表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お前らだけ超能力者なんてズルい  作者: 圧倒的暇人
第4章 消えたヒロイン
54/145

第54話 鬼束の捜索①

あれから1週間が経った。

3人の男達は課題、期末試験という試練を耐え抜いた。

自由研究などの時間を要する課題を除いて今出来ることは片付けた。

単位だって良以上で進級出来るに相応しい成績を残せた。

これで全員が夏休みに突入したわけだ。

そして、もう1人の男もまた……


動き始める。長くて、短くて、それでもって、


退屈のない『夏休み』が……



3人の目的は同じ。ある男の捜索。

素性の手がかりを掴んだ者、住所を知った者、大まかな構成しか知らない者。


超能力(アビル)超能力者(ホルダー)

超越した力を持った者同士がすれ違い、巡り合い、戦う。


暑さ照りつける季節に、流れるのは、


『雨』か?


『汗』か?


『涙』か?


それとも、『血』か?

 8月3日金曜日


 神原は…


 自室でのんびりしていた。

(これはあれですな。燃え尽き症候群。受験を頑張った人が合格したあとに目標を達成してその後に力が抜けてしまうっていう病気?なのか)

 鬼束市丸、ドクターを探す上での障害だった夏休みの課題を終わらせるためにこの1週間、神原と麦島は高校受験の時よりも集中して取り組んでいた。そして1週間かけて全て終わらせた時、神原は終わらせるという事で満足してしまって、障害がなくなった今日、何も動けずにいた。

(自分は怪物だと思ってたがちゃんと人間してるぅー)

 と言い訳をしてしまうぐらいには気が抜けていた。疲労も蓄積しているのも原因だろう。

 今日も起きてから部屋を出ていない。

 朝ごはんは冷蔵庫に入っているので8月の暑さで腐る事はない。

 という安心から余計に出れなくなっていた。

 冷房では電気代がバカにならないので扇風機の風を受けて何も出来ずにいた。

 何かきっかけが有れば出れるんだが、宅配便でも良い。回覧板でも良い。なんなら緊急の避難訓練でも良い。母親に無理やり起こされて『リビングに来ないと飯抜きにするよ!』とでも言われた方が良かった。母の仕事は朝早いから神原を起こさなかったのだ。夏休みだし入院してたから優しい。以前祥菜に絡んだ面倒くさいおばさんの側面はなくなっている。

 あー、麦島に電話するかなー。

 あいつも燃え尽きてる……わけはないな。

『なっちゃん〜。やるぞ〜』と脳内に麦島の声が再生される。

 来たらそりゃ行くけどさー、駅まで遠いから嫌なんだよなーうちの家。館舟駅までちょっと歩くし、暑いし、暑いし。

 言い訳少年になってる。ダメだー。だるーい。

 鬼束市丸を調べるったって何をする?

 あいつらの出身中学校まで行ったところで教えてもらえるわけでもないしな。アプローチ次第か。馬鹿正直に「居場所教えてー」じゃまず門前払いだ。麦島もやり方を工夫して塗装屋の場所を教えてもらったらしいからな。夏休みの自由研究とでも言って情報を聞き出すかー。


 ピンポーン

 家のインターホンが鳴る。

 おっ、来た来た。

「なっちゃーん〜」

 ドア越しでも麦島と分かる声が聞こえる。

(小学生じゃねーんだからドア開けるまで待っとけよ。どんだけ楽しみなんだよ!)

 と思いながらも部屋を出る口実が生まれた事でようやく外に出る事が出来たことには感謝する。


 ガチャッ

 扉を開ける。

「おはよう」

「おはよう〜。課題終わったよね〜」

「終わ「じゃあ早速探しに行こう〜」最後まで…ってなんか既視感」

 前にも似たようなくだりをした気がする。

「鬼束を探すぞ〜」

「随分とやる気だな。けどよぉ、お前がそこまで張り切る理由は何なんだよ?」

 俺のようなドクターに一矢報いるため、でもないだろうこいつの性格では。純粋な協力にしては少々過剰すぎる気がする。巻き込んでしまったのは申し訳ないがそこまで麦島が関わる必要性があんまり感じられないんだよな。

「んー理由ね〜。興味かな〜。そのドクターって人が何をしたいのかが気になるかな〜。あと俺を巻き込んだ理由が知りたい〜」

「理由って、それはあいつの計画とやらの戦力にするためだろ?」

「そこなんだよなっちゃん〜。何で俺なんだ〜?そもそも〜、なっちゃんの力を見るために鬼束を派遣したのなら、俺はあの時邪魔な存在だったはず〜。なのにあの人は俺がセットでいるときに敢えて会ってきた〜。そこがなんかしっくり来ないんだよね〜」

