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お前らだけ超能力者なんてズルい  作者: 圧倒的暇人
第1章 神原奈津緒
8/153

第8話 譲らない気持ち

 ピンポーン

 家のチャイムが鳴る。

 家には誰もいない。

 両親は休日も仕事だ。

 大方某放送局の回し者かセールスだろう。

 無視だ無視。

 休日ぐらいのんびりさせてくれ全く。

 最近は色んな人に絡まれて精神的に疲れてるんだよ。

 以前の誰も関わってこないスローライフを送らせてくれよ。


 ピンポーン

 しつこいなぁ。

「神原さん〜。回覧板です〜」

 そうか、回覧板か。なら出ないとな。

 ドアに引っ掛けといてくれればいいのに生真面目だなー。


 神原が自室から出て玄関に向かう。

「はーい、今出ます」

 にしても隣人さんってあんな間延びした話し方してたっけ? ガチャッ

「おはよう〜。遊ぼ〜」

 バンッ ガチャッ

 咄嗟にドアを閉め鍵をかける。

 ……危ない危ない。

 どうやら最近のセールスは高校生にやらせているらしい。

 回覧板を装うとは中々レベルが高い。

「ちょっと〜。何で閉めるの〜!」

 悪徳商法もタチが悪い。

 これ美人がやったら男なんて一発で持っていかれるぞ。

「神原〜、開けてよ〜」

 さらに俺の同級生の姿をするとは、流石の俺も騙されかけたぞ。

 にしてもあれは完全に俺の友人の麦島迅疾だったな。

 声から体格までそっくりだったぞ。

 某細かすぎてに出ても充分遜色ないぞ。

 1年6組にしか伝わらないけど…。


「出てきてよ〜なっちゃーん〜」

 はぁ、出るしかないな。

 ガチャッとドアを開ける。

「何だよこんな休日に。あとなっちゃん言うな!」

「顔見て閉めることないじゃーん〜」

 こいつはセールスマンではなく正真正銘の俺のクラスメートの麦島迅疾だ。

 こんな休日にまでこいつの顔を見ることになるとは 玄関に塩撒いとくか。

「どうせ今凄い酷いこと考えてるでしょう〜」

 チッ、勘付かれたか。

「それで、何の用だよ。休日にまでお前の変な実験に付き合うつもりはないぞ」

「今日はcomcomじゃないよ〜。純粋に街に行こうよ〜」

 結局遊ぶことに変わりねーじゃねーか!

