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お前らだけ超能力者なんてズルい  作者: 圧倒的暇人
第1章 神原奈津緒
7/152

第7話 ドッジボール対決③

内野の残り選手

5組

新城友善

久保井達史

矢継早飛鳥


6組

鯖東イツキ

茅愛方助


外野

5組

枕崎奏多

菜花七彦

万都敏嗣

棺呑破

橋下勝太


6組

松草知尋

麦島迅疾

道駅悠太

行灯航平

松毬拾


トイレ掃除

神原奈津緒


ドッジボール対決最終回

神原奈津緒が帰ってくる!!


 現在6組ボール 茅愛が持っている。

 しかし、5組はボールを捕ろうとはせず避けることに専念している。

 松草も回復して本調子で投げられるだろうがやはり避けられては敵わない。

 避けられないスピードで投げればいいがそんなスピードで投げれる選手はいない。

「ちまちま避けやがって」

 茅愛が投げる。しかしやはり避けられる。

 ボールは6組外野に行く。

 道駅がキャッチして投げるがやはり当てられない。

「膠着状態だな。このまま行けば授業が終わる。勝負が決まらなかったら引き分けだが内野の数から見て5組の勝ちだと誰もが思うだろうなw」

 新城が勝利宣言をしている。

「そっちこそいいのか?早くしないと神原が帰ってくるぞw」

 こちらもある種の予告勝利宣言をする。

「お前はあいつに期待しているようだが俺はあいつがそこまで凄い奴とは思わない。棺のだって騙し討ちだろ?」

「そう思ってるからお前は二流なんだよ。アイツがただ騙し討ちをする奴だと思うなよ」

「そう言ってるが現にその神原は来てないだろ?逃げたんじゃないのか?」




「心外だなー、俺が逃げるわけないだろ」

 コートの外から鯖東でも茅愛でもない声が響く。

「神原!遅いぞ!」

「神原、待ってたぞ!」

「すまんすまん、あのキューバンみたいな奴で遊んでたら遅くなったw」

 神原は平常運転だ もう少し気を張って欲しいところだが…。

「何?2-3で負けてんじゃん。しっかりしてよ」

「無茶言うな。こっちはお前ありきのチームなんだから」

 神原をドッジボールに強引に誘った鯖東は答える。

 ドッジボールをすると決まった時に鯖東は5組と6組の戦力差は圧倒的に自分らが不利だというのは分かっていた。

 野球部こそいるがそれ以外の運動部は粒揃いだからだ。

 勿論自分自身も例外ではない。

 だからこそ神原を誘った。神原ならこの戦力差を物ともしないと確信したからだ。副次的に体付きのいい麦島も呼び込むことが出来、戦力はほぼ同格までにすることができた。

「まぁいいや。1人だけ内野に戻れる権利、俺が使うけど構わないな」

「あぁ、構わない。ただ勝てよ」

 鯖東が神原に期待を込めて言う。

「それは期待するな。まぁこのシチュエーションの時点で勝ちは確定だがな」

 どういうことだ?と言おうとしたがそれを引っ込めた

 説明が怠いと言ってる奴のことだ しないに決まってる

 しかもそういう時は必ず神原が描いた通りに事は運ばれる。

 聞くだけ無駄だろう。

「残りがラグビー部とサッカー部かー」

 神原がボールを外野に渡す

 松草がキャッチするが…

「待て!投げるな松草」

 神原が松草を静止させる。

「何でだ!?」

 松草が尋ねる。

 距離が離れているため声を大きくしているせいか怒っているように聞こえる。

「麦島ぁ!お前が投げろ!」

「えぇ〜、何で俺〜?」

 麦島が突然の指名に驚いている。

「何で麦島なんだ!アイツは確かにガタイはいいがそれだけでアイツに任せるのか!」

