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お前らだけ超能力者なんてズルい  作者: 圧倒的暇人
第4章 消えたヒロイン
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第51話 休みのない夏休み

 2018年7月27日。

 川崎市にあるとある病院の一室。そこには神原奈津緒と彼を診断した担当医がいた。

「本当に大丈夫なのかい?もう2、3日安静にしててもいいと思うんだけど」

 搬送された神原は血塗れで、なのに傷は出血ほどではないという不可解な状態であった。しかし内出血や傷は点在していて包帯でグルグル巻きにしなければならない容態であったのだ。実際に目を覚ますまで1日半かかっていた。なのに翌日にはもう退院したいと言われてしまったからこうして心配しているのだ。

「いえ、大丈夫です。基本家で宿題をやるぐらいなので」

 さっさと退院したい神原は早期退院の口実を述べる。

「そうか…、本人の希望には沿うようにはしてるけど、何かあったらすぐに病院に来るようにね」

「分かりました。ありがとうございます。それでは失礼します」

 神原は頭を下げて診察室を出ていく。


「なっちゃーん〜」

 神原を呼ぶ声。この間延びしたアホみたいな呼び方をする奴は1人しかいない。

「麦島、ここ病院。もうちょい声量を落とせ」

 ごめんごめん〜と言う男の名前は麦島迅疾(しゅんと)。神原のクラスメイトであり先日の一件でドクターに超能力者にされた男である。神原ほどの怪我はしてないため昨日の内に退院出来たが神原と一緒に退院したいという本人の希望に沿って今日となった。

「なっちゃんのお母さんが、駐車料金が高いから近くのコンビニまで来てくれだってさ〜」

「あぁ、分かった。伝言のために残ってもらって悪かったな。お前の親御さんは?」

「えっとね〜。来ないってさ」

「何でだよ?昨日お父さんが見舞いに来たんだろ?」

「昨日は仕事を抜け出してきたらしいけど流石に連続は難しかったっぽい〜。お母さんは『こんな短期間で2回も病院なんかに行きたくない』って拒否られちゃった〜」

 そういえば麦島のお母さんは最近骨折したって言ってたな。病院に行きたくないってことは随分不便な思いをしたんだろうな。

「だからなっちゃんのお母さんのご厚意で乗せてくれることになったんだ〜」

 母さん、俺の友人が少ないからって大事にしすぎじゃないかい?麦島と祥菜と、あとまぁ鯖東とか?か。うん、片手で足りるね。人間関係ミニマリズムとでも言ってみようか。

「おう、そうか。じゃあ行こうぜ。荷物持ってくれないか?肩も怪我してるから傷口を圧迫したくないんだ」

「いいよ〜」

 神原が課題等が詰まったリュックを麦島に渡すと2人で母親が待機しているコンビニを目指して歩き出した。


「あれからどうだった?何か変化はなかったか?」

 神原は超能力者になった麦島の容体を心配する。

「んん〜、何もかな〜。超能力も全然出来ないし〜。なっちゃんの時はどうやって超能力を理解したの〜?」

「10年も前でそん時幼稚園児だったからあやふやなんだよな。理解したのだってチョコレートを食べた時だったし」

「チョコレート〜?」

「俺の能力は昨日説明しただろ?自己暗示(マイナスコントロール)、自分に都合の悪い暗示をかける能力。幼稚園の昼飯の時間にデザートでチョコが出たんだよ。チロルチョコみたいなちっちゃいのな。けど俺はその当時チョコレートって食べ物を知らなくてさ。ほら、見た目茶色で何も知らなかったらおいしくなさそうじゃん?だから食べることにすげえ抵抗があったんだよ。でも残すのも用意してくれた先生に悪いし他人にあげるって選択肢は思い浮かばなかったから嫌々だったけど口に入れたんだよ。

 そしたら劇物でも食べたみたいな衝撃が来ちゃってさ、昼飯に食べたもの全部戻しちゃったんだよね」

「ビターチョコで苦かったから思わず吐いちゃったってこと〜?」

「いや。たぶん、チョコを食べたくないって思いが能力を発動させて『チョコを食べてはいけない』って体に刷り込ませてんだろうな。だから食べちゃいけないものを食べたから体が全力で拒否したってわけ。それ以来チョコレートが食べられなくなってさ。今はもう解除してるから吐いたりはしないけど今でもチョコは好きではないかな。出されたら仕方なく食べるけど自分から進んで食べたくはないな」