「すまんな。俺親に宅配便を受け取るように言われてるからさ。悪いな」

 これは完璧な回答だ。これで無理やり外に出そうとする奴は人として最低だろう。

「でもさっきピンポンした時出なかったじゃん〜。宅配便任されてるなら普通出るでしょう〜?」

 ぐっ、やはりこいつは俺の1枚上を行くな。

 たぶん俺が詰めが甘いだけなんだろうけどな。

「しかも今回は俺だけじゃないよ〜」

「はっ?」

 まだ人がいるのかよ。

 鯖東か?だったら塩の量を3倍にしないといけなくなるぞ。

「ほら〜、隠れてないで出てきなよ〜」

 玄関から死角になってる垣根に向かって声を掛けるとそこから人が出てきた。


「お、おはよーう。奈津緒君」

「さ、祥菜?何で祥菜がいるんだ?」

 まさか伊武祥菜だとは思わなかった。

 伊武祥菜は俺と麦島と同じクラスでクラス1モテる女の子だ。

 俺が学校で唯一仲のいい女子だ。

「えっとね、最近奈津緒とゆっくり話せてないから奈津緒と話したいなー、なんて///」

 走ってきたのだろうか?頰が赤い。

「そんなの電話でいいじゃん……って俺誰とも連絡先交換してないんだったな」

 入学式の一件があってから麦島含め誰とも連絡先を交換することがなかった。

 学校の連絡は家電の連絡網があるからいいしわざわざクラスメイトと話すこともないしな。

 LINEの友達なんて家族ぐらいしかいないしな。

「誰とも交換してないの!?だったら交換しよ!クラスのグループLINEとかも入っといた方がいいよ」

 確かに生徒間の細々とした連絡で連絡網は使わないからな。入っといた方が得なのか。

「分かったよ」

 伊武と連絡先を交換しクラスのLINEグループにも招待してもらって参加した。

 ついでに麦島ともな。


 ♢♢♢


「…あんなに騒ぐほどなのか?」

 俺が2人に問いかける。

「神原だけ入ってなかったからね〜。しかも神原最近よく話しかけられるじゃん〜」

「そんなもんかねー、ってもうクラスの3分の1が友達申請してる!」

 これがリア充ってやつか。

 リア充も大変だな。

 一々返事するの面倒だから無視しようかなー。

「無視は良くないよ!人間関係がもつれちゃうからね!」

 だから何故俺の考えてることが分かるんだ。

 案外俺顔に出てるのか?

 祥菜が何故か必死に説得する。

「わ、分かったよ」

 気迫に押されて了承する

 よかった、これで無視されたら私…ゴニョゴニョ

 祥菜が何か呟いている。

「連絡先も交換したんだしもういいだろ?じゃあな」

 神原が強引に引き上げドアを閉めようとするが…

 ガンッ

 麦島が足でドアを固定した。

「待ってよ〜。だから街に行こうってば〜」

 麦島は諦めない。

「お前ら2人で行ってこいよ。別に俺がいなくたっていいだろう?2人で俺の家まで来たんだから」

 思ったことを口にしただけだが麦島の表情が険しくなった。

「…なっちゃん〜、流石にそれは可哀想だよ〜」

「何がだよ…」

 そう言って祥菜の方を見ると今にも泣きそうな顔をした彼女がいた。

 しゃくり上げている。

「ど、どうして泣いてるんだ?」

 状況が分からず伊武に問いかける

「泣いてないもん!」

 どうみたって泣いているだろうがこれ以上突っつくとよくない気がするのでやめておこう。

「…はぁ、泣くなよ。確かに祥菜とゆっくり話せてないからな。遊ぶのもありかな」

「ホントに!?」

 パァァっと祥菜が目を輝かせる。

 涙目だったせいかより一層輝いて見える。

「祥菜と一緒にいると気が楽だしな」

 はぅぅぅ〜と伊武が顔を真っ赤にしてアワアワしている。



 神原は伊武のことをどう思っているのか?

 神原は伊武祥菜に対しては、好意を抱いている。

 だがそれが恋愛的な好意なのか友人としてなのかは本人もよく分かっていない。

 最近になってようやく伊武からの好意に気付く事が出来た。

 気付いたというよりはそうなのかな?という程度だ。

 給食の時間に他の女子が来るようになってからの彼女を見ればいくら鈍い神原でも自分に好意を抱かれていると気付くだろう。

 それと同時に神原は好意を抱かれたことも抱いたこともないからどうしたらいいのかが分からないのだ。

 そのせいで最近は教室でもあまり話せていなかった。

 そんな状態が伊武の不安を煽り、神原が強引な手が好きじゃないのを分かってても麦島を頼って遊びに行こうと誘うという決断をさせたのだ。

 それは数日前…


 ♢♢♢


 数日前の2人のLINEのやりとり

 伊武「麦島君」

 麦島「どうしたの?」

 伊武「奈津緒君の連絡先知ってる?」

 麦島「ごめん、知らないんだ。たぶんクラスの誰も知らないと思うよ。LINEグループも入ってないし」

 伊武「そっか…」

 麦島「なっちゃんに何か用があるの?」

 伊武「えっ?いや〜、別に。なんとなく私奈津緒君の連絡先知らないな〜って思ってね」

 麦島「隠さなくてもいいよ。なっちゃんのこと好きなんでしょ?」

 伊武「な、何言ってるの!?別に好きとかじゃ…」

 麦島「クラスみんな知ってるよ。それこそなっちゃんぐらいだよ気付いてないの」

 伊武「嘘!そんなに分かりやすかったかな、というか奈津緒君やっぱり気付いてないんだ…」

(給食を一緒に食べるとかもう露骨だったろうに〜)

