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お前らだけ超能力者なんてズルい  作者: 圧倒的暇人
第4章 消えたヒロイン
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第87話 府中動乱③

「零、何で遠回りしてるの?」

 萩原時雨は府中に住んでいるため府中市街地の地理には理解があった。

 今零が通っている道は是政駅を目指しているが、その道は東京競馬場の外周をぐるっと周る遠回りの道なのだ。競馬場通りから是政通りを通る道。

 だが最短で行くのなら府中街道を通るのが適している。鬼束市丸達と別れた地点からなら府中街道の方が良いはずなのだが、鬼束零は敢えて反対の道を歩いていた。

「あっちは府中本町駅に近付き過ぎるからね。神岐が電車で来るなら府中駅か府中本町駅からだろう。うっかり鉢合わせるリスクを取るなら多少時間がかかっても鉢合わせを回避した方がいい。市丸達が時間稼ぎをしてくれてるから出来ることだけどな」

 おそらく既に神岐は府中に到着しているはず。奴がどんな手段を選んで来るか分からない。認識誘導(ミスリード)の性能はあくまで口頭で丹愛が聞いただけでそれが正しいという保証はない。

「市丸達は大丈夫だ。秘策も合わせれば時雨ちゃんは確実に逃げられる」

「…うん」



「女が…5人。全員知らない顔だ」

 神岐は催眠人形から送られた『神岐義晴』と口にした女達の画像を凝視していた。

(20代か?若いな。ドクターの知り合いか?丹愛が時雨の存在を伏せていたように他にも関係者がいるのか?ドクターを追っかけている一味と見るのが自然か。俺が府中に来ていることを知っているなら府中に来るはずがない。いや、ドクターの敵ほどの連中なら俺の認識誘導(ミスリード)を突破する手段を持ち合わせているかもしれない)

 府中にいる人形達から続々と報告が上がっている。

(アビリティーパス?ホルダー?キャンディソルジャー?能力の名前か?俺に近付くなって言ってるから俺の能力は知っているのか。丹愛から聞かされたか…)


(インスティンクトファー、ポッピンキャンディ・フィーバー、フィールフェルト。おそらく能力の名前か。なるほど、超能力は超能力(アビル)、ホルダーは名前の感じからして超能力者、ドクターが持ってるらしい黒い棒は超常の扉(アビリティーパス)って言うのか。奪うって言ってるからドクターと敵対関係である事は確定的だな)

 諜報要員によって動かずに情報を集めている神岐。

 府中において情報戦でリードしているのは間違いなく神岐であろう。

 が、情報をいくら持っていても使う手段を持っていなければ宝の持ち腐れ。

 しかし神岐の認識誘導(ミスリード)はその手段の獲得を用意する。世界中70億人全てが手段の駒になり得る。当然神岐は諜報員の他に別途指示を出せるように命令は掛けていないけど催眠状態の人間を数十人用意していた。


(飴奴隷(キャンディソルジャー)ってのが飴を使って行動を縛っている人間か…。俺の催眠人間と同じか。物事の判断を自身に委ねているかいないかの違いか。一長一短だが、数の暴力で暴れられると鬼束を見失ってしまう。奴等はドクターの敵だが俺の味方って訳ではないからな。奴等と止めるとドクターの手助けをしたことになる。鬼束探しに集中してると飴奴隷(キャンディソルジャー)に場を荒らされて収拾がつかなくなる。面倒な二択を押し付けやがって…。くそ、催眠以外の味方が欲しい。なおのこと他2人の超能力者に会わなきゃいけないみたいだな…アイツらは味方としてカウント出来ないからな…)

 神岐は自身が座っている場所から丁度死角になっている場所に意識を向ける。振り向いたところで死角だから見えはしないし向こうに気付いているということを気付かれたくないため振り向きはしなかった。

(何であの2人がいるんだよ……)

