第39話 普通の弟
「いや〜、映画面白かったな」
少し涙目で鼻をすする月城。
「あぁ、感動したな」
感情をあまり表に出さないがそこはかとなく笑っているように見える臼木。
「そうだな」
素晴らしい映画だったが姉が出ていると考えると素直に褒められずに素っ気なく答えるツンデレ神坂。
「いいなぁ、ふゆは。滝波夏帆が姉だなんてさ」
「馬鹿!少し声量抑えろ。ねぇちゃんにとってはトップシークレットなんだぞ!」
普通の会話の声量で爆弾発言した月城を抑える。
「うるせぇ!お前兄弟はいないって言ったじゃねーかよ!」
「いること自体を隠してるんだから言えるわけねーだろ!バレると面倒なんだよ。不良から脅しに使われたり、声優滝波夏帆にとってもブランドイメージを損ないかねないし」
「弟が元東京最強を手下にしている現最強の幌谷の白ウサギって逆にバズポイントありそうだけどね」
「俺は飼われてないぞ月城。慕い、従ってるだけだ」
「それどっちも一緒な。とにかくっ!外では喋るな。そういう話は俺らしかいない時にしろ!」
全くよぉ、本当こいつの口の軽さはどうにかならんのか…
「わーったよ。でもあん時はびっくりしたな。急に目の前に滝波夏帆がいるんだもんな」
なぁ?と臼木に同意を求めると臼木もそこは同じ考えだったのかコクリと頷く。
そんなもんかねぇ?声優になる前から顔を合わせてるからあんまりプレミア感とかは感じられないな。そういえばこいつらがねぇちゃんに会ったのは珍しく俺の部屋で遊んでる時だったな…
♢♢♢
中学2年生に進級した俺達は俺の家にいた。
普段は家に誰も招いたりはしないが両親が働きに出ていて家に誰もいないので文句を言われることがないからだ。
今日は始業式の日、自己紹介と授業で使う教科書を配布されてその日の学校は終わった。成瀬とはまた同じクラスになった。成瀬が俺の顔を見た途端一気に老けたように見えたのは俺が嫌われているということでいいのだろうか?
それが心労であることは神坂は知らない。
聞くと枝野も午前中で学校が終わるみたいなので昼から遊ぶことになった。
場所は自分の家を勧めることにした。いつも月城や臼木の家で遊ぶことが多く自分の家で遊ぶことがなかったからだ。これは親に止められているというわけでなく姉の存在が明るみになるのを恐れたためである。現に姉は学校が終わったら真っ直ぐスタジオまで行くと朝飯の時に両親に言っていたので夕方に母親が帰ってくるまでは家には誰も帰ってない。だからそれまでの間に自分の家で遊ぼうと思い誘ったのだ。
「お邪魔しまーす」
「お邪魔します」
控えめにソロリと家に入る2人。
「固いな。もっといつも通りにしろよ」
「お前それブーメランだぞ。俺の家にお前が来た時妹がビビってたけど物腰柔らかい対応をしたせいで白い人連れて来いって煩いんだからな!」
月城に妹がいるって聞いていたけど会ってみるとまぁ月城とは似ても似つかない真面目な子。髪も染めてないし一体どこで道を踏み外したんだろうかと兄の方を臼木と2人でじっと見る。視線に気付いた月城は視線の意味に気付きハハハと笑って誤魔化した。
「今は家の人間が俺しかいないんだからフランクでいいって言ってんの。お前の家には妹さんやお母さんとかがいたんだからキチンと挨拶しないとマズいだろ!ただでさえ俺はこんな髪なんだから」
生徒指導の根井から『お前はただでさえ見られる髪をしてるからせめて態度とかはしっかりしておけ』と礼儀作法やマナーなどを教え込まれた。必要ないだろと教わってる時に思ったが意外に役に立つもので学校代表で壇上に立つと必ずザワザワされるが丁寧なスピーチをするとざわめきは収まりお偉いさんに挨拶に伺うとこの年で礼儀正しいねぇなんて言われる。むず痒くもあるが上からの評判が良くなってからは神坂に否定的な先生の声も小さくなっていった。そういう意味では学んで損はなかったと言える