「けどそれだけじゃ能力を理解するのは難しくないかな〜?」

「俺もすぐに気付いたわけじゃないさ。チョコを食べられなくなって、そっからも自分が嫌だなー、食べたくない・やりたくないってことがどんどん出来なくなって行って、そこでようやく自分はそういう力を持ってるんだって分かったんだよ。体全体で否定するってな。風呂に入れなくなったりコーラしか飲めなくなったりとか酷い経験をしたよ」

「よくそこから超能力に行き着いたね。幼稚園児ならその答えに辿り着けないと思うけどね〜」

「なんでなんだろうな?ドクターに何かされたのは覚えてたからそいつの仕業だって子供だからこそ直結して思ったんだろうかね。なんかすっと答えが出たんだよなぁ。今思い返せば不思議だな。1週間で能力の存在に気付けたのも偶然にしては早すぎるよなー」

(子供の単調な考えとしても当時の自分は超能力なんて知らなかったと思うんだけどな。それに近いアニメを見てたっけな?)


「そっから自分をこんなにしたドクターを恨み始めたんだったな。ホントもっとマシな能力が良かったよ。お前はまともな能力だといいな。波紋が使えるとかいいかもな」

「えぇ〜、便利だろうけどもっと派手なのがいいよ。俺太ってるから高速移動とか空を飛べるとかがいいな〜」

「ドクター曰く、本人の願望や環境が左右されることもあるらしいからずっと願ってればいいんじゃないか?ゲームでも空を飛ぶことに憧れたモンスターが進化して翼が生えて飛べるようになったみたいな話もあるからさ」

(もっと早くそのことを知りたかったよ。そしたら読心能力とか手に入れられたかもしれないのによ。あー、違うぞ。いやらしいことに使いたいわけじゃないからな。相手の考えが読めれば人生勝ちゲーってことだからな!イエスノーだけで心が読めるでもいいな)

「うーん、欲しい能力か〜」


 そう言われて麦島は一つのことを思い至った。しかしそれを隣にいる神原に伝えることはなかった。やめておけと言われるに決まってると思ったからだ。根底にある神原への感謝を本人を目の前にして言えるほどの度胸はなかった。神原自身も覚えていないことだからだ。


 神原は4月の半ばから突如麦島に粘着されて、そこから友好関係を築いた、と思っている。

 しかしそれよりも前に、とある出来事が起こっていた。

 そして神原の自己暗示の説明を聞いて、より一層神原への感謝の気持ちが強くなった。

 麦島と神原の出会いについてはどこかで語るとしよう…


『パッて浮かばないな〜』と言ってその場は誤魔化す。神原も『そうか…』と追及する様子はない。そしてコンビニに到着した。神原(みのり)も神原達に気付いたようでファーーンとクラクションで位置を知らせる。

「んじゃ、帰るか」

「うん〜」

 こうして神原も麦島は3日ぶりに家に帰るのであった。


 ♢♢♢


「何でここにいるんだよお前」

 神原がそう言うのも無理はない。

「何でってアンタ、せっかく友達が来てるんだからちゃんともてなしなさいよ!」

 そう言って神原を叱るのは神原奈津緒の母親である神原実。

 あれから麦島の家まで麦島を車で送ったのだが、実が余計な気を利かせて『どうせならウチで一緒に宿題片付けちゃいなさいよ』と言われ神原宅に行くことになった。

『気を回さなくていい』と奈津緒は言ったが、『どうせその体じゃどこにも行けないんだし早めに終わらせといて損はないでしょ?』とドドドドド正論を言われてしまったのでこうして奈津緒の部屋でテキストを開いている。