 麦島が画面を見ながらため息をつく。

 麦島「それでなっちゃんの連絡先を知ってどうするつもりなの?」

 伊武「…最近ゆっくり話せてないから誰も邪魔が入らない休日に一緒にいたいなぁって思ったの。気持ち悪いかな?」

 麦島「いや、いいと思うよ。多分だけどなっちゃんも伊武さんと話したがってると思うよ」

 伊武「ホントに?」

 麦島「うん、給食の時間、なんか伊武さんを見て申し訳なさそうにしてるもん」

 伊武「そうなんだ… 嬉しい」

 麦島「連絡先は知らないけど家の場所は知ってるから次の週末にでも遊びに誘ったら?」

 伊武「えっ、でも奈津緒君ってグイグイ来る人苦手そうだけど大丈夫なの?」

 麦島「大丈夫だよ。僕も同伴するからさ。根は良いやつだから気味悪がったりしないよ」

 伊武「分かった、このままだと奈津緒君を他の女子に盗られちゃうもんね。頑張るよ」


 こうして現在に至る


 ♢♢♢


 3人は川崎駅に来ていた。

 館舟高校は川崎市にあり、休日の学生達はとりあえず川崎駅というまでに川崎駅を利用している。2018年の東日本の駅利用者数ランキングでも20位以内にランクインしてたはずだ。

 東京方面へのアクセスも良く京急川崎駅は羽田空港にも繋がっていて便利な街である。

 神原奈津緒も川崎駅近くのBOOKOFFでよく立ち読みをしている。

「とりあえず川崎駅に来たけど何するの?」

 神原が2人に尋ねる。

「時間も時間だしまずお昼を取ろうか?」

 2人が来た後着替えなどの準備をしていたため川崎駅に着く頃には12時を回っていた。

「じゃあラゾーナ行くか?」

 ラゾーナ川崎のフードコートで昼食を取ることになった。


「「「ご馳走様でした」」」

「まさかインドカレーのお店が閉まってるとはな。あそこ好きだったのに」

「私もたまに食べてたよ。ナン好きなんだよね」

「マジで!俺も好きなんだよ。館舟駅の近くに新しくインドカレーのお店が出来るんだよ。オープンしたら今度食べに行こうぜ!」

「ホントに!?行く行く!」

 神原と伊武がカレーの話で盛り上がっているのを麦島はニコニコしながら眺めている。

(どう見たってカップルにしか見えないんだよな〜。なっちゃんも多分ある程度の好意は抱いてると思うんだけどな〜)

 次のデート?の約束が交わされていることに2人は気付いていない。神原はただ同じ嗜好を持った人にお店を紹介したぐらいの認識なんだろう。

 伊武は次のお誘いが確定したことに数秒後に気付いてまたアワアワしている。

 どうしたんだ?と間抜けにも当事者が質問する。

 にゃ、なんでもにゃいよ と伊武が答えるが舌が回っていない。動揺しすぎである。


「お腹も満たしたしそろそろ行こうか〜」

 麦島が会話が弾んでいる2人に促す。

「おっとそうだな。久し振りに祥菜とゆっくり話せたな?」

「うん、そうだね。最近人が増えてきて喋れてなかったもんね」

「ああいうグイグイ来るの苦手なんだよな俺。静かに過ごしたいからさ」

 そういうと伊武がしょんぼりした。

「やっぱり家に行ったの迷惑だった…?」

 朝のことを気にしているのだろうか?

