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お前らだけ超能力者なんてズルい  作者: 圧倒的暇人
第4章 消えたヒロイン
102/165

第102話 府中動乱⑱

 府中に再度隕石が墜落した。

 墜落した後の彼らの様子を見て行こう。

「こちら津空(つから)、樺倉さん。応答願います」

 ザザッ「こちら樺倉。状況は?」

「隕石が府中に墜落。東京競馬場には被弾しておりません」

「そうか…、なら生きているか…」

「衝突箇所は陥没。周囲に砂塵が広がる様子もありません」

(あれだけの大きさなら津波みたいに周辺に土砂が広がってもおかしくないが…、衝撃波だけで甚大な被害はない…)

「ならこのまま東京競馬場に向かってくれ」

「承知しました」



「………ほっ」

「落ちないとは分かってても思わず頭をガードしちゃったわ」

 平原暁美と戸瀬奏音は東京競馬場の中で救援のヘリコプターを待っていた。

 神岐の尽力によって隕石の被害を受けることなく無傷でいられた。

 パパパパパパパパパパパパパパパ

「…どうやら来たようですね」

 2人を守っている設楽は空から聞こえてくる音に反応した。

 2人が音のする方向を見るとヘリコプターが一機こちらに向かって来ていた。

「あれは…、ウチのではないわね。暁美の家の自家用ヘリね」

 戸瀬不動産のヘリコプターは底部が青で塗装されているが空にあるヘリコプターの底部は白色だった。

「えぇ、ようやく迎えが来たみたいです。設楽さん。色の付いた旗などをお持ちですか?」

「…生憎手持ちがありませんね。しかし、この規模の競技場ならポールと大きい布ぐらい調達は容易でしょう。すぐに用意させます」

 オイ!と設楽が近くに控えていた人間に指示を出す。

(あれ?知り合いなの?たまたま競技場にいた人のはずなのに?)

 戸瀬は疑問に思ったが気にしないことにした。

 催眠人間同士だから初対面もクソもないことなど戸瀬には知る由もない。



「…あっぶね」

 鬼束丹愛は片町第2公園で隕石が墜落する様を眺めていた。

 大きな衝撃音が丹愛を襲う。

 公園には一切被害はなかったがあれだけの質量だ。近くに大きな物が落ちて来ているというのは恐怖だ。

「時雨ちゃんを逃がすなら……電車か」

 まずは府中本町駅の方まで行くことにした。

 神岐は隕石能力者と戦うはず。

 この隙に神岐の目からも逃れなくてはならない。

(市丸兄が心配だが、()()()()()()()を上手く使ってくれよ)


 ♢♢♢


 大きな衝撃音が甲州街道にまで届く。

 音に驚く人は、いなかった。

 お互いを見て、目線は外さず、戦う。


 鬼束市丸は追い込まれていた。

 雪走一真に見つかってしまいどんどん迫られている。

 布団で封じ込めようとしたが性能の高さを利用された。

 目の前の男は鬼ごっこだと言った。

 つまり、彼にとっては捕まえることが最重要の目的ということだ。

 だが最悪なことにこの鬼ごっこ、逃げる選択肢がない。逃げると丹愛の方を追いかけられるからだ。

 しかしそれはあくまで市丸が姿を現さなかった場合の話だ。あれから時間が経って男も丹愛がどこにいるか分からないはずだ。現に自分自身が丹愛がどこにいるか知らないからだ。

(神岐は能力を使って居場所を掴んでいるんだろうがな…)

 ここで自分を逃せば誰も捕まえられない結末になる。

 男の標的を自分に集中させた、これだけで一先ずの戦果は上がった。

 後は実録が来るのを待つのみ。

(布団では間に合わん。くそっ!次の手だ)

