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お前らだけ超能力者なんてズルい  作者: 圧倒的暇人
第4章 消えたヒロイン
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第59話 鬼束の捜索⑥

「…やっと着いた。バスケ協会。分っかりづれぇ」

 徒歩10分とナビで表示されていたが道を一本間違えたせいで5分ロスしてしまった。

「ここで何か聞けるかね〜?」

 麦島は変わらずエネルギッシュである。俺の能力が吸収能力だったら迷わずお前の元気をいただいたろうな。

「期待薄だな。個人情報とか言われたらなす術なしだ。ちっ、めんどくさいなぁ」

 ここもダメだったらいよいよ詰みだぞ。

「まぁとりあえず入ろうよ〜。平日だから誰かいると思うよ〜」

 ハイハイと協会が入っているビルの中に入る。



「ごめんくださーい」

 インターホンはなかった。大丈夫か?と心配にはなったがポストがあったので人はいるはず。集合住宅のような冷たくてしっとりしているこのビルの中に『日本』と名付けられるものがよく入ってるなと感心する。仮にも3on3バスケを統括しているのならもうちょいマシな建物のテナントを借りてくれよと思う。この待遇こそが=人気、知名度に繋がるのだろうか。

 というよりこう言った協会ってNPO法人のように見えるけど、資金源は一体どうなってるんだろうか?ボランティアでやるとは思えないし。寄付?助成金でも政府からスポーツ振興という形で貰えるのか?それとも現代仕様のクラウドファンディングでお金を募ってるのか。高校生で経営などとは無縁の神原には分からない。


「いないのかね〜」

「おいおい平日だろ。仕事…これって仕事なのか?」

 ボランティアなら不定期かもしれない。アポイントを取るべきだったかもしれない。

 本当にいないのか?もう一度言ってみるか。

「ごめんくださーい。誰かいませんかー」

 さっきよりは大きい声で尋ねる。ガタリと音がしたので聞こえてなかっただけみたいだ。

『はいはいちょっと待ってねー』と中から聞こえてくる。1人なのか?


 待つこと10秒もかからなかった。ワイシャツに黒いズボンを履いた男性が玄関部分までやって来た。

「おぉ、珍しい。こんな若いお客さんなんて。こんにちは」

 40代は超えているか。珍しい物でも見るような目で神原達を見ている。

「こんばんは。館舟高校の神原奈津緒です」「同じく麦島迅疾です」

「アポなしでの訪問をお許しください」

「いやいや、別に構わないよ。タウンページにも載ってないからねここは。けどここに来れたってことはホームページを見たんだね」

「はい、少しお聞きしたいことがありまして」

 男は神原達をもう一度見る。額に軽く汗をかいているのが見えた。

「そうかい。分かった。中はちょっと散らかってるが入ってくれ。暑かったろう?冷たいお茶でも出そう」

「お茶〜、やったねなっちゃん〜」

 はしゃぐな!、と小声で言いはしたが8月の気温は馬鹿にできない。10分程しか歩いていないが背中は汗で半袖シャツがびったり付いていた。太ましい麦島は俺よりも重篤だろう。太ってる奴が汗を多く出すのは代謝が関係してんのかねぇ?体に良いとは生物の授業で習いはしたが、汗っかきは代謝が良いにはならないからそこがよく分からない。


 男の言葉に甘えて、神原達は部屋の中に入っていった。




「なるほどね、鬼束兄弟か。覚えてるよ、メディア進出出来れば確実に3on3の知名度が上がっただろうからね。彼らを探しているのかい?」

「全員と言えばそうですけど一番は鬼束市丸ですね。彼とちょっとイザコザを起こしたので」

 神原は協会にいた男、青木行看(いくみ)に鬼束とトラブルを起こされたこと、警察に行く前に穏便に済ませられれば訴えないので一度話し合いをしたいことを説明した。

「彼らの出身中学にも行ったんですが知らないみたいで、バスケの関係者なら何か知ってるかと思ってこうしてここまでやって来ました」

 青木はしっかりと話を聞いている。ここは先程のおじいちゃん先生と同じだ。しかし説明の仕方を変えて協力を断ると庇っているように見せることで情報を聞き出そうと画策した。