 確かに、考えてなかった。そうだよな。俺1人でいる時に来れば確実に俺は負けてた。

 …もしかして俺が勝ちを拾えるようにわざと麦島がいる時を狙った?いやいや、まさか。市丸は確実に俺を殺そうとしてた。足を切断したのだって、確実に嬲るためだった。


 …もっと上の思惑か。

 そうか、ドクターか。強い超能力者を探しているってのは、つまり、『俺を強くするため』か。

 そうかそうか、てことはよぉ……


『俺は弱い認定されたってことか!?』

 俺の自己暗示(マイナスコントロール)を強くして奴の計画の戦力にするため。俺1人だと心許ないから親しい麦島を市丸戦のキーマンにして超能力者に仕上げたって流れか。

 随分と舐められてるな。頭来たぞドクターとやら。

「こういうことだろ……」

 と自分の予想を麦島に説明する。


「回りくどいね〜。なら最初から戦うことが前提だったってことか〜。なっちゃんが素直に参加してたらどうしてたんだろうね〜?」

「敵に監視能力がいるんだ。俺の日々の生活は観察済みだから俺がこういうことに乗らない人間だってことも想定してるんだろ。そうなると市丸はつくづく可哀想だ。要は噛ませ犬じゃん」

「けどそれで自己暗示(マイナスコントロール)の可能性も知れたんだから結果オーライじゃない〜。俺も能力者になれたし〜」

「だがそこまで俺に入れ込む理由は何なんだろうな。あの黒い棒で能力者を増やせばいいのに」

「なっちゃんと同じ日に能力者になった2人にも声をかけてたんでしょ〜。能力者になれる適性みたいなのがあるのかな〜」

 適性、能力者になれる素質がある人間が少数しかいないということか。三つ子全員が能力者になれたってことは血統も影響してるんだろうか。俺と麦島、適性があるモノ同士が仲が良いのも何か意味があるんだろうか。

「会って確かめればいいさ。それよりもこれからどうするんだ。探すったって出身中学しかこっちは情報ないぞ」

「ふっふーなっちゃん〜。捜査ってのは地道な作業の繰り返しなんだよ〜」

 妙に麦島のテンションが高い。探偵に憧れでもあるのだろうか?

「聞き込みか〜…、面倒くさいな。けどまぁそれしかないよな。よし、じゃあ行くか。準備するから部屋で待っててくれ」

「分かった〜」

 ずっと玄関で会話してたので日光が照りつけて正直暑かった。朝飯も食べてないし部屋着だから時間が欲しい。麦島を外で待たせるのは悪いし汗かいてるから中で涼んでもらおう。


 ♢♢♢


 神岐義晴はとある準備を進めていた。久しぶりの動画撮影だ。しかし竹満はいない。今回は自宅での撮影だからだ。最後に撮影したのは謝罪風催眠動画だから約1ヶ月は実写を投稿してないのか。配信は定期的に行ってたから視聴者が離れたりはしなかったが、470万人。先週から特に数字に変化はない。解除出来ない催眠はかけてないのでcomcomのチャンネルを解除する人は少なからずいる。今は流入と流出が同値なのだろう。

(この流れでこれを発表って、普通の人から見たら天狗に見えかねないな。だが仕方ない。これが1番手っ取り早いからな)

 神岐は何をしようとしているのか?


 カメラをセットして照明器具の位置を調整する。部屋の電気だけだと演者が綺麗に映らないのだ。上からの光だけでなく横からの光を使うとより綺麗に映る。加工大好きの女性なら必修科目だろう。ここの部屋は窓がないため人光しか照明がない。日光が入ると変に陰りが映るからだ。大学入学に際して新居を探した時、防音もさることながら窓のない部屋にも拘って部屋探しをした。色々良い物件はいくつかあったが最終的には中目黒にあるデザイナーマンションに行き着いた。家賃は15万。動画の収益で簡単に払える値段だ。浪費しないので金がどんどん貯まるのだ。こういうところでお金を使っとかないと勿体無い。

 5年で数千万、野球の動画が5000万再生に届くので1再生0.1円として1ヶ月で500万円か…。今までの投稿した動画の月間再生の収益分も合わせるともうちょい行くか。野球動画の前まではチャンネル登録者30万人程度だったが再生数はあったので収益は同数のユーツーバーよりも稼いでいた。ちなみに大学生に15万の部屋を貸す不動産会社があるわけないだろと思うがそこらへんは俺の能力、認識誘導(ミスリード)でどうにでも出来る。保護者承認欄も簡単にスルー。滞納即退去の条件と敷金をたんまり積んだおかげで信用を得て借りることが出来た。能力で全部済ませることも可能だがそうなると第三者が見た時に不正契約を疑われるから条件付きや敷金などの必要手続きはちゃんと行った。