 市丸はベルトに仕舞っていた武器を取り出す。

 敵がこれだけ近付いたのなら照準も合わせやすいし走っているのなら直線で突っ込んでくるはずだ。

「『色鬼(カラースナッチ)』、黒」


「何を操作してくる」

 雪走は追跡対象がベルトに手を当てた動作を見て何かを操作して攻撃してくることを見越していた。

 まだ雪走は敵の操作系能力の全容を掴めていない。全速力は自然と緩まっていた。

(携帯出来る大きさか?だが布団やブルーシートを持って来れている。四次元ポケットのような能力も持っているかもしれない)

 操作系能力と分かっている以上なし、なし寄りのなしだが切り捨ては禁物だ。

 超能力(アビル)にはまだ解明されていないことだらけだ。発見したのが13年前であるし、この10年は業によって研究はストップさせられている状態だった。

(確か業は超能力(アビル)の電気を『超常の扉(アビリティーパス)』に閉じ込めるチームに配属していて圧縮を専門にしていたっけか…。能力ではなく奴のテクノロジーか。俺達と同様に超能力(アビル)以外の研究も続けてたみたいだな)

 圧縮技術を持っていれば布団ほどの体積をポケットに入れて持ち運ぶことも可能。

 そうなれば最初から持っていたことにも繋がり、能力はある程度雪走に近付かないといけないことになる。

(ブルーシートは陽動だから200メートル離れてても使ったってことか。なるほど…、今から取り出す武器が小さいからと言って油断できないということか…)


 雪走の推理は間違っている。

 間違っているがそれにより市丸が使う武器が何であれ決して警戒心を緩めないことに繋がった。

 超能力(アビル)の無限の可能性に対応する無限の思考。常に考察し、推察し、分析する。

 間違ってはいるが的外れで致命的ではない。

 体の内側がワクワクしている。

(たまんねーな!超能力者(ホルダー)同士の戦いってのはよぉ!)

 市丸が取り出したのは鋭利な物体だった。

我が道を行く(アイムハイ)』で目を凝らすと黒い物体のようだ。

(工具のドライバーか?真っ黒い。電動ではない市販品だな。面の次は点か)

 敵の操作系能力で自分を刺し殺そうということか。布団でも十分な速度が出ていた。仮に敵の操作系能力が操る物に応じて性能が変わるタイプなら、あのドライバーは小さく軽い分速度が上がるだろう。

我が道を行く(アイムハイ)』を使えば躱すことは造作もないが長時間酷使し続けると視力を失ってしまう。

(どこまで物理法則を無視出来るのか…、見ものだな)


 市丸は黒いプラスドライバーを回転させる。

 かつて神原奈津緒に仕掛けた高速回転するシャッター。

 移動操作を中心点に近付けることで小さい操作で高速度の挙動を実現させた。『色鬼(カラースナッチ)』の制約の隙をついた技だ。

 今回はシャッターよりも質量も体積も小さいためより速い速度での回転が可能だ。さながら電動ドリルだ。

 丹愛の釘攻撃の比にならない圧倒的破壊力。

 制限時間は1分半。

色鬼(カラースナッチ)』で操作中は本体である市丸は戦闘行為が行えない。複雑な動きをすると操作が出来なくなるからだ。

(かと言ってドライバーを見ないと正確な操作が出来ない…。丹愛みたいに予め動きをプログラムしておくってのも出来ないからなぁ)

 出来ないというより制限時間がある以上意味がないし1つしか操作出来ないからその間は手ぶらになるためだ。

 相手側のスピードが低下した。

 こちらが武器を取り出したことで警戒心を高めている。

(丹愛の釘攻撃も車の陰に隠れていたし肉体強化能力と言ってもダメージは受けるということ)