「何でこうなるんかねぇ?」

「まあまあ〜、早く終わったらその分色々やろうぜ〜!」

「じゃあアンタら、ちゃんと取り組みなさいよ。昼ごはんは作り置きの野菜炒めがあるからご飯を炊いて食べなさい。私はこれから出かけるから」

「あれ、休みって言ってなかったか?」

「昼からのシフトの人が熱中症で倒れたから穴埋めで私が入るの」

 この時期は熱中症が多いからな。今年の梅雨は雨がほとんど降らなかったからな。これは水不足とかいう社会問題が起こるかもな。

「何か買っておいて欲しいものある?」

 うーん、特に浮かばないな。

「特には。久しぶりの夕ご飯に期待してるよ」

「あら言うじゃないの。麦島君、どう?夕飯食べてく?」

「ありがたいお誘いですが、僕も自分の家族とご飯を食べたいので〜。またの機会でお願いします〜」

「分かったわ、腕によりをかけるわよー。じゃ、奈津緒、もし外出るのだとしたら戸締りと乾いてる分の洗濯物を取り込んどいてちょうだい」

「はーい」

 頼んだわよ、と言い実はパートへと向かった。


「んじゃまぁ、人を出払って色々喋りたいことはあるが、とりあえずは課題を片付けよう。何かあって出来ませんでしたなんてことにはなりたくないからな」

「そうだね〜。あっ、漢文辞典持ってる〜?家に置いたまんまだ〜」

「あぁ、じゃあ麦島は国語からやっといて。俺は英語から。使う教材が被ると面倒いからな」

 答えを写し合うという選択肢が存在していない時点で2人の勉強に対しての意欲の高さが窺える。まだ高校1年生なので進路のことは先だが進路希望調査では神原は神奈川県の国立大学である横浜理科大学、麦島は東京都のトップクラスの偏差値を誇る私立大学の京海大学を第一志望に書いた。あくまでその場で書いた程度なので深い志望理由や成績判定の要素などは全くない。11月に全国統一模試があるのでそこでどのくらいの偏差値があるかを確認出来る。

 ちなみに神原の恋人である伊武(いぶ)祥菜(さちな)は神原の進路用紙を盗み見たので見事被せることが出来た。しかし彼氏が神奈川県最高峰の大学を志望していることを知って一緒の大学に行けるように頑張らなきゃと心の中で宣言していたのを神原は知らない。


 こうして2人は黙々と課題に取り組み始めた。お喋り雑談一切なしの完全無言学習だ。流石はクラス1.2位を独占しているだけある。神原は国語と英語が苦手なので麦島に質問すればいいのではと思うが人に聞いて教わるというのを神原があまり好いていないのだ。分からないところが分からないではないが聞いてしまうと弱みを見せてしまうと無意識のうちに思ってしまい尋ねることが出来ないのだ。だから辞書やネットを使って1人の力で調べて学ぶ。ネットも人頼みだと思うかもしれないがあくまでもそこにあるのは情報であり人ではない。神原はあくまで人に隙を見せたくないだけなのだ。登場人物が1人ならなんだってやる。


 2時間後

 ピッ‥ピッー

 炊飯器がご飯が炊きあがったことを知らせる。

「おっ、炊けたみたいだな。タイマーにせずに普通に炊いても良かったな」

 気付けばもう12時半だ。朝は病院で軽く食べただけなのでお腹がペコペコだ。

 神原が自室からキッチンへと向かう。

「お腹空いた〜。俺もなんか手伝うよ〜」

「じゃあ冷蔵庫に野菜炒めが入ってると思うからそれを出して皿に盛り付けてくれ。皿は真ん中の食器棚に入ってるから」

「オッケー」

 2人は協力して料理を盛り付けて久しぶりの濃い味の昼飯にありつくのであった。


 ♢♢♢


「美味しい〜」

「なんか今日の野菜炒めは格別に美味いな」

「3日ぶりのマトモなご飯だからね〜」

 美味い、野菜炒めは俺も好きだし母さんも野菜が沢山取れるからと食卓に並ぶ機会が多く食べ慣れた味のはずだ。なのに人気店の料理を食べているように感じるのはやはり久しぶりというのが大きいのだろう。

「あれだな。疲れた時に飲むコーラがクソ美味いってやつだ」

「あぁ〜、分かる気がする〜。銭湯上がりのコーヒー牛乳みたいな感じでしょ〜」

「それは少し違うんじゃないか?」

 あれは文化、カルチャーだ。あれも込みの銭湯だろ。ちなみにコーヒー牛乳は飲んだことがない。カフェオレも飲まない。コーヒーはブラックが美味しいのであり、何かを混ぜると美味しくない気がする。