 鯖東が神原に戸惑いながらも問いかける

「…この試合で麦島は投球したか?」

「えっ、いや、してないけど。基本野球部に投げさせてたから」

「ならアイツに一回投げさせてみろ。多分面白いことになるぞ!」

 意味が分からない。こいつはいつも意味が分からない。中庭の時も今回も全く予測が出来ない

「なっちゃん〜、本当に俺が投げるの〜?」

 麦島が縋る声で神原に聞く

「この前のキャッチボールを思い出してやってみろ。あとなっちゃん言うな!ぶっ飛ばすぞ!」

「うぅ〜 分かったよ〜」

 麦島がモーションに入る。

 神原はニヤニヤ見守っている。

 俺と茅愛はまだ半信半疑だ。

 ブンッ バーーーーーン トーントントン

 戻って転がってきた麦島がボールを拾う。


 久保井 OUT

「「「「はっ?」」」」

 ニヤニヤと神原が声に出ない笑いをしている。

 神原以外の内野にいた選手達の声を揃った。

「やった〜、当たった〜」

 麦島が無邪気に喜んでいる。

「久保井!当たったのか?」

 新城が久保井に問いかける

「ボールが当たった感触はある、が、えっ?」

 久保井自身戸惑ってるようだ。

 それは棺の球よりも遥かに早かったからだ。

 神原は思い出す。

 この前麦島と遊んだ時のことを…


 ♢♢♢


 放課後、家に帰ってゲームをしようとしていた神原はまた麦島に呼び止められた。

「何だよ?」

「今日さ〜暇〜?」

「忙しいに決ま「暇なんだね〜」おい聞けよ」

 話を遮られて少々イラついている。

「俺やってみたいことあるんだけど2人いないと出来ないからさ〜、手伝ってくれない〜?」

(今すぐ帰りたいところだがこれで断ったらずっと粘着してきそうだな)

「分かったよ で何すんの?」

「わーい〜、キャッチボールだよ〜」


 ここは麦島の家の近くの公園

 広い平地があるため子供達が野球やサッカーなど様々なスポーツに使用している。

「お前なー、高校生が公園でキャッチボールってどうなんだよ?」

「そう言いながら家に寄ってグローブ持ってきてるじゃん〜」

「うるさい黙れ」

 早く俺は帰りたいのになぁー。

「てか何でキャッチボールなんだ?」

「うん〜、えっとね〜、comcomが球の球威を上げるために色々検証する動画を作っててね〜。俺も実践してみたくなったんだ〜」

 出たよcomcom。

 comcomというのは麦島が好きな動画投稿者の名前だ。

 トップカーストの連中も知っているらしく祥菜もよく見ているらしい。

 俺も1回見てみたがまぁ確かに面白い奴ではあった。 コメント欄では熱狂的なファンがいてそれにビビった。

 顔を隠していて怪しさはあるが自由に色々やるスタイルは非常に興味深かった。

 というより最近ニュースで取り上げられていたはずだ。確か全国で救急車を出動させる程のことをしたとか。クラスがザワザワしてたのを覚えている。速球が何とかって…、見てないから分かんねーんだよなぁ。

「球速を見るだけなら壁にキャッチボールしてもいいじゃねーか?」

「それがね〜、最近そういうのに厳しい家が増えてるんだよ〜。音がうるさいとかさ〜。親が謝罪に行くなんてこともザラにあるらしいよ〜」

「確かに小さいことでクレーム付けたりするバカが増えてるもんな。狭苦しい世の中になったな。お前らも昔やってただろうに…」

 つくづく都合のいい大人達に辟易する。

「ホントだよね〜。あとね〜、スピードメーターも買ってきたんだ〜。これで球速を測ろうね〜」

 用意がいいな。スピードメーターって高校生が買える代物なのか?

