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お前らだけ超能力者なんてズルい  作者: 圧倒的暇人
第2章 神岐義晴
15/157

第15話 魔法のピッチング

 先日行われた合コンから数日後

 週末の土曜日。

 神岐はとある野球場に来ていた。

「悪いな、いつも機材の運搬とか手伝ってもらって」

 神岐はバンの運転手に声をかける。

「いや、いいってもんよ。ちゃんと報酬に見合った仕事をしないと気持ち悪いからね」

「相変わらず真面目だな。そういうところ昔から変わらないな」

 運転手の名前は竹満宗麻(しゅうま)

 神岐とは小学校の頃からの付き合いの幼馴染である。

 comcomが神岐であることを知っており、comcomの活動を裏から支えている大事なパートナーである。

 そのため神岐も彼には超能力を使わず神岐=comcomであることを隠していない。

 大学は神岐とは違うがこうして屋外や遠出での撮影の際は運転手兼カメラマン兼荷物持ちとして竹満が同行することが多い。

 律儀な性格で手伝ってもらった分の報酬を払おうとしても頑なに受け取らない奴だ。

 動画で収益が充分得られるようになってからは神岐の説得に折れ受け取るようになったが東京都の最低賃金×労働時間分+ガソリン代などの経費のお金しか受け取ろうとしない。

 そんなにかしこまらなくてもいいとは神岐も言っているが助けてもらった恩返しだと譲らない。

 恩返しと言うが竹満に何かした覚えはない。


「にしてもよくこんな場所を借りれたな。最近ではこういった活動に否定的な大人達が多くて撮影禁止とかもあるのに」

 整備の行き届いた野球場。プロ野球では使われないがアマチュア球団などが頻繁に使うぐらいの設備は整っている。

「あぁ、普通に企画の内容を説明したら快く受け入れてくれたよ」

「へぇ、そうなんだ。ところで今日は何するんだ?試合をするにしても俺と義晴の2人しかいないぞ。ピッチングマシーンもないし、まさかキャッチボールをするなんて言わないよな?」

「だったら近くの公園でも事足りるだろw。まぁ公園でも出来るけどこういうのは見映えが大事だろ?」

 動画投稿者として映えは気にしないと。

「そうだけどさー」

「まぁ企画の内容は後で説明するよ。とにかく、早くこれ全部運ぶぞ。俺は着替えもあるんだから。ちゃっちゃと終わらせるぞ」

 神岐が三脚を運ぶ。

 竹満はカメラを運んでいる。

 この野球場は神岐が見つけたわけではない。

 球場関係者に連絡を取ったのは神岐で間違いないがそこに至るまでには神岐や竹満以外の人物の助力があったのだ。


 ♢♢♢


 comcomをネットで調べるとある噂が浮上する。

『comcomチャンネルには本人公認の謎の親衛隊がいる。

 comcomの活動を裏で支える人達。

 一般人からその道の上級職の人達まで職種業業種は多岐にわたると。

 リスナーが生放送中に親衛隊は本当に存在するのかと問いただしたことがあるがcomcomはそんな人達はいないと断言した。

 そしてそれっきりcomcomの放送でその話題が上がることは一切なくなった。

 comcomを知って久しいリスナーはこれは親衛隊に消されたのだと掲示板で話し合っている。

 そんな謎に包まれた親衛隊なるもの。本当に存在するのか。はたまたネットの情報が一人歩きして都市伝説になってしまったのか?


 結論は………




『今度野球の動画を撮りたいんだが誰か良い場所は知らないか?出来れば都心部で』

 とあるグループLINEにメッセージが送られる。

『少年野球でも使われるグラウンドで一般開放されてる場所ならここがいいんじゃないですかね? https://〜〜〜』

『確かに悪くないけど質素で見栄えが悪いな』

『じゃあここはどうですか? http://〜〜〜』

『ここいいね〜。けど小田原か〜。ちょっと難しいかもな。運転手の負担が多くなりそう』

『あの〜comcomさん、僕の知り合いで球場を経営してる人がいるんですけどー』

『場所と写真あるか?』

『場所は町田です。写真は僕が撮った写真ですけど〜 (画像添付) 以前他の動画投稿者にも提供した場所らしいんですがどうですかね?』

『…悪くないな。町田ならそこまで遠くないしな。うん、ここで撮影するよ。ありがとう千種(ちぐさ)

