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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第九章 仙人、武術大会二回戦編
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仙人、決勝戦前日、覚悟を決める

マルテナとの戦いで多少の怪我はあるが、アルマがマルテナに行った治癒魔法の余波で完治とは言えないが幾らか回復した。試合終了後休憩もかくやという勢いで将人はアカマ武器屋を訪ねた。裏の空き地を使わせてもらうためである。マルテナとの闘いで出す事が出来た神速の『崩拳』を再現する為だった。

将人は三体式の構えを取る。腹式呼吸を行い『氣』を『丹田』に溜める。下腹部に熱い圧力を感じる。下腹部を大きく膨らませ、勢いよくへこますとと同時に右拳を繰り出す。爆発呼吸による拳速と打撃力を強化する。更に左足を一歩踏み出し、右足を左足に引き寄せ強く踏み込む。パンという音が響くがあの時感じられた力の揺らぎが全くなった。意識しすぎたせいか、体に無駄な力が入り体各所の連携が乱れ普段より拳速が遅く威力が低いものになっていた。

その情けなさに将人は微妙な顔になる。


「ウーン……ダメだこりゃ?」


将人がマルテナとの闘いで出す事が出来た高速の『崩拳』、これが自在に出す事が出来るようになれば、決勝でアルマと戦う時、最大の武器になる。何せアルマはあらゆる面でこちらを越えてくる。膨大な魔力量で身体強化を行えばこっちの体力、速度を上回り、攻撃魔法を行えばこちらの『氣』の防御を突破してダメージを与えてくるだろう。防御に回ればジリ貧になる事は必死、とするならこちらから攻勢に出るよりない。だが、アルマはマルテナ以上の剣の使い手である筈だし、アルマの防御を突破する事が出来たとしても魔力の障壁でこちらの攻撃を防いでくるかもしれない。

攻も防も上をいかれる。マルテナは攻防をこなす城塞といったところだろう。その城壁を突破できる可能性があるのが神速の『崩拳』である。こちらの攻撃を防御するレベルの魔力障壁を張るにはそれなりに意識の集中が必要なはずである。その集中している時間が僅かな隙になる。神速の『崩拳』ならその隙をつけるはずだが、今のままではその隙を突く事も出来ない。


「さて、どうするか……」


マルテナとの試合が終わった直後にこの空き地に駆け込み、練習を始め一時間ほど、日の登り具合と腹の減り位を見ても昼を回っている。決勝は明日であり、疲れを残さないようにする為にも練習出来るのは後、三、四時間といった所だろうか。


「悩んでる暇はないな、反復練習あるのみだ」


一連の動作を思い出し拳を突く。


「ダメだ、タイミングがずれた」


更に突く。


「ダメだ踏み込みが遅い。腕の力だけでは威力が出ない」


突けばつくほど動作がおかしくなっている。練習した末にさらに弱くなりましたでは話にならない。


「だあ! ダメだ、もう休憩する!」


将人はその場に座り込む。そこで始めて体から汗が噴き出しているのに気が付いた。余程集中していた割に無駄な動作が多かった証拠だ。


「ダメだ、一つの事を考えすぎて結局悪い方向に進んでる」


自分の体の中にある力のはずなのにそれが自由に使えないというのはとても気持ちが悪いものだ。

目を閉じ軽い瞑想を行っていると声がかかる。


「オニィチャーン!」


「マサト殿!」


そう声をかけてくれたのは将人のパーティーでは戦闘色であるパウラとアベルトだった。その後ろにマサリアやエミリア、ファテマが次いで空地へ入ってきた。何故か皆手に長剣を持っていた。ぞろぞろと入ってきたかと思ったら将人を包囲する。何事かと思い立ちあがる。


「マサト殿、覚悟!!」


突然切りかかられ将人は咄嗟に避ける。何でと思っていると更にパウラが切りつけてくる。


「お兄ちゃん、覚悟ォー!!」


パウラの掛け声は何とも気が緩む、和むものがあったがそれはすぐに冷や汗に代わる。パウラの剣速が思ったより速いのだ。さっきのアベルトの剣速も通常より速い。こんな急なレベルアップをするものなのかと驚いた将人は動きを止めてしまう。そこへパウラとアベルトが切りつける。避ける事が出来ず二人の攻撃を受けてしまう。


「イタァ……くない?」


剣で切り付けられたというのにダメージを受けていない。感触が固い鉄製の物ではなかった。


「何!? この感触!?」


「面白いだろう、その剣」


頭に?マークを描いている将人を見てしてやったりという顔のシゲルイ・アカマ。


「どうよ、この練習用の剣。軽いし攻撃力はほぼゼロ。しかもこの刃!!」


シゲルイは近くにいたアベルトの長剣を渡してもらい、刀身と柄の部分を握り力を籠めるとグニャリしなり、刀身と柄を引っ付けることが出来た。


「しなるんだよ!」


「スゴイ! 凄いんだけど……意味があるんですか? この……フニャ剣?」


「切れない、それでいて打撃力もない、武器ではない武器、矛盾するが練習用としてなら十分意味はある。あえてこういう風に作るというのはそれなりに技術が必要なんだぞ」


「軽い故に剣速も上がるか……凄いんですが今ここでこれを見せる意味は?」


「いや、お前明日の試合の事ばっか考えて気難し気な顔をしてるもんだからちょっとしたイタズラをな……」


何とか神速に『崩拳』を再現しようと考えるあまり、居ついてしまっていたようだ。将人は一つの事を考えすぎるきらいがある。悪い傾向だと見たマルテナ達は一芝居売ってくれたようだ。


(気を使われてるな……)


悪いなと思いながらも嬉しい将人。そう思ったら自然とリラックスできた。


「練習はここまでにしてご飯でも食べに行こうか」


「いいの?」


マサリアが驚いた顔で聞く。


「『バカの考え休みに似たり』ってな。出来ない事に執着してもしょうがない。まあ、本番にかけるさ」


気負った感じがなくなった将人を見てマサリア達は一安心する。


(本番の集中力に賭けるしかないか……)


将人は腹を決める。すると体から抜けるが体の芯には力が入るのが感じられた。











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