「そういうことなら協力は惜しまないけど、我々も彼らのことはあまり知らないんだ。なんせ5年前のことだからね。私も当時は別の仕事をしていてね。それでも大丈夫かい?」

「大丈夫です〜。昔のことから居場所が絞れるかもしれないので〜」

「分かった。ちょっと協会の資料を持ってくるから待ってなさい。おかわりいるかい」

「お願いします」「いる〜」

「はっはっは、元気だねー。じゃあ待っててね」

 青木は2人の湯飲み茶碗を持ってキッチンがある部屋へ向かった。




「お前ねぇ、もうちょっと遠慮ってもんをさー。俺らはただでさえアポなしで来てるんだから」

「ごめんごめん〜。喉の渇きには勝てなかったんだよ〜。それにしても〜」

 麦島が周りを一回り眺める。

「やっぱり協会というには小さいね〜」

「そうだな。まぁ立場上しゃーないところもあるけどさ」


 さっき青木から聞いた話だと…

 本来ここは日本バスケットボール協会の支部に位置しているらしい。それなら…と思うかもしれないが知名度がいかんせんなく競技人口も全然いないため厄介部署扱いされているようだ。海外だと3on3はメジャースポーツに入るから日本も仕方なく協会は作ってはいるが機能するのは大会ぐらいだ。予算がないため広報に手が回らないらしい。

 そんな中で現状を打破するかもしれなかった存在が鬼束達だ。三つ子というユニークさを表に出して色々やろうとしていたがそれは立ちいかなくなったらしい。その原因をこれから聞くわけだが…


「ここまで不遇だと何かしたくなっちゃうね〜」

「気持ちは分からんでもないが目的を見誤るなよ。俺らの目的は鬼束を見つけてドクターのところまで辿り着くことだ。寄り道はするなよ」

「むっ!分かってるよそんなことは〜。いいじゃんか〜、行動を起こしたいって気持ちを持ったって〜」

 …憂う気持ちは俺にもあるさ、けどそれで回り道して取り逃すなんてのが一番アウトだ。二兎を追うものは一兎を得ずって言葉もあるんだ。やることは絞るべきなんだよ。

 けどこいつ結構意地っ張りだから、落とし所を作らないと絶対このままだし。

「…、あー、けどドクターがバスケ経験者でそれ関係で鬼束達と繋がったって考えると強ちバスケに拘るのは間違いじゃないのかもな〜」

 独り言にしては大きい。やってて恥ずかしくなり神原はやったことを後悔する。麦島の反応は…?


「だよね〜。ここから正解に辿り着くかもしれないしね〜」

 あー良かった。機嫌治ったみたいだ。なんで俺がこういう役回りなんだ。いや俺は巻き込んだから多少の責任はあるけども!


 そんなことを考えていると青木がいくつかの本や冊子を持って戻ってきた。脇に挟んで両手には神原達のお茶がある。

 どうぞ、と青木が丁寧な動作でお茶を机の上に置く。

「「ありがとうございます(〜)」」

 神原はすぐには手を付けず、麦島はもらって早々に口に運ぶ。プハァとなんとも美味しさが伝わるように飲んでくれる。

 青木は脇に挟んでいた資料を仕分けして神原達にも見やすいように整えてくれている。

(俺達に協力的で良かった。物腰も丁寧だし、地雷さえ踏まなければ大丈夫だろうな)

 危険なラインは踏み入れないようにしようと心に決めた。


「鬼束君達はねー、あったあった。これだ。八王子体育大学附属高校に進学してるね」

 リストアップされた資料を神原達に見せる。これは協会員が目星を付けた選手の情報がこと細やかに記載されていた。鬼束達3人は勿論だが、どこかで聞いたことがあるような名前もある。現在の通常の5対5のバスケのジュニアユースの代表選手の名前なのだが造形が深くない神原はそこまでは分からなかった。

「け、ど……」

 リストにある鬼束の名前を指差して右へスライドしていく。


「…不明〜」

 麦島がボソッと指先に書いてある文字を読み上げる。鬼束市丸だけでなく丹愛も実録も全員が進学後が不明になっていた。

「不明?」

 青木も初めてのことなのだろう。すぐさま別の資料を手に取ってペラペラと紙をめくり出した。

(引退ならいざ知らず不明?てことは協会も把握してないってことだよな。おいおいおい、いよいよジ・エンドか?当てもなく聞き込みの日々とか嫌だぞ!)