「徹底してるな。よしっ、投げてこい!」

 神原がグローブを構える。

 距離は約15メートル。少し近いが問題ないだろう。

 そう思ってた…。

「いっくよ〜 それっ〜」

 麦島が投げた球は大きな音を立ててボールがあらぬ方向に飛んでいった。

「嘘だろ!?」

 神原が驚愕する。

「あれ〜?コントロールミスっちゃった〜」

 いや違う、麦島のボールは俺のところに飛んできた。

 俺のところに来たのに俺が捕れなかったのだ。

 グローブの外側に当たり弾かれたのだ。

 速すぎてグローブの位置を調節することすら出来なかった。

「今の何だよ…」

 神原がスピードメーターのところまで駆けていく。

 そしてスピードメーターが記録した値を確認した。

「ひゃっ、135キロだと…、高校生基準か…、野球部の」

「えぇ〜、135〜!そんなに出てたの〜」

 麦島自身も驚いている。

「麦島ー!どうやって投げた?」

「どうって〜、comcomが言った通りに投げただけだよ〜」

 いや、comcomパネエー。

 マジで何もんだよ!

 まさか、超能力者か?身体能力を上げる能力か?いや、ゲームの件を合わせれば人間を成長させる能力でもあるのか?

 確か動画でって言ったよな。それを見た奴全員そんぐらい出せることになるぞ!もしプロ野球のピッチャーが見たら160なんて軽く超えて日本記録がチープなものになるかもしれん!

 comcom、危険すぎる。もしも超能力者なら白衣の男に超能力者だってバレるんじゃないのか?

 白衣の男があの時の子供を探してるかは分からないが…。

「おい、その投げ方俺にも教えろ。俺はその動画見てないんだよ」

 とりあえず動画情報なしで球威を測り、その後麦島の球を捕りつつ麦島にcomcomの動画でのレクチャーを教えてもらった。

 しかし、神原の球速が上がることはなかった。

 家に帰りcomcomのその動画を見て後日もう一度試してみたら今度は球速が上がった。


(おそらく自身の言葉や仕草を見聞きした人を成長させる能力か?都合よすぎだろ。俺のなんかより遥かに便利じゃねーか!けど俺の能力と性質が近いんだよな。もしかしたら俺の能力の欠点を補う方法を知ってるかもしれないな。1度会って話を聞いてみたいな)