 良い場所を借りれた。今まで住んでたマンションよりも快適だ。だが少し広過ぎたかなとは感じる。事務所や楽器使用も想定して設計されているので一つ一つの部屋が大きいのだ。3LDKは張り切り過ぎたか。払えるからいいやーで決めたからな。竹満と暮らしても良かったがあいつが親が既に用意してくれたって言ってたから流れたし。


 バッテリーは…よし。じゃあ撮るかな。


「はい、comcomです。

 今回は、告知動画です。

 安心しろ。告知詐欺みたいなしょーもない真似はしねーよ。ちゃんと告知だ告知。

 先月の動画でチャンネル登録者が440万人も増えて、数字で見れば日本で5番目のユーツーバーになったわけだけども。

 でも正直こう思ってる人いない?

『どうせ野球だけの一発屋だろ?』って。

 いやー、かなりの人思ってるでしょー。まぁあれから動画上げずに配信ばっかりだし、ビビって上げられなくなったのかーってさ。

 まあプレッシャーは感じたけどねw

 だから、いま一度comcomが何者なのかを新規の皆さんに伝えるとともに、俺自身もcomcomというキャラクターを振り返る機会にしようと思って!


 今回、『オフ会』を開催することにしましたーーーーーー」

 編集でSEで歓声や拍手の音を鳴らしとこうっと既に先を見通した余白を設ける。

「開催日時は8/18の土曜日、2週間後でいきなりなのは申し訳ない。場所はーーー、まだ決まってないんだけどさ、どっか貸し切れる場所にするわ。そこはSNSで詳細は言うね。

 参加方法はー、概要欄に申し込みフォームを付けるからそこから申し込んでね。その際にcomcomに聞きたいことを書いてくれればオフ会当日に答えられるものは答えたいと思います。

 参加人数には限りがあるから人数を超えた時は抽選になるからそこはごめん。

 あんまり多いとキャパオーバーしちゃうから10人くらいかな。スタッフとか雇いたいけど今回は今後に備えた予行練習ということで。スタッフ雇って5人しか来なかったとか超恥ずかしいからね。それじゃあみんなの応募待ってまーす。じゃあねーーー」


 ピッとカメラの録画を止める。照明のスイッチを切って機材を片付ける。無言でだ。

(端から見てるとスイッチのオンオフが恐ろしいんだろうな。アイドルとかステージでは愛嬌振りまくけど楽屋では『あいつらブヒブヒ言いやがって気持ち悪い。金だけ落としとけばいいんだよテメェらはよ!』とか思ってるしな。かっんぜんな偏見だな。けど強ちあり得ないと言えないのが闇なところだな。この前あった声優の滝波夏帆もあの時は元気いっぱいな女の子だったけど裏ではJKビジネスとかやってるかもしれん。

 ……嫌だな、嫌な想像をしてしまった。彼女が所属してる(いろどり)プロダクションはそういったブラックな側面がない超絶クリーンな事務所って前にテレビで言ってたからそこは大丈夫だろうな。

 さーて、編集編集っと。短いし過度な演出もいらないからそこまで時間はかからないだろうな。募集フォームの作成とテロップが大変だな。さっさと取り組むか)

 神岐は機材を片付けると録画データが入ったSDカードをパソコンに繋げる。

(朝の9時か…、18時くらいには投稿するかな。あっ!そうだ思い出した)

 神岐は何かを思い出すと手元に置いてあったスマホに手を伸ばした。


「あれから鬼束丹愛と神原の情報は手に入ったか?」

 神岐が親衛隊とのグループにメッセージを送る。


 comcom親衛隊

 comcomの活動初期にcomcomに助けられた人達が神岐に恩返しするために、裏でcomcomを支えるために集まった人達だ。20数名ながら様々な職種の人間がおり、comcomのサポートとcomcomの邪魔をする存在を排除するのが彼らの仕事だ。視聴者には都市伝説上の存在とされているが実在している組織である。