 今日だって泣きそうな私に仕方なく付き合っている。んだもんねとか思ってそうだな。

 また泣きそうになっている。

「そんなことないよ。確かに驚いたけどさっきも言ったろ?一緒にいて気が楽なんだよ。祥菜とも話したかったしね。麦島はいらないけど」

 ちょっとひどい〜と麦島が叫ぶがそれを聞いて伊武は安心した。

(良かった。でも気が楽って…私のことどう思ってるのかな?安心感があるから気が楽?それともいてもいなくても変わらないから気が楽、なのかな?)

 神原は前者の意味で言ったのだが説明不足のせいで後者の選択肢も増えてしまった。

 素直に祥菜と一緒がいいと言えばいいものを。

 伊武の奥手もだが神原の言葉足らずのせいで2人の距離が中々縮まらないのだ。だがこうして休日に一緒に入れるのは柿山プレゼンツの賜物だろう。


「次どこ行くんだ?家か?」

「それ帰るってことじゃん〜…。映画でも見に行こうよ〜」

「賛成ー」

 こうして3人は腹ごしらえを済ませ映画館に向かった。


「何見る?」

 神原が尋ねる。

「これなんてどうかな?今日から公開らしいよ」

 伊武が指したのはアニメーションの恋愛映画だ。

 確か事故で記憶喪失になった主人公とその事故で助かったヒロインが記憶を取り戻しつつ互いに愛し合うようになるとかって内容じゃなかったっけ?

 ありがちな設定だなーとは思ったがそのヒロイン役の声優さんがまー可愛い。

 とても同い年とは思えない。演技派声優と言われている。

 名前は滝波夏帆。その可愛さと実力から人気の声優さんだ。とても同じ高校1年生とは思えない。

 だがこれってアニメーション映画だよなぁ、ポスターが、なぁ…

 この映画のポスターはアニメーションのはずなのに一面に滝波夏帆がデカデカと載っているのだ。滝波が演じた役ではなく滝波自身がだ。中々にインパクトが強いポスターになっている。完全に滝波の容姿でヒットを狙っているようだ。それもまた戦略だな。

「じゃあそれにしようか」

「そうだね〜」

 と、麦島の携帯がプルルルルルルと鳴りだした。

「ごめん僕だ〜。もしもし〜。うん~、うん~」

 麦島が誰かと話している。

 ピッと通話を切ってスマホをポケットにしまう。

「ごめんね〜お父さんからだ」

「内容はなんだったんだ?」

「今お母さん入院してるんだけどお父さんが急に仕事が入って病院に行けなくなったから代わりに着替えとかを持っていってくれだってさ〜」

「それは…なんだ…」

 入院と聞いて神原の歯切れが悪くなる。

「重い病気とかじゃないよ〜。仕事場の階段から落ちて足を骨折しただけだから〜」

「そうか…お大事にな」

「うん〜、それじゃあ僕は帰るね〜」

 去り際麦島が祥菜に頑張ってね〜と言っていたが何を頑張るんだろうか?

