第44話 超能力者来襲③
キーンコーンカーンコーン
「それじゃあみんな。今日で1学期は終わりだ。プリントにも書いてあることをしっかり守って夏休みを過ごしてくれ。宿題は最後にまとめてやるんじゃなくて毎日コツコツ進めていくんだぞ!」
「「「はーい。先生、さようならー」」」
濃い週末を送ってから約3週間、今日は7月24日、幌谷中学校の終業式の日だ。明日から、正確には今日の午後からも夏休みだ。
周りは早速どこで遊ぶかについてワッキャワッキャしている。俺はと言えば、予定がないこともない。
ねえちゃんの事務所に行ったりあいつらとも何かしら遊んだりするだろうし、兄ちゃんが寮から帰省するらしいから食事に行く約束もしているしそれなりに充実はしている。体術の訓練もどこかで身に付けなきゃいけないからむしろやることが多いかもしれないな。
「ねぇねぇ、雪兎君」
「ん?どうした成瀬?」
話しかけてきたのは同級生の成瀬舞、俺のクラスの学級委員長を務めている。俺のファンクラブの人から唯一近くで接していいという権限を持つ女の子である。ホント自分で『俺のファンクラブ』って言うのはこっぱずかしいな。
「あのさ、夏休みって空いてる日あるかな」
「そりゃあ40日も休みがあるんだ。空いてる日ぐらいあるよ」
「そうなんだ。もしよければさ、一緒に出かけない?」
「えっ?いや、それはいいが、その、あのグループの連中に何か言われないか?」
いくら近くにいてもいいと言っても学校以外で会うのは相当近しい関係性を表している。一緒にって言い方から2人きりであることは容易に想像できる。俺がファンクラブなんぞに気を使うなんてするわけないが成瀬に白羽の矢が立つのは何としても避けたい。女に飢えてるわけではないが俺に話しかけれるのは成瀬ぐらいだから成瀬に何かあると俺は異性との交流が姉ちゃんぐらいになっちまうからな。
「ファンクラブでしょ。バレたら処されちゃうよ」
「いや、処されるのは俺じゃなくて成瀬だろ何他人事みたいに言ってんの」
「分かってる。だから放課後に誘ってるんじゃん。他の時間だと周りの目があるし、それに雪兎君とSNSで交流するの禁止されてるからこのタイミングしかなかったんだよ」
神坂は学生らしくSNSをやっている。LINEだけではあるが。勿論クラスのグループLINEにも入っている。が、友達は少ない。これもファンクラブの決まりらしく個人で関わりを持ってはいけない。男は問題ないが問題児の神坂と関わりを持とうとする者は少ない。お近づきになろうとする輩もいたが臼木や月城の存在が明るみになってからはその動きすらもなくなった。幌谷中で神坂の連絡先を交換しているのは同じクラスの安藤と生徒指導の根井、そして何故か幌谷中の現生徒会長ぐらいだ。
安藤は適度な距離感で接してくるから話していて気が楽だ。ビビることもないけど言うことは言うから安藤の存在は成瀬同様に大事なのである。
幌谷以外だと舎弟2人に姉、そして姉の友達の杉森奈々、名彫のにいちゃんくらいだな。俺ってもしかして寂しい奴?自らが望んだのも招いたのもあるから俺は被害者だとも言えないな。
「別にSNSコソコソやってたってバレないだろ。まさか検閲でもされてんのかよ」
半分冗談で行ってみたのだが。
「……みたいなのは」
「マジかよ」
束縛じゃんそれ。
「まず雪兎君のプロフィール画面に飛ぶでしょ。友達追加してたらトークと通話が表示されるけど友達追加してないと追加、通報、ブロックの画面が出るから雪兎君のプロフィール画面をスクショして送らないといけないの。勿論その瞬間に撮ってるって分かるようにね」
誘拐の映像に日付が載った新聞を挿し込むことで過去の映像と思わせないってやつか。俺徹底されすぎじゃね?俺の意思入ってないじゃん!
