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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第九章 仙人、武術大会二回戦編
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仙人VS聖剣、難攻不落の鉄の門

イズミとの話が終わり、自分の泊っている宿屋に戻る途中、将人はイズミの話を思い返してみた。


「俺が『滅び』と同じ存在。先祖が『滅び』そのもので向こうの世界の先住民族の秘術で『滅び』から良いモノに変えられた……悪いものが良いものか……」


将人の頭の中で正反対な性質を持つ物を連想し声に出していく。


「神と悪魔……光と闇……プラスとマイナス……熱いと冷たい……火と水……静と動……男と女………男と女?」


口に出してみて頭に引っかかるものがあった。


「男と女……男と女……男から女になった……いる! 身近に一人いた! そうなった人が! ウェルさん!!」


ウェルはある術の実験で男から女に変えられた。幻術などではなく肉体的に女性に変えられたのだ。これはイズミの話にあった『滅び』を良いものに、属性を変質させた術そのものではないのか。いや、そのものではないにしても『滅び』を変質させた話を知って、それを再現しようとしている者がいるのではないか? 男から女に変える何て馬鹿らしいと思ったがイズミの話を聞いてからだととてもそうとは思えない、むしろ恐ろしい計画が遂行されようとしているのではないかと思わずにはいられなかった。


「ウェルさんに詳しい話を聞きたいけど……聞くとそれを防止する術が発動して血を吐くしな。誰かが属性変質術の事実に気が付く者がいるのを見越しての事か? 色々解決してから元の世界に戻るって言ったけど止めとけばよかったか。俺が出来るレベルを超えてるよ、この案件……」


将人は片頭痛をこらえるようにこめかみを押さえた。



翌日闘技場にて―――

その日は雲一つない晴天で、天井のない闘技場には容赦ない陽光がサンサンと降り注いでいた。その闘技場に立っているのは二人。一人はマルテナ王女。豪華な装飾が施された白銀の鎧に愛用の長剣を装備していた。銀髪と相まって非常に見栄えが良かった。戦乙女という言葉が似合いそうだ。それに対してもう一人、つまり将人は非常に地味だった。クロースアーマーにガントレットという見栄えのしない装備ならそれも当然だろう。観客の大半はマルテナを応援している。アウェイ感満々で将人は気が滅入っていた。


「何じゃ、マサト。元気がないのう」


「いやあ、ちょっと寝不足で……」


気が滅入っているのもあるが将人は昨日のイズミとの会話とその考察を朝まで延々と考えていた為、ほとんど寝ていなかった。


「何じゃ、マサトもか? わしも楽しみで楽しみで一睡も出来んかったぞ!!」


「マルテナ様は遠足の前日は眠れないタイプですか?」


「何かよく分からんがそうじゃ!」


(何だろう? マルテナ様見てると散歩に行こうとシッポ振ってる犬を連想させるな……耳と尻尾が見える)


微妙な笑みを浮かべる将人をマルテナが睨む。


「……何か失礼な事を考えとるじゃろう」


「そんな事はありませんよ、ええ」


将人はマルテナから顔を背け、鳴らせない口笛を吹く。


「まあ良いわ。楽しませてもらうぞ……」


マルテナが長剣を中段に構える。将人は『三体式』の構え。


「マルテナ様は俺に優勝してほしいんですよね?」


「そうじゃが手加減はせんぞ。ワシの屍を越えて姉さまに挑め!」


話はここまでと睨み合うが不意にマルテナが笑った。


「お主のその装備懐かしいのう。ラシェントの冒険者ギルドでの模擬戦の再現じゃな。中々シャレた真似をするのう」


「あの時は一勝一敗、今度は勝ち越しますよ」


「そう簡単にはいかんぞ……ではいくぞ!!」


マルテナが動く。二人の距離は二メートル強。その距離を一足で縮め長剣の間合いに入る。白銀の鎧の重量がどれほどか分からないが魔法一つでそれを無しにするのだから魔法はずるいと思う。速度が速すぎると体がついていかず、攻撃がちぐはぐになるのだがマルテナに限ってはそれがない。こういった設定の小説、漫画がある将人の世界からの転生者であるアルヴァール国王から剣技を伝授されたのだから当然対済みだろう。

振り下ろされて長剣を将人は紙一重で横に躱す。切り返し横薙ぎの一撃が将人を襲う。その動作は滑らかで淀みがない。身体強化の魔法を行った上での練習もこなしている証拠だろう。それに対し将人は最小の動きで何とかマルテナの攻撃を躱している。躱す事は出来ても攻撃には手が回らない。それだけマルテナの攻撃が鋭い証拠だった。

将人はマルテナの攻撃を回避しながらチャンスを待った。格上の相手と戦う場合ともかく回避に全力を注ぎ僅かな隙を見つけ、そこに全力の一撃を入れる、それしか手段がなかった。攻撃を回避しながら僅かな隙を探る、僅かなミスが敗北に直結するそんな綱渡りを続ける事数分、マルテナが自ら後方に下がった。優勢だったマルテナが自ら攻撃を止め、離れた事に呆然とする将人。


「ワシの攻撃をここまで避けられるとは、上達したのう。じゃが、それではダメじゃ。ワシと互角では姉さまには届かん。そこでじゃ、ワシがこれから幾つかの技を出す。それを防ぐが躱すかした上でワシに勝ってみせよ! 姉さまもこの技は使えるのじゃから知っていれば攻略のヒントになるぞ」


「一応聞きますが手加減は……」


「せんのじゃ」


「ですよね」


マルテナは長剣を下段に構えた。将人は『三体式』の構えから右縦拳で突く。この戦いが始まってから初めての将人からの攻撃だった。あともう少しでマルテナの体に拳が届く。だが、将人の拳は下から突風のように跳ね上がった長剣が拳を弾き飛ばしていた。ガントレット越しに届く鋭い衝撃と痛みに動きが止まる。だが、マルテナの長剣の動きはまだ止まっていない。跳ね上がった長剣が将人の頭上を襲う。それを何とか避ける。通り過ぎた長剣がまた下から切り返してくる。攻撃と攻撃に隙間がなく、将人から攻撃に行く事が出来ず後退を余儀なくされる。


「これは『鉄の門』と呼ばれる技じゃ。防御の技なんじゃが攻撃もこなす優れものじゃ。まずはこの技から破ってみい。それが出来ねば姉さまには届かんぞ」


「まずはって他にもこんな厄介な技があるのか」


その通りというようにマルテナはニヤリと笑った。

まさに鉄の門、難攻不落な門を破らなければ神の頂に挑戦できない、勘弁してほしいと将人は溜め息をつかずにはいられなかった。






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