「えっと…これだ。読み上げるね。」

 青木は別のファイリングされた資料に目を向ける。

「鬼束兄弟は千駄木第二中学校を卒業後、推薦で八王子体育大学附属高校に進学したが、進学して間もなく両親を事故で失ったことで高校を中退。親戚関係者はおらず退学後の動向は不明…って書いてあるね」

 神原は麦島と顔を見合わせる。よくそんなことまで調べたなと同時にいよいよピンチに陥ってしまった。

「…うん。鬼束君達のことはもう載ってないね。4年前から行方知れずって怖いね。君達は会ったらしいから生きてはいるんだろうけど、今の滞在先や何をしているかは僕達じゃ分からないね」

「…分かりました。分からないということが分かっただけでも収穫です。あの、写真などがあればいただけませんか?」

「写真?あーいいよ。ちょっと待ってて、印刷してくる」

 広げた資料をまた一つにまとめて脇に挟む。動き出す前にピタッと動きを止めて、

「お茶、おかわりいるかい?」

「俺は大丈夫です。彼の分だけで結構です」

 神原の器にはまだ半分近くお茶が残っていて、麦島のは空だ。ひっくり返しても一滴も溢れないんじゃないかというほどに飲み干されている。

 麦島の湯呑みを持ってまた裏へと移動していった。



「退学してるんじゃ突き止めようがないよね〜。入学してすぐってことは友達も出来てないだろうし〜」

「だろうな。さて、ここからどう動くか」

 ここからがスタートだ。前哨戦では負けはしたが開始のピストルは撃たれていなかった。準備期間、待ち時間。ピースを集めて準備を整える。

 それが失敗した。そしてスタートした。手元にあるのは少ない。4年前までの情報と約1週間前の邂逅のみ。

 方法を間違えればそれだけ遠回りしてしまう道のりが、ゴールのない長距離走が始まった。


「あいつらが行ったであろう動きをトレースするか。退学ってことは金がないってことだろ。ならどこに行く」

 問答式で答えを導いていく。

「親戚関係もない〜、両親もいない〜。……確か、兄がいるって言ってたよね〜?」

「監視能力だな。市丸、丹愛、実録、名前の中に数字が入っている。1の市丸が兄貴って言うんだから…零とかか?最初が0なのは不自然だから四つ子じゃないとすると歳の離れた兄弟がいるからまずは兄貴に頼るだろうな」

 仮称で鬼束零としよう。限りなく可能性は高そうだけど…

「けどどんなに離れてても10歳もないだろう〜。そしたら25〜26になるとして〜、そこから3人を養うってのは無理なんじゃないの〜?」

 俺らがまさに高校1年生だから分かることだが、授業料とかが免除されるのは中学校までで高校からは奨学金などでやりくりしなければならない。麦島の家は知らないが俺の家でも中3の時に母さんが書類を申請していた。俺の家はそこまで貧乏ではないがやはりやりくりには苦心していたはずだ。国立大学を志望校にしているのも両親の負担をかけたくないからだ。

 俺の家庭でそうなんだから人数が3倍で頼れるのは社会人になってまだ浅い男、しかも亡くなった両親のお葬式やらゴタゴタでもうそれどころではなかっただろう。これは社会人だと仮定した場合だがこれがもし大学生とかだったらもう悲惨だ。


「4人とも消えたかもな。てか多分そうだな」

 零が無事だったなら4人ともドクターと関わるわけがない。協力と引き換えの能力付与と言っていたから零も三つ子と同じ境遇になったと考えるのが自然だ。

 そうなったとして、行く当てのない4人が行き着く先は……

「職安とかかな〜」

 神原が結論を出す前に先に麦島が結論を言う。この辺りが2人の頭の出来の差と言うべきか。

「ハローワーク…って中卒が働けるのか?」

「それなら日雇いの肉体労働かな〜。ドラマで見ない?朝方建物の前にみすぼらしい人達が求人を待ってるってやつ〜」

 あー、なんかどっか見たことあんなそんな光景。あれは確かにハロワじゃなかったな。

「そういう場所を探していけば三つ子に辿り着けるかもな。三つ子で職を探しに来たなんてインパクト強いからもしかしたら覚えている人がいるかもしれないな」


 詰みにはならなかった。が、依然として細い糸を手繰り寄せる作業は続いている。

 二学期の始業式は8月20日、あと2週間弱しかない。このごく短い期間でどこまで追い詰めることが出来るのか…


 ♢♢♢


 青木から三つ子の顔写真 (と言っても5年前の顔写真だが)を手に入れて協会を後にして、そのまま家路に着いた。麦島とは今後の予定の擦り合わせをして館舟駅で別れた。


(零の存在で思い出した。奴には監視能力がある。だから俺らがどれだけ近付いても奴はそれを察知して逃げることが出来るのか…、全く忘れてた。だが生活拠点だけでも分かればドクターに繋がる何かが手に入るかもしれない)


