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お前らだけ超能力者なんてズルい  作者: 圧倒的暇人
第4章 消えたヒロイン
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第56話 鬼束の捜索③

「10日も経ってたら痕跡もくそもないわな」

 鬼束実録と戦った空き地。

 神坂雪兎と月城泰二、臼木涼祢はそこにいた。

 鬼束捜索の手かがりが落ちていないかと思ったがめぼしいものはなかった。

 落ちているものと言ったら……

「眼鏡と、パーカー?」

 月城がその2つを拾い上げる。10日もそのままだったので砂塵で少し汚れてしまっている。

「眼鏡ってよりはサングラスだな。特注品らしいな。オーダーメイドだから製造元から辿れるかと思ったけどドクターが作ったらしいからそっちは難しいな」

 ヒビの入ったサングラスを受け取って神坂は言う。

「このパーカーも大量生産品だから探すのは難しいだろうな」

 臼木もパーカーのタグを見て言う。

「んー、何もないかー。さーて、どうすっかな。聞き込みったって顔写真も残ってないからな。お前ら撮ったりしたか?」

「いーや、そういう発想がなかったらな。あっ、でも」

 月城が何かを思い出した。

「何だ?」

「あの医者なら持ってるかも」

「医者ー?医者って俺を治療してくれた玉梓組のヤブ疑惑のか」

(医者が何で写真撮ってんだよ。治療しただけだったはずだが)

「何だっけ、あれだよあれ、えーと、医者が患者の記録を書くやつ」

「……カルテのことか」

「そう、カルテ。あの医者の机の上にふゆのカルテがあったんだよ。そこにふゆの顔写真が載ってたよ。たぶん寝てる時に撮ったと思うんだけど。だから鬼束の分もおそらく持ってると思うんだ」

(いつの間に撮られていたのか。カルテか…。目は瞑っているだろうが顔の形やパーツの位置が分かれば人探しもスムーズになるのか)

「俺としてはこれ以上関わるべきではないと思うが…」

 臼木の言うことは分かる。暴力団とこれ以上の関係を持つことはあまりよろしくない。学校や家族、世間にあらぬ誤解を招きかねない。俺だったら違反行為なしに一発アウトをくらいかねない。物見とは多少話すような仲になったから友人と話していただけと正当性を訴えても物見の職業を聞いて悪い方向に結びつける輩はごまんといるだろう。

 しかし、有力な手がかりがあるかもしれないと分かっていながら手を出さないのは惜しい。

(玉梓組ではなくあくまで経過観察として。うん、そうしよう。あくまで治療での関係であってそのバックの組織とは関わりがない。それで行こう。俺のカルテがあるならそれが証明になるはずだ)

「…しゃーない。藁にもすがるってやつだ。藁の所有者が暴力団であってもすがるしかないんだ。俺の周りに火の粉を撒くってんなら叩き潰すまでだ」

 姉を人質に取られてしまいかねない、前回もそれで無理矢理フィールドに引き込まれたのだ。これからも連中は姉やこいつらを巻き込んで来るだろう。迎え撃つことに力を割くよりかは原因を叩いた方が手っ取り早い。

 幸いと言うべきか。空き地と医者のいる場所は目と鼻の先だ。3人はお世話になった診療所を目指す。


 ♢♢♢


 カランカラン

 とドアを開けると音が鳴った。喫茶店に入ったときのような来訪を告げる目的の音だ。

 診療所に入ると受付というかソファーや漫画本が入った本棚が置いてある殺風景な場所だ。隣の部屋には診察室、さらに隣にはベッドのある部屋があったはずだと前の記憶を頼りに間取りを思い出す。受付には誰もいなかった。しかしこうやって中に入れるということは医者がいるのは間違いない。戸締まりをしない人ではないだろう。

 隣の部屋からバタバタと音がする。来訪の音で人が来たことに気付いたのだろう。『誰か来たみたいだ』という声が聞こえた。誰か他に人がいるのか。部屋と部屋を繋ぐドアはガラスのない木製のため隣の部屋の様子は見えない。