「ふゆは凄いな。自由になるための努力を惜しまないんだもん」
「褒めたってなんもでねぇよ。妹さんには今度遊びに行くからって伝えとけ」
「たらしだねー。ちゃんと伝えとくよ」
誰がたらしだ全く。俺は生まれてこのかた恋人もいない可哀想な男だっての。
2人を雪兎の部屋へと案内する。
「雪兎君の部屋。何もない」
「うわぁ、参考書とか教科書ばっか。ゲームとかはしないの?」
「あるにはあるがそれなねぇち……、親のなんだよ。ここにはないから持ってくるよ。スイッチだけどいいか?」
「おっ、いいねぇ。カートやろうぜカート。俺家でも結構やってんだよ」
「ゲームでは負けない」
やたら燃え上がる2人。喧嘩じゃ勝てないけどどうにかして神坂に勝ちたいらしい。
「分かった分かった。じゃあお冷も一緒に持ってくるから待ってろ」
「「はーい」」
危ない危ない。ねぇちゃんのって言いそうになっちまった。勝手に姉の部屋に入っていいのかな。ねぇちゃんに限って服が脱ぎ散らかってるってことはないと思うけど。まぁいいか、ゲーム機は部屋入ってすぐの収納棚に入ってるからそこしか見なければ何も言わんだろ。
神坂のいない神坂の自室。
神坂がいなくなってしばらく部屋を見渡した臼木は呟いた。
「雪兎君の話、本当なんだな」
「ん、何のことだよ」
「放置されてるってやつだよ。部屋の中にほとんど娯楽がない。雪兎君が持ってる娯楽ってスマホぐらいしかないんじゃないのか」
「あぁー、ネグレクトね。だろうな。家でも自由…というより放任、学校でもそうって寂しくないのかねふゆは」
「何でだ?家は仕方ないとして学校は雪兎君が望んだことだろ?」
「ふゆは孤独だったのを自分の力で孤高にしたんだろ。それ自体はカッコイイけどどっちみち1人じゃん。今でこそ俺らがいるけどそれまではふゆはずっと1人だったんだろ?頼れる人がいないって結構辛いぜ」
「けど名彫っていう恩人がいるんだろ。前に雪兎君言ってた。その人でもダメなのか?」
「ダメではないけど…、頻度じゃないか?小学校の時は遊んでたらしいけどお互い忙しくてあんまり会えてないみたいだし。俺らも頻度は高いけど学校が違うから密な付き合いもし辛いし。名前や見た目でちやほやされてるけど誰も内面のふゆまでは見てないだろ」
「そうだよねー、ふゆ君は普段はあんな感じだけど心のどこかでは寂しいと思うんだよね」
「あぁ、雪兎君が1人じゃなくなればいいんだけどな」
「恋人か?ふゆに?」
その場にいた者は神坂の隣を手を繋いで歩く女性を想像した。いや、しようとした、が……
「「「………想像出来ないな(ね)」」」
「雪兎君が誰かに気を許すとは思えないがな。超能力者だって教えてはくれたけどあれは俺らに突っつかれたからだしな」
「モテてるんだろうけどあんな肩書きの奴に告るなんてな…、ファンクラブもあるっぽいし余計に難しいだろ」
「枝野でさえメンバーが多いから幌谷の女子はほぼ入ってるんじゃないのか」
「…確かにりょう、ふゆに負けてから取り巻きが減ったもんな」
「……だが男の友達は増えたな。何故かは分からんが」
「女侍らせなくなったからじゃないか。刺々しい性格じゃないんだから元々浮くタイプじゃないしようやく普通になれたんじゃないか」
「あぁ、雪兎君のおかげだな。お前も1年の期末テスト中々点数良かったじゃないか。雪兎君と勉強したかいがあったな」
神坂はクラスメイトに勉強を教えているが放課後や休日などは2人に勉強を教えていることが多い。そのおかげで学年末テストは今までドベ気味だったのが平均点近くまで上昇したのだ。
