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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第九章 仙人、武術大会二回戦編
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仙人VS神剣、近距離での前哨戦

将人とアルマ、二人が同時に踏み込み距離を縮め間合いに入る。

将人には遠距離の攻撃方法はない。それに対しアルマには常人ではありえない魔力量を用いた魔法を使えばどのような距離であろうと十分に攻撃が出来る。故にアルマが接近して来る事はない。そう考えていただけにアルマが間合いを縮めてきた事に将人は驚きを隠せなかった。それでも体が勝手に動いて『崩拳』を出せたのは流石といったところか。それに対しアルマは長剣を振り下ろす。どう見ても将人の拳が先にアルマに届く。これはアルマの失敗か? 誰もがそう思ったが、アルマが魔力ののみで『神剣』を名乗っているのではない事を教えられる。

将人の拳の内側に長剣の側面を当てると同時に一歩踏み込み、下から巻き込むようにして将人の拳を持ち上げる。更に長剣の切っ先が将人の肩から胸部までを切りつけた。防御と同時に攻撃をこなした見事な技だった。

ガントレットをつけているし、クロース・アーマーと鎖かたびらも装備している為、ダメージはほぼないが驚きを隠す事が出来ず棒立ちになる。アルマが後方に下がり、再び中段に構える。アルマは呆れたと言った表情で将人を見る。


「何を驚いているのですか? マルテナがいくつかの技を懇切丁寧に説明していたようですがそれで全てな訳ないじゃないですか。父さまが作り上げ、それを練り上げた私の剣術、二つ三つの技を見たくらいで底が見える程甘くはありませんよ」


将人は戦慄する。将人は神速の『崩拳』を出す事が出来ない。それでも自分の得意な近距離戦に持ち込み、魔法を実行する時間を打ち消せば何とかなると思っていたが甘かったと言わざる負えない。


「これで諦めて降参するとは言いませんよね。簡単に諦められては困ります。これでは準備運動にもなりません」


アルマの慇懃無礼な物言いに少しムッとするが『神剣』の二つ名を持つ者なら言う資格は十分ある。


「……こっちもまだ全てを見せていません。これぐらいでい勝ち誇ってもらっては困ります」


慇懃無礼には慇懃無礼で言い返す。


「それはいい、アナタの全て見せて下さい。そのうえで打ち破ってあげましょう」


「神の剣で『形意拳』を破れるかやってみろ!!」


遠距離、近距離共にアルマが有利でも自分には近距離で戦うよりないのである。幸いにも向こうは魔力を使わず近距離で戦うつもりのようだ。殺しは禁止されている、多少の打撃は耐えて近距離で戦う。将人は腹を決め果敢に突っ込んだ。

突っ込んできた将人をアルマは無言で長剣を振り下ろす。長剣の刀身は将人の左肩を打ち付ける。振り下ろされる位置を予測し右肩に『氣』を集中し防御するがそれでも体の芯に衝撃が走る。衝撃にふらつきながらも前進を止めない。そしてアルマの間合いに入った。将人はすかさず両拳を上に打ち上げる。『虎形拳』をアルマは一歩引いて避ける。そこからさらに一歩踏み込み両手を開いて掌を下に向け打ち下ろす。頭上からの攻撃に対しアルマは剣を水平に寝かせ、その下に腕を置き、将人の攻撃を防御する。将人の攻撃の衝撃にアルマの腕は痺れ、膝をつく。


「この衝撃は!?」


「驚くにはまだ早い!」


将人は攻撃の手を緩めない。両拳で突く『馬形拳』、連続で突き相手の防御をこじ開ける『鶏形拳けいけいけん』、更に連続攻撃するがそれを全て防がれる。アルマは刀身を短く持ち、剣を剣として使わない、むしろ棒術、あるい杖術のように扱い将人の攻撃を裁き受け流す。


「また、それか!?」


アルマの鉄壁の防御に舌を巻きながら将人は言う。

アルマが使う剣術、これはアルヴァール国王が前世で学んだ西洋剣術がベースになっている。将人は西洋剣術は体格や力がものをいう力任せの剣術というイメージがあり、日本や中国の技の武術にはかなわないというイメージがあった。だが、マルテナやアルマの剣術を見て、その考えはひっくり返される。西洋の剣術にも術理が存在し、東洋の武術に匹敵する物だと言わざる負えない。刀身を短く持つ事で間合いを変え、防御にも攻撃にも用いるアイデアは見事だと言わざる負えない。

アルマは将人の攻撃を全て捌き、大きく後方に飛び、距離を取られてしまう。せっかくのチャンスを生かし切れなかった。

アルマは長剣を地面に突きさし、両手を軽く振る。将人の攻撃を何度の受け手が痺れたのだ。


「アナタの攻撃、見事です。私が防御一辺倒にさせられるなんて思いもよらなかった。素直に称賛します」


「それはどうも」


将人はその称賛を素直に受ける。


「私はあなたの戦闘スタイルに合わせて戦っていました。私が魔力が強いだけで『神剣』を名乗っているとは思われたくなったから。でもこれで私が『神剣』を名乗っている理由が証明出来ましたね」


「できればもう少し証明してみませんか?」


将人はアルマを説得する。将人がアルマと戦えたのはアルマが近距離での戦闘に付き合てくれたお陰た。遠距離になればアルマの独断場に早変わりする。不利な状況になるのは何としても阻止しなければならない。だが……。


「駄目です」


即答だった。


「証明はこれで終わりました。これからが私の真骨頂ですよ」


そう言い終えた途端、アルマを中心に暴風が如く魔力が放出される。将人は『氣』で防御するが体が浮かされ数メートル後ろに吹っ飛ばされる。その強大な魔力に将人の表情は歪む。


「こうなるのを防ぎたかったのに!!」


将人とアルマの前哨戦は終わりこれから本当の戦いだった。



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