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お前らだけ超能力者なんてズルい  作者: 圧倒的暇人
第2章 神岐義晴
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第21話 テレビ出演③

「さ、話したいことは終わりましたし、そろそろインタビューを始めましょうか?」

 そういえばまだ始まってすらいなかったんだよな。忘れてた。

「そうですね。カメラ回っててもいい感じだったんですけどね」

 どうせ先に発表されるなら俺の反応といった形で見せても良かったのではないかと思うが小鉢自身がハイになってしまっていたのでやはり使えないだろう。外に出せない発言もいくつかあったしな。

「ははは、まぁやってもいいとは思ったけどアレをまんま流すとねー」

(ディレクターとしては最高に面白いとか言っちゃってたからなこの人。流石にあの発言を流すのは局の人間としてアウトなんだろうな。テレビ夕日が叩かれかねないな)

「じゃあその分こっちも頑張りましょう」

「そうだね。じゃあ準備するからちょっと待っててね。広末さん、よろしくお願いします。霧矢君、段取りを確認しようか」

 広末というカメラマンは神岐の顔が映らないように角度を調節している。

 毎回顔を映さないようにカメラを動かすのは面倒なのか、神岐を映す用と小鉢、霧矢のインタビュアー用の2台でインタビューを撮るようだ。

 神岐は自分のために余計な面倒をかけてしまい申し訳なく思った。


 打ち合わせが終わったようだ。

「それでは始めましょうか?準備いいですか?」

 準備も何もそっち待ちだったんだが…。

 というか普通受ける側も打ち合わせするもんじゃないのか?

 やったことないから分からないな。

 事前情報なしで直な反応を見たいのか、それとも多少のアドリブが効くと思われているのか。

「えぇ、大丈夫です」

 とりあえず当たり障りなく答えておこう。



 インタビューはそれからつつがなく行われた。

 小鉢さんが俺のプロフィールを語り、俺に色々と質問や意見を求めてきた。

 さっき言ってた野球界のことも聞いてきてとりあえず体裁のために謝罪のようなことを言った。霧矢さんからは真面目な質問が多かった。動画以外の普段の生活のことも聞いてきた。小鉢さんから色恋の話をされた時は何故に?と思ったが、そういう変化球な質問もテレビ的には必要らしい。

 つくづくテレビってのは面倒だなって思ったよ。


「何故あの動画を撮ろうと思ったんですか?」

 小鉢が今回の目的とも言える質問をしてきた。

「そうですね…、特にこれと言った理由はないですね。何かためになる動画を作りたいと思って考えた結果が速い玉を投げれるようにする、でしたね。正直何でも良かったんですよ。スロットで必ず777が出るとかも出来ましたし」

「えっ、そんなことも出来るの。ちょっと後で教えてくれないかな?」

 仕込みばりの食いつき方をしてきた。ちなみに打ち合わせしてないのでこの下りは完全に自然だ。

「おいパチンカスw。どうやらダメな人が食いついちゃうみたいなんでこれはなしにしましょう」

「そんなー」

 パチンコ好きなんだろうか。あまり褒められた趣味ではないな。隣の女性も軽く引いている。


 俺と小鉢さんが友人関係 (と言ってもなったばかり)ということもありギクシャクしたりせずワイワイとインタビューが進んでいった。

 霧矢さんはいい具合にストッパーとして働いてくれており内輪になりかけた時に話題を振って空気を変えてくれる。


「comcom君がユーツーブに動画を上げるきっかけって何だったの?」

 定番の質問だな。

「丁度僕が始めた5年前はユーツーバーが注目され始めた年で僕もその流れに乗ったって感じですね。僕と同じ頃に始めた人で有名になった人って結構いますよ」

 ゲーム実況者のスパイダーJOEや美容系の笹宮(ささみや)カレン、過激系のぴっかりんなどなど、2013年に始めたユーツーバーは桁が前年と比べて2個飛ぶほどに物凄く多い。自分は日本の投稿者の中で5番目だったが前の5番目、つまり今の6番目のユーツーバーも2013年組って聞いたな。名前ど忘れしちゃった。ちなみにサフランさんは2011年から投稿を始めた人だ。

「最初の頃は慈善活動のようなことをしてたみたいだけど何でゲーム実況とかではなくそれにしたの?」

 よく調べてるな。本当に初期の初期の動画だ。投稿したのは6本くらいだ。本当はその4倍近く出来事はあったけど動画に出来ないからしょうがない。撮影となると竹満をその場に連れてこないといけないからだ。そうなると竹満に被害が及ぶ可能性がある。当時は竹満に能力を使いたくなかったので竹満抜きで出来るかつ動画で流せるものとなった結果が6なのだ。

