仙人VS聖剣、二回戦は………
マルテナの顔には満面の笑みが浮かんでいた。その状態で長剣を構えられると怖いものがあるが、将人はそれでいいと思った。マルテナは強すぎる、王女という立場もあった為、満足に戦える相手、友人がいなかったのだろう。そうなると今から行う戦闘は絶対に負けてはいけなくなった。ハードルを上げてしまった事に後悔するも作戦を考える。
(基本的なスペックではこっちの負け、懐に入っての近距離戦ではこっちに分があると考えていたがそれもダメ、こっちにあって相手にないもの………やっぱりあれしかないか)
将人は『三体式』の構えのまま『丹田』に意識を集中して『氣』を生成する。生成された『氣』は、体の中を滑らかに循環し、強まっていく。その強さをマルテナは肌で感じて、息を飲んだ。
「それがマサトの真骨頂か? お主の強さ、ワシに見せてみよ!!」
マルテナは我慢できないという感じで踏み込んだ。間合いに入り長剣を上段から振り下ろした。将人は左斜めに歩を進め長剣の一撃を避ける。伸ばしていた左腕の下を右腕を通り振り上げ、その勢いを利用して背中から体当たりをする。『十二形拳』の一つ『熊形拳』の応用だった。体当たりの衝撃と共に、今まで感じた事のない力が浸透していくのをマルテナは感じた。
(身体強化が解けた!? いや、魔法を解除させられた!?)
マルテナは衝撃で前に飛ばされたが、そこからさらに前に移動して距離を取り、長剣を正眼に構える。マルテナは身体強化魔法の呪文を唱え、身体強化をかけ直す。
「消去魔法を武術に取り入れた? いいや、違う。あの力は魔力とは違うものだ。マサト、その力は何じゃ!?」
その問いに将人は人差し指を顎に当てニコやかにこう答えた。
「それは秘密です」
マルテナは額に青筋を立てる。
「女子の問いには疾く答えるべきじゃ。男子がそのような動作しても可愛くないのじゃ」
「ヒドイ! 場を和ませようとしたのに………」
「ワシが勝ったら教えてもらうぞ!!」
そういうとマルテナは長剣の切っ先を両手で持ち柄の方を将人に向けた。ガントレットで両手をガードしていれば手を切る事はないだろうが、普通の剣術ではありえない異様な構えだった。
「マルテナ様、それは………」
「マサトよ、ワシはこれからお主の正面に踏み込んで上段から振り下ろす。防御は考えず、回避に全力を注ぐのじゃ」
将人はマルテナの宣言に躊躇しながらも、それに従う事にする。
「では、行くぞ」
その言葉と同時にマルテナの姿が消え、一瞬にして将人の目の前に現れる。将人は全力で横に飛ぶ。次の瞬間、素様しい轟音と共に瓦礫が飛び散り、将人に当たり、擦り傷を作る。
「一体何が………」
将人が眼を開けて見ると、マルテナが長剣を振り下ろした姿が見えた。長剣の柄は地面についていたのだがそのついていた部分に驚愕するような変化が起こっていた。その場で爆発が起こったように地面が抉れていたのだ。
剣は大抵、柄の方が切っ先より重い。その為、振り下ろすときの威力が増す。それに鍔の部分を相手に当てる事で振り下ろした時の力が鍔に一点集中する。さらに魔法で身体強化する事により、踏み込み、振り下ろしの威力が増す。これだけの力が人体に当たったらと思うと、将人は心胆を寒からしめた。将人の表情を見てマルテナはイタスラに成功した子供の様な笑顔を見せた。
「どうじゃ、驚いたかの? これがワシの必殺技の『雷撃』じゃ」
「凄まじいですね、まさに必殺技………」
「これを食らえば大抵の奴は血反吐を拭いて倒れる。父さまもこれには膝をついたぞ!」
「父さまって、王様に『雷撃』食らわすって何考えてんですか!? 下手したら死にますよ。この技!」
「う、うるさいのう。父様は今も健在じゃ。それよりどうする、まだ戦うのか?」
将人はやめると言いたかったが、それだとマルテナが悲しむ。やるしかないと諦め、盛大に溜め息をつくと『三体式』の構えを取る。
「マサト、お主はやっぱり面白い!」
マルテナはニヤリと笑い、上段に構える。再び『雷撃』を行うつもりのようだ。
(マルテナ様、遊び相手が出来てすごく嬉しそうだ。でも、これ遊びのレベルじゃないよ。下手したら死ぬって、コレ!!)
将人は心の中で毒づきながらも『丹田』に『氣』を集中する。体内で循環し『氣』を強める。マルテナも身体強化の魔法で強化をし、さらに長剣に魔力を流す。二人の間に緊張感が高まっていく。
「では、いくぞ!!」
マルテナが宣言し、左足を踏み込む。将人も同時に左足を踏み込む。マルテナは長剣の威力が最も発揮される距離で剣を振り下ろす。それに対し、将人は更に右足で一歩踏み出す。その際、伸ばしていた左手と腰に添えていた右手を『丹田』の位置で揃えてから前方を突いた。狙うのはマルテナの腕であった。振り下ろされようとするマルテナの腕を掴むと同時に『氣』を流し、身体強化を解除、威力を相殺する。そこで終わりかと思ったらまだ行動は終わっていなかった。両掌を翻し、マルテナの胸部に両掌を叩きこんだ。マルテナ将人の両掌をまともに食らい、後方へ吹き飛ばされる。その後地面に倒れ、激しくせき込む。
(王族を傷つけた………国際問題………)
将人はマルテナに駆け寄る。
「すみません、大丈夫ですか!?」
マルテナはせき込みながらも手で制する。
「…大丈夫じゃよ…だが、驚いたぞ。ワシの『雷撃』を…正面から…破るとは…自分…で言うのもなんじゃが…雷の嵐に突っ込むようなものじゃぞ」
「まさにそんな気分でした。でも、それぐらいしないと勝てないと覚悟を決めてました」
「マサトが使った技の名前を教えてくれぬか?」
「『形意拳』の十七の動作の一つ、『虎形拳』といいます」
マルテナは満足そうに眼を閉じる。
「そうか………マサト、ワシの負けじゃ」
マルテナは負けを宣言し、晴れ晴れとした笑顔を浮かべて気を失った。
「マルテナ様、お気を確かに!!」
将人はマサリアたちを呼び、マルテナに治癒魔法をかけてもらった。将人とマルテナの模擬戦、二回戦は将人の勝利で終わった。