『いえいえ、comcomさんの役に立てるのならこちらも嬉しい限りです。伯父さんには僕から話を通しておきますね』

『それは嬉しいが、すまないが礼儀として俺が直接話すよ。千種はコンタクトを取れる時間帯だけ聞いといてくれないか?』

『分かりました』

『みんなもありがとう。今回の動画はおそらく世間を騒がせるものになってるから楽しみにしてくれ』

『『『『はい』』』』



 結論。

 親衛隊は存在する。

 それも神岐とズブズブの関係だ。

 彼らは神岐が活動を始めた初期の頃からのリスナーだ。

 今のcomcomは彼等なしでは語れない。

 数は多くなく20人ほどしかいない。

 しかし、内訳は学生や会社員から警察官、任侠や資産家などバラバラである。

 しかし、その全員が昔神岐に何かしらの形で救われて慕っている人達である。

 故に神岐も彼等との関わりを大事にしている。

 能力によって嘘や裏切りを出来なくしているので彼等の存在やここでの会話の内容が外に漏れることは絶対にない。

 信用していないからと言われればそうだが神岐としては可能性は限りなく0にしておくことに越したことはないという持論だ。


 親衛隊の中学生、千種の助力もあり、無事に球場を借りることが出来た。


 ♢♢♢


 竹満がカメラの準備をしている間に神岐は動きやすいジャージに着替えていた。

(まだ6月だってのに晴れててよかった)

