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お前らだけ超能力者なんてズルい  作者: 圧倒的暇人
第4章 消えたヒロイン
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第55話 鬼束の捜索②

「文京区、東京だね〜」

 麦島がキョロキョロと辺りを見ながらワクワクを抑えられずにいる。

「そんな地方出身者じゃあるまいし、電車で来れる距離だろ」

 とは言っても久しぶりに東京に来たな、と神原も神奈川とは違う形相の街を見渡す。

「基本川崎で全て賄えるからね〜。アルバイトもしてないから交通費が結構辛いんだよ〜」

「確かにな。ウチはアルバイト禁止ってわけじゃないからやろうと思えば出来るが、なんか想像できないな。ニコニコして『いらっしゃいませ!』って言ってる自分が」

 館舟高校は進学校であるがアルバイトは禁止されていない。スポーツ推薦で入った人と成績下位4分の1に入る人は禁止という限定的な決まりはある。240人の4分の1なので60人。上位180人しか働けない。170番台の人は働けるが、瀬戸際の順位なのでアルバイトで勉強の時間がなくなればすぐに180より下に落ちてしまい、結果バイトを強制的に辞めさせられてしまう。そのためケツから60人と定められているが実際働いてる人で1番成績が低いのは104位の人である。それだけウチの学校が勉強を重視しているということだ。スポーツ推薦の人は頭の出来で入ってないので部活とダブルパンチで余計に辛いだろう。実際に下位4分の1のほとんどがスポーツ推薦で入学した生徒だ。

 そして、アルバイトは出来るが、成績を落とすと無条件に辞めさせられるという決まりは、働き先にも悪い印象を与えてしまう。急にシフトに穴が開くのだ。そのため館舟高校の生徒をバイトで雇わないというお店もある。履歴書で学歴を見た瞬間に『お帰りください』と言われた生徒もいたらしい。これも学校側の狙いなのかと疑ってしまう。やはり不思議な高校だ。

 確かに館舟高校の進学率は高い。国立、有名私立に何人も輩出していて神奈川県内の高校では3本指には入る有名私立高だろう。そこらへんの高校の学年一位が、館舟では80位くらいの成績だと言う話を聞いた時に改めて自分の高校の凄さを感じた。


 ここは文京区の千駄木駅

 俺達が目指している中学校の最寄駅だ。

「すっかり昼飯の時間帯だな」

 電車に1時間近く乗っていたので時刻は12時を回っていた。

「というか今って夏休みだけど先生っているのか?」

「んー、高校なら受験のために先生が残ってるけど中学校はどうなんだろう〜。当番制でいるんじゃないかな〜」

 今日が当番で中学校にいるといいけどな。流石に5年前なら勤務していた先生はまだ在職だと思うけどな。

「飯食うよりも先に行くぞ。休憩で職員室に固まってると思うからな」

 えぇ~、というクレームを聞き流して神原達は中学校へと向かう。


 ♢♢♢


 区立千駄木第二中学校

 とプレートに書かれている。ここで間違いない。

 駅からここに向かう途中に第一と第三中学の前を通ったが、普通は数字順に学校を作ると思うんだが。何故第二だけ飛ばしたのか凄い気になる。


 時刻は12時40分

 まだ職員室にいることを信じたい。

 2人は中学校の正面玄関に入って受付がある場所に着いた。

 ガラガラと横にスライドする小さなガラスから事務室の中の様子が伺える。

 ガラスの前には受付表と書かれている紙がバインダーに挟まれて置いてある。

 先にご記入くださいと注意書きがしてあるので氏名、勤務先、用件を記入していく。まだ働いてないのでおそらく高校名を書けばおそらく大丈夫だろう。勤務先には私立館舟高校と記入する。

 先に神原が書いて、次に麦島が書き終わった段階で小さなガラスが音を立てて開いた。

「こんにちは。本日はどういう用件で、OBの方ですか?」

「私は館舟高校1年の神原奈津緒と申します。社会科研修で5年前にこちらに在籍していた三つ子の鬼束さんについて彼らを知っている方に詳しい話を聞きたくてですね。該当する先生は現在ご在籍ですか?」

