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体育祭

 5月16日_

 この日、廻拝高校では体育祭が行われようとしていた。於菟はいつもより早く起き、準備をしっかりしてから出かけた。体育祭が楽しみのようだ。

(体育祭が来た…!祐と一緒の最初で最後の体育祭…!祐も体育祭好きなのか…?好きだったらいいな…)

 於菟はそう思いながら祐の家の前まで歩いた。そして祐の家の前まで着くと、インターホンを鳴らす。すぐに「はーい」と祐の声が聞こえてきた。

「祐、もう用意出来てるか?」

「於菟さん!今玄関まで持ってきてます!すぐに行きますね!」

 それを聞いた於菟は祐の家の前で祐を待つ。

 しばらくして、祐が家から出てきた。

「於菟さん!ごめんなさい、ちょっと手間取っちゃって…」

「別に大丈夫だ。じゃあ学校行くか。」

「はい!」

 嬉しそうに笑う祐を見た於菟はいつものように悶えながら学校に向かった。

 校門の近くまで来ると、いつもより多くの生徒が校門を通っていた。

「人多いですね…」

「そうだな…皆体育祭が楽しみなんだな。」

「僕も体育祭好きなので分かります!今年は於菟さんと一緒に体育祭出来るし…!」

 祐はニコニコと校門を通る生徒を見ている。祐が体育祭が好きなのを知った於菟は嬉しくなった。そして2人も昇降口に向かった。

「たくさん人が来るといいな…!」

「人が多いと色々面倒じゃねぇか?」

「僕は色んな人に体育祭の事を知って貰えるから人が多い方がいいと思います!」

「そうなんだな…」

 偉いな、と思いつつ於菟は祐と教室に向かう。

 クラス全体がいつもより騒がしかった。明朱加が於菟と祐を見つけて駆け寄る。

「今日は来るの遅かったね?やっぱり体育祭だと張り切っちゃう?」

「まぁ、今年で最後ですから…てか学級委員長は仕事あるんじゃないんですか。」

「そうなんだけどさ、今やる必要無いと思ってやってない。」

 そう言って笑う明朱加を見て於菟ははぁ、とため息をついた。

(こんな人が学級委員長で大丈夫か…?)

 今年で最後の体育祭なので楽しくやりたいと思っている於菟は、鞄をしまってソワソワしている祐に

「今年の体育祭、頑張ろうな。」

 と言った。祐はニコッと

「はい!頑張りましょう!」

 と言った。明朱加がニヤニヤしているが、それを気にせず於菟はまた悶えた。

(ホント祐が可愛すぎる…!一緒のクラスになれてホントよかった…!!!)

 体育祭の内容を確認したり去年の体育祭の事について話したりしていると、チャイムが鳴って先生が来た。

「席に着けー。皆知っていると思うが今日は体育祭だ。クラス対抗の競技が多いから優勝目指して頑張ってくれ。以上」

(いつもいつも適当だな…)

 先生の言葉に苛立ちを覚えながらも我慢する。

 学活が行われた後、体育祭開催まで自由時間を過ごしていた。

「最初ら辺は1年がやるからな…俺達は教室から見学だ。」

「1年生も2年生も元気な人多いですからね…もしかしたら優勝取られるかも…」

 確かに、と於菟は思う。廻拝高校の体育祭は全学年の中の1クラスが優勝出来る。今年の1年や2年は運動部が多いとの事だった。

「優勝出来るかな…」

「今年はだいぶ優秀な1年と2年だもんね〜♪それに噂じゃあの新売りも運動が得意らしいし♪勝ち目あるかな?」

「マジか…アイツも運動得意なんだな…」

 少し心配になってきたが、於菟にとっては優勝よりも祐と一緒に体育祭をやる事の方が大事なので祐の為に頑張ろうと思った。

「俺も運動は得意な方だから安心して♪」

「そうなんですね!僕はあんまり運動得意じゃないんだよな…足引っ張らないかな…」

 祐が心配そうに呟く。於菟は祐に

「心配しなくていい。祐は練習ずっと頑張ってきてたからな。きっと良い結果が出せる。」

 と言った。その言葉に祐はニコッと笑って

「そうですね!僕も精一杯頑張ります!ありがとうございます於菟さん!」

 と言った。

(あぁぁぁぁホント祐が尊い…!!体育祭頑張んねぇと!!!)

