。道路は広いが人があまり居らず車も通っていなかった。
「じゃあ俺もそっち行くわー。於菟くんの分のレジャーシートと弁当箱も持ってくね♪」
そう言って明朱加が降りてくる。ぴょんっとジャンプし、スタッと着地した。そして於菟にレジャーシートと弁当箱を渡す。於菟は礼を言わずに受け取り、穴を見た。祐が穴から覗き込んでいた。
「だ、大丈夫でしょうか…」
「俺が受け止めるから降りてこい。」
「さり気なく言ってるそれ?」
明朱加の言葉を無視し、祐を見る。祐は於菟の言葉で覚悟を決めたようで、袋とレジャーシートを抱えて於菟を見ている。
「じゃ、じゃあ、行きます!」
祐が於菟の所に飛び込もうとした瞬間、
祐の身体が倒れ込んできた。
「!!??」
「わぁぁぁ!!??」
慌てて於菟が祐を受け止める。何とか身体をコンクリートに打ち付けずに済んでホッと息を吐いた。そして於菟は穴から3人を見下ろす辰双を睨む。
「ごめんごめん。ちょっとよろめいちゃって祐くんにぶつかっちゃった。怪我無い?」
「は、はい…大丈夫です…気をつけてください!」
「あはは、気をつけるよ♪」
(アイツ…絶対わざとだろ。何で祐の事を落として…)
「…………」
辰双は穴から3人の居る所に飛び降りる。そして校門のある方に歩き出した。
「あ、待ってください!」
祐が慌てて追いかけ、於菟も祐を追いかけた。しかし明朱加が来ない事に疑問を抱く。
(明朱加…集まりあるんじゃねぇのか?)
だが自分には関係ないと、祐の方を見て走った。
「はぁ…疲れた。集まりとか行きたくねぇ。ただでさえアイツのせいで死にかけてんのに…
まぁいいや。早く集まり行ってこよう…」
明朱加はスマホを見ながらそう呟いた。
作者です。昨日上げるつもりだった昼編です。
今日はハロウィンなのでハロウィンにちなんだ番外編を出そうと昨日早く体育祭編を終わらせようとして終わらないまま寝落ちしましたね
しかもまだ終わらないという
体育祭編終わらないまま番外編出るかもしれませんなるべく今日のうちに終わらせたい所ではありますが
番外編は来週の土曜まで掲載します(本編がある程度進んだら正式に本編として出すつもりです)
早く出したいので〆ます
ここまで読んでくださりありがとうございます。次回の更新は今日だと思います。出せなかったら腹切ってきます