 そして20秒ほどしてようやく木の扉が開いた。

「いやー、すみません。診察中でして、ソファーに座ってお待ちください……って、おお!!幌谷の白ウサギ君じゃないか!?久しぶりだねぇ」

 向こうはこちらのことを覚えていたみたいだ。これほど強烈なパーティーを忘れろという方が難しいだろう。

「お久しぶりです先生。診察中でしたら待ちますよ」

「いやいや、君が来たということはあれか。怪我が治ってないのかい」

「いえ、怪我は先生のおかげで完治しました。今回は少し混み入った話であまり人に聞かれたくないので、先客が終わってからお話を伺っても良いですか?」

「そうかそうか、分かった。また内密なやつか。けど私が聞いても良いのかい?前は聞かれたくなかったみたいだが」

 10日前の時は超能力の話をする必要があったため物見と先生には退出願ったことを言っている。

「それに関連していますが、先生の持っているものが必要でして」

「ふーん、よく分からんが私で良ければ力を貸そう。じゃあもうしばらく待っ「先生〜、どうかなさったんですかぁ」

 扉から誰かが顔をこちらに覗き込む。

「あっ!」

 月城はそれが誰か分かった。神坂も臼木も誰かは分かったがリアクションを起こしたのは月城だけだった。向こうもこちらが誰であるのか分かったようだ。

「ふわぁ、白ウサギさん。お久しぶりですねぇ。私のこと覚えておいでですかぁ?」

 語尾が柔らかい女性。以前神坂は彼女を大和撫子と評していたがあの時と違って部屋着のようなラフな格好をしている。それでも物腰の柔らかさ等はあの時と変わっていない。

「覚えてますよ。夜香(よるか)さん。お久しぶりですね」

「覚えててくれたんだぁ、うれしぃ」

 口元に手を当てて照れている。


 彼女の名前は玉梓(たまずさ)夜香(よるか)。指定暴力団玉梓組組長、玉梓夜吉(よるきち)の娘だ。

「後ろの2人はお連れの……えぇっとー、すみません。ど忘れしてしまいましたぁ」

 神坂にしか目が入っておらず周りの2人は歯牙にもかけていなかった。

「いやいや、ふゆがメインで俺らは番人(ガーディアン)ですから、僕は臼木涼祢と申します」

「同じく、月城泰二だ」パァン!「イデッ!何すんだりょう」

 臼木は月城の襟元を掴んで引き寄せる。そして夜香には聞こえない声で話し出した。

「お前な、言葉遣いには気を付けろ。『だ』じゃなく『です』とちゃんと言え!」

「別に語尾の小さいところまで見る人じゃないだろ」

「バカ、ああいう和の塊のような人は礼儀を重んじるんだよ。もし粗相でもしでかして父親を怒らせてみろ。玉梓組が全力を俺らを潰しに来るぞ。ふゆだけじゃない、お前の家族も危険に晒されるんだ。分かってるのか!」

「!……、分かったよ。次から気をつけるよ」

「ったく、雪兎君を見習えよな。お前も生徒指導から教えてもらったらどうだ?俺も付き合うぞ」

「…検討はしとくよ」

 臼木が襟元を離す。月城が握ったことでヨレてしまった衣服を正す。

「失礼いたしました。どうかお気になさらず」

「臼木さんに月城さんですね。どうぞよろしくお願いします」

「「よろしくお願いします」」

 夜香が頭を下げたので月城も慣れない作法だが頭を下げる。神坂臼木は違和感なく自然と出来ている。臼木が出来ているのが意外だと思うかもしれないが半殺しの件以降喧嘩が絶えないだけで昔の臼木は普通の少年であったためそういった作法は知識として知っていた。ずっとやんちゃだった月城にはまだ難しいことのようだ。