 割と早い段階から平原暁美と戸瀬奏音の存在には気付いていた。思っくそ「神岐」だの「義晴」だのと喋っているのだ。諜報員が報告しないわけがない。

(この前人探ししてるって話した時に興味を抱かれちまったか……。操って家に返してやりたいがキャンディソルジャーとやらが動き出した以上彼女達にも危害を加えかねない。女が配った飴玉にどんな効果があるか分からないからな。くそ、課題が多過ぎてパンクしそうだ。とりあえず諜報員には引き続き鬼束の捜索を、そろそろ見つかっても良いと思うが、飴奴隷(キャンディソルジャー)を追っ手と思って瞬間移動(テレポート)で逃げた可能性が極めて高い。なら最優先は平原達だが…、駅前の女どもが俺を知っている以上下手に接触すれば関係者だと思われかねない。既に知っているのかもしれないが知らない可能性がある以上そちらに賭けるしかない。平原達の府中からの脱出、そして飴奴隷(キャンディソルジャー)の無力化か、可能性があるなら鬼束の捜索、特に萩原時雨の瞬間移動(テレポート)の封印だな)



「市丸兄、市丸兄」

「……?ん?何だ?」

 実録はクイクイと市丸の耳を指差す。

 市丸がポンッと耳にはめた耳栓を外す。くぐもった音がクリアに聞こえる。

「まともに意思疎通出来やしないな」

「仕方ないだろう。神岐の超能力(アビル)が視覚と聴覚でハメるんだから、切るなら聴覚だろ」

「でも連携出来ないぜ。零兄に三つ子パワーとか言っておきながらこれだよ。五感が1つないだけでこんなに不便だとはな」

「零兄と時雨ちゃんが逃げ切れるまでの辛抱だ。1分でも3分でも、なんなら10秒でも稼いで逃げる時間を用意しないと。電車で逃げるなら電車は数分間隔だ。一本乗るだけでも降りる駅と一本分のタイムラグが作れる。電車が発車すれば俺らの勝ちだ」

 是政駅の通る西武多摩川線は駅数はそこまで多くないが乗り換え駅が2つある。さらに乗り換え先で上り下りどちらに乗ったかは神岐には知りようがない。

「神岐はもう府中にいるのかな?」

 実録は神岐と会ったことがないが丹愛の話を聞く限り相当な計略家という印象を抱いていた。

「逆探知をしてるのならそろそろ着いてもおかしくないだろ。仮に神岐がいなくても奴の支配下にある人間は確実にいるに違いない」

 策を巡らす神岐の力を考えれば既に見つかっててもおかしくないが…

「そろそろ府中駅が見えてくる頃だな。おい丹愛、あんまり飛ばすなよ。神岐に見つからなかったら囮の意味ないからな」

 市丸と実録よりも数歩先を丹愛が歩いていた。

 しかし市丸の呼びかけに丹愛は答えない。

「……あぁ、聞こえないのか。やっぱ不便だわ耳栓。ドクターと再会出来たら通信ツールでも作ってもらおう」

超能力者(ホルダー)しかコミュケーションが取れない方法とかあれば面白いかもね」

「そういうテレパス系の超能力(アビル)があれば良いけどな。ドクターは超能力者(ホルダー)を生み出す研究所にいたんだから今までどんな超能力(アビル)があったのか教えて貰えばいいさ。テレパス系もいるかもしれん」

 以前ドクターが昔話をしてくれた時に超能力(アビル)を2つほど説明してくれていた。

「まずは丹愛と足並み揃えるぞ。肩トントンして気付かせろ」

「うぃー」

 実録が小走りに丹愛の方へ向かっていった。



「おっと、見ーーぃつけた!」

 催眠人間から連絡が届いた。届いた画像を確認すると、同じ顔をした男が3人。2人は話しているようで残り1人は2人より前を進んでいるようだ。

「監視能力と萩原時雨はいないのか…」

(別行動……いや、さっきの電話の時に声は聞こえたからその時点では一緒にいたはずだ。どこかで別れたみたいだな)