「そ、それびゃあいきょうかー」

「発音できてないぞ?大丈夫か?」

「だ、だいりょーぶだよー」

 呂律が回っていない。

「調子悪いならもうお開きに「それはダメ!」と急に大きい声出すなよ…」

「ご、ごめん。奈津緒君は私と映画嫌?」

「そうじゃなくて。ほら、今祥菜の顔真っ赤だし体調が悪いのかと思ってのだよ」

「もうそれは大丈夫だって!ほら、早くしないと映画始まるよ」

 祥菜が奈津緒の手を取って映画館へ歩いていく。

 手を握ったことで上映開始までアウアウしたり、飲み物を麦様分余分に買ってしまったりと空回りしてしまい神原に余計に心配されるのであった。


 ♢♢♢


「良い映画だったねー」

「あぁ、思わず泣きそうになったわ」

 2人で映画の感想を述べあっている。

 映画の内容はテレビでの紹介以上に展開が激しくて終始楽しむことが出来た。

 特に主人公が記憶を取り戻しつつ記憶を失う前の自分との比較で葛藤するシーンは迫真的だった。

 そしてやはりヒロインの声、超可愛い。

 ヒロインのポジションも中々良くて主人公への気持ちが申し訳なさから好意、そして愛へと変わっていく様を見事に演じていて感動した。

 2人はその後映画館近くのベンチで20分ほど語り合った。


 時刻は午後6時

 あの後、祥菜の買い物に付き合ったりカフェでお茶をしたりと夕方近くまで遊んだ。

 祥菜は買い物の時間が短い。

 女の買い物ほど男にとって辛いものはないと聞いていたが俺が飽きを感じないように配慮がなされていて辛いという気持ちが湧かなかった。


「もう時間だし帰ろうか?」

 彼女は明日は朝早くから部活があり門限もあるためあまり遅くまで出かけることが出来ないらしい。

「そうだな、送るよ」

「あ、ありがとう///」

 神原と伊武の家は最寄駅が同じため神原が家まで送ることになった。

 普通は男に自分の家を知られたくないものだが神原にはいいだろうという伊武の気持ちが表れている。

 最寄駅は同じだが地区が違うため小中では同じにはならなかった。

 駅に着くまで電車の中でたわいもない話で盛り上がっている。


 ♢♢♢


 ここは伊武祥菜の家だ。

 表札はしっかり伊武と書いてある。

 一軒家なんて中々いい家庭で育ってるようだ。

 俺なんてアパートなのに…

「送ってくれてありがとう」

 伊武が神原に感謝の言葉を言う。

「気にすんなよ、そんなに遠くもないし」

 嘘である。神原の家は駅から20分ほど、伊武の家も同じく駅から20分ほど、2人の家は駅で対称になっているので徒歩40分もかかる。遠くないとは決して言えない距離だ。

「うん」

 かれこれ6時間以上も一緒にいたと考えると純粋にすごいと思う。

 もしこれが麦島とは2人だったら映画を見て即解散になっていただろう。

 そして麦島がゴネて俺の家でゲームするのが定番の流れになるだろうな。

 麦島でそれなのに、女子でこんなに長い時間2人でいるなんて神原は自分が信じられなかった。

 もしかしたら祥菜のことを俺はどこか許しているのかもしれない。

 この感情が何なのか分からない。やはり、好きなのだろうか?

 だが、どっちだったとしても俺は超能力者だ。

 誰かと恋愛なんて絶対にありえない。

 超能力を使って祥菜に悪影響が起きることなんてないと思うが祥菜からしたら彼氏が変な力を持っているなんて気持ち悪いだろう。


「それじゃあ俺はこれで」

 伊武に別れを告げる。

「あっ、待って!」

 伊武が神原を引き止める。

「あのね、伝えたいことがあるの!」

 やめろ、やめてくれ。

 神原がこれから言うであろうことを理解した。このシチュエーションを理解出来ないほどどんかんではない。

 分かる、だからこそ言ってほしくない。

 今の近いけど近過ぎない距離感が一番いいんだ。

 これ以上近づかれたら俺は…。

「私は…奈津緒君のことが…」

 遮ることは出来る。

 大声を出すもいいし走り去っていくのもいいだろう

 だが口が、足が動かなかった。

 もし言われたら、気持ちが揺らいでしまう。

 ダメだ!明確にしないでくれ。


「奈津緒君のことが好きです。私と付き合ってください!」



 ……言わせてしまった。

 何も出来なかった。

 言われることを望んだのか。

 祥菜が手を差し出している。

 手を取れば了承したことになる。

 取らなければ拒否したことになる。

 何もしなければいい。

 祥菜との関係が悪くなるかもしれないがクラスでも人気の彼女のことだ。

 すぐに新しい人を見つけることが出来るだろう。

 諦めてもらうために促してみるか。

「ありがとう。けど君と俺じゃ釣り合わないよ」

「どうして?」

「今でこそ俺はまあまあな立ち位置だが根っこは今までのままだ。友達も多く容姿の良い祥菜とは反対側にいるんだよ。それに君は物静かな人がタイプなんだろう? あの時のを演技だと周りは思っているが俺は元々気性が荒い性格なんだ。君の理想像とはかけ離れてるよ。もっと良い人がいるはずだよ。まだ高校生活も3ヶ月ちょっとしか経ってないんだ。まだまだ出会いはあるよ」

