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お前らだけ超能力者なんてズルい  作者: 圧倒的暇人
第2章 神岐義晴
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第22話 テレビ出演④

 階段を上がったと思ったら階段を降りて、某大魔王が某魔人を案内するときにした時間稼ぎのような道のりを歩く2人。

(構造のめちゃくちゃさも勿論だがもっと凄いのは小鉢さんは道のりを完璧に覚えていることだよな。そういったのが信頼される証なんだろうか。滝波夏帆もルートは完璧に覚えているらしい。このテレビ局で逃走中とかやったらとんでもないことになりそうだな。マップが欲しい)

「ここだよ。社長室は」

 小鉢が社長室と書かれた扉の前で立ち止まる。

「ここって、3階ですよね。社長室ってもっと最上階に近い場所にあると思ったんですけど随分下の方なんですね」

「確かに下の階だけどエントランスから歩いていって1番遠いのがここなんだ。屋上とかはここよりも早く着くことができるよ。面倒だと思うだろう?社長の遊び心もここまで来ると笑うしかないよ。社員に1日で局のルート全部覚えろって初日に言う人だからね」

「1日でですか!?覚えてきた人いるんですか?」

 神岐がそう言うと神岐の隣でスススっと服が擦れる音がした。

 小鉢が控えめに手を挙げていた。

「自慢っすか?」

 呆れた顔で小鉢を見る。

「徹夜で局内を歩き回った賜物だね。警備員に事情を話した時は変に納得した顔をされたよ。どうやら何年かに1人は社長の言うことを真面目に聞いて夜中ずっと局を徘徊する人がいるらしいよ。そしてこれは完全に自慢になるけどそれをやった人は社長に気に入られて出世しやすいらしい。僕ももうじき企画担当室の室長になるかもよって社長に言われたからね」

 どうやら性格に反して仕事はめちゃくちゃ出来る人のようだ。

「まだ20代ですよね?周りからの嫉妬や反感とかはないんですか?」

「あー、ないない。うちは社の方針的に自由に見えるかもしれないけどれっきとした実力主義だからね。年功序列とかで人を見てないんだよ。能力がないくせに偉そうにする人はもれなく閑職送りに遭うよ。カメラマンの広末さんいたろ?広末さんは今年で43なんだ。けど前の部署での態度が悪くてね。能力も後輩に劣っているのに年上だからって威張ってたからカメラマンになっちゃったんだよ。社内左遷だね。以来心を入れ替えて頑張ってるけどね。僕や霧矢君にもさん付けで呼ぶから本当に頑張ってるよ。新卒や中途で新しく入った人はイメージと違ったって驚く人が多いよ」

 緩いと思ってたら厳しい職場でしたか…。

「ギャップを感じて辞める人も何人かいるんだけどね。霧矢君とかも自由な職場ってのに馴染めなくてね。ほら、彼女会って分かると思うけど真面目なんだよね。だから辞めようとしてたんだけど僕が説得して今はそんなこと思ってないだろうけどまだ企画担当室でもちょっと浮いててね。優秀ではあるんだけど、他の局だったらエース級だったかもね」

 まぁ見た目からしても堅苦しい感じしてたからな。



 小鉢が社長室のドアをコンコンと叩く。

 中からどうぞーと声がした。

「失礼します」

 そう言い小鉢は社長室のドアを開けて中に入った。

 神岐も小鉢の後ろをついて行く。

「おぉ小鉢君、待ってたよ。どうだったね?インタビューの方は」

「良い物が撮れましたよ。野球中継がなくなるリスクよりもこっちの方が利がありますね」

「そうかそうか、君の助言がなければ方向性を見誤るところだったよ。ありがとう」

「いえいえ、シングルファーザーの私を拾ってくれた社長にはこれでもまだ恩は返しきれてないですよ」

(社交辞令や謙遜の類いはなく純粋な気持ちで会話している。この部分だけ切り取っても2人の関係が如何に強固なのかが見て取れるな)