「じゃあ、そろそろ話そうか〜」

 お互いが目の前の皿を平らげてから麦島が話を切り出す。課題に取り組むというもっともらしい理由を述べたが麦島的に重要性の比重はこちらであろう。

「まずやるのはおにつかいちまるの捜索だね〜」

「あぁ、漢字が分かればスムーズだったんだがな。苗字は鬼塚だろうしいちまるも漢数字の一か市場の市のどっちかだろうな。スマホでとりあえず調べてみるか」

 神原はスマホを取り出して『鬼塚一丸』と漢字変換して検索をかける。


 結果は某教師だったり某死神だったりで単語ごとに検索除外がされていて両方が入った検索結果が出なかった。

「ダメだな。バラバラに表示されるな」

「あぁ、それね〜。それはね〜、詳細検索を使えば上手く出来るよ〜」

「詳細検索?そんなのがあんのか?」

「見え辛いところにあるけど出来るよ〜。ページの更新日や日本のサイトだけとかより細かい条件で調べられるんだ〜。その中に全一致検索ってのがあったはず〜。全ての単語を含んだサイトだけ表示するっての〜」

 へぇ、知らなかった。今までただ普通に検索してトップに上がったから順々にって感じで観てたからな。それがあればより精度を高く調べられそうだな。

 神原は詳細検索のところから全ての単語を含むというカテゴリーに鬼塚一丸とフリック入力して検索をかけた。



「出た……。3on3バスケの関東チャンピオンだ」

 それは4年前の記事だ。3人バスケの関東大会で鬼束兄弟が三つ子の力でチャンピオンに輝いたという記事だ。部活動ではないために中体連には種目が存在しないらしい。しかも全国優勝というわけじゃないから記憶にないのも仕方ないか。

 出たサイトを麦島に見せる、がスマホしかも机が少し大きく麦島が見えるそばまでスマホを持っていけないのでURLを麦島のLINEに送った。

「三つ子か〜。名前も鬼束市丸なのか〜。三つ子だったら連携とか凄そうだもんね〜」

「他は鬼束丹愛に鬼束実録か…。この2人のどっちかが監視能力ってことか」

「けど市丸ってことは三つ子の1人目でしょ〜?その人が兄貴って言う人だからまた別にいるんじゃないの〜?」

 確かに、漢字は漢数字を使ってないけど読みがいち、に、さんと数字が入ってるからな。三つ子の上にさらに兄がいるのか、兄貴と慕い尊敬する程の人間がいるか、だな。あの野郎のことはドクターって言ってたからドクターが監視能力者ではないな。

「だとしたら今この瞬間も見られてるのか」

 音は聞こえないと予想して、話す分にはセーフか?筆記は見れてしまうからアウトだな。いや、もしもの可能性もある。

「麦島、お前は自分の能力に気付いても大っぴらに使うなよ。俺のはドクターに見られてたから割れてるとして、お前はまだなんだから。相手の知らないカードを持ってるのは事を有利に運べるかもしれん。あいつらはお前の能力を見極めるために必ず接触してくる。だからもし使うなら夜とか暗いところにしろ」

「分かった〜」

 麦島経由でドクターを叩けるかもしれない。なんなら千里眼能力者の所在もだ。だが少なくても敵は5人。こっちは2人。不利だな。一気に攻められたら太刀打ち出来ない。俺の能力は不便だ。肉弾戦で耐え凌げるようにならないとな。

 そういえば気になることがあったな。気のせいかもしれないが聞いてみるか。


「なあ、1週間で腹筋が割れるってことあるのか?」

「腹筋〜?俺に筋トレのこと聞く〜?いずれやるけどさ〜」

「いやー、なに。俺最近筋トレしてるんだけどさ。なーんかその…、速いんだよ。成長っての?」

「成長〜。背が伸びたの〜?」

「やー、…、それもあるのかもな。測ってないから分からんけどそこじゃなく。筋肉が付くのが速いと思うんだ。身体能力が上がりやすくなってるって言えばいいのかな」

 神原は自分が鬼束との戦闘で30分近く動きっぱなしだったことや大量出血でも気絶することなく体を耐えきったことを麦島に説明する。

「それで俺ちょっと予想を立ててみたんだけどさ。脳の活性化で超能力が目覚めるんだろ。だったら肉体の方にも何かしらの影響があると思うんだよ。人間って脳からの電気信号で動いてるわけなんだから、司令塔が優秀になれば衛兵も優秀になるんじゃないかって思うんだよな」