「…ファンクラブって応援するためにあるんじゃねーのか。ジョニーズや48グループみたいにその人の情報が載ってたり特典が貰えたりするもんだろ。なんか違くないか?」
「うーん、自分に自信がないんじゃないの?」
「自信?どういう意味だよ」
「雪兎君、カッコいい大好き!でも私なんか全然釣り合ってない。けど他の女には盗られたくない。だから不可侵協定を結んで誰のものにもならないようにしよう。そうすれば私だけの雪兎君にはならなくても誰かの雪兎君になることはない。って感じ」
明確にそう言われたわけではないが、悪い虫を払いたいから成瀬に監視兼露払いを任せるということはそういうことなのだろうと成瀬は予想していた。
「あー、めんどいな」
もっと自分を磨けばいい話だろうがよ!そこで敵を出し抜けばいいのに。
「別に釣り合わないことはないけどな。俺なんて見た目がアレなだけの中学2年生なんだし」
「見た目と行動ね」
「すかさず重ねてくるなや」
「けど雪兎君の隣に立つって並大抵のものがないと無理なんじゃない」
「…じゃあお前はどうなんだよ?」
「私〜?どうなんだろう?雪兎君的には私はどうなの?」
「どうって、聞くまでもないだろ。お前が俺の隣に相応しくないなら誰が隣に立つんだよ」
神坂としては至極当然のことを言っただけだ。女子との関わりが少ない神坂にとっては成瀬は1番親しい女性と言っても差し支えはない。だから成瀬以外の女子が自分の隣にいることが想像できなかったからそう言ったまでだったのだが。
「えっ、それって…」
神坂の発言の意図が分からない成瀬にとっては『お前は特別だ』という口説きに捉えてしまったのだ。しかも成瀬は神坂に好意を抱いているのだ。それが愛の告白にも聞こえてしまう。しかし、神坂の言い方からして、そして神坂のバックボーン、これでも1年以上神坂を見ているのだ。今の発言は消去法にも近い選択から紡ぎ出された言葉であることを何となくではあるが理解してしまった。理解出来るだけでも相当雪兎との間柄は親密を深めているのだが肯定的感情に疎い神坂とファンクラブに一任されていて近くにいれる反面行き過ぎたことも出来ない状態の成瀬にとってはこれを知覚するのは厳しいだろう。
実際に神坂から成瀬への感情は友人としてのものであり恋愛対象の物はない。これからといったところだろうか。
「ん?そう思ったまでだが、害したか。ならすまん」
「んん、違うよ。そういうのじゃない。ちょっと嬉しかっただけ」
「そうか、ならいい。成瀬に特に問題がないならどっか出掛けるか?」
「えっ?いいの?」
「いいよ。いつにするか決めようぜ。おい、スマホ出せ」
「雪兎君、さっきも言ったけどLINEは…」
「LINEじゃねーよ。電話番号教えるから早く打ち込め。ショートメールとかなら問題ないだろ」
LINEで容易に繋がることができるからこそスクショを送るなんて監視ルールが出来るんだ。それはつまりそれ以外の方法だとバレる心配がないというわけだ。知る術がないからそもそも考慮しなくていいのだ。LINE監視は抑制手段としては良いということはないが監視としては方法としては成立している。しかし、俺から連絡先を教えた場合にはひどく脆い。どうせ俺が人との関わりをあまり持たないから俺から教えることはないと踏んでいるんだろうがそこんところが発想がまだ子供だな。
神坂はスマホで自分の電話番号を表示させて成瀬に見せた。成瀬はワンギリで連絡して神坂のスマホに成瀬の電話番号が通知された。これで履歴として残ったのであとはそれを連絡先に追加すれば無事LINE以外の連絡先獲得である。
「友達と連絡先を交換するだけなのに不便だな」
「有名税みたいなものだから良いんじゃないの?」
「まさか、面倒に決まってんだろ。俺は好きで有名になってるわけじゃねーよ。そもそも月城のアホが口を滑らせなければこんなことにはならんかったのによ…」
「あはは、それじゃあまた後で連絡するね。じゃあね」
そう言って成瀬は教室を出て行った。
教室にはそれほど人がいなく、小さめの声で会話をしていたため成瀬とのやりとりがバレていることはなさそうだ。やることも特にない神坂はそのまま家に帰ることにした。
神坂は家に帰ろうとしていた。帰ろうとはしていたが…
「ヤッホー」「この時間はこんにちはなのか?」
ハァっと口からは出なかったが口調からは滲み出てしまう。
「何でここにいんだよお前ら」
校門の前に月城泰二と臼木涼祢の2人がいた。
「俺らもさっき学校が終わったからさ。今から遊びに行かねーか?」
「嫌だよ面倒い。第一この前遊んだばっかじゃん」
「この前ってもう3週間も前だぞ!お前の日にち感覚どうなってんだよ」
どうやら夏休みだから初日から遊び飛ばしたいようだった。疲れる。こいつ、課題やる気ないな?