 社長がこちらを見やる。

「そして君の後ろにいるのは誰だい?」

「社長、あのcomcom君です」

「ど、どうもcomcomです」

 社長になんと挨拶をしていいのか分からずどもってしまう。明らかな目上の人間にこの名前を言うのは少し恥ずかしい。漢字の名前の方が良かったかな。

「おー君がcomcom君か、いやはやモデルでも出来そうな顔をしているねー。初めまして、私がテレビ夕日の社長の莉掛(りっかけ)(なお)だ、よろしく」

「こちらこそよろしくお願いします」

 神岐は差し出された手を取り握手をする。

「して、どうしてここに?」

「comcom君がここは迷路だと言ったもので、社長の遊び心と言ったら会ってみたいと興味を持ってくれたので連れてきました。まずかったですか?」

「いや、構わんさ。なんせこんな場所だ。社長室まで人が来ることがないからね。メールや電話で人とフェイストゥーフェイスで接する機会がなくなっているとどうも心細い。しかもこんな若い子が会いに来てくれるなんてね。こちらこそ歓迎するよ」

「だってさ、良かったねcomcom君」

「は、はい、そうですね…」

 社長なのに固くないのでイマイチ距離感が掴めない。

 歓迎の発言も本気なのか社交辞令なのか分かりかねている。


「そうだ、社長。ちょっと提案があるんですけどね。comcom君もいるから丁度いいや」

 俺がいた方が丁度いいとは何だろうか?

「提案?何かね?」

「comcom君をうちの番組にこれからも準レギュラーのようなポジションで出演させてはどうでしょうか?知名度も十分に芸能人に張るぐらい高いですし、何より私が彼を気に入りました」

(気に入った。それだけで俺を起用するのか!)

「ほう、けど彼はそういうことに関しては素人じゃないのか?それに使うにしてもどこでどう使う?うちはユーツーブにはまだそれほど入れ込んでいないぞ」

(おっ、奔放に見えるがちゃんと噛み砕くことを欠かさないか。意外にこの人ちゃんとしてるな。社長も冠だけじゃないみたいだ)

 莉掛に対してこの上なく失礼なことを考えている神岐。

「はい、なので新しくネット配信分野の支部を作りましょう。AdemaTVやニッコリ生放送のようなテレビではなくインターネットにプラットホームを置いた局を作るんです。テレビだと限界があることもそっちでなら存分に出来ると思うんです。演者もお笑い芸人や俳優ではなくネットで活動している方を積極的に起用するんです。ギャラも抑えられますしかなり一般人に近い部類になるので視聴者側からも親近感が湧くと思うんです。コンプライアンスも緩いから自由に作れますし」

「しかしね、簡単じゃないだろそれは。ノウハウがない。技術もない。しかもテレビの一部をシフトではなくて新しく作るんだろう。どれだけの予算が必要になると思うんだね」

「それはもちろん分かっています。ただでさえうちは変わり種が多くの視聴者を獲得出来てないのも理解しています。しかし、それはうちがトリッキーだからではなく純粋にテレビを見ている人が減っているからだと思うんですよ。昔はテレビしか娯楽はありませんでしたが今はユーツーブやニッコリ、それにAdemaなどユーザーの娯楽の選択肢は細分化されています。我々はサブカルチャー主体です。需要は子供、若者やオタク層です。そんな彼らはインターネットをこよなく利用しています。そこで活動する彼らにスポットを当ててネット配信に力を入れるべきだと思うんです」

「じゃあ今のテレビ夕日との差別化はどうするんだ。今更テレビ夕日を他の局と同じようにしろと言うのかね。それでは君が野球中継を失う可能性を提示した意味がないのではないか?」

「うちでやってるのはアニメ放送やサブカルチャー紹介です。こんなアニメがあるよーだとかこの漫画が面白いだとかですよね?そうではなくて新しいゲームを実際にプレイしてもらったり、サブカルチャーの催しを開催してその様子を放送したりとか、こんなものがあるよーではなくこんなふうだよーというもっと深掘りした形で見せるんです。物があるとただ見せられるよりもその物を使っている様子を見せた方が視聴者側からもこの人達楽しそうにやってるなー、俺もやってみようかなーって思えるはずです。さらにイベントなどを通じてコネクションも築けますしただでさえアニメなどが深夜枠に移動している中でゴールデンタイムに流しているうちは向こうからしても良い宣伝媒体になっているはずです。ただ発信するのではなくより視聴者にも企業にもより密接になるためにもこのネット配信は必要なんです!」

