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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第九章 仙人、武術大会二回戦編
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仙人、『聖剣』戦終了後、『神剣』心配する

この闘技場には貴賓席がある。王族や貴族といった者たちが安全に武術大会を見れるように結界が張ってある。攻撃魔法や盗聴も防ぐ、それでいて音や映像はちゃんとこちらに入ってくるし、音声も拾ってくれる優れものである。

だが、その結界はいとも簡単に破られた。将人の神速の『崩拳』がマルテナに入り勝敗が決した瞬間に内側から破られた。アルマの怒りと共に………。



「マルテナ様、大丈夫ですか?」


将人はうつ伏せに倒れているマルテナの元に歩み寄り、体に手をかけようとしたその時であった。上空から空を切り裂く音が、白い光弾が降り注いだ。その光は轟音と共に将人とマルテナの近くに落ちる。疲労困憊であった将人は光弾が落ちた時の衝撃に耐えられず、吹っ飛ばされ地面を何度がバウンドしうつ伏せに倒れる。何が起こったのかと顔を上げる。衝撃で巻きあがった砂塵の中心にはマルテナを抱き上げたアルマがいた。


「マルテナ、大丈夫ですか!? しっかりしなさい!!」


アルマの声にマルテナは答えない。マルテナの顔色は悪く、荒い息と大量の汗をかいている。心身に異常をきたしているのは一目瞭然だった。

マルテナを抱き上げたアルマには『神剣』と呼ばれる者の神聖なそれでいて凛とした強者の雰囲気はなかった。一人の妹を心配する姉の顔だった。その表情を見ながら将人は苦笑する。


(『神剣』と呼ばれてても、それはあくまで一面。家族の前では一人の女性か。マルテナ様、考えすぎなんじゃないか?)


マルテナは強さ故に孤独になっているアルマを倒してくれと将人に頼みこんできたがこの光景を見る限り、余計な心配の様な気がしてきた。


将人は立ち上がり、ふらつきながらもアルマの元に近づく。


「……あのう、治癒魔法でもかけてあげればいいんじゃないですか?」


マルテナの体を揺さぶったり、頬を軽く叩いて意識を覚醒させようとするアルマに将人は声をかける。それにハッとして慌てて治癒魔法の呪文を唱える。アルマの体が白く輝き始める。その光がマルテナを包み込む。その光は将人にも当たり、少しだが疲労感が薄れる。治癒魔法の余波でこちらも治癒されているようである。マサトには魔法が効きにくいというのに相変わらずの強大な魔力量である。


「ありがとうございま……」


将人に礼を言おうとアルマ。だが、その言葉は最後まで言わなかった。それところが表情を曇らせ、殺気が籠った眼光を向けてきた。試合とはいえ妹をぶちのめした相手に愛想よく出来る訳はなかった。


「あの……治癒魔法ありがとうございます」


将人は何を言っていいのか分からずへりくだってしまう。


「何で私があなたに治癒魔法をかけなければならないのでしょうか? 冗談じゃない!……でも、あなたが勝手に私の治癒魔法にかかって回復したというのならその分は返してもらわないといけませんね?」


「回復した体力を返すってどうやって?」


「こうやります……」


アルマは左腕でマルテナを抱き締め立ち上がる。右手には治癒魔法とは違う純粋な魔力の光が灯る。


「私のこの手が光って唸る! お前を倒せと……」


「それ以上はいけない!! 言ってはいけない!!」


攻撃を受けのとは違う心配をしてしまう将人。


「そうじゃ……止めてくれ、姉さま……」


アルマに抱かれたマルテナがか細い声で止めた。


「マルテナ、大丈夫なのですか!?」


アルマはマルテナを引きはがし、マジマジと見る。顔色は悪いが意識はしっかりしており、ちゃんと立つ事が出来ていた。


「姉さまの治癒魔法はよく効くのじゃが、完治とは言えん様だ。まだ、ダメージが残っておる」


「何ですって!?」


アルマが驚きの声を上げる。アルマの魔力量で行われた治癒魔法は一回行うだけで数十人を治癒する事が出来る、それが完治しないとは。将人の打撃は外部ではなく内部に深く浸透するのである。それ故治癒魔法だは治しきれないのだ。

アルマは将人を射殺す視線で睨む。将人はその眼圧に押され一歩後退る。


「姉さま、止めてくれ。これは尋常に行われた勝負の結果じゃ。それに口を挟む余地はないし、ワシの恥になる。ともかくワシは負けたのじゃ。それは誰の目から見ても明らか」


「ですが……」


心配げに見るアルマを横目にマルテナは将人を見る。


「しかし、マサトよ。お前一体何をやったのじゃ?」


「何を?」


将人は首を傾げる。


「お主、ワシの『雷鳴剣』を破ったあの技じゃ。お主のあの突き技、最初の『鉄の門』で簡単に弾かれておったよな。だが、『雷鳴剣』の時に出したあの突き技は物が違った。最初に出していれば『鉄の門』など簡単に破っておったじゃろうに、もしかしてワシ相手に手加減でもしとったのか?」


「そんな訳ないじゃないですか!!」


将人は思わず怒鳴ってしまう。


「俺にしたってどうしてあんな『崩拳』が出せたのか分からないんですから!?」


「つまりあの時初めて出来たって事か?」


将人は何度も首を縦に振る。


「そんな必殺技が出来る瞬間にワシは立ち会えたのか。なんとも幸運な事よ」


「でも、どうしてあんな事が出来たのか分からないんですよ。もう一度やれと言われたら出来るかどうか……」


「あれはお主が鍛え上げた物の集大成じゃよ。それを全て出そうと思えきっとまた出せる。精進せよ、そしてワシの期待にも応えてくれ」


「頑張ります」


「改めて言っておこう―――ワシの負けじゃ」


そう言った後、マルテナは将人の脇を通り過ぎる。その後をアルマが追う。将人の脇を通り過ぎる際「快進撃はここまでです。次の試合、あなたを完膚なきまでに叩きのめして差し上げます。お覚悟を」と言われ、背筋に寒気が走った。額から冷や汗が落ちる。


「俺、期待に応えられないかも……」


情けない事を言いながらも将人、マルテナに勝利。次はとうとう『神剣』との闘いである。『神剣』との決勝は翌日、それまでにマルテナとの闘いで出したあの神速の『崩拳』をものにしなければ。将人はその場で『崩拳』を繰り出すが何故か出す事が出来なかった。



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