「ダメだ。先に課題をやるぞ。10日もあれば終わんだろ」
「えぇー、ヤダヤダ遊びたいんだよ俺は」
「お前みたいなのが夏休み最終日でヒーヒー言うんだよ。おい臼木、去年のこいつどうだった?」
「『宿題なんか知るか!最後に戦わないと気が済まねぇ!』って言ってほぼ2人で喧嘩してたな。俺も手を痛めたりしたりもあったから勉強に手がつかなかったよ。ボコボコにされた月城は言うまでもない」
「そうか、お前ら1年の頃しょっちゅう喧嘩してたんだっけな」
「いいんだよ別に。俺も臼木も怒られなかったし、通知表はすこぶる悪かったけどさ」
「お前ら2人に物言いできる教師が枝野にいんのかよ」
「いやいや、俺なんてしょっちゅう怒られてるよ。けどそん時は怒られなかったんだよな。何でだろ?」
「呆れられたんだよ俺ら」
「だろうな。いいじゃねーか。今は勉強だって出来るようになったんだし」
「おかげさまで学期末も半分くらいに滑り込めたよ」
月城は一部の教科が平均点にはギリギリ届きはしなかったが何とか総合順位が半分に入り込むことが出来た。
「あれだけ叩き込んで半分かよ。お前、言うほど家で復習してないだろ」
「い、いやぁ、ちゃんと見てるよよ〜」
「オイ、どもってるしなんか語尾がバグってるぞ。やっぱ序盤に課題を片付けるしかないな」
「えぇ!?そりゃないよふゆ〜」
「うるさい、早く終わったほうが残りの夏休みを快適に過ごせるだろうが!嫌なら俺は真っ直ぐ家に帰る」
「くっ、おいりょう、お前もなんとか言ってくれよ」
「課題をやらないならお前との勝負は受けない」
臼木のやつ、中々に交渉が上手いな。着実に月城の嫌なところを突いている。
「う、うがぁーーーー!やりゃいんだろやりゃあよぉ!オイお前ら!飯食ったら図書館だからな!」
ウォォォァーーーーと言いながら校門から街へ向かって走っていく。北千住まで走って行くつもりだろうか?
「図書館の場所どうする?」
臼木が訪ねてきたので。
「アイツの向かった先で範囲検索して1番近い場所」
そう言って月城のあとを追いかける神坂。
「千葉とか行ったりしてな」
と流石にあり得ない予想を思い浮かべて2人の後を追う。
この様子は帰宅中の幌谷中の生徒達にバッチリ見られており、『幌谷の白ウサギは学校をサボる不真面目な人だけど根は真面目』という本人からしたら堪らなく嫌な呼び名が神坂を語る上で追加されたのだった。
走って月城を追いかけていた神坂であったがいかんせん体が貧弱なので臼木に飯の場所を見繕うようにスマホで連絡して都バスで月城の後を追うことにした。
♢♢♢
昼食を食べ終えた神坂達は近くの図書館に来ていた。
「はぁ、さっきの飯は格別に旨かったな」
「な、じゃねーよ。どんだけ走ってんだよお前。臼木がいなかったらお前と合流出来なかったぞ俺は」
「まぁまぁ、運動も食事もしたからいよいよ勉強だな。頑張ろうぜ!」
「どうしたんだよその入れ替わりよう」
どんだけ俺達と遊びたくて臼木と喧嘩したいんだよ。まぁ月城は部活動にも入ってないからただただ暇なんだろうな。
「まあまあ、やる気がある内にある程度進ませてやらんとこいつは絶対に詰むから」
臼木の言うこともそうだな。
俺も事前に配られた課題とかは時間の許す限りで片付けたけど今日配られた課題や読書感想文とかはすぐに出来ないからな。図書館に来たのは好都合だったかもしれないな。ここで本を選んで月城達に教えながら本を読み進めればいいだろう。見た感じだと1週間取り組めば9割方終わりそうな分量だしな。