「………」

 間をおかずに行われた応酬。

 神岐は割り込みなどできなかった。混じるにはテレビという媒体にいるからこそ分かることが必要だ。小鉢のプレゼンがパーフェクトかなんて分からない、がここまで利を見通して熱く語る姿勢は感慨深いものだった。

 莉掛が飲み込むためか黙っていた。そこでようやく静寂が訪れた。

 神岐は決して自分に都合のいいように運ぶために認識誘導は一切使っていない。

 というより今日まだ1回も使っていない。

 つまり小鉢の発言はそのまま小鉢の想いだということだ。

 神岐と出会ったことで彼の小さくも表に出ることのなかった熱意のようなものが発火してしまったのか?そして莉掛も理由を述べて、時には問いかけて小鉢の考えを引き出している。

 神岐はどうしたもんかとその場に立っている。

 こんな会話が行われるならソファに座ってやってくれよとも思っていた。

 立ちっぱなしは案外辛い。


 小鉢の発言から黙っていた莉掛だがようやく口を開いた。

「そうか…、君の気持ちは分かった。確かにより密になることが出来るというのは我々に利をもたらすことが。しかし、それをやったとしてもどうやって利益を上げる。結局は金だ。役員だってただ視聴者に寄り添った物を作ろうとは思っていない。それに利益が出て自分らが潤いを得たいと思えるものにゴーサインを出しているんだ。うちの方針だって競合がやらないというニッチさや向こうが取れない層をターゲットにしているから安定した層を獲得出来るからそうしているだけだ。みんなサブカル好きだなんて思わない方がいい。私は大好きだがね。ネットタレントのギャラが安いは人件費を安く抑えれるからそこは面白い点だが、今のテレビ夕日を支えるだけの利益を上げられるのかね?」

 結局は金、仕方ない。これがビジネスだ。慈善事業なんかじゃない。お客様のためと企業は言うが最終的には金だ。

「それは…残念ながら今の段階では見当もつきません。しかし、中高生に人気のユーツーバーやネットタレントを使うことで女子高生などの人に寄ってくる集客効果は見込めると思っています」

 アイドルのファンという層か。ユーツーバーはアイドル的ポジションだからな。登録者第1位のはじめんはルックスもいいから女性ファンも多いしな。アニメは見ないけどそっち路線から集めるのも悪くない。そこからテレビ夕日のコンテンツに伸ばしていけばテレビ業にもプラスはあるしな。

「comcom君、ユーツーバーとして小鉢君の意見はどう思うかね?」

 莉掛が神岐に話を振る。一ユーツーバーとしての意見か。小鉢もこのために呼んだのだろう。

「そうですね。正直な話ユーツーバーなんて大して面白くなくても客寄せパンダになり得ますからね。集客効果については十分に見込めると思います。ただその設備を整える初期投資にかかる額を利益でどれだけ補填できるのかはちょっと分からないですね。成功すればそのまま行けるとは思いますけど」

 ユーツーバーは編集してるから面白いのであってリアル配信だとそれほどっていう人が多いからな。ニッコリの配信者の方が面白い人は多いと思う。けどアングラが強いから客寄せには向いてないな。

 うーん、難しい。一長一短だな。

「うーむ、なるほど、面白くなくてもいい…か…。なるほど……」

 莉掛はしばらく考えていたが…

「分かった。そのアイデアを役員会議で提案しよう」

「あ、ありがとうございます」

「だが期待するな。彼らに利があることを説明しなくてはならないんだからな。君も会議に出席しなさい。君の方が上手く説明出来るだろうからね」

「はい!」

 ようやく終わったらしい。

 途中振られた時はどうしたもんかと思ったがビジネスのワンシーンを垣間見れたのは大学生としては貴重な体験だったのではないか?