「お嬢、私はこれから白ウサギ君達と内密な話があるので……」

「うん……、あぁそういうことですねぇ。失礼致しました。お薬はいただいたので私はこれで失礼します」

 事情を察した夜香が帰り支度をする。

「ああそうだ、白ウサギさん、1つ頼み事をしてもよろしいですかぁ?」

 閃いた、と表すようにパンと手を合わせる。

「頼み事、ですか?私に務まるのでしたら」

 この手の女性が何を頼んでくるか想像が付かない。笑顔を『指を詰めてください』と言われたら恐ろしい。というかこんなオラオラ系の巣窟からよくもまぁこんな出来た女性が生まれたもんだなと神坂はしみじみ思う。母親の育て方が良かったのだろうか?にしては母親らしき人は見かけないな。俺も彼女の母親から育ってれば真っ直ぐに育っていたんだろうかと考えてしまう。

 そう考えていると夜香が口を開いた。危険なお願いではなかった。男なら喜びそうな頼み事だった。最初だけは…、後に神坂は安易に引き受けたことを、そしてこの界隈の危険さと夜香が何故こうなったのかを思い知ることになる。


「えぇと、私とお出かけしてくださりませんか?」

「………はい?何とおっしゃいました?」

「だからお出かけです」

 お出かけ……、あぁ外出のことか。

 それ俺じゃなくてもよくね?だが断るような難易度の依頼でもないしな。女性の荷物持ちなんて、正直だるいな

「荷物持ちですか。それでしたら私なんかよりも玉梓組の構成員の方が体もしっかりしているので適任かと思いますよ」

「むぅ、違いますよぉ。察してください。デートです、デート」

「お嬢!それは流石に…」

 先生が止めに入る。どこぞの馬の骨に2人きりになってもらいたくないとかそんなところだろうか。

「私だって街でウィンドウショッピングとか買い食いとかしたいんですう。学校行く時も車通学だから寄り道も出来ないし、友達と遊びに行けないしぃ。私だって学生らしいことがしたいんですぅ!」

「しかしお嬢にもしものことがあったら組長に何と言われるか」

 んー、どうやら訳ありみたいだな。デートとは言ってるが要は息抜きがしたいってことか。

 組長さんにはお世話になったからその娘さんの頼みはなるべく応えたいが組長と先生はあまり良しとは思ってないみたいだ。しかもこっちは鬼束やドクターのことで立て込んでて時間の確保が難しいな。

「そ、それなら、診療とかこつけて私の体を撫で回したとお父さんに言いつけてやりますぅ」

「なっ!」

 やり手だな。これは断れないな。戯言だと分かってはいても実の娘にそう訴えられたら感情が先に出ちまうよな。ここでイザコザを静観しててもいいがこっちの話が進まないのは困るな。

「臼木、月城」

 2人がこっちを見る。声に出さないのは向こうの2人が少々ヒートアップしていてその場を離れたかったからだ。比較的に近くにいたので声を出すとこっちを向いて余計に騒ぎが大きくなることを見越してだ。神坂がチョイチョイと手招きをする。2人も荒立てないようにひょこひょこと神坂の元まで来た。



「折れてください先生。これ以上先生が苦しむ姿は見たくありません」

「お嬢が変なことを言わなければそんなことにはなりませんのでご安心を。どうか諦めてください。組長さんが事態の解決のために尽力していますから」

 天然なのか病気なのか、原因は自分だろうに何故悲劇のヒロイン?まぁどっちでもいい。言い争いは相手を変えて持ち越しといこう。

「はーい、ちょっとお邪魔しますよー」

 臼木がひょいっと簡単に夜香を持ち上げる。お姫様抱っこだが彼女は和のテイストが強いためどうも違和感がある。

「ちょっ、何なさるのですかぁ!下ろしてくださーい!」

「臼木君!何のつもりだ!」

「あぁご安心を」

 月城は扉を開ける。神坂は先生を宥めるように彼の肩をポンポンと叩く。

「切り上げ時は見えなかったので介入いたします。先生も性犯罪者にはなりたくないでしょう?」

 ぐぅ…と飲み込む音が出る。どうやら性犯罪者と言われてでも止めなきゃならないらしい。

「私の話もですが彼女の抱えている問題についても少々お話しいただければと。こう見えても私は東京最強と称されています。ボディーガードくらいの役割は果たしてみせます」

 自分のことをひけらかすのは好きではない。天狗になるほどの自惚れではいがこの地位を持っているからこそ出来ることがあれば、それは自分の掲げる理想の男に近づく事になるのではないか、と。