 神原奈津緒は動体視力で市丸の攻撃を躱していたが今回の敵はそれに加えて並外れた身体能力を持っている。神原奈津緒以上の敵になる。

 ただ同時にこうも思ってしまう。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と。

 根拠はない。しかし、一度戦ったから分かる。ドクターが神岐よりも気に掛ける理由も何となく分かる。言語化は出来ないが、根拠はないが確信に近いものがある。


 市丸は高速回転させたドライバーを真っ直ぐ雪走に向けて飛ばした。



「腕で弾くと皮膚が持っていかれるな。回避一択か。肉を切らせて骨を断つ戦法はリスクがデカ過ぎる」

 雪走は飛んでくるドライバーの回転音から直接触れることが危険だと判断して回避した。

我が道を行く(アイムハイ)』で視力を強化して見極めて、足を強化して回避した。

 ドライバーは雪走の後ろに進むとそこから大きく上昇して今度は空中から雪走に向かった。

 重力も威力に加算される上からの攻撃。神原奈津緒戦でも神原のアキレス腱を負傷させるだけの威力はあった。

「休む間もないなオイ!」

(視力強化から腕の強化で白刃取り…、いや切り替えが間に合わん。それに掴んだら手は使い物にならんくなる。…下手に触れねーな。能力分析をして弱点を探した方が良さそうだ。ってなるのが向こうの思う壺なんだろうな…)

(向こうが近付かず『色鬼(カラースナッチ)』の分析フェーズに入ればこちらの思惑通りだ。実録が来るまで時間を稼げる)

(時間を稼いだところで囮は変わんねーだろ。もう片割れを逃がすのは理解出来るが負けて俺が人質とかに使えば意味ないだろうに。それかあれか?時間稼ぎは別の理由があるのか?)


 ♢♢♢


 神岐が舟木達に電話をした理由。

 舟木真澄は能登八散や久留間紗穂に聞けば済むのにわざわざ電話をしたのは情報の擦り合わせを行うためではないかと疑った。

 神岐としては情報の擦り合わせの意味はあったがそれはあくまでついでで行いたかったことだ。

 本当の目的を悟られないようにするために敢えて情報の擦り合わせが目的であるかのように見せたのだ。

 では神岐義晴の本当の目的は何だったのか。


 それはこれ以上府中から離れないようにするためだ。

 では何故?


 競馬場通り

 南には是政通りがある交差点

 舟木真澄と九重那由多は東京競馬場に引き返していた。

 既にヘリコプターは舟木達の上を通り過ぎて東京競馬場の上で滞空している。

 おそらく神岐の知り合いを探しているのだろう。

 舟木達が東京競馬場を離れてからだいぶ時間が経っている。

 既に中に入っているだろう。

 着陸のためにヘリコプターが見えなくなって、再度見えるようになってから競馬場内に入る。見える=離陸して府中を離れるということ。神岐にもそう指示されている。


「なんか、指示されて動くほうが楽ねぇ」

「典型的な指示待ち人間ですね。ちゃんと日本人してますよ」

「こんなんで判別されたくないし()()()()()()()()()のあるし!」

「まぁでも自分で考えて行動するって結構大変だし面倒ですからね」

「お嬢様の指示はゴメン被るけどね。失敗したら私達のせいなんだもん」

 お嬢様という身分のせいだからか、それともお嬢様の元来の性格によるものなのか。

「はぁ、ここでの痕跡を全部消すのにどんぐらいかかる?」

「……そうですね。徹夜は覚悟しないといけないかもしれないですね。知覧にも見つからないようにするとなるともっとかかるかも…」

「…はぁ、夜更かしは美容の天敵なのに」

 それだけ自分達が蒔いた種が広がってしまったということだが、神岐がいるなんて想定外中の想定外、最悪のケースピンポイント打ちなのでこればかりは運がなかったと言うしかない。

