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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第九章 仙人、武術大会二回戦編
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仙人VS聖剣、『雷鳴剣』対最速の『崩拳』

マルテナが表情を引き締め、長剣を上段に構える。刃を握り柄を掲げる日本剣術では考えられない異形の構え。マルテナを中心に緩みかけた空気がピンと引き締まるのが分かる。その空気の変わり様に将人はゴクリと唾をのむ。


(マルテナ様、凄い気迫だな……俺に勝って欲しいのか、負けて欲しいのかどっちなんだ!?)


将人は『三体式』の構えを取る。『氣』を循環させながら力を練る。


(さて、どうするか?)


将人は頭の中でシュミレーションをしてみる。そして顔をしかめる。何をやっても叩き伏せられるそんなイメージしか浮かばないのだ。


(ダメだ、自分のどの技でも叩き潰されるイメージしか浮かばない……どうしよう……)


将人には自分より小さいはずの美少女がとてつもなく大きな壁のように見えた。


「マサトよ、何やら色々考えているようだが、つまらぬ事なら考えるのをやめよ。今やれる最大限の事をやればそれでいいのじゃ」


「いいのじゃって言われても……超えるべき壁が高すぎですもう少し低めに設定してくれませんか」


「本当に情けない事を言うのう……男ならもっとシャンとせんか!! 股ぐらに大層なモンついとるんじゃろう!」


「股ぐらってアンタ何言ってんの!? はしたない……これはお父さんとお姉さんに報告させてもらわねば」


「グヌッ!? それは卑怯じゃぞ!!……これは気合が入るのう……脳天に一発入れて記憶を失ってもらわねばのう」


マルテナに変な気合が入る。マサトには幸運、棚からボタ餅かもしれなかった。


(どこを狙うか特定できた!! ならばそこを守って……)


改めてジュミレーションしてみるが防御を突破して脳天に長剣の柄が叩き込まれるイメージが浮かぶ。


(ダメだ、こりゃ!?)


舌戦では将人が有利だったが依然不利な状況は変わらない。時間だけが刻々と過ぎていく。死刑執行の時間が迫り将人は動揺する。


(どうする!? 刃引きの魔法がかけられていたとしても鈍器としては使えるし、あんな一撃脳天に食らったら記憶を失う所か命まで失うわ!!)


ラシェントの街の冒険者ギルドでの模擬戦を思い出す。その時出した技『雷撃』、これでも十分人を殺せる。さらにその上の技となると考えるのも恐ろしい。

将人は頭をフル回転させ、『雷鳴剣』を破る方法を考えた。考えるに考えて将人は考えるのを止めた。


(どう足掻いても『雷鳴剣』、これは破る事が出来ない。とすると後は自分が最も得意とする技を最速で出してマルテナ様が技を出す前にこっちの攻撃を当てるより他ない!!)


将人は覚悟を決める。そう考えて体に力が入っていることに気付く。力を抜きリラックス状態になる『氣』のめぐりが良くなりうねりを上げて循環し始めた。

将人の体がリラックスしたのを感じてマルテナがニヤリと笑う。


「ようやく覚悟が決まったか? もっと早く覚悟を決めんか、こうやって剣を掲げ続けるのは案外疲れるんじゃぞ!」


「すみません、その苦労終わらせてあげますよ。こちらの勝利で」


「軽口が叩けるとは……その意気やよし! 後はお互いの技で語るとしようか?」


「ええ」


将人が頷く。そして将人とマルテナが同時に動いた。

マルテナは『雷鳴剣』

頭上、股間、右横薙ぎ、左横薙ぎ、右袈裟、左袈裟、右逆袈裟、左逆袈裟の八連撃を一足で打ち込む、しかもその一撃一撃が必殺の『雷撃』。こんな攻撃を食らえば刃引きの魔法など関係ない、間違いなく絶命するだろう。

それに対し将人が行ったのは『崩拳』だった。マルテナがどんな技を出そうともそれより早くこちらの技が当たれば全くの無意味。それを実現させるのはこちらが最も得意な技で行うよりない。将人はそう考え、『崩拳』を繰り出す。力の流れに淀みがない、さらには『雷声』と呼ばれる爆発呼吸も行い、『丹田』に溜めた『氣』を胸部で爆発させ、繰り出す拳の速度を上げる。それでもまだ足りない。それでは八の雷を超える事が出来ない。


(あと一つ何かがあれば……)


将人は後ろにあった左足を引き寄せ強く踏み込んだ。パンッという音と同時に強い力の揺らぎを感じた。それと同時に将人の拳がさらに加速した。


(ナニッ!?)


極限の集中状態―――ゾーンに入った状態のマルテナは時間の流れが遅くなった状態で信じられないものを見た。自分が行った『雷鳴剣』のほんのわずかな隙間を通り抜ける一つの雷―――将人の拳が自分の腹部に吸い込まれていくのを。

腹部は鎧に守られている為、拳打ではほとんど意味をなさないはず。だがその拳が入った途端、電撃を流されたような激しい衝撃を受ける。手に力が入らなくなり長剣を手放してしまう。さらに後方へ吹っ飛ばされた。地面を転がり、うつ伏せになってようやく止まる。そのままマルテナは動かない。将人は再び『三体式』の構えを取り警戒する。約一分後に構えを解き警戒を解く。そしてその場に膝をついた。極限の集中から繰り出した『崩拳』は将人の体力を奪いつくしていた。気を抜けば意識を失いそうになるも気を奮い立たせ立ち上がった。


「マルテナ様、大丈夫か?」


将人はピクリとも動かないマルテナに駆け寄り、体を起こした。



仙人VS聖剣の勝負は仙人の勝利で終わった。


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