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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第九章 仙人、武術大会二回戦編
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仙人、イズミから向こうの世界の真実を聞く、イズミ退場

イズミは咳払いをして話を続ける。


「私は手強い『滅び』の眷属との闘いで封印魔法を使いました。この魔法で命を落としても構わない、そういう覚悟で魔法を行い、発生した漆黒の穴に私と眷属は飲み込まれました」


それを聞いて将人は鏡が行った異世界転移魔法と称していた魔法を思い出していた。確かに夜よりも昏い漆黒の穴が出現していた。鏡がイズミの魔法をコピーしたのは間違いなさそうだ。


「封印された空間で死に絶えるものだと思っていたのですが、そこは私たちが住んでいた世界と何ら変わらないのですから驚きましたね。私も眷属も呆けていたのですが、再び戦いが始まり私は深手を負い、殺されかけてのですが、それを助けてくれたのが―――」


「そこで鏡が出てくるのか?」


将人が話に割って入ってきたがそれに気を悪くせず肯定する。


「そうです。翠明が颯爽と登場し、私を助けてくれました」


そう言ったイズミは懐かしそうにに微笑んだ。将人はその微笑みをまじまじと見つめる。


「アンタ、そういう表情も出来るんだな?」


イズミがムッとする。


「失礼な事を言いますね」


「イヤ、だってアンタ常に仏頂面何だもの」


「ブッチョウヅラ?」


イズミはオウム返しに聞き返す。将人はおちょくる様に問い返す。


「要するに不機嫌そうな面をしているという意味」


それえイズミは本当に不機嫌そうな顔になる。


「話すのやめましょうか?」


「スイマセンでした。話の続きをお願いします!!」


将人はテーブルに額を擦り付けるぐらい頭を下げた。


「まったく……話の腰をパキパキ折る人ですね………」


イズミはブツブツと文句を言いながらも話を続ける。


「ともかく、翠明はいともたやすくという訳ではありませんが眷属を倒してくれました」


「倒したって……何か災害とか起こさなかったか、アイツ?」


「災害とはどういう事でしょう?」


「アンタたちが『滅び』という存在、向こうでは『魔』と呼ばれてる。アイツと一緒に『魔』を倒した時、地脈をいじったりしたもんだから大地震発生させて村一つ滅ぼしてるんだよ。人は避難させていたから死人とかは出なかったんだけど」


「……とんでもない事しますね。アナタたち」


イズミが冷や汗をかく。


「俺は手伝っただけ。ほとんど鏡がやったんだよ!」


「言い訳ですか?」


「言い訳じゃ……まあ、いい。鏡と出会ってそれからどうなったんだ?」


「翠明に弟子入りしました。私は翠明が習得している『西洋魔術』と『八卦掌』を学びながらあなた達の世界の事を調べました。そしてある事実が分かりました」


「それは?」


イズミは一呼吸溜めながら結論を述べた。


「アナタや翠明、それに向こうで生きている人々は『滅び』の眷属と同種だという事です」


イズミはとんでもない事を言い出した。


「イヤ、それちょっとおかしいだろ!? 同種だというならどうして俺は『滅び』とは正反対の性質を持つ『氣』を操る事が出来る? 同種だとしたら俺、自分で自分を滅ぼす事になるぞ」


将人の疑問をイズミは予想していたようで慌てることなく答えを話し始めた。


「どうして『滅び』とは正反対の『氣』を操れるようになったか? それは、あなた達の世界にもともと住んでいた先住民族の秘術があったからです」


「何だそりゃ!?」


「聞いた事はありませんか。死の世界から帰った神がその穢れを落とす為、川に入り目や鼻を洗ったらその穢れから神が生まれたという話を」


「それって、アマテラス、ツクヨミ、スサノオの事か? でもそれがどういう関係があるんだ?」


「この穢れの部分を『滅び』に置き換えてみれば何となく分かりませんか?」


将人は穢れを『滅び』に話を考えてみた。


「そうか、そういう事か!」


「合点がいきましたか? そういう事です。私たちの世界からアナタの世界に送り込まれた『滅び』は無害なものに変質され、無害になったものがあなたや翠明の先祖になります」


「とんでもない話になって来たな……『滅び』を無害にする秘術というのは学ぶ事が出来たのか?」


「それを受け継いでいる者に会う事は出来ませんでした。出来たとしてもそれを教わるつもりはありません。『滅び』は全て滅ぼします。その点ではあなたの『氣』や『秘力』は非常に優れています」


無意識にイズミから殺気が迸る。それに息を飲みながらも将人は恐る恐る聞いてみる。


「ウェルさんを許す気は? あの人は俺に近いと思うけど?」


ウェルは確かに『滅び』の眷属だが、人となりはそんなに悪いものだとは思えない。


「許す気はありません。あれも『滅び』の眷属には変わりありません。必ず滅ぼします! 今回は私が負けましたから見逃しますが次に会った時は問答無用で殺しに行きます」


イズミはウェルに対する意見を変えるつもりはない様だ。


「物騒だな。アンタを見かけたら逃げる事にするよ。ウェルさんにもそう伝えておく」


「そうして下さい。私も翠明の友人と敵対したくない」


「だな……ところでアンタ、鏡の居場所を知らないか?」


「それなんですが……翠明は本当にこちらの世界に来ているのですか?」


その言葉に将人は不安げな顔になる。


「恐らく来ていると思う。俺と鏡ではこちらに来るのに時間差があったからそれで出現位置がずれたんだと思う。この広い世界人一人探すなんて不可能に等しい。あっちみたいにネットがある訳でなし。それでも情報は行きかっているようだから、この武術大会で名声を得られれば鏡の方にも俺の情報が行くかもしれない。そうなれば向こうから俺を訪ねてきてくれるかもしれない。そうすれば元の世界に戻る方法が分かるかもしれない」


「なるほど、翠明を見つけて元の世界に戻るのが目的だと……なら、私が戻して差し上げましょうか?」


将人は大きく目を見開いた。


「そんな事が出来るのか!?」


「私は『秘力』を会得してしまったから魔法全般使う事は出来ませんが一族の者を紹介する事は出来ますよ。どうしますか?」


思いもよらない所で元の世界の戻る方法が見つかり、将人は郷愁の念にかられる。養父であり『形意拳』の師匠である誠一郎や結衣に会いたいとは思う。だが……


「やっぱりやめとくよ。色々な問題全て片付けてからでないと多分後悔するから」


「そうですか。なら頑張りなさい」


イズミが席を立つ。


「もう行くのか?」


「ええ、話せる事はすべて話しましたから」


イズミが出口に向かって歩く。将人はイズミに声をかける。


「アンタ、中々強かった。縁があったらまた戦おう」


イズミはこちらを振り向かす手を掲げ、手を振った。そして酒場から出て行った。将人はカップに残っていた果実酒をグビリと飲む。


(今夜は衝撃的な話が多すぎた。向こうの世界の人が『滅び』の眷属と同種とかあり得んだろ。本当だとすると俺は『滅び』に戻った人を殺した事にある。あまり考えたくないな……明日の準決勝の事を考えよう。明日はマルテナ様と戦う事になるな。あの人は手加減してくれんだろうな。色々な問題全て片付けるとは言ったが出来るんかね……)


イズミの告白で色々な事が分かったか分からない事も多く出てきた。色々な重荷を背負ったかと思うと体が重くなったかのような錯覚に襲われた。









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