「それについては感謝だな。だがすげぇよな。成績最底辺の俺らを底上げしつつも自分はまた学年1位だもんな」
「俺達、雪兎君に会ってから変わったよな」
まだ知り合って4ヶ月弱という短い付き合いだが濃い体験を多くしてきた。喧嘩、勉強、喧嘩、遊び、喧嘩…。喧嘩が多いのは気にしないことにしよう。
「ふゆ君はね。あんな感じだけど誰かのために動きたいんだよきっと」
「誰も近寄らないから誰にも手を差し伸べれなかった、ってことか。雪兎君が人助けか」
「イメージできないけどもっとふゆが親しみやすくなれればいいんだがな」
「おい、お茶持ってき………」
ドアを開けた神坂は最後まで言葉が続かなかった。代わりに少しテンパっているように見えた。
「どうしたふゆ?」
月城が何かあったのかと神坂の方を振り向いた。
そして気付いた。今、神坂の部屋に3人いることを
神坂、月城、臼木ではない。神坂はドアを開けただけでまだ部屋の中には入っていない。にも関わらず部屋には3人の人間がいた。それの意味するところとは…
「あの、あなた誰ですか?いつからそこにいたんですか?」
どこか見覚えのある顔だったが人が突然増えているという事実で思い出すことが叶わなかった。
「私?私は神坂雪華。ふゆ君、神坂雪兎の姉です。貴方達はふゆ君のお友達でいいのかな?随分仲が良いんだね。よろしくね」
「は、はい。よろしくお願いします」
月城は差し出された手を握り握手をする。
処理が追いつかず誘導させるがままである。
「お、おい雪兎君、雪兎君。何で?何で?」
臼木は誰なのか気付いたようだ。
「あぁ、お前の思ってる通りだよ」
「ちょっとふゆ君。なんか私幽霊みたいな扱いになってない?」
「えっ、幽霊?何だよお前ら。へっあれ?姉?でもふゆは兄弟はいないって」
うっかり口を滑らせてしまう。
「ふゆ君!いないってどういうこと!ちゃんと説明して!」
「はぁ〜…、分かった分かった。ったく何でいるんだよ…」
そうブツブツ言いながら兄弟がいないというのは嘘ということ。姉が声優の滝波夏帆で姉が声優だとバレると面倒ごとが増えるから隠していたことを3人に説明した。
「おまっ、いいなぁ」
月城は隠されてたショックと兄弟という立場の神坂への嫉妬で頭がグルグル回ってる。そうだよな。いきなり受け止めきれないよな。
「ふゆ君、そういう気遣いは嬉しいけどお友達には言っても良かったんじゃないの?」
「いやぁ、まぁ、タイミングがな。月城のやつが口が軽いから念のためにな」
「俺別に口軽く…、すいません軽かったです」
否定しようとした月城をキッと睨み否定を潰す。
お前が臼木の件を喋ったせいで…という恨み節を感じ取ったため月城も素直にそれに従う。
「あとそこの金髪君が言ってたけど、超能力者って何のこと?」
「つーきーしーろぉぉぉぉぉっ!」
口が軽いやつだとは思ってたがまさか姉ちゃんに喋るなんて、こいつ、いくらなんでもないわぁ。
「違うって。まさか部屋にりょう以外がいるとは思わなかったんだよ!」
ふざけんな。気付かんわけがない。俺の家は忍者の家系じゃないぞ……じゃないよな…?そんなことよりも。
「てかねえちゃん。何でいるんだよ。収録って言ってたじゃん」
「学校が早く終わったから荷物を置いて着替えてから行こうかなって……って違う。話逸らさないの。お姉ちゃんに正直に話しなさい」
ちっ、バレたか。うまいことスカそうと思ったが、
「嫌だ」
言えるわけないだろ。
「んな!?」
まさか断られるとは思っていなかった雪華。素っ頓狂な反応をしてしまう。
「何でよ」
ズイっと雪兎に顔を近づける。
「何ででもだ!」
近い近い近い!