 神原はcomcomに会うことを目標にした。しかし顔も名前も分からない男を探すなど至難の技だ。

 神原は速攻で目標を諦めることとなりどんよりした気分になった。


 神原奈津緒とcomcom、2人はいずれ出会うのだがそれはまだしばらく先のお話…


 ♢♢♢


「よしっ、麦島ぁ!あと2人だ さっさと片付けろー」

「うん分かった〜」

 2人以外は完全に置いていかれてる。

 優しそうな麦島からあんな球が出たことに選手も試合を見てたクラスメートも驚いてる。

 久保井が混乱して外野に行かないため試合を再開することが出来ない。

 しばらくして久保井がOUTになったのを思い出し外野に出たところで試合再開。

 麦島が次は矢継早に投げてヒット。


 矢継早 OUT

 もう誰も何も言わなかった。

 矢継早もそそくさと外野に進んでいく。

 残るは新城だけだ。

 とても新城にあの球を捕れるとは思えない。

「内野に戻ろう」

 5組外野から棺が告げる。

 まだ5組には内野に戻れる権利が残っていた。

 確かに棺なら捕れるかもしれない。

 これで5組は2人、6組は3人となった。

 ボールは麦島が持っている。

 棺が麦島に集中し捕球の体勢を構えるが…

「麦島!こっちに寄越せ」

「分かった〜」

 麦島が6組内野にボールを投げる。

 神原がそれをキャッチした。

「おい、まさかお前が投げるんじゃないだろうな」

 棺が神原に向かってイライラした声で言う。

「言っとくがさっきのようなプレーはもう聞かないからな。お前は見たところ帰宅部のようだがまさか俺をOUTに出来ると思ってるんじゃないだろうな?」

 棺が正論を述べる。

「そうだ神原。お前は腕っ節は強いがそれイコール投球の速さとは限らないだろ?」

 鯖東も棺と同じようなことを神原に伝える。

「さっきは騙し討ちみたいになったし結局当てたのは鯖東だから俺はただの道化にしか見えないだろうな」

 だから… と続ける。

「今度は正々堂々とOUTにしてやるよ。麦島でもOUTに出来るかもしれんが俺が直接OUTにしてやる」


 棺に対してOUT宣言

 試合を見てる5.6組のギャラリーが先程のお通夜ムードから一変して盛り上がっている。

「もうお前の策略には引っかからん。口先野郎にはな!」

 棺が腰を落として構える。


「本当にやるのか?」

 鯖東が問いかける。

「あぁ、少し試してみたいことがあるからさ」

「試してみたいこと?」

 鯖東がそう告げたが神原は返答をしなかった。

 神原が動かずじっとしている。

 鯖東、茅愛、そして外野の松草は身震いをした。

 この状態の神原を見たことがあるからだ。

 そしてこの状態になったあとの神原も…。

「松草君〜、どうしたの〜?」

 震えて冷や汗をかいている松草にどうしたのかと問いかける

「だ、大丈夫だ。ちょっと思い出しただけだ…」

 明らかに大丈夫じゃないだろうと麦島が訝しげに松草を見る。

 そして残りの外野、道駅、行灯、松毬は松草の様子を見て鯖東が言っていたことがこれから起きると確信した。何故鯖東が神原に肩入れしているのか。それを見てみたいと純粋に思った。


「ねぇ、行灯君」

 神原が黙っている間に伊武祥菜が行灯に声をかけた。



 …………………………………………………………………

 ふぅ、こんなもんかな。

 やりすぎると死ぬかもしれないからな今回は

 comcomとトイレ掃除が良いヒントになったな。

 さぁこの試合を終わらせるか。

「待たせたな」

 神原が白線のギリギリまで進む。

「どうした?ビビったのか?早く投げろよ」

 棺が神原を煽る。

「無茶言うな。こっちは今体のバランスが悪いんだ。急かすなよ。すぐ投げるよ」

 棺が6組外野側白線ギリギリまで下がる。

「よしっ、行くぞぉ!」

 神原が棺目掛けてボールを投げた。




 新城が泣きじゃくっている。

 神原が俺にボールを渡してきた。

 当てろということなのだろう。

 俺と新城の確執をサッカー部でない神原が知るはずがないのだが何か思うところがあったのだろうか?

 締めを俺に任せてきた。

 動かず捕る気のない奴になら俺でも当てられる。

 俺が新城をOUTにして試合が終わった。

 6組のみんなはまさかの大逆転勝利に歓声が湧き上がっている。

 外野の連中もハイタッチを交わしている。

「お疲れイッチャン」

 茅愛が俺を労う。

「あぁ、たださっきのアレを見たあとだと素直に喜べないな」

 さっきというのは神原が棺に投げた時のことだ。

 あの後棺はボールをキャッチしようとしたがそれは叶わなかった。

 神原の球は麦島の球より遥かに速かったからだ。

 麦島よりもガタイのよくない神原からあの球が出るのが信じられなかったがあの無言状態のあとの神原は恐ろしい以外の何者でもない。

 おそらく全力を出すのを隠していたのだろう。

 最初からそれを出さなかったのは集中出来る時間がそんなに長くないからだろう。

 所謂ガス欠だ。

 麦島でも棺はOUTに出来たかもしれないが万が一棺が捕ってしまった時のケースを考えたのだ。

 なら最初から最後の1人に棺を残して棺をOUTにして棺が戻る権利を使って戻ったところでまたOUTにすれば良かったのではないか。

 そうすれば集中時間も短くて済むしわざわざあんな立ち回りをしなくて済んだのではないか?