 合コンの日と同じく今日も快晴である。

 しかし来週からは台風が近づいてるのもあって天候は荒れるらしい。今年は全然雨が降っておらず水不足の危険があるらしい。その中でこの台風は吉報だろうか。


「義晴、準備終わったぞ」

 カメラのセットを終えた竹満が更衣室にいた神岐にだ話しかける。

「あぁすぐ行く」

「マスクとサングラス忘れるなよ。前付けずに撮って動画1本お蔵入りにしたんだからな」

「分かってるって。お前も気付いてたなら言えばよかったのに」

「俺も途中で気付いたんだよ。しっかりしてくれよ」

「はいはい。ほら、カメラ回す準備してくれ」

 更衣を済ませた神岐は更衣室を出てグラウンドに出た。竹満は神岐がピンボケしないようにピントを調整する。

 複数のカメラを使用して撮影するのでその全てのピントを調整した。

「じゃあ行くぞ〜。3、2、1……」




「…はいどうも、comcomです。どうぞゆっくりしてってください。今回はねー、見てこちら!」

 竹満が球場全体をなめるように撮る。

「こちら町田市にある野球場に来ております」

「まぁ試合をするのかなと思うかもしれませんが、残念ながら友達がいないので、ここには私とカメラマンの2人しかいません」


「では何をするのか?今回は君達にレクチャーをしたいと思います」

「使うのはこちら」

 神岐が背中に回していた左腕をカメラに見せる。

「今回使うのはこの普通の軟式野球ボール。これを使って今回は速球を投げるためのコツを教えたいと思います」




「公園で良かったじゃん」

「設備がちゃんとしてる方がいいだろ?お金はあるんだから。使える時に使っとかないと」

 一旦カメラを止めて神岐と竹満が話している。

「速球って、義晴って野球経験あったっけ?」

「いや、学校の授業程度でしかないよ」

「大丈夫なのか?」

「まぁ何とかなるよ」


「さぁというわけで、速球のレクチャーをしたいと思います」

「まず普通に投げてみたいと思います。キャッチャーがいないので壁当てになりますが許してね」

 神岐がピッチャーマウンドに立ちボールを握りしめる。

「いきまーす」

 両手を上に上げ投球モーションに入る。

 野球経験が浅いようだがモーションは申し分ない。

 そして神岐がボールを放った。


 バンッ


 神岐と竹満しかいないためボールを取るキャッチャーがいない。

 そのため壁に向かって投げている。なので壁に当たったボールは跳ね返ってコロコロと神岐側に戻っていく。

「それでは何キロだったか見てみましょう」

 設置したスピードメーターのところに行く。

 竹満もハンドカメラを持って走る。

「えぇーと、球速は……130キロ!」

「俺の年で妥当な球速なのかも分からないな」

 軽く竹満に目配せするが竹満も知らないのだろう、首を横に振った。

 130キロとは高校生のピッチャーの球速だ。

 普段運動をしていない神岐にしては出ている方だろう。

「じゃあちょっとカメラマンにもやってもらおうか」

 竹満が首をブンブン横に振って全力でノーを出す。

 竹満は映るのを嫌がるため一度も動画に出たことはない。声も体もだ。

「大丈夫、マウンドは撮らないから。壁とスピードメーターしか映さないからさ。俺だけだと検証にならないだろう?」

 そう言うと渋々竹満は了承する。

 マウンドを映さないように注意しながらカメラの位置を調整する。

 竹満の準備が整った。

 竹満が手を上に上げる。

「準備が整ったらしいので投げてもらいます。ではどうぞ」

 竹満が投球モーションに入る。

 竹満も運動はしていない。

 大学でも神岐の手伝いやバイトぐらいでしか体を動かさない。

 そのため神岐よりも竹満の球威は弱かった。

「速度は……115キロ!僕よりは遅いですね」

 竹満も神岐より遅くて少々ガックリしている。

「まぁそう気を落とすなって、今から上がる方法を教えるからさ」

「そんじゃ、行ってみましょーう!」


 ♢♢♢


 シーンチェンジ


「じゃあ球速を上げる方法を説明するね。まずは………」



 基本的に球威を上げるなら腕の回し方や回転軸に注意すると上がるらしい。

 それでも一朝一夕で早くなるものではない。

 神岐が説明しているのも腕の回し方や腕の力だけを使わないだとかのネットで拾ってきたような知識だ。

 確かにこれでも継続して続けていけば球速は上がる。

 しかし、神岐の目的はそこではない。

 本当の目的は何気ないこの説明の中に能力の発動条件を満たすことである。



 超能力には能力ごとに発動条件がある。

 神原奈津緒の『自己暗示(マイナスコントロール)』は頭で念じる。暗示をかける。

 鬼束市丸の『色鬼(カラースナッチ)』は物に触れてその物体を多く占めている色を宣言、これは口に出さずとも頭の中で思うだけでいい。

 基本的には念じる『能力発動』と思うことで発動する。

 中には本人の意思に関係なく発動するものや常に発動しているものもある。

 また環境や状況によって発動するものもある。

 そのため発動条件を見つけられなければその人はただの一般人と同じということである。

 しかし、超能力は特殊な電気を脳に流されなければ発現しない。

 超能力者同士の子供に超能力が遺伝するかは未だ分かっていない。

 知っている可能性があるとするなら、特殊な電気を開発した者達だけだろう…。

 故に現段階では後天的でしか超能力を得ることが出来ない。



 話を戻そう。

 神岐の能力の発動条件は、彼の姿を捉えた状態で彼の声を聞くことである。

 神岐の能力は発動条件を満たした相手の認識を操作する。

 Aの物をBに見せたり、ピーマンが嫌いな人をピーマン大好き人間にしたり出来る。

 しかし完全に操れるわけではない。

 あくまで行動を取るのはその人の意思である。

 よく脳内会話で天使と悪魔が出てくる。

 あれの悪魔しかいないと考えてくれればスムーズだろう。悪魔を神岐の好きなように設定できるのだ。

 大抵の人は悪魔を選ぶが理性の強い者は悪魔に溺れずに自分の意思を貫く。しかしそんな人物に出会ったことは一度もない。

 神岐自身がこの能力に気付いたのは5年前である。

 超能力者にされたのが10年前なので5年間は自分が超能力者であることに気付かなかったのだ。

 神原は一週間ほどで異変に気付き、しばらくして自分に異能の力があることを体で理解した。

 神原の能力は思い込むことで発現する。

 思い込むことなど日常的にも多いため彼は早くに気付くことができた。

 しかし神岐の能力は体を見せながら声を聞かせるのが条件である。

 学友などは普通にこの条件を満たすだろうがそこで学友を意のままに操ろうなど考えるはずもない。

 神岐が自分の能力に気付いたきっかけもあるのだがそれは今関係ない。

 神岐がcomcomとして活動を始めたのはそれから約1ヶ月後のことなのだがそれを語るのはもう少し先だろう。

 それにしても神岐の能力と動画は非常に相性が良い。

 声は普通に入るし体だってマスクサングラスで顔が隠れていても能力は充分に発動するからだ。

 ゲーム実況においても右下にワイプでも入れておけばそれで充分である。


 神岐は説明の中である催眠をかけた。

 それは投球時に限り体のリミッターを外す催眠である。

 長距離走をする時人はずっと全力で走り続けることが出来ない。

 それをすればすぐにバテて走れなくなってしまうからだ。

 それは体がもう走れないと危険信号を出してるからである。

 ではその危険信号が出なければ?