雪兎は雪華の肩を掴んで押し出して引き離す。
「……ねぇふゆ君。やっぱりふゆ君は私のこと嫌いなの?」
「はぁ?だから、別に嫌いじゃないって」
「だって、ふゆ君。何も喋らないじゃん。兄弟らしいことなんて全然してない。私は色々したいのにふゆ君は私が忙しいからとか言って労うように見せて拒むし。実はパパとママのこと根に持ってるんでしょ!」
はぁ、またあの人達を絡ませてきたよ。責任を感じているらしいけど当時小学生の人にそこまで求める方が酷だ。原因であっても実行犯じゃないんだから気にしなければいいのに。根っこは真っ直ぐに育ったんだな。甘やかされたらワガママに育ちそうなものだが。
「あの人達は関係ない。俺自身が深く入ってこられたくないんだよ。超能力もバレたら面倒だし。知っている人は少ないに越したことはないんだよ。世の中知らない方がいいこともある。それが兄弟のことであってもだ。詮索はしないでくれ。ねえちゃんに迷惑をかけたくないんだ」
迷惑をかけたくないってのは本心だ。干渉して欲しくないって気持ちも強いが前者のも強くある。
俺はこの能力は才能の開花とかではなく与えられたものだと思ってる。ネグレクトで覚醒という可能性も考えたが俺にはその兆候やきっかけがなかった。唯一あるのは10年前のあれだ。誰かが俺を守ってくれた時の。自覚したのが3年前だから7年のラグはあるが俺は10年前だと睨んでいる。それ以外が思いつかない。後天的に得られる力ならもっと広く知られているはずだ。ネグレクトは不思議な力を有するとかテレビで報道されていてもおかしくない。自分だけの特別な力ってこともあるかもしれないがそれはない。絶対他にもいる。日常に溶け込んでいるはずだ。俺を守ってくれた人。あの人もきっと何かされてるはずだ。考えたくないがその人がやったってのも考えられる。何かは分からないが10年前に何かが起こった。ラグはどう説明していいか分からないがとにかく、俺をそうした人物がいる以上他の人間を巻き込むわけにはいかない
月城や臼木は1人で戦える力があるから教えたがねえちゃんにはそれがない。事実を知ったねえちゃんが消される、なんてことが全くないと断言出来ない以上は可能性は0にした方が安全だ。ねえちゃんの仕事の邪魔はしたくない。
「………」
(ふゆ君…)
「な、なぁふy「月城、こればかりはお前も臼木も立ち入るな、俺の問題だ。滑らせたもんはどうしようもないから怒ったりはしない、だが何も言うな。」…あぁ」
月城が口を挟もうとしたので割り込んで喋らせない。
「ねぇちゃん。ねぇちゃんが俺のことを知ったところで何も出来ることはない。むしろ干渉されるとウザい」
雪華は目を伏せてスカートをクシャッと両の拳が握られる。明確な拒絶。血縁者から言われることがどれほど心に傷を与えたか。雪華はショックを感じだが泣きはしなかった。周りに人がいるからか。それとも泣いたら自分の存在を否定されることになると思ったのか。雪華は決して溢さなかった。
「だから、何も知らないまま、神坂雪兎の姉、神坂雪華としてこれからも接してくれ。これから普通の兄弟の間柄になることはないけど、今まで通りでいてくれ。知ったところで危なくなるのはねぇちゃんだ。俺の周りは危険だからこれ以上踏み入らないでくれ。けど、ねぇちゃんは必ず守る。俺を守ってくれたあの人を今度は俺が守れるように、道は踏み外してるけど俺は俺を貫けている。名彫の兄ちゃんや月城、臼木のおかげだ。俺は、誰かを守れるようになりたい。その対象はねぇちゃんも含まれる。だから頼む。来ないでくれ」
雪兎を守った少年、それは奴だが彼がした行動が神坂雪兎を構成している。超能力に気付いた時からその彼に守ってくれたお礼を言い彼を守れるようになること。それが神坂雪兎の目標だ。
「私は、もっとふゆ君と兄弟らしいことがしたいよ」
涙声になりながらも雪華は諦めない。
「今まで通りでいい。服を見てくれたりしてくれるだけでも助かってる。俺は未だセンスがいいわけじゃないからな」
「嫌じゃないんだね?」
「嫌いじゃないっていつも言ってるだろ?」
「………」
(ふゆ君、何があったのか。すらも答えてはくれないんだろうね。距離を取っているのはそういう背景もあるって分かっただけでも良いのかな?けどやっぱりふゆ君と仲良くしたいなぁ。出掛けたり映画でも見たり。当たり前のことが出来ないなんて辛いよ。でも私が踏み込み過ぎてふゆ君が嫌な気持ちになるのなら、私は…)