 約2週間ぶりの鬼束丹愛だ。

 同じ顔ということはおそらく鬼束市丸と鬼束実録であろう。

(ネット記事では見たけどホント顔おんなじだな。誰が誰か区別が付かん…)

 三つ子達の所在は掴んだ。鬼束零と萩原時雨、そしてドクターがまだ判明していない。


「てか瞬間移動(テレポート)は使ってないのか……?」

(優秀な超能力(アビル)を危険に巻き込まないように退かせたか…。いやいや、なら全員で逃げればいいだろ。瞬間移動(テレポート)で運べる人数、物量に制限があるのか。だが廃ビルの時のインターバルは1分もなかったはず。往復すれば全員を移動させられたはずだ。だが鬼束達はまだ府中にいる。このことから導き出されることは………、萩原時雨は瞬間移動(テレポート)を使えない、もしくは使える状況にいないってことになる)

 つまり、既に萩原時雨の無力化は達成しているということになる。

 向こうは隠れ鬼(インビジブルスナッチ)瞬間移動(テレポート)が使えない。無力化してるから逃げたと見るのが妥当だろう。

(となると、別行動で鬼束達が府中駅方面に向かっている理由だが…、俺が来ていることに気付いて交戦する気になったか。飴奴隷(キャンディソルジャー)に気付いて対処しに行ったか…。いや、飴奴隷(キャンディソルジャー)はまだ目に見える行動は起こしていない。鬼束達にあの女達の存在を知ることは出来ないだろう。隠れ鬼(インビジブルスナッチ)が使えないならなおさら)

 女ではないとすると狙いは俺自身…

(俺に見つかるようにするため。俺や催眠人間が鬼束達に向いている隙に、萩原時雨と鬼束零を府中から脱出させる。これが目的か!)

 逆探知は府中駅と競馬場の中間から半径100メートル。円内のどこかにいたと仮定し、府中方面に向かって囮になっているのだとすれば…

「府中競馬正門前駅…。いや、逆探知に気付いてるなら安直に最寄り駅に乗るのはリスキーだ」

 電車は動く檻だ。駅以外の場所で降りることは出来ない。

 何より府中駅に向かってる中、府中競馬正門前駅では近過ぎて囮にならない。

「…是政駅が妥当か」

(隠れ鬼(インビジブルスナッチ)で俺の住所は知られているはず。西武多摩川線なら中央線まで移動出来る。中目黒から中央線を使って府中に向かうわけがないから中央線まで行ければ俺は追いつけなくなる。是政駅に向かうべきだな、と奴等ならそう動くはずだ。問題は…)

 鬼束達も所在が掴めていないドクターの状況。

 府中に来ているのか、そもそも生死はどうなっているのか。

(飴奴隷(キャンディソルジャー)を暴れさせて交通インフラが麻痺すれば鬼束達を府中に閉じ込めることが出来る。ならばやることは先に萩原時雨を見つけ出すこと。最悪、認識誘導(ミスリード)で無理矢理能力を使わせれば俺や暁美達は府中からは出られるしな)

 最低な考えだが、平原達を逃がしつつドクターに近付くにはこれしかない。府中が飴奴隷(キャンディソルジャー)によって壊滅しようがもうそれは自然の摂理で諦めるしかない。

(スクラップ&ビルド。ここで街規模で再開発出来る口実が出来る。より良い街になれば市民としても万々歳だろ)

 勝手な都合だがそれでよくなることも否定しようのない事実。

「さて、まずは……」



「何やらずっとスマホを見ていますわね」

「駅前のベンチにずっと座ってるし、誰かを待っているようにも見えるけど…」

(というよりここの周りに人が全然いないわね。府中本町ってそんなに寂れた駅なのかしら?乗り換え駅なのに…)

