掘った芋いじるな
日本人が複数のネイティブに「掘った芋いじるな」と話しかけたところ、ネイティブの大部分が現在時刻を教えてくれたという、昔から有名な話をどこかで聞いた事がある方は多いのではないでしょうか?
彼らの耳には「掘った芋いじるな」が"What time is it now?"に聞こえたという訳です。
「掘った芋いじるな」が実際に通じるかはさておき、この逸話は「英語的な発音とは何か?」というテーマについて、私達に大切なポイントを教えてくれています。
日本人が会話をする時、会話の内容が文法的に正しいかどうかを気にしながら話している人は、まずいません。
これは英語の場合でも全く同じであり、ネイティブ同士の会話ではもちろんの事、スピーチであっても文法的な間違いは数多く見受けられます。
つまりネイティブの感覚では、文法的な間違いの多い少ないと英語の上手い下手とは必ずしも直結しないという事を示しています。
それではネイティブは、英語の上手い下手をどこで判定しているのでしょうか?
ここで冒頭の話に戻ります。
冒頭の逸話は英語という言語が、"What time is it now?"のようなフレーズを発音する際に、単語毎に区切って発音するのではなく、言葉全体を一つの塊として発音するという特徴を持っているという事を示しています。
英語には"fluent"という言葉があります。
これはラテン語を語源にしており、元々は「流れる」という意味です。
英語の場合も似たような意味であり、日本語にすれば「(流れる様に)なめらかに」という意味になります。
実は英語の場合、発音が"fluent"でないと、例え話している内容が文法的に完璧であったとしても、ネイティブの耳には英語が下手に聞こえてしまうのです。
ところが日本語は基本的に単語の一つ一つをはっきり発音する言語であるため、日本人は"fluent"な発音に慣れておらず、苦手な人が多いのです。
これが、日本人が英語が下手と見られてしまう大きな理由の一つです。
同じヨーロッパ言語であっても、ドイツ語は"fluent"な発音を要求されないため、ヨーロッパ言語に共通する特徴ではありません。
発音においても、語順においても、日本語と英語は大きく異なっており、これらが日本人が英語を習得するためのハードルになっている事は否定できません。
それでもハードルの存在と、その正体を知っているのといないのとでは大違いです。
知っていれば、努力して少しずつでも改善していく事が可能です。
英語でのコミュニケーションにおいて、発音はとても重要な要素です。
せっかく努力して文法力や語彙力を向上させても、発音が"fruent”でなければ、ネイティブから「英語が下手な人」という評価を下されてしまいます。
逆に"fluent"な発音を意識して話すようにすれば、それほど実力が高くなくても「英語に堪能な人」という評価を得る事が出来ます。
では、具体的にどうやって"fluent"な発音を習得すれば良いのでしょうか?
その答えは簡単で、実際に自分の口で繰り返し発音する以外に方法はありません。
ネイティブスピーカーのフレーズを聞いて、それを自分の口で、そっくりそのまま繰り返すやり方です。
この練習に難しい理屈や知識は一切不要です。
物まねの練習をしていると思って、オウム返しのように、ひたすら単純に繰り返して下さい。
そして実際に練習する際には、以下のようなコツがあります。
1.繰り返すフレーズは短いフレーズを選択する事。
2.最初から色々なフレーズを練習するのではなく、これと決めたフレーズをひたすら繰り返す事。
自分で完璧にフレーズをコピーできるようになったと思うまで繰り返し、それから次のフレーズに移るイメージです。
3.練習は週末にまとめて行うのではなく、短時間で良いので毎日繰り返し行う事。
4.大声で練習する事
自分の発音が耳から入る事で、耳も鍛えられます。
忘れてはならないポイントは、この練習に練習相手は必要ないという事です。
自分の家で一人で練習する事が出来ます。
家族からは、頭がどうかしたかと思われる恐れがありますが、各人の環境で許される範囲の大声で練習する様にして下さい。
日本人にとって"fluent"な発音の習得は簡単ではありませんが、その効果は絶大です。
発音の習得は文法と違って、才能は必要ありません。
頭の良し悪しも関係ありません。
むしろ頭のいい人ほど単純作業を嫌う傾向が強いので、頭がいい方が不利かもしれません。
必要なのは根気だけですので、是非チャレンジしてみて下さい。