「じゃあさ、普段のふゆ君を聞かせてよ」
「普段?」
「うん、学校ではどうなのか?友達とどんなことをしているのか?秘密が関わるところは言わなくていいから普段のふゆ君を教えてよ。神坂雪兎の姉、神坂雪華として知っておくべきじゃないのかな?」
自分が言ったことを言い返されてハッとして苦い顔をする雪兎。
(くそっ、断り辛い頼み方しやがって)
「…まぁそんぐらいならいいよ」
「本当に?やったー」
さっきまで泣きそうだったのに今は笑ってはしゃいでる雪華。
「ふゆ…」
「お前も俺と同じ境遇に立ったら妹を守るはずだ。分かるだろう」
「…そうだな。俺しかいないからな。んで、ずっとりょうは黙ってるけどどうしたんだ?」
「…………滝波さん。ファンです」
月城は座っていたが体を前に倒しズッコケるジェスチャーを取ってしまう。
「お前、気を遣って会話に入らないと思ったら推しに会って固まってただけかよ!」
「月城、お前は好きな人がいないからそう思えるんだ。高校生だからとイベントにもあまり出ない画面の中だけの滝波夏帆が目の前にいるんだぞ。ファンとしてはもう死んでもいい」
臼木は大の滝波夏帆ファンのようだ。滅多にお目にかかれないというのは確かにそうだ。未成年だからプロダクションも仕事やイベントは選んでいると母親と話しているのを聞いたことがある。聖蓮生としての行動規範もあるようだ。
「ん?私のファンなの?嬉しいな。いつも応援してくれてありがとね」
「あっ、いえ。『スクールアクトレス』いつも聞いてます」
「えっ?本当に!ラジオ番組なのに聞いてくれてるんだ。ありがとー」
「こちらこそ。いつも滝波さんに元気もらってます」
雪華と臼木は握手をした。臼木は感極まっている。
「大袈裟だな。全く」
「雪兎君。ズルいぞ。滝波夏帆を独り占めだなんて」
「人聞きの悪いこと言うな!別にベッタリしたりなんかしてねーよ。話聞いてたろ?少し溝があんだよ」
「そうだけど勿体無いな。華の人気声優が身内にいるのに自慢できないなんて。にしても幌谷の白ウサギに姉がいるとはな」
「あー聞いたことがある、それ友達がなんか言ってた。白髪のイケメン不良優等生がいるってキャーキャー言ってたよ。ん?姉?」
「えっ?知らなかったんですか?こいつですよ幌谷の白ウサギ」
月城は雪兎を指差す。
「……あっ、そうか。ふゆ君幌谷中学校だったね。………って、えぇーーーーー。ふゆ君がーーーー!!!」
雪華は異名は知っていたがそれが自分の弟とは結びつかなかったらしい。弟の通う学校をはっきり覚えてなかったあたり如何に兄弟間の関係が薄いかが分かるだろう。
「雪兎君、言ってなかったんだ」
「余計な気を回したくなかったんだよ。吹聴するものでもないしな」
「えっ、じゃあ2人は幌谷の白ウサギの舎弟の元東京最強の臼木君と………誰?」
「「プッ!」」
雪兎と臼木は思わず吹き出してしまう。
「お前ら笑うんじゃねーよ!始めまして、枝野中の月城泰二と言います。ふゆの舎弟でありボディーガードです」
「同じく、枝野中の臼木涼祢です」
「臼木君に、月城君だね。ふゆ君に従うってことはふゆ君の方が強いんだよね?何でボディーガードをやってるの?」
「それは……」
月城がチラッと神坂の方を見る。
意図を汲んだ神坂は自分はタイマンには強いが集団には弱い。向こうは数で攻めるから集団に強い2人が自分の周りにいて牽制していることを説明した。
「へぇ、ふゆ君線が細いのに臼木君に勝ったんだね。凄いね」
「ふん、タイマンオンリーだからな。臼木月城の2人がかりで来られたら負けるよ。仕掛けて来ないけどな」
「しねぇよそんなことはよ。友達だろ!」
「良い友達を持ったねふゆ君。おねえちゃんは嬉しいよ。ねねね、それで普段のふゆ君を教えてよ。何で他校の君達がふゆ君と接点を持つようになったの?」
「あぁ、それはですね。去年の冬に………」
4人はしばらく話に夢中になってしまい雪華は撮影に遅刻してしまいプロデューサーに怒られることになった。その時の雪華は非常に良い笑顔をしていたので余計に怒られてしまうのだがそれはまた別の話…