 東門は信号の先にある。ヘリコプターが離陸して離れていけば東口から入ることにした。

 今はその待ち時間となっている。


 そう、既に東門に近いところにいる。これが神岐の目的。

 彼女達は神岐の電話を受けた時、府中日吉町の交差点にいた。

 どのルートで進むか悩んでいたが仮に神岐からの電話が来なかった場合、彼女達はそのどちらかのルートに進んでいただろう。

 つまり、もっと東京競馬場から離れていたということだ。

 神岐は牧村対処に集中するために浮いている舟木・九重をどうにかしようかと画策していた。

頭上注意(メテオライト・サテライト)』によって遠回りして東京競馬場に向かわなくてはならないと分かった時、神岐は道中で舟木達に『認識誘導(ミスリード)』を使用することを思い付いた。

 しかし、牧村をすぐに叩きたい。しかし舟木達が遠くに行けば遠くに行くほど牧村をフリーにしてしまう。

 そこでヘリコプターが来たタイミングを狙ってこれ以上遠くに行かないように電話で足止めをして、なおかつ東京競馬場側に引き返させることが出来た。

 神岐は府中八幡町2丁目にあるコンビニを右折して南に進んでいた。

 進んだ先は、ちょうど舟木達がいる信号なのだ。

 後はもういつも通りに……


 フォーーーン

 舟木、九重、そして『飴奴隷(キャンディソルジャー)』達は突如鳴ったクラクションの方を見る。

 助手席の窓が下がる。

「よぉー、舟木さんに九重さん。ちゃんと指示を聞いているみたいで安心したよ」

 クラクションで視線誘導された。その先で動いている窓から誰が出てくるか確認するだろう。

 舟木と九重も窓から神岐の姿が見えた瞬間に「しまった!」と目を逸らそうとしたが、一歩遅かった。

 神岐の発言であの場にいた全ての人間に『認識誘導(ミスリード)』が掛かってしまった。

 舟木と九重には『神岐の命令に全身全霊で取り掛かること』。そして『飴奴隷(キャンディソルジャー)』達には及川に使った飴玉の記憶を消去した。


「……ちゃんとやってるわよ。ね、那由多」

「はい、ヘリコプター待ちです。あなたの言う通りにしてると思うけど?」

「…いえ、その通りですね。失礼しました。ではヘリコプターが離れるまで待機していてください」

 神岐がそう言うとウィンドウが上がっていきながら車が発進した。

 舟木達が入ろうとしていた東門の中に車で入って行った。

 既に『認識誘導(ミスリード)』下だが彼女達はそのことに気付いていない。

 これが『認識誘導(ミスリード)』。


 ♢♢♢


「何事もなく、着いた」

 鬼束実録は謎の能力者を警戒しながら甲州街道を目指したが、何も起こらず府中街道まで戻ってくることが出来た。

「おそらく市丸兄達の方に……」

 サイドミラーは反対側の歩道の上を飛んでいた。つまり市丸兄達は府中街道の西側を歩いていて襲われたことになる。

 投擲が続いていないということは府中街道から外れたということ。

 神岐は球場前の交差点で攻撃を受けたと言っていた。

 そこから脇道に入って、そして敵もそっちに向かっていることになる。

 西側、自分のいる場所から西側に敵も市丸達もいるということになる。

「じゃあここにいると見られる……ん?」

 実録の正面の車に違和感を覚えた。

 その車は丁度府中街道と甲州街道の交差点にあり、2人の道路を見るのに適していた。

 その車の天井部に何かが刺さっていた。

 一応車の陰を駆使しながら敵に見つからないようにそこまで向かった。


「釘……複数あるから『高鬼(タワースナッチ)』だな」

 丹愛が攻撃を仕掛けたのは間違いない。今現在進行形で戦っている。

(けど敵はサイドミラーで攻撃出来るはず。現に周囲の車にサイドミラーがないし近くにサイドミラーだけがまとまって落ちている。遠距離合戦ではなく近付く必要が出来た)

 敵からすれば自分達はドクターの仲間ということ。自分達を逃さないように追いかけた。

(けど丹愛兄も市丸兄も能力の性質上接近戦は得意ではない。ならば…)

「どっちかが囮になって今戦っているな。おそらく市丸兄」

 時雨を助ける、しかし1人しか向かえない。という条件なら進むのは能力の幅がある丹愛の『高鬼(タワースナッチ)』になる。

 車に刺さっている釘。零兄からは煙玉しか渡されていない。ならばどこかで調達したということになる。市丸兄の『色鬼(カラースナッチ)』も使える道具を揃えて時間を稼いで丹愛兄を追わせないようにする。いつまで?


