表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第九章 仙人、武術大会二回戦編
175/190

仙人、『形意拳』VS『八卦掌』、直線と円の決着

イズミの『八卦掌』に『軽気功』が合わさると厄介な事この上なかった。こちらの攻撃が入ってもその威力がうまく伝わらない。下手に力めばそれが隙になる、それを意識してしまい動きが鈍ってしまう。ボスコブリン戦で行った関節技、『擒拿術きんなじゅつ』を行ってみるがこれは熟練しものではなく、極める前に逃げられるか逆に関節技をかけられそうになる。思いもよらない攻撃と言ったものの将人の頭の中では『軽気防御』を破る手段が見つかっていなかった。

イズミが両掌で突いてきた。将人はそれを両手の甲で上に跳ね上げ空いた胴を両掌で突いた。『虎形拳』と呼ばれる技で突くがやはり威力が通った感じがない。威力に乗ってフワリと後方に逃れる。


「やっぱり効果ないか?」


「思いもよらない攻撃というのはどうしましたか。やはりハッタリですか?」


「クソー、ホントにあっと言わせる攻撃をしてやる……アンタの『軽気功』って常時発動してるもんなのか?」


「何でそんな事を教えなければならないのですか」


「デスヨネー」


将人は唸りながら考える。考えるというのは人間の最強の武器である。これが出来るから数多の生物を出し抜き生物の頂点に登る事が出来たと言える。考える事を止めない以上将人は決して負けわしない……という訳で将人は戦闘の最中であるにも関わらず、イズミの攻略法を考え始める。

イズミが使う武術は『八卦掌』。強い踏み込みがない、敵の円周を回る独特の歩法で移動。拳を握らず文字通り掌で攻撃を行う。強い踏み込みがない為、強力な攻撃はないがその分、連続攻撃で攻撃力を補う。『八卦掌』使いは『軽気功』も同時に学ぶ。『軽気功』は『氣』を用いた身体操作により体重を軽減させ、信じられない様な跳躍力を発揮させたりする。『飛檐走壁ひたんそうへき』と呼ばれる壁を駆け上る技があるくらいである。

イズミは『八卦掌』と『軽気功』を同時に行っている。そのせいで動きにやや精彩さがかけている。将人の攻撃力を警戒し、常時『軽気功』を発動しなければならないのだろうか。それとも、体にダメージが残っており、精細に動く事が出来なくなっているのではないだろうか。だとすると今がチャンス、ダメージが抜けきってしまえばこちらに勝ち目はない。さて、どうするか………。


「いつまで悩んでいてもこちらの有利は揺るぎませんよ、このまま、押し切らせていただきます」


将人の様子を見ていたイズミが動く。精細さが欠けているとはいえ他の者が見れば十分早い。するりと将人の間合いに入り再び攻防が始まる。考え事をしながらの為将人の動きが鈍い。掌底の一撃を食らってしまう

そこを起点に連続攻撃が入る。急所は外している為致命傷はないが、ともかく痛い。将人は苦し紛れに『崩拳』を繰り出すが足に力が入らず、崩れ落ちながら拳を繰り出した。偶然にも『竜形拳』の応用技となった。その拳はイズミの左脛に当たった。力が抜けていくような感触ではない骨と薄い肉を叩いた感触。イズミは苦痛に顔を歪め、『軽気功』を用いず、後ろの飛びのいた。将人は己の拳を見て呆然とした。


(何だ、今のは? どうして攻撃を無効化する事が出来なかった? 足には『軽気功』はかけられないのか? ちょっと待てよ、もしかして……)


将人は有名な探偵の孫が如く自分の推理を披露する。


「イズミ、もしかしてだが、俺の攻撃全て後ろに下がって躱していたのか?」


将人の問いにイズミが探偵にトリックを暴かれた犯人の様な顔をする。図星だったようである。

攻撃にはその力が最も作用するポイントがあり、それがずれてしまえば攻撃力を相手に通す事が出来ない。イズミは将人の攻撃の軌道を見切り、攻撃力が最も作用するポイントから数ミリ後ろに下がる事で攻撃を無効化していたのである。将人の拳の上に乗るというとんでもないパフォーマンス、攻撃の見切り、こちらに気付かせない数ミリの下がり、そしてこれを実行する精神力、それらが全て揃って初めて可能になる究極の防御法だった。


「俺の事、卑怯だなんだと言うがアンタも結構こざかしい事をしてるんだな」


これにイズミは苦虫を噛み潰したような顔をする。


「何てな。いやいや、アンタ中々凄いよ。俺の攻撃を見切って数ミリ後ろに下がって避ける。これを何度もやる何てどんな神経してるんだと思うよ」


「最後のは褒めていませんね」


「何でアンタを褒めるんだ?」


イズミはこれまた苦虫を噛み潰したような顔をする。その表情を見て将人はおかしそうに笑う。


「アンタのそんな顔を見れて少し溜飲が下がったよ。下がった所でこの戦い……終わらせようか?」


将人は『三体式』の構えを取った。


「こちらの技を少し見破っただけで儲かったつもりですか?」


イズミは『避正斜撃』の構えを取る。


「腹部と足のダメージ、抜けきってないだろう。今までの通り動く事はもう出来ない。だろ?」


「本当にそう思いますか?」


「思う!!」


将人が即答で言い、イズミが怯む。


「ともかく勝負だ!!」


「いいでしょう」


イズミが将人の円周を移動する。だが、その動きは緩やかな水の様な滑らかさはなかった。やはりダメージが抜けきっていない。この動きでは『形意拳』の直線の動きは避ける事が出来なかった。将人の『崩拳』がイズミの腹部に叩きこまれた。太い杭を打ち込まれたような衝撃がイズミを襲い、一瞬で意識を刈り取った。地面に前のめりに倒れピクリとも動かないイズミ。誰がどう見ても将人の勝利だった。


『形意拳』対『八卦掌』、直線対円の勝負。直線が円を貫く結果となった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