 府中本町に限らず街中に人が少ないのは認識誘導(ミスリード)で鬼束探しをさせているためだが戸瀬は勿論そんなことは知らないため府中に対して誤解してしまっていた。

「探し人自身か、それとも協力者がなのか…」

「協力者でしたら、私達もお手伝いするって形で関われるんじゃないでしょうか?」

「えっ、まあそれは可能だろうけど。でも秋葉原からタクシーまで使ってここにいるんだから府中にいるって目星は付いてるんじゃないの?私達がお願いしても「探し人はもう見つかったよ」もしくは「ほぼ見つけたようなものだからお手伝いは大丈夫かな」って言われるのが目に見えてるけど神岐の性格からして」

「うーむ、ガードが堅いですね。男の人は欲に忠実と聞いていましたが、ここまで距離を置かれると女性として自信を失ってしまいますわね」

(神岐は恋愛対象として好きってわけじゃないけど、確かにここまで近付けさせないのは何か寂しいものがあるわね。警戒心が強いのか誰にも心を許していないのか。もしかして、ソッチ系!?)

 いやいやナイナイと心の中の自分が首を横に振っているが、何もそういう系が皆ガテン系というわけではない。

 容姿端麗のイケメン、肉食草食関係なくそれはいるはず。そう理解はしているが身近に同性愛者はいなかったため、初めてのケースにどう対応していいものか混乱してしまっていた。


 神岐は決して同性愛者ではない。だったら合コンなんぞに参加しないからだ。

 平原達と仲良くなることもないし仮に探し人が男だったとしてもそれを未だ心の距離が近付いていない彼女達に言うはずがない。立ち止まって考えれば分かることだが、物理的には立ち止まっていても神岐の状況や詳細不明の探し人のことで立ち止まることが出来ずにいた。


「お嬢さん達、ここで何をしているのですか?」

 引き続き神岐を陰から見ていた平原達に話しかける人物が1人。

 平原はどうやらずっと神岐を見ているようで話しかけてきた男に気付いていない。好きは一直線だ。

 戸瀬は面倒だと思いながらもこのまま無視し続けて相手が騒いだ場合に神岐に気付かれてしまうことを考慮して対応することにした。

「何か?ナンパならお断りです。あなたとお話しすることはありません!」

 口に出しながら相手の方を振り向いた戸瀬だったが、振り向いた先にいた人物を見てクエスチョンマークが浮かんだ。

(あれ?この人どこかで……?)

 いたのは男だった。近しい交友関係にこの男はいないし初めて出会ったはず、初対面初トークのはずだが、いつだかにこの男を見た記憶があった。

「ナンパではありません。私は神岐義晴に頼まれ「義晴様!?奏音、行きますわよ」…、いえ、近付いてはダメです。そのために私があなた方に話しかけているのです」

「何ですかあなた?私と義晴様の関係を邪魔しようというのですか?」

(まだ付き合ってすらないでしょうが!)

 心の中で突っ込む。

「待って暁美、とりあえず話を聞きましょう。すぐそばにいるのにスマホを使わず人を介してる時点で訳ありよ」

 戸瀬は先程の疑問の正体に気付いたため冷静に暁美の暴走を抑えることに徹することにした。

(この男、さっき神岐が話しかけていた中の1人だわ。つまり神岐は私達に気付いている。のに、私達に直接話しかけて来ない。いや、話しかけられない。理由は決まってる、人探ししてるから。人探しだけなら私達と話せるはず、暁美が言ったように手伝いだって出来る。事実神岐は女性にも話しかけていた。やっぱあれは全て人探しの協力要請ね。なのに私達にはそれをしないってことは…その人探しは近しい間柄を巻き込みたくない事情を孕んでいるということ。神岐は私達を思って突き放してたんだわ!)