 神原の周りに人が寄っていってる。

 みんな神原を褒めさやす人達だ。

 一応あれがパフォーマンスだとクラスのみんなに言うつもりだがあの様子だともう心配ないだろう。

 棺はボールをキャッチしたが勢いが強すぎてボールが棺を突き飛ばした。

 棺は6組外野側まで飛んでいった

 ボールは棺を飛ばして離れて神原の近くまで転がってきた。


 棺 OUT

 しかし仮にキャッチ出来たとしても体が6組外野にあるので場外OUTになってただろう。

 どのみち棺はOUTだったというわけだ。

 そして神原が新城を狙おうとしたら元々大したことのない奴だ。

 棺を飛ばした神原の球を見てこれからあとの自分の姿を想像したのだろう。

 急にやめてくれと泣きじゃくった。

 あんな無様な姿を晒したのだ。

 これから5組でのアイツの立場はないだろう。

 ざまあみろ。


「お疲れ様」

 鯖東が集団に囲まれている神原を労う。

「何言ってんだ。最後に決めたのはお前だ。お前がMVPだよ」

 おそらく目立ちたくないから最後俺に投げさせたのだろう。

 だが無駄だったな。

「棺を1度OUTにするためにあんな名演技をするとは思わなかったよ。お前がトイレに行った時クラスの連中引いてたぞw」

 神原も意図に気付いたのだろう。鯖東を軽く睨み話を合わせる。

「だろう?棺を1度OUTにしなきゃいけなかったからな。俺もトイレ掃除のこと忘れててすぐにでもトイレに行かなきゃ行けなかったからな。けど俺の意図に気付いたお前の方が凄いよ」

 こっちへのカウンターも忘れない。

 トイレ掃除のために一度OUTになる必要があり、それなら1番厄介な棺を道連れという流れか。実行して達成できるあたりが神原の恐ろしいところだ。

 こんなやり取りをしてたら外野の連中が戻ってきた。

「…神原」

 道駅が神原に声をかける。

「…お前のことを見くびっていたよ。まさか棺を2回もOUTにするなんて、今までお前のことを下に見てたよ。すまなかった」

 道駅が頭を下げる。

「「すまなかった」」

 行灯と松毬も続いて頭を下げる。

「いや、別にいいよ。実際評価されることなんてしてないからね」

 実際に神原は気にしていなかった。


 キーンコーンカーンコーン

 チャイムが鳴る。

 授業が終わったようだ。

「じゃあ俺生活指導の所行ってくるから」

 神原が足早に体育館を去っていく。


 ♢♢♢


「神原君めっちゃカッコ良かったねー」

「最初はやばい奴かと思ったけどあのゴリラ顔を吹っ飛ばすなんてポテンシャル高めじゃない?」

「よく見たら顔も整ってる方だし悪くないから私アタックしようかな〜️」

「えぇ〜、でも伊武さんの派閥に目付けられるよ」

「むしろ寝取りみたいで面白そうじゃん。まだ付き合ってないみたいだし、神原君も告白とか縁遠いだろうから告れば一瞬だよー」

 わざと私に聞こえるように言っているのだろうか?

 あの後行灯君にあの出来事のことを聞いた。

 途中何かを言わないように努めているように見えたが要は5組の大きい人を外野に出すためにわざとああいう風にしていたらしい。

 鯖東君も名演技って言ってたからそうなのだろう。

 にしても迫真がかってて怖かった。

 それを聞いた女子達が奈津緒君を狙おうと企んでいる。

 さっきのはやっぱり私達への牽制なのかな?