『神原については名字しか情報がないのでまだ…、しかし鬼束についてはこちらを』

 親衛隊の1人がURLを貼り付ける。

 神岐がリンクを開くとそこには3on3バスケの優勝記事が表示されていた。

「関東チャンピオン。三つ子の兄弟の驚異の連携…か。鬼束市丸、鬼束実録。丹愛が言ってた通りの名前だ。よく見つけてくれた。ありがとう」

『ありがとうございます!』

 親衛隊の1人、消防士の(おおとり)政枇(せいび)の情報によってあの時の丹愛の情報に偽りがないことが証明された。中学校は……、文京区にあるのか…。マイナンバーの住所も文京区だったから一致するな。明日にでも住所の家に行ってみるか…。

 神岐はパソコンへと向かう。期限があるので少しの時間も惜しい。その後神岐の部屋からはカタカタというキーボードを叩く音しか聞こえなかった。


 ♢♢♢


「ふぁーーー…。久しぶりに良く寝た気がする」

 この1週間はずっと課題ばっかりやってたからな。睡眠時間も4時間ぐらいだったし、徹夜出来たら良かったけど遅くまで起きるのって苦手なんだよなぁ。


 神坂雪兎(ふゆと)もまた夏休みの課題を終わらせて今日から鬼束実録、鬼束零について探そうとしていた。

(あいつらをこれ以上巻き込みたくはないな。強いのは理解してる。能力抜きなら臼木は東京最強だと思うし月城も臼木の影に隠れてるが相当の力を持っている。だがそれはあくまで普通の人間の中での話だ。超越した力には太刀打ち出来ない。月城は簡単にやられたし、臼木だって直接攻撃はしなかった。あの勇敢な構成員現俺達の小間使いは称賛に値するがあれはパーカーを使って隙があったからたまたま上手く行ったようなもんだ。ドクターとやらにも試されてたみたいだしな。どこかで手順が一つでも狂っていれば俺は今日まで生きていられなかっただろうな)


 ベッドから下りて立ち上がる。

 長い時間寝たおかげで寝起きのダルさはあるが気分は爽快だった。

 カーテンを開けて太陽の光を体で浴びる。太陽の光が当たるだけで空気が爽快になるのは何でだろうか?何も変わってないのにな、とタンスから着替えを出しながら考える。

(タンスもクローゼットもいっぱいだなー)

 タンスは姉と買いに行った服で敷き詰められていた。羽織るものはクローゼットに入っている。だが2年の買い物のせいかこれ以上入れられるスペースがなくなっていた。

(小5、小6に買ったのはもう処分するかな。俺も成長期で着られなくなったし、姉ちゃんの友達に弟がいるか聞いてみるか。それともリサイクルショップに売るかな。古着を見てみるのも悪くないかもしれんな)

 外行きの服装に着替える神坂。

 家からは生活音が聞こえない。

 父親はいつも通り仕事だからいないとして、母親と姉はいないのか?

 1階のリビングへと向かう。

 誰もいなかった。聖蓮高校は長期休みが少ない。中期休みと言っていいぐらいだ。たったの10日なのか10日もあると考えるかは個人の裁量だろう。

 姉の神坂雪華は今日が1学期の終業式だったが神坂は勉強漬けで夕食も自室で取っていたので外の情報がほとんど入っていなかった。

 母親はいないということはパートなのだろう。その証拠にダイニングテーブルの上に朝ご飯と書かれた紙とその隣にラップのかかったご飯とポテトサラダが置いてあった。

 ネグレクトではあるが食事だけは欠かさず出される。親としての最低限の行いと見える。

 神坂はご飯を電子レンジで温め直して冷蔵庫から麦茶を取り出した。

 母親の料理は美味しい。姉もいつも美味い美味い言って食べてる。異国の地で結婚するから花嫁修行を頑張ったと姉と話しているのを聞いたことがある。姉も『私もいずれやるのかなー』と言っていたな。結婚なんて中学生の俺には遠い存在だが法律上もうすぐ結婚が出来る姉には近いもののようだ。


 食事を終え、歯磨きと洗顔をして、外へ出る準備は整った。

 朝の9時55分

(さて、これからやることは……、鬼束実録の捜索。手掛かりは4人兄弟とドクターとテレポーターの6人構成ということぐらいだ。年齢も住所も分かっていない。とりあえず前回戦った空き地に痕跡がないか探すかな)

 戦った翌日に探そうと思ったが玉梓組の連中がすぐそばにいたせいで確認が出来なかったのだ。

 公共施設のそばに反社事務所があるってよくよく考えたらヤバいよなぁーと考えながら靴を履いて家の扉を開けた。



「なんかなー、なんだろうなー。なーんかつい最近に同じシチュエーションに陥った気がするわー。

 んで、何でここにいんだよお前ら」

 ドアを開けると、そこには神坂の舎弟兼友人の月城泰二と臼木涼祢が立っていた。

 前回との違いと言えば、目だ。

 目がギラギラしている。元の見た目と相まって怖さが強調されている。玉梓組の中に放り込んでも違和感なく溶け込める。というか中学生には見えない。血走り過ぎだろお前ら、本当に何があったんだ?