 零の隠れ鬼(インビジブルスナッチ)は現在も神原達を見ている。今日一日の神原、神坂の動きから2人が自分達を探し始めたのだと察知した。神岐だけは動画を撮っていただけだが丹愛から神岐の狡猾さを聞かされているのでこの行為も何か自分らを追い詰める意味があるものだと感じた。


(てか市丸、5年前と見た目がそんなに変わってないってどゆこと?)

 青木から顔写真を貰った2人は驚いていた。2週間前に会った市丸と5年前の写真に写っている市丸に大差がなかったのである。身長は大きくなっているかもしれないが顔の見た目は大して変わっていなかった。

(成長期が終わってるから変化が少ないのか、もしくは生活がままならないという予想で栄養を満足に摂取出来ずに成長が止まってしまったか)

 自分も成長出来るだろうかと神原は不安になる。神原は身長が165センチしかない。今の高校生の平均が170センチを超えているとユーツーブの動画で見たことがあった。女性の男を見る基準も高身長と書いてあった。祥菜という恋人がいるから女へのアピールのために身長を望んでいるわけではないが平均以下というのは少々堪えるものがある。

 神原の周りの男子、麦島や鯖東も170は軽く超えているからこそよりコンプレックスを感じてしまう。

(あれだよな、超能力者になって筋肉のつきが早くなったんだから背も伸びて欲しいよなホント。身体測定から4ヶ月経ってるから今現在の身長が分からないが伸びてるといいなぁー)



 18時になった。

 既に自宅で姉からパソコンを借りてリストを作っていた神坂と、SNSでメッセージを送っていた神原は通知のポップに気付いた。

 通知の内容は、comcomが新着動画を公開したという内容だった。

 既にcomcomが超能力者だと目星を付けている2人は疑惑を抱いてからcomcomの動画にはくまなくチェックしていた。前の野球動画のような何かしらのメッセージがあるのではと思っていたからだ。通知をオンにしてすぐに気付くようにしてある。

 2人の動画に飛びつくまでの時間はほぼ同じであった。

 オフ会の告知動画を見る2人。


「「8月18日……」」

 オフ会の日時を聞いた2人の反応は異なっていた。

 神原は学校が始まるギリギリで参加は出来そうだということ。そして神坂はその頃には夜香さんとのデートが控えていてとてもじゃないが参加出来そうにないということ。

「あぁぁ、行けねーじゃーん!」

(せっかくcomcomが超能力者か確かめるチャンスなのによー)

 あまり大きい声で叫んでしまったので隣の部屋の姉に何事かと突撃されてしまった神坂。彼がオフ会に参加するのは難しいようだ。


「そうだ、comcomのこと忘れてたな。ギリギリで良かった。絶対月末の土日は応援の練習とかで駆り出されるからな」

 神原はcomcomは自分と同じ超能力者なのではないかと疑っていた。

「このチャンスは逃せんな。それまでに鬼束関連を片付けないとな。や、まずは参加申し込みだ。…麦島も誘ってみるか」

 やり取りしていたSNSの相手のことなんか忘れてしまって麦島にLINE電話をかける。

 麦島はすぐにコールに出てオフ会の話で盛り上がった。どうやって抽選をクリアするべきかの方策やcomcomが超能力者ではないかという話などかなり長電話になってしまった。


 それにより激おこプンプン丸な人が1名いたのだった…

神原奈津緒

能力名:自己暗示(マイナスコントロール)

能力詳細:自身に都合の悪い暗示をかける


麦島迅疾

能力名:不明

能力詳細:不明


やーっと8月3日が終わったーー

なっがい!

3人分のストーリーを書くのは大変ですわ

次は翌日の8月4日です

ようやく神岐が外に出ます

そして神原は……リア充爆発しろーーー

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