こうして俺は読書感想文を、月城と臼木は俺に教えてもらいながら課題を進めることになった。月城から俺らも感想文があるから適当なのを選んでくれと言われたので分量は多くないが著名な作家が書いたもので中学生のそれに相応しいタイトルをピックアップして2人に渡した。
「んんー、3割は終わったかぁ」
「残念、1割にも満たないぞ」
「えぇー!2時間もやってたのにぃー」
むしろ2時間で3割が終わるなら7時間くらいで課題が全部片付く計算になるぞ。テキスト丸々1冊が各科目ごとにだからな。分量だけ見ればとんでもないな。
「2時間って言ってもボーッとしてる時間があったから実質1時間半くらいだろお前の勉強時間は。けどこれを毎日やっていけば8月半ばまでには終わるよ絶対」
「うぅー、去年ポカしたから分からんかったけどこんなに大変なんだな課題って。りょう、お前はどうだ?」
「ん」
臼木は解いていたテキストを月城に見せる。
「はぁぁ?俺より10ページも進んでんじゃん!」
「そりゃお前より頭いいから雪兎君に質問する回数が少ないんだよ。しかもお前と違って集中を切らしてないからな。ちなみに俺は去年課題は全部ではないがやった分は出したぞ」
「お前字書けたのかよ…、俺痛くてシャーペン持たなかったんだぞ」
「どうせ全部お前から仕掛けてやられたんだろ?自業自得じゃねーか」
「何ぃ!」
「月城、ここは図書館だ。少し声量を抑えろ、ほら」
臼木が指差した先には図書館のスタッフがこちらを睨んでいた。声を掛けて注意したそうだが白髪金髪巨漢の3人には話しかける勇気はないだろう。ファンクラブの女共はアイドル視してるから別として。だから俺らに声をかけるやつってのは大抵何か思惑があるやつってことだ。例えば……
「すいません」
こういう不自然な人みたいな…
八重歯が目立つ男だ。女の八重歯は可愛らしいが男のはただの野蛮にしか見えないな。
「はい。どうしました?」
神坂がエクスキューズに応じる。
「すいません。あそこの本を取りたいのですが、持病で足を痛めてまして、脚立に乗れないんです。すいませんが取っていただけますか?」
「えぇ、いいですよ。月城、取ってやれ」
「なんで俺が」
「大声出した、走りまくった、俺の学校に来た、その罰だ」
「分かったよ…って最後別によくねーか?」
そう言って月城は話しかけてきた青年と共に本を取りに行った。
「足が悪いって言う割には足取りが普通だったな」
「あぁ、司書に頼まない辺りも不自然だな。俺ら、というか俺に用があるんだろ」
「なら月城を行かせたのは不味いんじゃないか?」
「かもな。てかヤバイだろうな」
「おい」
「まぁ待て、もしかしたらもあるからだ。月城が簡単にやられる玉じゃないのはやり合ってるお前が一番分かるだろ。判別法はむしろこのあとだ」
「これでいいですか?」
「ああ、ありがとうございます」
ふぅ、ふゆのやつ、面倒な頼み事しやがって。まぁいい。さっさと戻るかな。
「じゃあ俺はこれで」
「ちょっと待ってください」
男に肩を掴まれる。
「まだ何か?」
そう言って男の方を振り返ろうとしたが振り返ることが出来なかった。
(っ!体が、動かねぇ!)
男が月城の体を羽交い締めにして拘束しているわけではない。肩に置かれた手は既に離れている。服の裾を掴まれているわけでもない。手も、足も。出来るのは呼吸と耳を研ぎ澄ますぐらいだ。
(声は……、出ない。助けは、無理だな。くそっ、こいつ、まさか!)
「最初は焦っていたようだが今は落ち着いてるな。適応力が高い。やはり神坂雪兎が超能力者であることを知っているようだな」
(こいつも、超能力者!)