 これでいいんだ。今はっきり気付いた。

 俺は祥菜のことが好き…なんだと思う。

 異性として…

 今まで近くに女性がいなかったからか、近くにある彼女に特別な感情を抱いている。


 けど俺は超能力者だ。それを忘れてはいけない。

 確かに辛いけどこれが最善なんだ。


「違う!」

 祥菜が叫ぶ。

 何についての違うなのかは分からない。

 彼女は続ける。

「私は確かに大人しい人が好きだった。馬鹿騒ぎしない静かな人が好きだった。けど今は違うの! 奈津緒君が好きなの!例え荒々しくてもいいの。奈津緒君がいいの!お願い!私を気遣ったりせずに奈津緒君の気持ちを教えてよ!」

 そんなことを言われたら何も言えなくなるだろうが!

 思わず下唇を噛む。

 傾いてしまう。

 さっき決めたばかりだろうが!

 これなら能力使って揺るがないものにすればよかった。『恋愛感情を失う』。これをすればよかった。

 俺がさっきのことを祥菜が諦めてくれると思った。

 そんな油断がこうなったんだ。

 彼女の好意は気付いていたがそれは静かな俺を見てのことだと思ってた。

 けど彼女は性格ではなく俺個人を見て好きになってくれた。

 なら俺も超能力者としてではなく一高校生として彼女に伝えなければならない。


「俺はな、俺は…祥菜のことが好きだ。けど俺には誰にも知られたくない秘密を抱えている。その秘密はいずれ君にも迷惑をかけるかもしれない。だから君にはちゃんとした恋愛をしてほしい。俺じゃなくてもいい、幸せにしてくれる人は世の中に沢山いる…」