 んんー、むず痒い。丁寧にかしこまるのはムズムズする。この前麦島も同様のことをやったらしいが、よく平気だな。

「鬼束ですか…、少々確認しますね」

 そう言ってガラスを閉める。


「知ってる人いるかな〜」

「1人ぐらい知ってる先生がいると思うけどな。にしても中学校に行くのなら制服の方が良かったな」

 神原も麦島も私服を着ていた。社会科研修と銘打つなら制服の方がイメージが良かったかもしれない。

「事前のアポイントはした方がよかったな〜?そこまで気が回らなかったや〜」

 そうだなーと返答が来るのを待つ。


 数分後

 事務室からではなくその隣の部屋の扉が開いて、50代は超えているだろうおじいちゃんが出てきた。

「君達が鬼束君達について聞きたい人かな?」

 2人を様子をジロジロと見るおじいちゃん。

「初めまして、館舟高校1年の神原奈津緒です」

「同じく館舟高校1年の麦島迅疾です」

 立場が上の人間や真剣な時は語尾が伸びないらしい。

「ほう、館舟高校からですか!?ということは神奈川県からですか。いやいや、ようこそ」

 館舟高校というネームバリューは相当のようだ。思えば外で自分の高校を言うのは初めてかもしれない。もしかしたら他の場所でも同じ反応が見れるかもしれないな。

「鬼束君達を知りたいということだけど、理由を聞いてもいいかな?」

 これは探りだろう。こちらの目的が真っ当な物であるかを確認するために。

(やっぱ制服で来れば良かったな)と服選びをミスったなと後悔してももう遅い。ここからどう情報を聞き出すかが鍵だ。


「社会実習の一環として夏休みの自由研究として一つのテーマについて調べるという課題が出ていまして、僕達はあまりメジャーではない3on3バスケについて調べようと思いました。調べていく中で三つ子のチームが関東大会を優勝したという記事を見かけまして、色々と話を伺いたいなと思ってこの度訪問致しました」

 自由研究は嘘だが進学校だからそういう課題も出しそうだというイメージがあると思うのでこれでいくことにした。このおじいちゃんもなるほどと頷いていたので誤魔化しは効いたようだ。

「話は分かりました。それで、ここで何を聞きたいのですか?」

「はい、先生達から見た彼ら兄弟のことや3on3バスケを選択した理由などですね。彼らの所在について調べたのですが千駄木第二中学校とまでしか載っていなくて、高校では続けなかったのか?今何をしているのかなどを聞きたいです。勿論ここで見聞きしたことは課題以外では使わないよう配慮はします」

「それは当然のことだ」

 ピシャリとはっきり言われた。

「……」と長考をする。何か踏み入ってはいけないことがあるのか。

「残念だが、彼らの現在のことは知らないんだ。知ってても個人情報だから気安く言うことは出来ない。卒業後の鬼束君達のことは分からない。バスケは続けているとは思うがね」

 嘘ではない、だろう。だが何か知っているようにも見えた。少なくても鬼束達がドクターなんぞに協力するぐらいに落ちぶれたキッカケぐらいは知っていそうだ。

「分かりました。お時間をいただきありがとうございました」

 ペコリと頭を下げる。

「麦島、行くぞ」

「うん〜」

『それではこれで』ともう一度頭を下げて出入り口へと戻る。

「神原君、と言ったかな」

 おじいちゃんから声をかけられる。

 はい、と後ろを振り向くと何かを思い詰めたような顔をしているおじいちゃんがいた。

「あまり、彼らについて聞いて回るのはよしたまえ」

 まさかの忠告に神原もどういうことかと気になる。

「は、はぁ…。それはつまりどういう意味でしょうか?」

「良いテーマだと思うが、彼らにこだわる必要はないと思うぞ。歴史を調べたり実際のプロ選手から話を聞いた方が身になると思うよ。珍しさから鬼束君達に興味を持ったみたいだけど、あやふやなところを攻めるよりは確実なソースがあるところから聞いたほうが調査もスムーズに進むと思うよ」

 麦島が小声で『何か知ってるみたいだね〜』と神原にしか聞こえないように言う。神原もコクリと小さく頷く。

「そうですね。ですがそこらへんのところは夏休みに入ってから既に調査済みです。調査を進める中で鬼束さん達のことを知ったので調べている次第です。ご忠告は感謝しますが、ここではいそうですかと言われて諦めるほど、生温い調査にするつもりはありません」

 はっきりとおじいちゃんに宣言する。

 おじいちゃんの目が細くなった気がする。それではと言ってその場を後にする。

 おじいちゃんは何も言わなかった。見送るというわけでもなく、その場に居続けた。


 ガラガラと職員室の扉が開く。

「わっ、どうしたんですかドアの前に立って」

 職員室から出てきた女教師が驚く。ドアを開けたら人が突っ立っていたのだ。驚くのは当然だ。

「あー、いや済まない。少しボーっとしてた。すぐに戻るよ」

 年だな〜と誤魔化すおじいちゃん。

「暑さで体調が優れないんですか?無理しないでくださいね。あっ、そういえば15時から千駄木高校からオープンスクールについての話があるから伺うという連絡が入っていましたよ。難しいようでしたら教頭先生や3年の学年主任が代理で話を聞きますが、どうしますか?」