「どうしたの〜wやっぱり祐くん可愛い?」

「うるせぇ黙ってろ委員長!!」

「け、喧嘩はしないでください!」

 開会式の為に校庭に行くまで、於菟と明朱加の言い争いが続いていた。


 校庭に出ると、雲1つ無い快晴だった。太陽が眩しく照っており、祐は目を瞑る。

「うわぁ…眩しい…」

「この中で運動はキツいな…3年の番が来るまでに落ち着けばいいけど…」

 眩しい中先生の指示に従い整列し、開会式を行う。於菟は校長の話を聞き流し、話が終わり開会式が終わるとすぐに祐の所まで行った。

「じゃあ僕達3年生は教室ですね!」

「だな…早く教室行こう。暑すぎてヤバい…水飲みたい…」

「お、於菟さん倒れないでくださいね!?」

 祐が慌てて於菟を引っ張って教室に向かう。於菟は引っ張られながら

(倒れるのは嫌だけど祐に引っ張られてるからいいか…)

 と思った。教室に行くと於菟は鞄から水筒を取り出して水を飲む。祐も水筒を取り出した。水色の小さめの水筒だった。

「その水筒で足りるのか?」

 於菟が聞くと、祐は頷く。

「僕、あまり水飲まないので…喉も渇かないし…でも熱中症には気をつけないとなので、ちゃんと水分補給はしますよ!」

「そうなんだな…俺も気をつけないとな…今日はいつもより暑いし…」

 水をある程度飲んだ於菟は水筒をしまう。そしてまだ空いている窓際に向かった。祐も水筒を置いて於菟に着いていく。最初の競技の1年の徒競走が行われる所だった。

「お、代表が走る感じなんだな。」

「へぇ〜!やっぱり足が速い人が走るんでしょうか…」

「だな。全クラス5人ずつか…」

 クラス代表の走者5人がスタートラインに並ぶ。

 そしてピストルが鳴り、一斉に走り出した。

「おぉ!速いですね!」

「こりゃけっこうキツそうだな…」

 最初に1位になったのは4組だった。その次に2組がゴールし、3位に1組がゴールした。3クラスとも僅差で、4組と2組の差は0.3秒差だったという。

(1位と2位速すぎね?)

 不安を感じる於菟だが、祐はキラキラと目を輝かせていた。

「凄いですね!次の競走も早く見たいです!」

「そうだな…他の奴がどんだけ速いか見てみたいな…」

 最終的にソイツらと自分のクラスの3人がリレーで戦うんだし、と於菟は苦笑いする。祐は走り終わった1年を見て

「皆凄く速かった…!何か勝てるか不安になってきたな…」

 と呟く。於菟も同じ気持ちになっていたが、後ろに居た明朱加が於菟と祐の肩を叩いて

「もっと自信持たないとー!思い込みってけっこう効果あるんだから。そんな気持ち落としてたら影響出るよ?」

 と言った。確かにそうだな…と於菟は前向きに考える事にした。ついでに明朱加にデコピンを食らわせる。

「って」

「すいません手が滑りました」

「滑り方独特だね〜w」

(コイツと居るとマジで調子狂う…ホントにコイツ学級委員長で大丈夫かよ…)

 於菟は戸惑う祐に大丈夫と言い、次の走者を見る。ふと於菟は3組の生徒に目を留めた。

(ん?アイツ確か…)

「於菟さん、気になる人居ましたか?」

 祐が話しかけると於菟は頷いて3組の女子を指さした。

「あぁ。あの3組のショートヘアの奴…」

 於菟が名前を言おうとした時、ピストルが鳴った。走者が一斉に走り出す。

「於菟さんの気になる人、速いですね!」

(気になる人…何か誤解されそうだな…まぁそうっちゃそうだけど…)

 於菟が指さした3組の女子は1位でゴールした。前の競走で1位だった4組の生徒よりも速いようだ。

「あの人凄く速いですね!さっきの1位の人より速いですよ!」

 祐は興奮気味で於菟に話す。於菟は祐に落ち着けと言い、

「だな…アイツ小さい頃からかけっこやらリレーやらで1位取ってたしな…」

 と呟く。於菟の言葉に明朱加が反応する。祐も先程から於菟が3組の女子を知っている事について気になっていた。

「あの子とどういう関係なの?」

「誤解されるような聞き方しないでください。ただ家が近い幼馴染ってだけです。」

「そうなんですか?於菟さん全然話してくれないから知らなかった…」

 祐がその子の事を知りたいと言うので於菟は話した。

「あの子は蓮斑 果恋(はすむら かれん)。俺が5歳の時に2つ隣に引っ越してきたんだ。それでご近所挨拶の時にうちに来て…果恋の親が仕事で遅くなる時はよくうちで預かってた。」