 単純に考えればフルの距離で全力を出せるだろう。

 しかし、筋肉の疲労は蓄積される。

 明らかに身体能力以上の活動をしたら体にどんな悪影響が出るか分かったものではない。

 肉離れ、疲労骨折、過呼吸、脱水症状。

 様々な症状を引き起こすだろう。


 伊勢物語のあづさ弓という古典の物語がある。

 貴族の娘が男を追いかけて全力疾走をするが人生で走ったことなど一度もない娘が走ったせいで死んでしまうという話だ。


 故に無理をすると体にガタが来てしまう。

 神岐は能力によってそのリミッターを外そうとしている。

 投球時という限りなく短い時間のため体への負担は最小限に抑えられる。

 最もそれで何十球も投げ続けたら流石に影響が出てくるがそれは自己責任としよう。

 莫大な力を得るには代償が必要。

 若い子達への教訓とするのも悪くない。

 などと都合の良い解釈をしながら神岐はカメラに向かって説明を続ける。



 そうして催眠入りの説明を終えた神岐。

 実際にレクチャーを元に投げてみる。

 するとボールは140キロを叩き出した。

「ねっ?こんな感じで球威が上がります。僕はたったの10キロしか速くならなかったけどたった20分ほどで10キロは凄いでしょ!」


 そして神岐のこの能力には欠点がある。

 それは神岐自身には催眠が効かないことだ。

 正に神原奈津緒の『自己暗示(マイナスコントロール)』とは逆の能力である。

 最も彼のは欠点だらけだが…。

 神岐は自分の能力にかからない。

 では何故球威が上がったのか?

 それは単純である。

 上がったように見せるために最初の投球は手を抜いていたのである。

 元々140キロを出せる肩を神岐は持っていたということ。

 140キロは甲子園でも投げられるほどの速度だ。

 運動をしてない神岐が何故そこまでの球を投げられたのか?

 これは実は超能力者特有のものがあるのだがその事実を誰も知らない。

 最初にそれに気付くのは神原と麦島の2人であるがそれはまだ先の話。


「じゃあ次はカメラマンの方に投げてもらいましょう」

 ほらっ、と竹満を促してマウンドが見えないようにカメラを調整する。

「じゃあ投げてください」

 竹満が投球をする。

 竹満はそばで先ほどの説明を聞いていたので実際にポイントポイントを押さえながら投げた。




「嘘……!」

 竹満はあくまで裏方。

 サポートこそすれカメラに映ったり声を出したりはしなかったし本人も嫌がっていた。

 それはこのチャンネルが神岐の物であり自分が入るのは邪魔だと感じていたからだ。

 神岐はそんなことはないと思っているのだが本人が裏に徹すると言っている以上出ろと急かすことも出来ない。

 竹満自身も徹底してきたのに思わず声が出てしまった。

 竹満の球が壁に当たった時、明らかに最初の時の音ではなかったからだ。

 神岐はそれをニヤニヤしながら見ている。

「……これは…ヤバちゃンコスだね〜」

 しかしニヤニヤしていたら明らかに不自然である。

 まぁマスクサングラスなのでバレることもないが…。

 気持ちを切り替えてあたかも予想以上感を演出しなければならない。

 3点リーダーもそれっぽく使いこなす。

「音が段違いですね。これは期待出来るのではないでしょうか?」

 神岐はニヤニヤをどうにか抑えながらスピードメーターのところまで走る。

「えぇー球速は……145キロ!私より出てますねー。ねっ?これ凄いでしょう?」

 能力が効かない神岐と違い能力によってリミッターを外されている。

 神岐よりも早いのも道理である。

 1球目が115キロだったので30キロ速くなったということだ。


「というわけで皆さん?どうでしたでしょうか?ヤラセだとか思う人もいるかもしれませんがそう思うのならこの動画を見て実際に試してみてください。ただし、無理をしてはいけません。速い球を投げるのはその分体への負担も大きいので体を作ってなおかつ投げる数も制限してください。これで体を負傷しても私は一切の責任を負いません。忘れないようにね。