「……俺が戻ってくるまでか…」

 目的は分かった。

 敵は市丸兄と丹愛兄しかいないと思っているはず。

(俺も見えていたなら攻撃するはずだしな)

 今実録は敵には見つかっていない切り札になっている。

 気付かれないように近付いて動きを止める。そして市丸兄にトドメを刺させる。

 どれだけ2人が西側にいるか分からない。車でごった返して遠くまで確認出来ない。

 急ぎつつ、だが見つからないように近付く。

(かくれんぼみたいだな。かなり攻めっ気がある…。昔を思い出すな…)

 乗り捨てられた車が何台もあるから車から車へ移動しながらなら見つかることはないだろう。

 ただここに人影はない。見つかったらすぐに市丸兄の味方と判断されて不意打ちは効かなくなる。

 なにより向こうが肉体強化以外に広範囲探知の能力があれば背後から近付いてもバレてしまう。

 隕石能力と市丸兄と戦っている敵。もしかしたら神岐も感知していない他の敵もいるかもしれない。

 女側の味方もどこかに潜んでいるかもしれない。

 考慮事項が多過ぎるが出来ることからやっていこう。


「……なんかタイヤが其処彼処に転がってるけど、何でだ?」


 ♢♢♢


 東京競馬場上空

「こちら津空。暁美様と奏音様を発見しました。2人は無事です」

 2人が大きく手を振っている。隣で男が旗を振っている。上からでも分かる大きさ。応援団旗ぐらいはあるか。それを上に掲げながら大きく振っている。

(随分力持ちなんだな…)

「こちら樺倉。着陸出来るか?」

「はい、人も馬もほとんどいないため安全に離着陸出来ます」

「よし、すぐに2人を回収してそこから撤退しろ!人が救助を求めて競馬場に押しかけるかもしれない」

 確かに東京競馬場のそばに大勢で屯っている集団がいる。彼らが押し掛けるかもしれない。早急にやらないと蜘蛛の糸になってしまう。

「承知しました」

 旗持ちが平地に誘導してくれている。

 着陸体勢に入ってゆっくり高度を下げていく。


 パパパパパパパパパパパ

「もうすぐね」

「はい、最後に一目見たかったですが…」

 ヘリコプターの高度が下がっていく。

 ようやくこの危険地帯から脱出が出来る。

 まだ安心は出来ない。

 超能力という非現実がどこまで現実を侵してくるのか想像もできない。

(最悪なのはこのヘリコプターが私達の味方じゃないっていうことね。それされたらもう死ぬわね私)

(義晴様、どんな力をお持ちなのでしょうか?見せていただけるのでしょうか?空を飛んだり出来るのかしら?)


 高度が低くなるほどに風が平原達に吹き付けられる。

 女性にとっては髪型が崩れてしまうのでヘリコプターは女性向きとは言えない。

「津空さん!」

「暁美様、そして奏音様。ご無事で何よりです」

 津空が驚いたのは怪我もなく無事だったことではなく自分の名前を覚えていたことだ。

 すれ違って会釈するくらいでしかない関係性だが、彼女はしっかり顔と名前が一致していた。

(流石は暁美様…)

