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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第九章 仙人、武術大会二回戦編
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仙人、イズミから話を聞き、驚くべき事実を知る

「よくここが分かりましたね?」


「宿屋の人にの酒場の事を聞いてきましたから」


「そうでしたか……? どうしたのですか、疲れた顔をして?」


イズミは将人をマジマジと見て尋ねる。店内は魔法の光で灯されている為明るく、将人の容姿が見て取れる。将人の顔や服が泥で薄汚れており、服もよれよれになっている。服を体にひっかけているだけのような状態になっていた。まるでここに来るまでに何度か戦闘でも行ったかのようだった。


「いや、もうひどい目にあったよ……」


武術大会の予選二回戦、三回戦が終了後、打ち身や切り傷がある者のの特に目立った怪我がなかった為、宿屋に戻ったのだが、そこに大勢の人が集まったのだ。その数約二、三百人。彼ら、あるいは彼女らはの半分は魔力値ゼロでありながらあんな戦いが出来る訳ない、インチキを暴いてやるという挑戦者、もう半分は魔力値ゼロでありながらあんな戦が出来るなんてと感動し弟子にしてほしいという弟子志願者が集まったのだった。お互いの目的が正反対だった為、睨み合い一触即発の状況になったのだ。自分に挑んでくる者なら遠慮なくパンチを入れられるのだが慕ってきた者にそんな事はしたくなった。

悩んだ末将人は逃げ出した。有名にならなければならない理由があるが、弟子や挑戦者など望んではいないのだ。そうやって逃げ出したものだから両グループから追われる事になった。

街中では攻撃魔法が使えない為、身体強化の魔法を己にかけ将人を追跡する。スペックでは勝てない将人は一計を案じ、狭い路地に逃げ込む。狭い路地では高出力の身体強化は逆に不利になるのだ。壁に激突、転倒する者が続出し、路地を出る頃には両グループの半数がこの追跡劇から脱落していた。将人の逃走が偶然にも両グループの代表者選抜をする結果となった。

逃げ回る事数時間、将人に何とか追跡できているのはわずか二人、この二人が両グループそれぞれの代表者となった。将人は一対一で二回戦う事になり、どちらも圧勝で片が付いた。魔法に頼った戦い方をすると動きが大雑把になってしまい、将人の最小限で最大限の力を出す動きについていけなかったのだ。

荒い息を吐きながら倒れている二人を腕を組みながら見下ろし「修行が足らん! 出直せ!」と巌のように言い放ち、その場を立ち去った。

これが将人の表情が疲れ来ている理由だった。事の顛末を聞いたイズミは呆れた顔で一言。


「呆れたお人好しですね」


その言葉に将人は膝をついた。


「ひどすぎません?」


「ひどすぎません! そんなの無視すればいいでしょうに」


「無視するって……そういえばアンタの方には来なかったのか。弟子希望者や挑戦者は?」


「来ましたが」


「来ましたがって」


将人は不思議に思った。イズミは将人の『氣』と同系統の力『秘力』を体得している、故に魔力はゼロ。将人と同じように弟子志願者や挑戦者が現れてもおかしくない筈である。


「そいつらはどうしたんだ」


「弟子になりたいという者には足腰が立たなくなるまでタップリとしごいてあげました。私の『八卦掌』をインチキだという愚か者には泣いて謝るまで叩きのめしました。それぞれ十人程しごいて叩きのめしたら蜘蛛の子を散らすように退散しましたよ」


「脳筋だよ、この人……」


将人は胸の合掌する。イズミに倒された者たちにトラウマが残りませんようにと祈らずにいられなかった。


「何を祈っているのですか?」


「大した事ではないから気にしないでくれ……ってアンタこれが祈りの動作だと分かるのか?」


「確か向こうの世界での一大宗教の所作ですよね?」


その言葉に将人は驚かずにはいられなかった。イズミは仏教の事を知っている様である。イズミはアルヴァール国王のように転生者であるのだろうか。しかも鏡翠明に近しい者の前世があるのではないだろうか。将人はこの予想を口に出す。


「イズミさん、アンタも転生者なのか?」


「? 転生者というのは何なんですか?」


将人は軽く転生者の事を説明する。


「成程……向こうの世界ではそういう言葉があるのですね……だとすると私にはあてはまりません。私には前世の記憶というのはありませんから」


「だとするとどういう事だ?」


「もっと単純に考えて下さい」


「単純って………」


将人はもっと単純に仏教や鏡翠明の事、そして『八卦掌』を知っていて使える理由などを考えてみた。そしてその理由に行き当たった。あり得ないと思ったがこの答えでなければ逆に鏡や将人がこの世界にこれるはずがないのだ。将人は口の中がカラカラに乾き、かすれた声で答えを言う。


「アンタ、もしかして……俺や鏡がいた世界に実際に行った事があるのか?」


「その通りです。私は向こうの世界に実際に行った事があります。そしてそこで翠明と出会い、彼から『八卦掌』と西洋魔術を学びました」


将人は頭を鈍器で殴られたような激しい衝撃を受けた。動悸を激しくしながら更に問う。


「アンタが鏡の幼馴染みなのか?」


「幼馴染み? 何の事です?」


将人はイズミの顔をまじまじと見つめる。何の事か本当に分からないようでイズミは不思議そうな顔をする。イズミが更に詳しい事を聞かなければと口を開くが口内がカラカラに乾いている為、むせてしまう。将人は飲み物を注文し、口を湿らせてからさらに詳しい話を聞こうと思った。



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