「あー、おはようふゆー」

「お前はすぐにおやすみなさいした方が良さそうだな。どうしたんだよ。……まさか!あいつらが襲ってきたのか!?」

 油断した。俺の周りから俺に向かって精神攻撃が来ることを想定してなかった。

 確かに俺にこいつらを切り捨てるなんてことは出来ない。けどここにいるってことは無事だったのか。

「違う。ずっと夏休みの課題をやってたんだ。今日の朝にようやく終わったんだ」

「それで、ふゆも終わってくる頃だろうからふゆのやることに協力しようかなって思ってさ」

 こいつらは、10日前のことを忘れてるのか?

「何故そこまでして俺に力を貸す?自己責任とは言ったが無理はしなくていいんだぞ」

 そう言うと、2人は一歩前に進んで神坂との距離を詰める。パーソナルスペースにも入りそうだったのでほんの半歩だが後ろに退いてしまった。

「俺達は幌谷の白ウサギの友達であり番人(ガーディアン)だ。ここで力を貸さないのは友達としても番人(ガーディアン)としてもあってはならない。俺はその決断に胸を張れない」

「ふゆは自分だけの問題と思ってるかもだけど、雪華さんにも危害が加えられかねない状態な以上はふゆだけでどうにかできるもんじゃない。しかも敵は組織なんだ。comcomやもう1人の超能力者と力を合わせたとしても、他がすげぇ能力だったとしても倍の数の超能力者に勝てる保証はない。なら少しでも数が多い方がいいはずだ。前のようなヘマはしない。りょうと物見がやったように、突破口を開くぐらいの活躍はしてみせるつもりだ」

 2人は、決して、同情やなあなあで力を貸すと言っているわけではない。自分の意思で、流れではなく自分の足で俺のところまで来た。

 俺はこれを蔑ろにしていいのか。ダメだ。違う。そうではない。やっぱり巻き込んじゃだめだ。死ぬかもしれないんだ。

 どうにかして諦めてもらおう。


「何が起こるか分からないから宿題は先に終わらせとけ………って、

 ちっ、そう言うことか。俺が言いそうなことを先回りしやがって」

 こいつらが死ぬ気で頑張ったのはそういうことか。一本取られたな。俺があの時言った10日ってのを聞いてそれまでに終わらせたんだろうな。けど俺でも昨日終わったのに…、こいつらこの10日間ちゃんと寝てたのか?

「答え丸写しとかだったらぶん殴るぞ」

「大丈夫。俺ら枝野の校舎で先生とかに聞きながら解いてたから」

「最初はびっくりしてたけど俺らの本気度合いを見て親身にしてくれたよ」

 移動が怠かったから職員室の中の応接室で勉強したよなーと2人で今日の朝までのことを振り返る。

 教師の力を借りたならセーフか。これで成績の方も上がるといいな。

 しゃーない。ここで問答をしてもしょうがないな。俺も月城達を帰らせる口実がないからな。

「分かった。だがやることなんて地味ーなのだぞ。聞き込みとかの遠回り作業だし戦いなんて鬼束達を見つけるまでほとんどないと思うけど平気なのか?」

「平気だ」「平気だよ」

 2人の言葉を聞いて少し安心する。

「分かった。じゃあこれから図書館まで行くぞ。鬼束の痕跡が残ってないか確認する。疲れてるだろうがペースを落としたりしないからな。ついて来いよ」

 外に出る準備が元々出来ていた神坂はそのまま家を出る。

 ここから図書館まではそう遠くない。だが歩きとなるとそれなりの距離がある。電車も通ってない場所だ。

(やっぱ自転車買った方がいいのかなー)と思いながら空き地がある図書館を目指して歩き出した。

神原奈津緒

能力名:自己暗示(マイナスコントロール)

能力詳細:自身に都合の悪い暗示をかける


神岐義晴

能力名:認識誘導(ミスリード)

能力詳細:条件を満たした相手を催眠状態にする


神坂雪兎(ふゆと)

能力名:強制平等

能力詳細:相手の力を自分と同等にする


麦島迅疾(しゅんと)

能力名:不明

能力詳細:不明


月城泰二

能力なし


臼木涼祢(りょうねい)

能力なし


ようやく動き出しましたね

ここから鬼束兄弟をどうやって探していくのか見ものですね。ドクターの安否も気になるねぇ

さあさあ群像劇の時間だよ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