 それでは皆さん、さよならバイバイ」




 竹満がカメラを止める。

「どや?凄いだろう?」

 神岐がニヤニヤを解放して竹満に詰め寄る。

「いや〜、あの〜…えぇ?30キロってヤバイだろ!?」

「この動画絶対伸びるよなw」

「いや、これむしろヤバイんじゃないか?これがもし大勢に知れ渡ったら今までの野球の、いや、投げる球技全般の常識が塗り替えられるぞ!」

 竹満は焦っている。

 神岐は勿論それを理解している。

 しかし例えそれで球技の世界の常識が変わったとしても自分にとっては2人を探すことの方が重要である。

 もし2人がこの動画を見たら必ず超能力を疑うに決まってる。

 それは白衣の男にも言えることだが。

 とにかくどちらにせよ向こうからの接触がかかる可能性が出てきたな。


 というかあれ?

 普段視聴者にcomcom=神岐だと認識しない催眠をかけている。

 2人を見ている前提で考えると2人も催眠にかかっている。

 認識できなくなったら接触が出来ない。

(しまったー!能力使ったらダメじゃん!)

 神岐は自身の作戦の不備に気付いた。

 というよりも、恋人など不要と言っておきながら暁美や奏音との付き合いを喜んでいるあたり案外そんなことはないのかもしれない。


 結論

 神岐、実は計画性がない!

 これは能力で意のままに出来るが故にそういった努力を怠った結果であろう。

 本人も今自分の計画性のなさを実感したので少しずつ改善されるだろう…と信じたい。


「義晴?どうした?」

 ずっと無言で考えていたため竹満が心配して声を掛けてきた。

「あぁ、大丈夫。まぁどうなるかはその時考えればいいよ。別に悪いことをしてるわけじゃないんだから訴えられるとかはされないだろうし」

「まぁ…それもそうか。逆に考えて皆んなが速く投げれるようになったらいいもんな」

「さっきも言ったが体が出来てない状態で投げ続けると故障するからな。投げても1日10球ぐらいにしとけよ」

「分かった。じゃあ機材を片付けようか」

「そうだな。ここを貸してくれたおじさんにも後でお礼言わないとな」


 そう言って片付けと球場を貸してくださった千種の叔父に感謝をし球場を後にした。


 ♢♢♢


「んしょと。これで終わり?」

「あぁ、ありがとう」

 ここは神岐の住んでるマンションだ。

 機材を全て部屋に運んでいた。

 2階とかなら往復も簡単だが神岐の部屋は10階にあるためエレベーターを使わなければならずいつも運搬に時間がかかるのだ。

「はい、今日の分」

 神岐は茶封筒を竹満に渡す。

 中身は今日の労働分のお金と距離から割り出した大まかなガソリン代だ。

「ありがとね」

「いいっていいって。本来なら口止め料も加えたいところだけどな」

「別に他言しないよ。この活動は楽しいしね。それをなくすなんてことはしないよ」

「そうか…。夕飯…食ってくか?」

「いいの?」

「俺の手料理だから味は保証しないけどな」

「いいよいいよ。俺もお腹空いちゃってさ〜。やっぱ体を動かしたからかな〜」

「だろうな。テレビ見てていいぞ」

 そう言ってキッチンへと向かう。

 料理は一人暮らしのおかげで雑ではあるがそこそこ出来るようになった。

(竹満も疲れてるだろうしガッツリした料理にするかな)

 神岐は冷蔵庫から豚肉を取り出す。

 どうやら生姜焼きを作るようだ。

 付け合わせは舞茸の味噌汁とコンビニで買ったミックスサラダ、そして白米だ。

(投稿するのが楽しみだなー)

 そんな先のことを想像しながら調理を進める神岐なのであった。

神岐義晴

能力名:不明

能力詳細:相手の認識を操作する能力

自身には効果がない

自身の声を聞かせて姿を見せることで自由に催眠をかけることができる

しかし完璧に操れるわけではない


竹満宗麻

能力なし


神原編でも話題に上がってた動画の制作話です

同じ話題の別視点って見てて面白いよね

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