 でも私は奈津緒君に告白するって決めたの。

 告白しようとしたらすぐどっか行っちゃってタイミングを逃したし。

 どうしよう……

 早くしないと奈津緒君が奪られちゃう。


 ♢♢♢


「ちゃんとやったみたいだな」

 生活指導の鋼音(はがね)がトイレ、そして神原の目を見て言う。

「もう授業中に寝るなよ」

「分かりました…」

「ところで何でお前はそんなに顔色が悪いんだ?」

「ちょっと軽い貧血気味でして…」

 能力解除による体調不良と先程の能力による影響でいつも以上に体調が悪くなっている。

「そうか… 無理をするなよ。保健室に行ってもいいからな。教科担任の先生には俺から言っておくぞ」

 鋼音は寝たぐらいでトイレ掃除させる面倒くさい先生だが根っこは優しい。

 だったら処罰をもっと軽くしろと言いたいが立場上甘えを出せないのだろう。

「ありがとうございます」

 トイレを後にする神原。

 やはり今回のはかなり体への負担がデカかった。

 下手したら本当に死んでたかもしれない。

 この能力は本当に不便でしかないな。

 次の授業は数学か。

 得意科目だし授業は休みたくないから無理にでも出席しよう。


 それからの学校生活はいわゆるリア充と呼ばれるものになった。

 ドッジボールの件から俺は鯖東とのクラス2枚看板と呼ばれるようになった。

 棺を2回も倒したということで男子からも女子からも声をかけられることが多くなった。

 面倒くさい…ため息が出る。

 今までの静かな生活が良かったのに。

 どこに行っても話しかけられてゆっくり休む時間がない。

 祥菜との給食の時間も他の女子が一緒に食べるようになった。

 物凄く俺にグイグイ来るから正直苦手だ。

 祥菜が物凄く嫌な顔をしてる。ごめんな俺のせいで。

 休日に遊びに誘われるようになったがそれは全部お断りしてる。

 体を鍛えたいしゲームもしたいからそんなことに時間をかけてられない。

 麦島と遊ぶのは良いけどな。

 あいつは俺への態度を変えないしうざったいが必要以上に干渉したりもしてこないしバランスがいい。

 どうせまた『comcomの動画を見て俺と一緒にやろうよ〜』とか言ってくるかもな

 影響受けすぎじゃないか?


 ♢♢♢


 路地裏にある錆びた廃ビル

 そこに5人の男達が集まっていた。

「神原奈津緒の様子はどうだ?」

 白衣を着た30代くらいの男性が目を瞑った男に話しかける。

「普通ですね。ドッジボールで目立ってからはクラスでも1.2の人気者になっています」

 八重歯が尖った野生顔の長髪が答える。

「他の2人はどうだ?」

「一度に2人は見れないの知ってるでしょうに…、ちょっと待ってください。……………他2人も同じですね。目立った動きはありません。2人ともcomcomの動画を見たようですね」

「にしてもそいつらも変だよな。せっかく超能力があるんだから存分に使えば良いのに。神原ってやつも自分がイラついた時ぐらいしか他人に能力使わないじゃん」

「目立ちたくないとかそんなところだろ。学校生活を送れなくなるとか真面目なこと考えてるんだよ。俺らみたいな外れた人間でもなさそうだし」

「ちょいちょい使ってるやつもいるけどな。実際こいつなんて大勢の人間を能力にかけて今や時の人じゃねーか」

 長髪の男によく似た3人がそれぞれの意見を述べる。

 この4人は兄弟だ。

「ドクター、こいつらの能力って分からないんですか?監視してますが能力の片鱗さえ掴めないのですが?」

 長髪の男が白衣の男、『ドクター』に質問する。

「君の隠れ鬼(インビジブルスナッチ)だって端から見ても分からないだろ?おそらく肉体強化や精神系の能力なんだろう。特に彼は間違いなく催眠術の類いの能力だしな」

「確かに超能力でコントロールしてここまでのし上がってるみたいだしな。直接対面しなくても映像を通して発動するなんて便利だなこいつの能力」

「この中学生のガキも中々面白いな。相手を弱くする能力か?」

「けど一番分からないのはこの神原って野郎だな。自身に何らかの変化を与える能力なのは確定だがバリエーションがありすぎる。かなり汎用性の高い能力じゃないのか」

「副作用があるらしいから諸刃の剣なんじゃないのか?」

 兄弟で能力の特定をしているところでドクターが発する。

「特定は各々やっててくれ。鬼束兄弟、零君は引き続き監視を続けてくれ。3人はそれぞれとコンタクトを取れ。使えない能力だったら殺害しても構わん。武器等は私が用意しよう。役割を振るから武器の調整と戦略会議をしててくれ」

「「「「分かりました」」」」

 能力の考察をするためにビルの隅へ移動した3人を見送りながら再び能力を使って動かない鬼束零を眺めながら考える。

 10年前のあれは間違っていなかった。

 あのままだったら間違いなく世界は大変なことになっていただろう。

 君達3人ならきっと何とかしてくれる。

 鬼束兄弟にやられるようでは話にならないぞ。

 さぁ、俺が与えた能力で俺の願いを叶えてくれ。

 そして、欲張るならば……、あいつらを止めてくれ!

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