 茅愛や松草の攻撃を避けた身のこなし棺のボールに痛みを受け流してダメージを軽減、そして自身の意思も絡んではいるが目を覚まして1日で退院出来たことを考えると決してない話ではない。

「それはあるかもね〜。じゃあ俺も動けるようになるのかな〜?」

「活性化によって代謝が上がって痩せやすくやるかもな。俺も筋肉がつきやすくなるからありがたいな」

「ホントに〜、嬉しいな〜」

 麦島はニコニコしながら野菜炒めを頬張る。

(となると俺ら以外の超能力者もそうなってる可能性があるのか。俺は体全体だったがもしかしたら不便な能力に対する救済措置なのかもしれない。だから優秀な能力を持ってる奴は一部分だけ、例えば動体視力とか反射神経とかかな。でもドクター側がそうなるのは嫌だな。これは俺と麦島と、あとは残りの2人ぐらいでいいよ。みんなが能力とは別で強くなったら俺のアドバンテージがなくなるしな)

「じゃあ課題を全部片付けたらトレーニングと鬼束の捜索だな」

「うん〜。でもこの量どのくらいで終わるかな〜?」

 館舟高校は進学校であるため課題の量が馬鹿みたいに多い。さらに授業の進むスピードも速いため付いて行けずにドロップアウトしてしまう生徒も少なくない。

「1日8時間を10日ぐらいか。序盤で片付ければ問題はないか。にしても夏休みが8月19日までって中々酷いよなー。31日まで休ませてほしいよな」

「ホントだよね〜。何も体育祭を9月の序盤にしなくてもいいのね〜。伝統だからって言うけどさ〜」

「意味分からんところで伝統を引き継ぐからな。昔のことって大事だけどそれに囚われてると新しい可能性を見失うって教師達は気付かんのかね」

「OBや理事長の意向が強く働いてるって話だよ〜。スポーツ推薦もそれの影響だとか」

 はぁ、テッペンにいる権力者がアレだと全部がアレになるんだな。嫌な仕組みだ。


「飯も食ったしそろそろ再開するか」

「うん〜、けど眠くなってきちゃった〜」

「飯食ったら消化のために胃に血が集まって頭の血液が減少するから眠くなるって聞いたことあるな。そういえばお前午後の授業よく寝てるよな」

「先生は選んでるけどね〜。鋼音先生の時は寝ないようにしてる〜。前のなっちゃんみたいにトイレ掃除したくないからね〜」

「あれだよな、成績優秀者はある程度のことは優遇してほしいよな。モチベーションにもつながるしよ」

 そうだね〜とポワポワながらに麦島が答える。

 この様子だと途中で寝そうだな。食後の気分転換が必要だなこりゃ。

「おい、眠気覚ましにゲームすんぞ!」

「えぇ!勉強するんじゃないの〜?」

「お前が100%寝ないと俺の目を見て言えるならそれでもいいんだけどな」

「よしっ、ゲームだゲーム~!また縛りでやろうぜ~。次は能力なしね~」

 前回の勝負のことを言ってるのだろう。自己暗示(マイナスコントロール)でBボタンの存在を抹消したおかげでうっかり防止フリーズすることなく麦島をボコボコに出来た先月の出来事だ。

「お前も超能力使うなよ」

「俺はそもそも使えないっつーの〜!!」


 こうして2人はゲームに興じ、1時間ほどプレイした後に課題に取り組み始めた。

 そして課題は10日ではなく1週間で終わらせた。

 遊びにも行かず外にも出ず、ひたすらに宿題に打ち込み続けた。

 退院のメッセージをくれた恋人である伊武祥菜とも「おう」という軽いメッセージしか送らなかった。

 それで祥菜を怒らせてしまうのだが…、神原からすれば夏休みにやることが決まった以上、失礼な言い方にはなるがそれ以外に時間を割きたくなかった。

 それでもしっかりと週末にデートの予定を立てるあたり恋人には弱いと見える。

神原奈津緒

能力名:自己暗示(マイナスコントロール)

能力詳細:自身に都合の悪い暗示をかける


麦島迅疾(しゅんと)

能力名:不明

能力詳細:不明




第4章の始まりじゃーーーー

今までは主人公ごとにシーンを分けてましたけどこの章は時系列ごとに書くことにします

なので今回で言えば7月27日の神原→神岐→神坂という風に一つの日をこの順に投稿していきます

なので次は7月27日の神岐になります

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