(と言ってもこの前の動画で能力を使ったんだけどね。あれはしゃーないよな。比較がおらんと信憑性がないし)

「ただ流れに乗ってチャンネルを開設しただけで特に何かしたいというのがなかったんですよね。それで何もないから視聴者から集めようってことでメールボックスを解放してそこに寄せられた質問に答えたり悩みを一緒に解決したりしましたね」

 こんな感じの答え方でいいかな。

「それが動画にもあるフリーターを正社員にしたり詐欺に遭った人を助けたりとかしたのかな?」

「はい。今も元気にやってるとたまにメールで連絡が来ますよ。それを見て自分のやったことで救われた人がいるって思えて活動のモチベーションに繋がりますね」

(本当は親衛隊になってもっと密な関係になってるけどね)

「そうですか…、それでは最後に、今後の活動についてお聞かせ願いますか?」

 今後…、同じ境遇になってるはずの能力者を探すってことしか考えてなかったからな。動画でってなるとまだ決まってないんよなぁ。

「今後ですか…。そうですねー、今まで30万人の中堅どころでやってきましたがもう400万人で日本で5番目のチャンネルになっちゃいましたからね。今までのような動画ではみんな満足してくれないと思いますから、もっと面白い動画を、野球動画だけの一発屋って思われないようにあのクオリティーを維持し続けられる活動をしていきたいですね」

 言うは易しやるは難しってか。言ってはみたがキツイだろうなぁ。

「分かりました。我々もcomcomさんの今後の活躍に期待しています。これでインタビューを終わらせていただきます。今話題のユーツーバー、comcomさんでしたどうもありがとうございました」

「こちらこそありがとうございました」


 ♢♢♢


「カメラ大丈夫?」

 小鉢が広末に確認を取る。

「okです。ちゃんと顔は隠れています」

「霧矢君、記録は問題ない」

 霧矢にも確認を取る。

「問題ありません。録音も出来てます」

「分かった。comcom君、大丈夫だよ。お疲れ様」

「そうですか、お手数おかけしてすみません。どうもありがとうございます」

「気にしない気にしない。その手間あって良いのが撮れたんだから」

「広末さん、撮影ありがとうございました」

「っ…、あぁこちらこそ」

 広末は何か詰まったように答えた。

 神岐は何かしたかなと思案していると小鉢が耳元で…

「技術スタッフは名前ではなくて役職で呼ばれることが多いんだよ。音声さんとかディレクターとかね。君がちゃんと彼の名前を覚えていてそれでちゃんと名前で呼んでくれたことが意外だったんだよ」

「あぁーなるほど」

 裏方だって番組を作る上で必要不可欠な存在なのにな。自分は1人でそれをやってるからこそ裏方の苦労は身に染みて分かる。

 名前で呼ばれないなんて可哀想にな。裏方との関係性を構築することが大事だと分からないもんかね普通。

 竹満との信頼関係を思い返す。

 神岐は片付けをする霧矢と広末を見ながら小鉢と軽い談笑をした。


 ♢♢♢


「それじゃあ今日はありがとうございました」

「いやいや、わざわざここまで来てくれてありがとね」

 会議室から出た廊下でペコペコし合う2人。

「じゃあエントランスまで送っていくよ」

「助かります。ここは構造がよく分からないから」

「テロ対策で迷路みたいになってるんだよ。他の局も入り組んだ構造をしているけどうちは遊び心でさらに複雑にしたからね。俳優さん達からも苦情が多くて困るよ」

 ケタケタ笑う小鉢。

「大丈夫なんすかそれ」

「まぁ皮肉った感じで言ってるからね。道に迷わずにスタジオまで入れたらそいつは有名になるとか社長もよく分からないこと言ってたしね。真に受ける人もいるけど」

「ははっ、変なところに力を入れてますね。そんな奴いるんですか?」

 神岐も鼻で笑う。


 2人で話していると前方から1人の女性が近付いてきた。

「お疲れ様です小鉢さん」

「おぉー、お疲れだね〜夏帆ちゃん」

 ん?夏帆?

「小鉢さん、何回も言いましたが夏帆って呼ばないでください。あまり気分が良いものではないので」

「ああー、ごめんごめん。許してよ滝波ちゃん」

 滝波?んん?えっ?

