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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第九章 仙人、武術大会二回戦編
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仙人、鏡翠明の目的とは? 異世界転移魔法の真実を聞く。

将人はイズミと同じ果実酒を注文する。水で割りなるべく酔わない様にしなければならない。ここから先の話は非常に重要になると思われる。店員が持ってきた果実酒を口に含み潤ませる。

フウッと息を吐き出し将人は口を開く。


「あんたが鏡の幼馴染みじゃないのか? アイツは異世界に帰った幼馴染みを追う為に異世界転移魔法を行うって言ってたんだが?」


イズミは訳が分からないというように首を捻る。


「ですからそれは私じゃありません。私はこっちの世界の生まれですし、翠明に師事を受けていたのは三年ぐらいでしたから」 


「僅か三年であの実力か。『軽気功』までマスターしてるし空恐ろしい」


「教わった技をこちらで練りました。相手には事欠かない世界ですから上達も早かったですよ」


「物騒な……」


「いいではないですか。私も聞きたいのですが、翠明は幼馴染みの後を追うと言って異世界転移魔法を行ったのですか?」


将人は首を縦に振る。


「一体どんな魔法だったが覚えていませんか?」


「地面にかなり複雑な魔法陣を書いていたな。それから聞いた事がない言語の呪文を唱えていたな。英語やドイツ語じゃない、まあ俺が知らない国の言語かもしれないが……待てよ、こちらの世界の魔法を行う時の呪文に似ているんじゃないか?」


「こんな感じですか?」


イズミが短く呪文を唱える。何を言っているのかは理解できないもののその音律、音程には聞き覚えがあった。忘れられるはずもない事の世界に来るきっかけとなた呪文なのだから。


「アンタがそれを知っているという事は?」


「私がこちらの世界に戻る為に行った魔法の呪文の最初の部分です。翠明の前でやったのはこちらの世界に戻るその一回のみだというのに魔法陣や呪文を一言一句間違えずに覚えたというのですか!?」


当然呪文を唱えただけでは魔法は起動しない。魔力や魔法陣、時間、時期、星の運行、そういった諸々の条件がある筈だがそれらを解析し、魔法を成功させるのだから鏡翠明という男の実力は底知れない。


「鏡は一度聞いた事は忘れないし、見た風景、図形はカメラで撮った様に記憶するし、それを寸分たがわず書き出す事が出来る、そういった特技の持ち主だったからな、鏡は……イズミさん、あいつの前で何かをするという事はあいつに全て盗まれるという事だから注意しないと駄目だよ」


「鏡は天性の大泥棒ですね」


将人は言いえて妙だというように頷いた。鏡翠明という知識や知恵という財宝を簡単に奪い去る大泥棒と言えるだろう。


「この話から分かった事は幾つかあるな……鏡は俺を騙していた。どうして幼馴染みを追いかける何て嘘をついたのか分からない。そういう嘘をついていたという事は俺をこちらの世界に引き込みたかったという可能性も出てくる。俺は転移魔法の失敗に巻き込まれてこちらの世界に来たと思っていたが最初から計画通りだったのかもしれない……アイツは俺を引き込んで何をさせたかったんだろうか?」


将人とイズミは腕を組み考え込む。だが、将人たちが何を言ってもそれはあくまで予想。ここに鏡翠明がいない限り答えは分からない。

考えているうちに将人は根本的な事を聞き忘れていた。


「イズミさん、一つ教えてくれ。あんた、どうして俺や鏡の世界に転移したんだ? 何か目的があっての事だったんだろ。次元を超えてやって来るぐらいなんだから」


将人のこの問いにイズミは少し言い淀む。言うのを迷っている感じだ。将人は追及せず応えるのを待つ。イズミは果実酒をあおり咽る。そうしなければ口が開かないとでも言うように飲んだ。フウッと息を吐き、覚悟を決めたというような表情になり、口を開いた。


「あなたや翠明は転移魔法だと思い込んでいるようですがそれは間違いです。これは本来『滅び』を封じ込める為の魔法なんです。私たちの一族に伝わる魔法で『滅び』と一緒に別の空間に封じ込める、そういう魔法なんです」


その答えに将人は少し怒りを覚えた。


「人一人を犠牲にして『滅び』確実に封印するか……狂ってるな、あんたの一族は」


一族の存命より『滅び』を確実に封印する。人を人としてではなく道具か駒としか見ていない、何とも胸糞悪くなる話だ。


「普通の人には理解できないと思います」


イズミが自嘲気味に笑う。


「でも、そうまでやってその魔法を使って封印された先が……」


「そうです。あなた方の世界になります」


「つまり、こちらの世界に来るのが元々の目的ではなかった?」


「そうなりますね」


将人は息を吐き目を閉じた。明かされる事実が衝撃的すぎて頭が追い付いてきていなかった。呼吸を落ち着け、頭が追い付いてくるのをしばらく待った。一分ほどそうして落ち着くのを待って目を開いた。


「話の腰を折って悪かった。話を続けてくれ」


「分かりました」


更に話は続く。

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