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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第九章 仙人、武術大会二回戦編
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仙人、試合終了後、選択を迫られ……

イズミとの試合終了後―――

イズミを見下ろす将人の背中に何者かに抱き着かれた。抱き着いた人物に殺気が全くなかった為、避ける事が出来なった。その事に驚くがもう一つ驚く事があった。背中越しに柔らかい物が二つ押し付けられているのだが、その大きさが並大抵のものではなかった。思わず顔が緩んでしまう。その緩んだ顔はつい先ほどまで死闘を繰り広げていた人物と同一人物だとは思えなかった。


「マサトさん、スゴかったっすよ!」


「……ウェルさんか?」


情けない顔を引き締め、背後の人物に問う。


「そうっす、ウェルっすよ!!」


将人の背中に抱き着いたウェルが興奮気味に喋る。


「ウェルさん、離れて欲しいんですけど」


「ダメっす、これはご褒美なんすよ! 命を助けてもらったのですからこれぐらいはしないといけないっす! でもマサトさんが望むならもっとスゴい事もするっすよ。マサトさん、今夜どうっすか?」


将人の心は揺ぐ。今夜、大人の階段を登れるのかと思うと引き締めた顔がまた緩んでしまう。でも、ウェルが元男であったという事実を思い出し将人は躊躇する。だが、最近はTS物というジャンルがある。まあいいかと思いを改め、よろしくお願いしますと言いそうになった時、前方から強烈な殺気が吹き付けてきた。殺気を放っているのは倒れているイズミからであった。


「イズミ、あんた………」


「人の頭上で何をイチャついているのですか、あなた達は!!」


イズミは体がまだ動かせないようで首のみを動かし将人とウェルを睨む。


「今夜ナニしようという相談っすよ。イズミさん」


キリキリと歯ぎしりが聞こえる。体が動いたのならイズミは間違いなく襲い掛かっているだろう。


「マサトさん、賭けの事を覚えていますか? 私が勝ったらそこのゴミムシの身柄を渡してもらう。私が負けたら翠明の事を話すと。私はアナタに負けました、だから翠明の事をお話しします。だが、それは今夜限り、明日私はこの街を去ります。アナタが欲しい情報を得られるのは今夜限りとなりますがどちらを選びますか?」


イズミが珍しくイヤミったらしい笑みを浮かべる。究極の選択を迫られ顔を歪める将人にウェルが助け舟を出す。


「マサトさんが得たいという情報を優先してくださいっす……やれるチャンスは幾らでもあるんすから」


「……私たちがそれを許すと思ってるの?」


将人とウェルの耳元でマサリアの声が聞こえた。僅かの怒気が含まれた声に驚きながら周囲を見渡し観客席にいるマサリア達を確認する。


「気のせいか?」


「気のせいじゃないわよ!!」


また耳元にマサリアの声が届く。


「風の魔法で私の声を届けているのよ。当然会話の内容も丸聞こえよ! ウェル、アンタ何誘惑しているのよ!! 私たちがそんな事やらせるわけないでしょ!!」


「そんな事ってどんな事っすか。教えて欲しいっすね?」


ウェルが独り言のように言うがマサリアには丸聞こえだ。マサリアの罵声が将人とウェルの耳元に届き、思わず耳を塞ぐ。それを見ていたイズミから殺気が消える。そして愉快そうに笑う。


「さて、私の情報かゴミムシのどちらを選びますか?」


「究極の選択だ……」


百面相になっている将人を尻目にイズミがゆっくりと立ち上がった。それを見て将人はぎょっとする。


「もう立ち上がれるのか?」


「まだ戦う事は出来ませんがね……アナタの『形意拳』見事でした」


「アンタの『八卦掌』もな……その『八卦掌』、鏡から教わったのか?」


「そこも含めて教えますよ……私の泊っている宿の場所を教えておきましょう。私の情報を選んだのなら夜にでも訪ねてくるといいでしょう。ただし、あなた一人で来るように。間違ってもそこのゴミムシを連れてこない様に。もし、あれがいたら私は自分を抑えられる自信がない! 間違いなく……殺すでしょう!!」


一瞬鬼の形相を見せるイズミ。将人は思わず息を飲んだ。


(過去に何があったんだ? ウェルさん個人ではなく『滅び』そのものを恨んでいるようだが……)


「どちらを選ぼうと後悔がないように……」


イズミはそう言い残して、選手の入場口へとふらつきながらも向かう。それを見送る将人。


(どっちを選択するべきか? 鏡の情報も欲しいけど大人の階段も登りたい。どっちを選ぶべきなんだ!?)


悩みに悩んだ末、将人が選んだのは………



とある宿屋に隣接した酒場―――

そこでイズミは果実酒をちびちび飲んでいた。水で割っており飲みやすくなっているのだが、それでも顔を赤くしていた。イズミは本来酒を嗜まない。アルコールに弱い為である。それでも酒を嗜む事がある。それは戦いの後である。戦いの後は自分の心が憎しみに支配されたような錯覚に襲われるのである。それを浄化するには酒がいいと鏡翠明に言われてからは無理にでも酒を飲むようにしていた。

チビリと果実酒を飲み、顔を歪めていると見知った人物が目に入る。その人物もイズミを見つけ、こちらに向かってきた。


「私の方を選びましたか? よくゴミムシの誘惑を振り切りましたね」


「余計なお世話です」


将人は憮然としてため息をついた。








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