 働く気は無いけど…。

「comcom君、ごめんね、置いてけぼりにしちゃって」

「いえいえ、大丈夫ですよ」

「それで是非comcom君にネット番組に出てもらいたいんだけどいいかな?勿論君の意向は全力で取り入れるよ。顔は出さなくてもいいしスタジオ環境はテレビのと遜色ないくらいにはするからさ」

 これはまたとない話だろう。ただの一般人に準レギュラーとしてのオファーを出すということは俺にそれだけの可能性を感じているということだ。

 けど…

「非常にありがたいお話ですが…、しばらく返事は待っていただきますか?」

「あぁ、いいけど、どうしてかな?何か不都合なことでもあったかな?」

 受け入れるでも断るでもない答えに小鉢は神岐の意図が分からずに尋ねる。

「不都合というよりも私自身の問題ですかね。そりゃあまだ構想段階で決定事項じゃないからという不安要素はありますけど、それ以前に私がまだ力が及んでないと感じたからです」

「どうしてだね?君は日本で5番目の投稿者になったんだろう?400万人のユーザーを抱えている君が力不足だとは私も感じないのだがね」

「数字の大小ではなくですね。まだ私は400万人になってから1本も動画を出していません。あれは30万人の時に投稿してここまで増えたんです。つまり私というよりは野球動画が評価されたと見ていいでしょう。そんな状態はそれこそcomcomを知らない人から見たら野球動画だけの一発屋と見られても仕方ないです。これから投稿する日本5番目としての動画を投稿してそれが評価されて始めてcomcomはその立場にいるのに相応しいと思われると思うんです。小鉢さんや社長さんの気持ちは嬉しいですがもう少し様子見してそれでなおcomcomにネット番組を任せるに相応しいと判断されたのならまたオファーの話を是非してください。今の段階で受けるとそちらの方々の説得も大変でしょうし私自身の成長にも良くないことが起きると思うので」

 神岐は冒頭に準レギュラーの話を聞いていた時からこれを理由に返事を保留するつもりだった。

 認識誘導で地位は盤石に出来るがそれはあくまでファンの話だ。一線置いてる世間の人達からの評価は高いとは言えない。これからだ。comcomとして認められるのは野球動画ではなくこれから投稿する動画だろうと神岐は感じていた。インタビューを受けたのは『話題のユーツーバー特集』だったからだ。これが『人気のユーツーバー特集』だったら神岐は断っていただろう。

 そしてこのオファーは人気のとしてのオファーだ。

 そう簡単に受けることは出来ない。

 30万と400万は違うのだ。

 まずは400万とは?を考えるべきだろう。

 認識誘導がなくても、400万に相応しい物を提供できるようにならなければ話にならない。

 インタビューでも言ったが一発屋で終わってはいけない。そこからそのポジションを確保していかなければならない。

 それにネット番組の進捗をもう少し観察しておきたかった。

 まだ小鉢の頭の中の話だからだ。

 それを現実に具象化した時にどういう風になるのか、それを見て判断したい。


「分かった。まだこっちもやると決まったわけではないからね。ただ僕は君は十分だと思っているよ。必ず役員会議でokを貰えるように頑張るよ」

「すいません。ありがとうございます。それと1つ提案したいのですが…」

 提案?と小鉢がこちらをはっきりと見る。

「もしネット番組構想が現実のものとなった場合、テレビ事業の下に部署を作るのではなくテレビ夕日とは別に作って欲しいんです。ネットはテレビでは出来ないことを中心にやるのならテレビの下にあるよりも違う組織形態にした方が指示形態もテレビとごっちゃにならないですし会社が違うので差別化も出来ます。スポンサーもテレビとは別にしてテレビのもう一つの窓口ではなくテレビと同等の、それでいてテレビとは違う局として作った方がいいと思うんです」

「なるほどね。別にしてしまえばテレビのお下がりにならないと。面白いね。ニッコリが動画と生放送を同じ方針で運営して失敗した例があるから組織を別で作った方がテレビ側の都合が混ざることなくネットだけのクオリティーが作れるというわけだね」

