第4話
お辞儀していた女性の方は飛鳥ちゃんママだった。おそらく男性の方は飛鳥ちゃんのお父さんなのだろう。なかなかのイケメンである。飛鳥ちゃんがこっちに走って来たので抱き上げて両親の元に行く。
「飛鳥ちゃんあんな事件の後なんだからもっと周りに気をつけなきゃ、後いきなり離れたら飛鳥ちゃんのパパもママも心配するだろ?」
俺は飛鳥ちゃんに軽く注意する。そしたら飛鳥ちゃんは「しゅん」と言う効果音が聞こえるくらい落ち込んで「ごめんなさい」と言ってきた。余りの落ち込み様に俺がどうしようかとオロオロしてると飛鳥ちゃんママが「気にしないで下さい飛鳥は助けてくれたカッコいいお兄さんに嫌われたかもって不安なだけですから」そう言うと飛鳥ちゃんはほんとの事で照れてしまったのかお母さんの後ろに隠れてしまった。飛鳥ちゃんママはそのままあらあらと言って此方に向き直った。そしてその顔はさっき迄と違いとても真剣な表情だった
「お昼は誠にありがとうございました」そう言って隣の男性共々再度頭を深く下げた。やはり隣の人は旦那さんなのだろう。
「紹介が遅れましたが私が葉山鈴音で隣が旦那の陽祐です」
紹介して貰うと陽祐さんが前に出て涙ながらに手を握られ再度お礼を言われた。
「ホントに有り難う、君が居らんかったら妻も娘ももうこの世に居らんかったかも知れん思うと体が震えて立てんくなる所やった。どうやろ一樹君さえ良かったらお礼させてくれんか?」
名前はたぶん警察に聞いたのだろう、おそらく鈴音さんも事情聴取されただろうし。
「そんな悪いですよ。俺もたまたま近くにいて間に合っただけですし、そんな悪いですよ」
そう言って取り敢えず断ったが陽祐さんは余り納得言ってない様だった。
「そうは言ってもなぁ、これだけの大恩も返さんと生きて行けるほど精神図太くないねん。そや家の店でご飯食べて行くのはどうやろ?鈴音に聞いたけどお昼に捕らえられてからずっと中で取り調べやったんやろ」
どうするか悩んで両親の方を見ると父さんが頷いたので俺は「お言葉に甘えていいですか?」と聞いた。そうするととても嬉しそうに「良いも悪いもないわ、こっちがお願いしてるんやから好きなだけ食べてくれ!」と言われた場所は車で後ろ着いて来て貰うていいですか?そう言われて父さんは車を取りに行こうとしたが陽祐さんに止められた。陽祐は父さん、母さんの前で膝を着くといきなり土下座をした。
「一樹君のお父さん、お母さんこの度は私の家内と娘の命を一樹に救って貰いました。御二人も私何かが想像も付かないくらい大変心配されたと思います。私は一樹君と一樹君を育ててくれた御二人に感謝の念が絶えません。ホンマに有り難う御座いました」
陽祐さんが言い終わると父さんが陽祐さんに歩み寄り肩に手を置いた。
「陽祐君、君だって奥さんと娘さんが危ない目にあったんだ。家族を思う気持ちに大きいも小さいもないと思うよ。それに皆無事だったんだ、それで良いじゃないか?そして何よりこうして皆さんに感謝される息子が私は何より誇らしい。だからこうして笑ったり泣いたり出来る。この事と家の息子や飛鳥ちゃんの未来を祝って食事としないか?それで良ければ君のお店を教えてくれないか?」
「ええ、ええ、有り難う御座います。家の店で良ければ好きなだけ食べて下さい。これが名刺です。ソコにお店の名前と住所が書いてあります。まぁ、でもここから見える距離ですけどね」
そう言って陽祐さんは父さんに名刺を渡した俺はそれを見て青ざめることになる。
そんなことも知らずに父さんは「此方の自己紹介がまだでしたね。失礼、私は一樹の父、佐上信司と言います。此方のが妻の深月です」なんて呑気に紹介している。そして父さんは「ここから見えると言いましたがお店はどこですかね?」何て聞いていた。
「ハイ、私の店はあそこです」といいながら陽祐さんは世界的に有名なホテルビル、葉山グランドホテル「竹屋」を指したのだった。