「まぁいい。用があるのは彼だけだ。お前にはここで眠っててもらおうか」
男は月城の顎に強烈な右フックをお見舞いする。防御も抵抗も出来ない月城はモロにダメージをくらいそのまま立っていられることが出来ずに気絶した。
「さぁ、順にやっていこう。臼木をやるのは骨が折れそうだ」
♢♢♢
男は神坂の元を目指す。先程いた椅子に向かうと神坂と臼木はこちらを見ていた。月城を待っているのだろう。生憎月城は向こうでノビてるよ。
「あぁ、どうも。助かりました」
左手を上げて手に持った本を見せる。
「それはよかったです。ところであなたと一緒だった金髪はどこに行ったんですか?」
「彼ならお手洗いに向かうと言ってましたよ」
「そうですか。臼木、お前トイレは大丈夫か?」
「言われて急に催してきた。ちょっと行ってくるわ」
「行ってこい行ってこい。お前らが戻ってきたら俺も行くわ。みんな行くと座席が取られそうだからな」
分かった、と言って臼木はトイレがある方に歩いて行く。
(臼木はトイレか。離れてくれたのは都合がいい。2対1はまぁまぁ面倒だからな。これで神坂と二人きりだ。さっさと話を切り出すかな)
そう思って男が神坂に話を繰り出す前に…
「んで、要件を聞こうか。超能力者さん?」
「…は?、いや、何のことかな?」
「隠さなくていいんだよ。早く話をしろ。下らない答え合わせをするつもりはない」
「いや、私はただ取ってくれたお礼をと」
男は必死に誤魔化そうとする。
「めんどくせー。なら簡単に言ってやるよ。月城はお前が話しかけてくる10分前に既にトイレに行ってんだよ。こんな短時間で行くわけないよな?老人じゃあるまいし。それに足が悪いと言ってたくせに歩き方に違和感がない。少し引きずったりしてる様子もなかった。何より、この図書館にはエレベーターがない」
「……、……なるほど。中学生とは思えないほどの推察力。あくまで主導権をこちらにしてから話をしようと思ったが。
その通り。俺は超能力者だ。神坂雪兎」
「知ってるってことは俺を超能力者にした奴のことも知ってるな」
「あー、ドクターのことか?」
やっぱり意図的にした奴がいたんだな。
「そのドクターさんのお仲間さんが今更何のようだ。あれからもう10年は経ってるぞ」
「ドクターはある計画のために強い超能力者を探している。だから協力してほしい」
「計画?何をするつもりだ。内容次第では考えなくもないぞ」
「残念だが俺たちにも詳細は知らされていない」
「なら交渉の余地はない。お引き取り願えますか?」
「はぁ、まぁ君の性格からして乗らないとは思ってたけども。なら実力行使だ。君の能力を見せてもらおう。ドクターが認めるほどの力を君らが有しているのかどうかをな!」
「君ら?俺以外にも…、まさか俺を助けてくれた人もいるのか!?」
「お前の言うのが誰かは知らないがあの時に超能力にした3人全員に俺達兄弟がコンタクトを取っている。たぶんその内のどっちがだろうな」
「そうか、 会いたいなぁ」
10年前のお礼を言いたい。俺はそのために色々頑張ってきたんだ。
「残念だが会うことはないと思うぞ。大したことのない能力だったら殺しても構わないとドクターに言われている。俺と戦え神坂雪兎!」
「断りたいところだがあの人のことも聞き出さないといけないしな。いいだろう。受けてやる」
「随分とあっさり引き受けるんだな」
「ネチネチ交渉をするほどでもない。勝てばいいんだ」
「余裕そうだが零兄から君のことは聞いている。不思議な超能力らしいな。相手を弱らせると話に聞いている」
(能力を知られている。監視されていたか…、聞いているってことはこいつは監視能力じゃなさそうだ。月城が何かあって意識がないと見たほうがいいな。月城をあんな短時間で倒すなんて余程ぶっ飛んだ能力のようだ。向こうにこちらの手の内がばれている以上迂闊に仕掛けるのは逆効果か。能力で手っ取り早く片付けたいがカウンター系の能力だったらマズイな。くそっ、やっぱ体を鍛えとけば良かったか?だがまだ全容は掴んでないみたいだな)
「まぁそんな能力だ。どうする?まさかここでやるとは言わないよな?」
「裏手に人気のない空き地がある。そこまでついて来い。ちなみにだがあの2人に応援を頼もうとしたらお前の姉がどうなるかは保証出来ないな。声優なんだってな」
男がそう言った途端神坂から殺気が溢れ出す。
「テメェ、つまんねーことしてんじゃねーぞゴラァ!」
「1対1でやろうって言う意思表示さ。それに年上にテメェは感心しないな。俺の名前は鬼束実録だ」
「いいだろう鬼束。テメェをぶっ潰して色々と喋って貰う」
神坂は自身のスマホを自分の学生鞄に突っ込んだ。
「早く案内しろ」
「勇ましいことだ。ついて来い」
神坂雪兎
超能力名:不明
能力詳細:自分の状態を相手にリンクさせる
月城泰二
能力なし
臼木涼祢
能力なし
成瀬舞
能力なし
鬼束実録
超能力名:不明
能力詳細:相手の動きを封じる?
こうして神坂と鬼束の戦いが幕を上げる
第3章も終盤です