「いや、大丈夫だ。気を回してくれてありがとう。私は部屋に戻ることにするよ」

 おじいちゃんは女教員に感謝の言葉を述べると自室へと戻った。

 自室というのは、事務室ではなく、隣の職員室でもない。さらに隣の部屋。

 ドアには金属のプレートでこう掘られていた。


『校長室』と。


 ♢♢♢


「どう見る。さっきの」

 中学校を出て、駅前のクエンタッキーフライドチキンで昼食を取る神原達。

「隠してるという感じはしなかったけど〜、何か言えない何かがあるっぽいのは間違いないね〜」

 麦島と同意見だ。言えないのがあるなら話を聞いたりしないだろう。最初から教えられませんでつっかえせばいいのだ。何やら複雑な事情があると見た。

「学校で問題を起こしたならむしろこういう人物だから取材は難しいと言えば良いからな。てことは、家庭の事情か?」

「かもしれないね〜。離婚で兄弟がバラバラになったとか〜、身内に不幸があってバスケを続けることが困難になったとか〜」

 チキンをムシャムシャ食べる麦島。痩せると言っていたが口だけなのか。この店に決めたのも麦島だったな。まぁいいけどよ。

「家庭の問題ならドクターに目を付けられるのも納得だな。真っ当な家庭なら問題になるからな。だが複雑な家庭事情があるならこれ以上調べることが難しくなってきたな。あんなこと言っちまったからあの中学校にまた行くのはなんか嫌だしな」

「んー、じゃあ聞き込みをするしかないね〜。でも5年前の中学生の話だからな〜」

「5年前に中学時代ってなると今は大学生くらいか。バラバラだよな。みんなが東京の大学に進んでるわけないし」

 かと言ってマイナースポーツのチャンピオンなんて街の人は覚えてないだろうしな。甲子園に出たとかのドデカい一発があれば違ったんだろうけど。

(難しいな。人1人探すのも一苦労だな。警察の手を借りたいが敵の手中に収まってる可能性があるし。だがあの豊橋って刑事は切れ者そうだったから笑い飛ばさずに聞いてくれるか?)

 いや、話した人も巻き込みかねないな。麦島はもう無関係ではいられないからこうして一緒にいるがそれ以外の人には立ち会って欲しくないな。

「通ってる学校がダメだったんなら〜、バスケの方で調べてみるもいいかもね〜」

「バスケ?3on3バスケ協会みたいなか?」

「うん〜。関東チャンピオンなら知ってる人もいるかもよ〜。プロの誘いや強豪校の推薦とかの過程で関わりがあると思うんだ〜。続けてない理由も知ってるかもよ〜」

 なるほど、バスケで成績を上げてるんだからバスケ側の人間が知ってる可能性の方が高いか。

「分かった。じゃあそっちから当たってみようか。その協会、組織があるのか。その場所って分かるか?」

「ベタベタの手の俺にやらすの〜。なっちゃんツイスターで手汚れてなんだからなっちゃんが調べてよ〜」

「3ピース目に手を付けるからだっつの!分かったよ。ナプキンでちゃんと手を綺麗にしろよな」

 神原は追加のナプキンを取るために立ち上がりながらスマホでさっき言った組織が存在するのか調べる。

(これであったとしても場所が大阪とかだったらかなり苦しいな。関東圏にあることを祈ろう。最悪山梨だな)

『3on3バスケ 協会』でサーチをかける。


 ゴミ箱のそばにあったケースからナプキンを取って麦島の机の上に無造作に置く。ありがと〜と言いながらストローでコーラを飲んでいる。目は食べ物に向かっていてスマホ弄りながら適当に返事するような受け答えになっていた。

 目線を神原に向けずに麦島が話し始める。

「どうだった〜?」

 神原はそれに特に何も文句を言うことなく話を続ける。

「…ふっ、ラッキーラッキー。川崎だ」

 スマホを麦島の顔の正面に持ってくる。

 麦島がスマホの画面を見てみると、アクセスの欄に神奈川県川崎市幸区–––––と書かれていた。

「うぉぉ〜!川崎にあるんだな〜。東京かと思ったけど〜」

「だが帰り道の方向にあって良かった。最寄りは南武線尻手駅だ。西日暮里に行って京浜東北線で川崎まですぐだ。早く食えよ。食ったらすぐ移動だ」

 ウェットティッシュで顔まわりを拭う神原。

「なっちゃんそんだけでよかったの〜?ツイスターと飲み物だけじゃん〜」

「お前と俺の胃袋を一緒にするな。朝飯食ってからそんなに時間経ってないから腹が減ってないんだよ。お前は食い過ぎ!もう少し抑える努力をしろよな!」

 食い意地がある麦島をどうにか動かして、千駄木駅を後にする。

 次は地元である川崎市だ。

(絶対に見つけてやるからな!)

神原奈津緒

能力名:自己暗示(マイナスコントロール)

能力詳細:自身に都合の悪い暗示をかける


麦島迅疾

能力名:不明

能力詳細:不明



動き始めましたね

次は神坂の鬼束捜索です

神岐は編集で忙しいので出ません

果たして見つけられるかな?

鬼束達の視点も混ぜたいですね

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