 伝えてしまった。もう戻れない。

 まあ答えなんてどうせ決まってるけどな。

 俺って自惚れる性格だったっけ?こんなに自意識過剰じゃなかったんだけどな。

 気が大きくなってるな。

「そんなの気にしないよ。秘密があっても奈津緒君は奈津緒君でしょ?」

 これが伊武祥菜だ。真っ直ぐに俺を見ている。

 こんな子だから好きになったのかもしれない。

 聡明な子だ。こんなことで気後れしてたら今まで俺と仲良くしてないもんな。

「ありがとう。こんな俺で良かったら付き合ってください」

「はい!」

 俺が祥菜の手を取る。

 ずっと手を伸ばしたままだったのか。

 筋肉痛になってないかな…ってそんな呑気なことを考えてる場合じゃない。


 神原奈津緒に恋人が出来た。

 祥菜が嬉しそうにニヨニヨしてる。

「大好きだよ 奈津緒君!」

 伊武が大きな声で告げる。

 俺も気持ちを抑える必要がない。

「俺も好きだよ」

 そう言うと伊武が不機嫌になる。

「へぇー」

 平坦な声が聞こえる。

「な、何だよ」

「私は大好きって言ってるのに奈津緒君は好きなんだ〜。あー悲しいなー」

 ニコニコしながら伊武が答える。

「うっ…」

 恥ずかしいから敢えて言わなかったのに…案外したたかだな。

「俺もだ、大好き…だよ」

「うん、私も!」

 伊武が神原に抱きつく。

 なるほど、これがギャップ萌えなのかー。

 意味が合ってるのか分からないが。


「じゃあまた月曜日学校でね」

 腕が解かれる。

「お、おう。またな」

 神原は伊武宅を後にした。



 結局付き合ってしまったなー。

 俺ってこんなに自分の意志をコロコロ変えるやつだったかなー。

 けど、彼女か…

 なんか、自然と頰が緩むな。

 けど超能力者が彼氏なんて祥菜に何も起きなきゃいいけど。

 白衣の男が祥菜を人質に利用する場合だってあるかもしれないのに。

 いや、むしろ何か起こったら超能力で祥菜を守らなくちゃな。


 プルルルルルル

 ん?電話だ 麦島か。

「もしもし」

「もしもし〜、どうだった〜?」

「どうって、何がだよ?」

「伊武さんだよ〜。あれから何もなかったの〜?」

 祥菜を俺の家に連れてきたってことはおそらくこいつが橋渡しをしたんだろう。

 実際こいつが連れてくるでもしなかったら進展してなかったかもしれないからな。

「付き合うことになったよ。悪いな、祥菜の相談に乗ってたりしたんだろう?」

「あはは〜、何とことかな〜?」

 オイオイ、嘘付くの下手すぎるだろ。声が震えてるぞ。

「そんなことよりおめでとう〜」

「あぁ、ありがとう」

「なっちゃんがさっさとアタックしないから伊武さん頑張ったんだからね〜」

「俺だって祥菜への気持ちがどういうものなのか分からなかったんだ…って何で知ってるんだよ!それとなっちゃん言うな!」

「伊達に一緒にいないからね〜。何かを隠してるのも分かってるよ〜」

 何こいつ、俺専用の探偵にでも就職する気か。実は読心能力を持ってるのか?

「詮索はしないから〜、なっちゃんはなっちゃんだしね〜」

 こいつも祥菜と同じようなことを言いやがる。

 なんだかんだで良い友人と彼女を得ることが出来たな。

「ありがとう。いつか笑い話として話せる時が来たら話すよ」

「あれ?もしかしてなっちゃん照れてる〜?」

「はっ倒すぞ!」

 勢いよく終了ボタンを押して通話を切り家へと帰る


 ♢♢♢


「もしもし麦島君」

「もしもし〜、上手く行ったみたいだね〜」

「うん、ありがとう」

 麦島と伊武が電話で話している。

 今日の功労者は間違いなく麦島迅疾だろう。

「なっちゃん声が上ずってて嬉しそうだったよ」

「そう?私が抱き着いた時特にリアクションなかったよー」

 ず、随分大胆だな〜と麦島が恋愛パワーだな〜と呑気なことを考えている。

「ああ見えてなっちゃんツンデレっぽいところがあるし性格も気難しいから素直に感情を表現したくないんじゃない〜?」

「そういうもんなのかな?」

「電話で聞いてみたら?番号交換したんだし」

「えぇ!恥ずかしいよ〜」

 電話越しでもオロオロしているのが分かる。

 付き合う前から名前呼びしてアピールしてた人が何を言ってるんだよと麦島が嘆息をつく。

「じゃあ学校で聞くといいよ〜。なっちゃんを狙ってる女子の牽制にもなるからね〜」

「そ、そうだね。まだ脅威は残ってるもんね。聞いてみるね。じゃあねー」

「じゃあね〜」

 通話が終わる。


 2人ともめんどくさいな〜w。

 まあ付き合ったみたいだしいっかな〜。

 そういえば神原との電話で照れてることを指摘した時なっちゃんって言ったのに何も言われなかったな〜。

 それはそういうことでいいのかな〜。

 月曜日それとなく言ってみよ〜。

というわけで2人は無事結ばれました。

物語の最後で結ばれるなんてベタなことはしねぇ!

けどこんなに速いとストーリーの途中で死んじゃうフラグが立ってるんだよなぁ。

実際展開上亡くなる予定だし

まあまだ仮定の話なのでどうなるかは分かりません。

初期設定はあるけど中身はその場の思いつきで執筆してるのでもしかしたら次回には…ってこともありえるね

次回は第1章の終盤へ突入します

超能力者同士の戦いがいよいよ始まるかも!?

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