 けど…

(暁美には通じないわね。「そんな障害乗り越えてみせますわ」とか言いそうね、てか絶対に言う!まずはこの男を介してうまーく巻き込まれないようにしないと…)

「……分かりました」

 渋々と言った表情で勢いを沈める。神岐と話したい気持ちの方が強いが嫌われたくないという気持ちが感情のブレーキの役目を果たしていた。

「ありがとうございます。結論から申し上げますと、お二方には府中から離れていただきたいのです」



 催眠人間が陰に隠れている暁美達に話しかけに行った同時刻。

 神岐は鬼束零と萩原時雨を追いかけるため、府中本町駅を離れようとしていた。

(行き先が分かったんなら府中本町駅にいる必要がない。是政駅に向かう。だが催眠人間は使えない。また近付いて認識誘導(ミスリード)で催眠を掛け直さないといけない。『俺からのメール指示にも従う』ってのは試したことがない。その催眠に適応されるのか大雑把過ぎて正確に認識を誘導出来ないと思ったからだ。超能力(アビル)を使わないようにしてたツケか。もっとこの力のことを調べるべきだったな)

 駅から移動しても暁美達が後ろを尾けてくることはなかった。

(奴に掛けた『平原暁美、戸瀬奏音を電車で23区まで逃がす』って催眠もゴールと手段だけで細かい過程は被催眠者に委ねられている。催眠が解けることはないが正しい挙動をしてくれるかは不安だ。戸瀬なら意図を掴んで動いてくれると思うが、平原はどうも突っ走るきらいがあるからな)

 府中駅から飴奴隷(キャンディソルジャー)が解き放たれてから既に数分経っている。この駅にも来るだろう。

(まだ動かしてない人間を使って飴奴隷(キャンディソルジャー)の足止めをするしかない。2人がここから離れるまで府中本町駅を死守すれば飴奴隷(キャンディソルジャー)もここにいると勘違いして来るだろう。だがそうすることで萩原時雨に追っ手が行かなくなる。三つ子もあえて見つかりに行っているから奴等の戦力を分散出来る)