「ではデートしてくださるのですかぁ?」

 臼木に抱えられた夜香が遠ざかりながら尋ねてくる。

「確約は出来ませんが説得はしてみます。ただし、出来た場合そこの2人も付いてくるのでデートとは言えないですが」

 夜香には納得、そして先生には暗に落とし所として提案する。

「構いません。同年代の方と出かけるのなんて初めてですぅ」

「んんんん……」と先生が考えている。既に損得計算を始めているのか。それとも組長さんへ何と伝えれば良いかを思案しているのか。その両方か。

「夜香さんを隣の部屋へ連れて行け。話し相手にもなってやれ。彼女は箱入りっぽいから学校のことを話せばいい。ただ血が流れるような話はするなよ」

「えぇー、俺の武勇伝がー」

「言うほどないだろ…、分かった」

 そうして3人は隣の部屋、受付部屋?に行った。



「まずどっちから話しましょうか?」

 神坂が話を切り出す。

「お先にどうぞ。こっちは後の方が流れがスムーズだ」

 発言の意味は分からなかったが先制は貰ったので話を始めることにした。


「先日私と一緒に運ばれてきた鬼束実録の写真を提供していただきたいと思いまして」

「写真、どうしてそんなものが要るんだ?」

 持ってないと言わないということはやはり先生は持っているな。

「実は彼に会って話したいことがあるんですが、連絡先を知らなくてですね。そしたら月城が私の写真を先生が持っていたと言ってまして、患者の写真を撮る人なら鬼束の写真も持っていると思ってお願いしに参りました」

 なるほど、と先生が頷く。

「悪用する君ではないから渡しても大丈夫だろう。ただ目を瞑ってるからそれで人探しするなら難しいと思うがそれでもいいのかい」

「はい、ないよりマシです」

「…分かった。ただし、一つ条件がある。お嬢の件だ。だが場所を変えさせてもらう」

「場所…ですか。いいですけど、ここよりも適した場所ってありましたっけ?」

「なーに、すぐそこだよ」

 先生は机に付属している棚をガチャガチャと弄る。

「7月のカルテは…、あったあった。鬼束実録…鬼束…。見つけた」

 一枚の紙を取り出す。そしてそこの左上に付いていた何かをビビビビと剥がしていく。

「はい、これが鬼束実録の写真だ。マイナンバーの顔写真の大きさにしてるから小さくて見にくいかもしれないけど勘弁ね」

「いえ、ありがとうございます。でもいいんですか?剥がしてしまっても」

「既にパソコン上にデータ化してるからね。念のために紙でも保存しているだけさ。さあ、先に渡したんだから、こっちの頼みは断らないでくれよ」

 脅しではないが念押しと言ったところか。逃げないっつの。

「じゃあ行こうか」

 先生は立ち上がって、白衣を脱いでネクタイとジャケットを着る。これでこれから会う相手の予想はついた。

(俺私服なんだけど大丈夫かな。制服で来りゃ良かったな)

 想定していなかったのでしょうがないがやはりその道を行く人にこの格好で会うのは向こうに申し訳なく思う。


「ふゆ、写真は?」

 神坂は手に入れた写真をヒラヒラと振って月城に見せる。

「良かった。じゃあ早速探し「その前にやるべきことがある。行くぞ」ってどこに?」

 神坂はチラッと夜香の方を見る。見られていることに気付いた夜香も神坂の方を見つめる。


「問題を抱えたヒロインを救う交渉だ」

神坂雪兎

能力名:強制平等(イコール)

能力詳細:相手を自分と同じレベルに調整する


月城泰二

能力なし


臼木涼祢

能力なし


神坂サイドも動き出しましたよ

神原には警察と学友、神岐にはテレビ局と親衛隊、神坂にはファンクラブと暴力団

賑やかになってきましたね

主人公の能力がチートすぎるのでおそらくこの作品は周りの人物の戦闘が肝になると思います

周りが戦う→ピンチに陥る→主人公が倒す

という流れになる予定です

だからどんどんホルダーを増やさないとねぇ

次も神坂サイドです

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