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夜の疑念

 ぼくはいま

 夜がふけても眠れないので

 常夜灯じょうやとうの下

 ひとり

 椅子にじっと座って

 過去に出会った人たちを疑っている

 果たして彼らは

 本当に実在したのか


 誰もが初めに出会うのは母親だ

 その人の内部で形成され

 やがて世界に吐き出される

 どの時点で出会ったというべきか

 胎内にいたときか

 顔と顔をあわせたときか

 愛されていると感じたときか

 その人の実在を疑うことは

 世界の実在を疑うことに直結する

 神の子でさえ母を持った

 だが疑うことに限度はない

 母なしに生まれる者もいる

 母親は本当に実在したのか


 その後に父親と出会う

 はらむことには関われても

 生まれるという一事には無力な父親

 内部からの接触を伴わない

 初めての他者

 ある意味では母親以上に不可解な

 無償で惜しみない愛情

 その人の実在を疑うことは

 他者の実在を疑うことに直結する

 神の子でさえ父を持った

 だが疑うことに限度はない

 父なしに生まれる者もいる

 父親は本当に実在したのか


 群れに放り込まれたのち友達と出会う

 自分と似た

 自分と違った

 遊びを媒介とした真の他人

 群れることなしには済まされない

 人間という種族への印象を

 決定的にする分岐点

 その人の実在を疑うことは

 人間の実在を疑うことに直結する

 神の子でさえ弟子を持った

 だが疑うことに限度はない

 友なしに生きる者もいる

 友達は本当に実在したのか


 渇きに耐えきれなくなったときに伴侶はんりょと出会う

 どこかに置き忘れてきた半身のようでもあり

 生まれてこのかた知らなかった光のようでもある

 魂と呼ばれるなにものかが

 磁力の性質も帯びるものだと

 惹かれあうことで初めて気づく

 その人の実在を疑うことは

 魂の実在を疑うことに直結する

 神の子でさえ愛を持った

 だが疑うことに限度はない

 ともなしに生きる者もいる

 伴侶は本当に実在したのか


 自分が実在するということが

 虚偽だとしても驚かないが

 あの人たちが実在しなかったという可能性は

 こころをかき乱し

 眠りを未明みめいまで遠のかせる

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