祐の居ない帰り道
授業が終わり、於菟が帰る準備をしていると
「於菟さん…」
と祐が話しかけてきた。
「どうした?」
「今日は…先に帰ってもいいですか?」
「先に?用事あるのか?」
「お母さんが、僕に話があるから早く帰ってくるようにって言って…今日、遊びに行けなさそうです…ごめんなさい…」
祐は悲しげにそう言って、じゃあ明日、と教室を出ていった。
(……祐……)
於菟も足早と教室を出た。それを明朱加は黙って見ていた。
於菟は学校前の交差点を渡り、家路に着く。はぁ、とため息をついた。
(まだ学校始まって全然経ってねぇのに、祐の事色々知った気がするな…あんま深入りしない方が良いんだろうけど…)
祐が心配でならないがどうする事も出来ない。家に帰ったら何をしようかと考えていると、肩を叩かれた。
(ん?)
後ろを振り向くと、辰双がニヤッと於菟を見ていた。於菟は無視して帰ろうとするが、辰双が腕を掴む。
「何ですか…俺早く家帰りたいんですけど。」
「なーんか悩んでるって感じ出てたから気になっちゃって♪俺も道こっちだし♪」
「はぁ…そうですか。別に相談する程の事じゃないんで俺に構わないでください。」
そう言って辰双の手を振りほどき歩くと、辰双が後ろを着いてきた。
「つまんないなー。もっとお話しようぜ?インタビューも仕事の内だし♪」
於菟が歩くスピードを速めても着いてくるので諦めて辰双に付き合う事にした。辰双は於菟と並び、於菟が悩んでいる事について聞く。
「何か悩んでるんでしょ?俺に相談してみたら〜?」
「新聞のネタにするんじゃないでしょうね」
「さぁ?それは俺の気分次第かな♪」
メモ帳とペンを持ちニヤニヤしている辰双を見て於菟はため息をついた。だが話さないと離れないんだろうとは思っていたので、辰双にさっきまで考えていた事を話した。
「祐が元気無さそうだったから心配してたんです。親が早く帰ってこいって言ったらしくて…だから今日はこっちで帰ってます。」
「へぇ…祐って俺が新聞売ってた時君と一緒に居た子?」
「はい」
それを聞いた辰双はそっかーとメモ帳にメモした。於菟がチラッとメモ帳を見ると、小さな文字で文がびっしり書かれていた。
「うわ…」
「え、勝手に見といてその反応?酷くね?」
別にいいじゃんか、と辰双はメモ帳を捲り、白紙のページにする。そして於菟に
「2人は今どんな関係なの?友達?恋人?それ以上?」
と聞いてきた。
「それ同じクラスの奴にも聞かれたんですけど…てかうるさいです。祐とは友達です。それだけです。」
「何だ、友達か…つまんねー」
「勝手に聞いといてその反応は酷いと思います何を求めてるんですか」
於菟が辰双をジト目で見る。視線を気にせず辰双は
「意外だねぇ?一匹狼だと思ってた。」
と言った。その言葉に反応し、於菟は歩くのを止める。辰双が急に止まった於菟を不思議そうに見ていると
「一匹狼…ですか。確かに祐と直接話すまではそうでした。」
と於菟は言った。
「祐くんと話せてどう?嬉しい?」
「そりゃ嬉しいですよ。ずっと一緒に話したいって思ってましたし。友達になれてもう死んでもいいって思いましたもん。」
「さすがに死んだら祐くんが悲しむよ〜wそんなに嬉しかったんだw」
辰双は笑いながらメモ帳にメモする。白紙だったページに文字がどんどん書き綴られていく。よくそんなに書けるな、と於菟は感心した。
「あ、俺家こっちなんで」
「じゃあちょっと家まで着いてっていい?」
「何でですか!?」
家まで着いてこようとする辰双に驚く。それを言えば自分も祐の家まで着いていった訳だが、それとこれとは色々違う。
「いや家まで来ないでください!?」
「どうせ祐くんの家まで行ったんでしょ?だったら別に俺が行ってもよくね?」
「新聞のネタにする気ですよね!?着いてこないでくださいよ!!」
於菟はそう言って走って家まで向かう。
しばらく走り、追いかけてきていないか後ろを振り向いた。どうやら辰双は来ていないようだ。
(よかった…あのまま着いてこられたらマジで怖い…とりあえず家帰ろう…晃、もう帰って来てんのかな…)
於菟はそう思いながら、家へと急いだ。
しかし、あの辰双が簡単に諦めるはずもなく…
「いやーちょっと見えなくなったからって油断しすぎでしょw俺の事ちゃんと確認しないと♪ま、そっちの方がいいんだけど♪」
辰双は電柱の陰から出てきて、こっそり於菟の後を着いていった。