「はい、大人の都合なんてつまらないものでサブカルの在り方、伝え方、表現が変えられるのは嫌ですので」

「社長、どうですかね?」

 小鉢が問うと莉掛は口角を上げて。

「面白い。そうか、縛りがなくなるのか。これでしょうもない役員供やスポンサーやクレームからも全部排除出来る。小鉢君、これは面白くなってきたよ。金銭面はどうにか工面しよう。問題は役員供の説得だ。認められない場合は最悪別の会社を興して私個人で株を独占して経営しよう。テレビ夕日の株も私は20%持ってるんだ。過半数にして取締役会であいつらの首を飛ばすのも面白い」

「社長、それはいいですね。あいつらが青白くなる様が見れるんですね!?善は急げです。早速根回しと準備をしましょう」

 小鉢と莉掛はこれからの方針で盛り上がっている。

 神岐も所々で未来の出演者としての助言をしたり暴走しそうになる2人を諌めたりと慌ただしく時間が過ぎていった。


 ♢♢♢


 30分後

 大方の話し合いが終わり神岐は帰り支度をしていた。

「ごめんね、時間かかっちゃって」

「大丈夫ですって。私の発言も聞き入れてくれて嬉しかったです」

「早く君の満足の行くものにしてみせるよ。comcom君も動画頑張ってね。新しい動画期待してるよ」

「ありがとうございます。それでは私はこれで失礼します」

「あっ、エントランスまで送るよ」

 小鉢は道案内役に立候補するが。

「大丈夫です。今までの道を逆に行けばいいんですよね。なら1人でも戻れます」

「そうかい。君も僕みたいになりたいのかい?」

「…年下の滝波夏帆に負けたくないだけですよ」

「そうか、君もか…」

 莉掛は何だか嬉しそうだ。

「いつでも遊びに来るといい。もっと色んなところを紹介するよ」

「ありがとうございます。それでは失礼します」

 神岐はドアを開けて社長室を出る。

(社長室から入り口までは1番遠いんだよなー。よくもまぁ何年も通い詰められるね莉掛さんも。さてと、インタビューも終わったし秋葉原をぶらぶらして帰るとしますかな)

 神岐はテレビ局にはあるはずがない忍者が部屋を移動する際に使う回る壁に手をかけて壁を押す。

 向かう際に通ったので帰る際もここを通るはずだ。

 ゴゴゴゴと重たい壁が動き出す。

(タイムアタック挑戦してみようかなー)

 などと考えながら壁が回って出来た空間を歩いていく。


 ♢♢♢


「どうでしたcomcom君は」

 神岐がいなくなった後小鉢が莉掛に尋ねる。

「あの場面で待つ姿勢が持てるのは非常に興味深い。二つ返事で了承してもおかしくない場面なのにな。慎重なのか疑い深いのか、それとも自分を過小評価しているか…」

「まぁ何にせよ断られなかっただけマシです。彼ありきで私はあれを計画したんですから」

「君が気にいるのも納得だ。さぁcomcom君のことはcomcom君が頑張ってくれるだろう。私達は私達で出来ることをやろうじゃないか」

「はい、早速プレゼンの内容を詰めたいんですが社長、お時間ありますか?」

「ダメだ」

 小鉢の提案を莉掛はすっぱりと断る。

「何か予定があったみたいですね」

「私のじゃない、君の方だよ」

「私ですか?」

「今日は土曜日だ。息子と2人で過ごすべきなんじゃないか?」

「いや、それはそうですが。社長には(まさる)の幼稚園の迎えのために定時で上がらせていただいてますし。それに父と母がいますから優には寂しい思いはさせてませんよ」

「…小鉢君。これは私から言うのは失礼かもしれないがね、私の経験から言わせてもらうけどね。片親がいないってのは大変なことだよ。父親がいなかったらお金の面で大変だし子供は孤独だし人の温もりを感じることが出来なくなってしまう。母親がいないと愛を知らずに育ってしまう。君は再婚は考えないのかね」

 小鉢は苦虫を噛み潰したような表情をして、

「社長にも言ったじゃないですか。私が離婚した理由を」

あくまで彼らの考えですので真に受けないようにしてください

次回は小鉢勇の過去話をちょっとします

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