「へぇ…果恋ちゃん、可愛いですね!」

「俺達に話してくれてもよかったんじゃない?そんな幼馴染居たんならさ♪」

「うっ…それは…」

 於菟は果恋の事を今の今まで忘れていた為窓から顔を逸らす。正直何故忘れていたのか自分でも分からなかった。

「でも於菟さんと一緒に居る所、見かけなかったな…果恋ちゃん、於菟さんの事忘れてたんでしょうか…」

「そういえば…」

 と於菟は自分が高校に行ってから話さなくなった事を思い出す。中学の頃は1年とはいえよく一緒に居て話していた。

「果恋ちゃんは高校生は勉強で忙しいのを分かってたのかな?」

「どうでしょう…果恋はそんなの構わず来ましたから…俺が中学の頃は毎日家にあそびに来ましたし…勉強会やろーって言われた時もありましたし…」

「なるほど…家庭の事情ってやつ?」

 果恋の事について色々話していると、もう1年の徒競走が終わろうとしていた。最後の組がスタートラインに並ぶ。

「お、俺の後輩はっけ〜ん♪代表なんて凄いな〜」

「あんたみたいな人に後輩居たんですね」

「それは辛辣すぎない?」

 明朱加は1番左の子、と1組の男子を指さす。背は少し高めだった。

「俺の後輩の麻梶 陽里(あさかじ ひさと)。同じ陸上部の短距離♪物覚えが良くて素直ですっごく良い子なんだよね〜♪自慢の後輩♪」

「その自慢の後輩が代表なの見てあんまり嬉しそうな感じしなかったんですけど」

「そんな事無いよ〜嬉しいよ〜?」

 わざとらしくそう言う明朱加を見てため息をつくと、陽里を見る。真っ直ぐゴールだけを見つめていた。

 そしてピストルが鳴り、全員が一斉に走り出した。

「うぉっ!?」

「おぉ!」

 陽里は他の生徒より断然速かった。果恋よりも3秒程速かった。

「さすが俺の後輩♪」

「超速ぇ…陸上部恐ろしいな…」

「うーん…速いですね…更に優勝が厳しくなってきました…」

 感心している場合ではないと於菟は焦る。このままでは祐との最初で最後の体育祭で優勝出来なくなってしまう…!

「ありゃ、そういやそうだったね♪優勝目指して頑張んないと♪」

「他人事みたいに…!こっちは色々賭けてんですから…!」

 ニヤニヤと笑う明朱加を睨み、焦る祐の頭を撫でる。困惑する祐を見て心の中で謝った。

(ごめん祐…このバカのせいで…!)

「もしかして俺心の中でディスられてる?まぁ別にいいんだけど」

 そして1年の徒競走が終わり、次の競技の2年のハードル走の準備の為休憩に入った。

「2年もなかなか速いからね〜。これは油断出来ないよ〜?」

 明朱加が校庭に集まる2年を見ながらそう言う。それを聞いて於菟と祐は2人で顔を見合わせた。

「今の顔、新売りだったら即行でシャッター切ってたよね」

「撮らないでください」

「俺新売りじゃないから撮らないよw」

 それにしても…と2年を見る。男子も女子も運動出来る奴が多いな、と思った。今年はだいぶ優勝が厳しいものになりそうだ。心配だが祐が楽しんでいるのを見れればいいとも思っていた。

「あ、準備終わったみたいです!」

「俺の後輩はー…居ないか。じゃあ見なくてもいいかな」

「いいんですかそれで」

 祐は窓から2年生を眺めている。於菟はとりあえず3人ぐらい見て後は祐を見ようと思いながらハードル走の開始を待った。

作者です。いきなり体育祭始まってますね。区切れそうな所が分かんなくなって長くなりました。普通は1話につきこれぐらい書くもんなんでしょうねきっと。

そろそろBBSとなろうが同じ所に行き着くので体育祭編終わったらなろうの方はしばらく更新止まります。BBSの方で内容固めてなろうでまとめとして上げたいと思います。

運動出来る体になりたかった(特に水泳)

ここまで読んでくださりありがとうございます。次の更新は土曜日になるかもしれません(これが予想以上に長くなった為)

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