「はぁー、まぁそれでいいです」

 あれ?どこかで見た気がする……

「今日うちで収録あったの?」

「はい、映画の宣伝でラジオ番組に少しだけ出演することになりまして。そちらは新人のADさんですか?」

「あぁ、違う違う。こちらはユーツーバーのcomcom君だよ。僕企画の番組に出てもらっててね。さっきまで撮影やってたんだ」

「comcom?…comcomってあのcomcomですか!?」

(何でこんなに驚いてるんだろうって思ったら俺今素顔だからか。てかおい、間違いねーや。この子、間違いない)

「小鉢さん、この人ってもしかして…」

 もしもがあるかもしれないから確認を取ろう。

「入口のポスターを見たろ?声優の滝波夏帆ちゃんだよ。運がいいね。こんな美人な有名人に会えるなんて」

 はいモノホン来ました。ヤバい。インタビューの時よりも緊張してるかも。

「いや、まぁたしかに可愛いですね。ちょっと直視しづらいですね」

 神岐がそういうのも無理はない。

 それほどに生の滝波夏帆は綺麗だったからだ。

「初めまして、滝波夏帆と言います。あの、本当にcomcomなんですか?」

「えぇ、はい、そうですよ。私を知ってるんですね」

「今あなたを知らない人なんていないですよ。野球の動画拝見しました。あの、カッコいいんですね。顔をいつも隠されてるからてっきり顔に自信がないものかと」

 顔に自信がないって直接言うねぇ。

「身バレ防止のために一応ですよ。事実ほら、こんなに知名度上がっちゃったし、よりそういった問題には気を付けないとね」

「そうなんですね。弟もcomcomさんの動画を見てるようでして、この前私の前で150キロ投げた時は叱りましたけど」

 大体20〜40キロUPぐらいだから元は年齢相応だな。

「ははは、効果が出て良かったです。けど、その弟君にも投げる側受ける側両方の準備を整えてから投げるようにと伝えておいてください」

「はい、ちゃんと伝えておきます。あの〜、写真1枚いいですか?」

「写真ですか?」

「はい」

(これは…凄い場面にいるんじゃないか俺。話題の声優に写真を求められるって、俺ユーツーブやってて良かったかもしれん)

「誰にも見せないなら大丈夫ですよ」

「本当ですか?大丈夫です。ロックはかけてますから。小鉢さん、写真撮ってもらっていいですか?」

 滝波がスマホを小鉢に渡す。

「あぁ、じゃあ僕のスマホでも撮ってくれませんか?」

 神岐も同じく渡す。

「あぁ広末さん、あなたの苦労が分かりましたよ。俺は裏方だなぁ」

 何やらブツブツ小鉢が言っているがしっかりとそれぞれのスマホで神岐と滝波のツーショットが収められた。

「ありがとうございます。それじゃあ私はラジオがあるので失礼します」

「頑張ってね滝波ちゃん」

「頑張ってください」

 はいと言うと滝波は去っていった。


「小鉢さん、滝波夏帆と面識あったんですね」

「声優系の番組の時にちょっと喋ったぐらいだけどね。まさか向こうから声をかけてくるとは思わなかったけど」

「ディレクターの名前を覚えているなんて努力家なんですかね?」

「……さっき変なところに力を入れる人がいるって話をしたね。彼女がそうだよ」

「あの子がですか?」

「彼女、マネージャーもウチのスタッフも付いてなくて1人だっただろ?つまりそう言うことだよ」

(滝波夏帆って確か高校1年生だったよな。若いのにしっかりしてるんだな。好感が持てる)

「社長も彼女を気に入っていてね。今回の映画の声優は絶対滝波夏帆だって譲らなくてね。それで滝波ちゃんが起用されたんだよ」

 思わぬ裏事情を聞いてしまった神岐はそれ一般人の僕に言っていいのかと訊ねる。

「君は他言しないだろ?信頼の証さ。それに社長のゴリ押しがなくても話題の声優ってことで滝波夏帆を起用する予定だったしね。流石にポスターに滝波夏帆を使うのは可笑しいと今も思ってるけどね」

(あの違和感丸出しのポスターは社長の暴走か。てか滝波夏帆好き過ぎだろ)

「面白い社長さんですね。一度お会いしてみたいですね」

 冗談めかしく言ったつもりだったのだが…。

「えっ?会いたいの?じゃあ会ってく?」

「えっ、会えるんですか?」

「元々君をエントランスに送った後に社長に今回のインタビューのことを伝えに行くつもりだったからね。comcom君も付いてくるかい?」

 思わぬ提案だが神岐に断る理由はない。

「可能なら是非」

「分かった。じゃあ社長室まで行こうか」

 小鉢は進路を変えて迷路を進む。

(まさかテレビ夕日の社長に会えるなんて。こんな自由なテレビ局を作った人はどんな人なのか興味が湧いてきた)

 2人はエレベーターで上の階へと進んでいく。

終わらないテレビ局編

次回は社長と小鉢のぶつかり合いです

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