 末端にとっては名前を覚えてもらえてるのは嬉しいことだ。益々忠誠心が高まっていく。

 ヘリコプターの扉が開く。

「すぐに離陸します。急いで乗ってください!」

「は、はい。奏音、行きましょう」


 ♢♢♢


 小学生の少女を背負って移動するというのは大の大人であっても疲れる。

 衝突したぐちゃぐちゃの電車から離れて行く。

 まだ電車の中は混沌なのだろうがそいつらまで助ける義理はない。

 100メートルほど移動した。残り100メートル。

 踏切が目視で確認出来るまでになった。

 そして、後ろからガタゴトと何かが動いている音が聞こえてきた。

 電車は運行停止中。であれば答えは一つ。

 神岐が操った人間が線路内を車でこちらに来たようだ。

 彼らは時雨を狙っているはず。電車の中を捜索し、いないと分かれば電車から逃げたと判断してその周囲を捜索するはず。

 もう100メートルだが車の数が多い。分担で真っ先にこちら側まで来てしまう。

 線路はフェンスで囲まれている。先程やったようにフェンスをよじ登って越えるのは、時雨を背負っている今は難しいし時間がかかる。かと言って100メートル移動している間に間違いなく追いつかれてしまう。

(仕方ない)

 ドクターは自身の白衣のポケットを弄って緑色の球体を取り出す。

 それは鬼束零が使用した灰色の撒菱玉ともまた違う物であった。

 撒菱玉が車をパンクさせて動きを鈍らせる物ならば、この緑色の玉は破壊に特化している。

 ドクターは緑色のボールを自身の足元に1つ設置した。ただ置いただけだ。

(早く移動しないと)

 この緑玉はドクター自身も巻き込みかねない威力がある。射程距離は30メートル。

 30メートルの移動であれば十分に間に合う。

 線路戦は間違いなく制することが出来る。

 少しだけ移動速度が上がる。

 時雨を背負っている状態から抱っこに切り替える。

 間に合わずに被弾したとしても時雨にダメージを与えないための配慮だ。

「はぁ、これで()()()()()()になれば良いけど……」

現在の状況

神岐義晴

東京競馬場に到着


平原暁美・戸瀬奏音

ヘリコプターに乗車中


津空

ヘリコプターで東京競馬場に到着


鬼束市丸

雪走と交戦中


鬼束丹愛

府中本町駅を目指す


鬼束実録

甲州街道に到着


牧村桃秀

府中に潜伏して隕石を落としている


雪走一真

鬼束市丸と交戦中


舟木真澄・九重那由多

リタイヤ


ドクター・萩原時雨

線路から退避中



舟木真澄と九重那由多は操られたため実質リタイヤ。

これで女達は全員神岐にやられてしまいました。

やはり神岐と遭遇即逃走のお嬢様の戦略は大正解というわけですね。

意図したわけではないですがまさか全員神岐には想定外ですね。羽原ののは催眠人間にやられたわけですがその催眠人間は神岐の能力によるものなのでこれは神岐にやられたで間違っていないでしょう。

そして鬼束市丸vs雪走一真

雪走は負ける要素はないですが超能力は強烈なカウンターも可能なので慎重になっていますね

戦闘ジャンキーですが攻めあるのみで「防御?何それ美味しいの?」にならないのが流石は理系。

鬼束実録も向かっているので決着はそう遠くないでしょう。実録が活きるかどうかで勝負の分かれ目ですかね。

そして府中動乱編の終幕、神岐義晴vs牧村桃秀はまだ開戦していないですね。

平原達がようやくヘリコプターで脱出できるところまで来たのでいよいよですかね。

ドクターも一生懸命逃げてますね。

かつての研究者達は自身の能力の他に研究成果も使用してくるから戦うのは厄介かもしれないですね。研究内容がそのまま能力になった人もいますが、そこら辺は遠い未来に…。



さあ、次回も府中動乱です。

リタイヤが増えてきて登場人物が少しずつ減ってますねぇ。この調子でどんどん減らして行きましょう。

次回は東京競馬場、鬼束vs雪走が中心です。

府中中を動き回ってばかりの神岐ですが、そろそろ落ち着けるでしょうか?

そういえば東京競馬場にはあいつもいるはずですね。そしてあいつもいるような…

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