 鬼束達に手を貸すことになるのが癪でしょうがない。だが感情で動いて大局を見失うわけにはいかない。

 そして神岐は駅の周囲に待機させていた命令待ちの催眠人間達に命令する

『半数は府中本町駅に近付く者の迎撃。もう半数は是政駅で10代女の子と20代前半の男性を電車に乗せないようにしろ!』


 ♢♢♢


 耳栓でコミュニケーションを取りづらい中で囮役を行っている鬼束兄弟だが、くさっても三つ子、考える事は似通っている。

 3人は同じタイミングで足を止めた。同じタイミングで耳栓を外した。

 明らかに異様だ。特に昨日買い出しで街に出ていた市丸にとっては不自然の塊過ぎて既に神岐の認識誘導(ミスリード)の支配下にいるのではないかと不安になっていた。

「……おかしいよな?」

「「あぁ、絶対におかしい」」

 歩けど歩けど人が見当たらない。街の中に自分達だけしかいないかのような静けさがあった。

 角を曲がって真っ直ぐ進めばもうすぐ府中駅だ。駅は賑わっている、はずだが…

「なんなんだ。何でここ人が全然いないんだ?」

「神岐がもう来たのか?」

「全員に催眠を掛けたってか?そんなに大規模だったら何かしら予兆はあるだろ?駅だったら外からも人が流れてくるはずだ」

 神岐の認識誘導(ミスリード)の力の大きさに驚く3人だがやることは変わっていない。

 むしろここまで大きくなっているのなら尚のこと囮として大勢を引きつけられるはずだ。

「とにかく府中駅に行こう。見つかったら煙玉を使って北西方向に走る。ここからは耳栓を外せない。ハンドサインで連携を取る。細かいところは自己判断で。いいな?」

「「了解」」

「よし、じゃあ行く「「「「「うぉーーーーーーー!」」」」」!!!!何だ?どこからだ?」

 とてつもない獰猛な叫び。スポーツ観戦のような喜びを孕んだ大きい集合体。

「府中駅の方からだ!」

 これから向かう先から大きな声。

「神岐か?」

「市民を駅に集めて催眠を掛けたんだろう。神岐は府中駅にいるってことだ」

「どうする?神岐以外に人がいるなら逃げ一択だぞ!」

「逃げるったってどっちにだよ。敵を時雨ちゃんのところに案内するのか?」

「なわけないだろ。ちっ、良かったぜ府中競馬正門前駅にしなくて。遠回りでも是政駅にすれば追いつかれることはないな。向こうの手札は府中駅に集まってんだから」

 これは囮作戦がハマるかもしれない。

「逃げるにしてももう少し引き付けてからだ。この道を右に曲がった先に交差点がある。そこを左に曲がって北西方面、北府中駅を目指す」

 一旦わざと府中駅に近付いて引きつけ、誘導しながら府中街道を北上して北府中に行く。

 極めて危険なルートと言えるだろう。

「ふぅ、やるしかないか」

 丹愛の心はガンギマリだ。時雨のようにトラウマとして恐怖が植え付けられてもおかしくはなかったが、認識誘導(ミスリード)の支配下で覚えていないことが幸いしてかトラウマはない。ただ、廃ビルの一階で、嬉しそうに種明かしをしている神岐に対しては絶対に勝てない領域から見下ろされている感覚を味わった。

 その感覚が、恐怖を取り払った。恐怖とは未知への不安。完全に能力を把握しているわけではないが未知ではなくなっている。ガンギマリなのは心に余裕があるからだ。

「逆に言えば認識誘導(ミスリード)の影響範囲を調べることが出来る」

 生まれた順番、それも同日内だから先も後も関係ないが、今この中で年長と呼べるのは俺だけだ。俺がしっかりしなければと市丸は気を引き締める。

「攻略法さえ掴めば御の字」

 実録も少し心に余裕があった。零の持ってきた閃光弾とは言え、神坂達を足止めして逃げおおせることが出来たからだ。

 ただ今回は零もドクターも時雨もおらず同じ顔の2人と連携して行うという違いだけだ。

 バスケで培ってきた意思疎通は神岐を翻弄することが出来るに違いない。


「さっきは妨害が入ったが…」

 市丸は大きく息を吸う。

「よし、じゃあ行くぞーーーー!!!」

「「おぅ!!!」」

 同じ顔が3人。通りを右に曲がり、府中駅へのストリートをダッシュで走り始めた。

ついに動乱が始まりました

時系列が揃いましたね


神岐義晴

催眠人間を引き連れ是政駅に向かう


町中にいる催眠人間

特定の単語を喋った人間についての情報を神岐に伝える密偵役


府中本町駅に残る催眠人間

平原暁美・戸瀬奏音の府中からの脱出をサポートするボディーガード


神岐にと一緒にいる催眠人間

鬼束零・萩原時雨捕獲のため是政駅に向かう


平原暁美・戸瀬奏音

催眠人間から府中からの脱出を伝えられる


鬼束零・萩原時雨

是政駅に向かう


鬼束市丸・鬼束丹愛・鬼束実録

府中駅に近付きつつ北府中駅を目指す


真澄・のの・那由多

飴奴隷を増やしながら東京競馬場へ向かう


紗穂・能登八散

府中駅に待機


飴奴隷

府中駅から八方に散って暴動を起こそうとしている


ドクター

???


最高に複雑ですね

デート回よりも視点が多くて困るねー

神坂は現時点で彩プロダクションにいますが神原は西宝ショッピングモールへ聞き込みが終わったところですね

神原とドクターは府中動乱に関われるのでしょうか?

次回も府中動乱です

鬼束達の超能力が久しぶりに暴れそうです

虹色ネイルの女達vs鬼束兄弟?

平原達がどう動くかも気になりますね

府中までアッシーにしたドライバーはどこにいるんでしょうか?

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