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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第九章 仙人、武術大会二回戦編
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仙人、『形意拳』VS『八卦掌』、剛対柔

将人は『三体式』の構えから右縦拳で『崩拳』を繰り出した。疾風が如く一撃は清流の流れで避けられる。イズミが『避正斜撃』の構えから『趟泥歩』を用いて将人の右側面に逃れる。そうなる事を予測して将人は繰り出した右拳を右側面に跳ね上げる。『横拳』でイズミを狙うもののその拳は空を切った。横目でイズミを追うがイズミの姿が確認できなかった。その代わりに足元から何かがせり上がってくるのが気配で分かる。危険を察知し将人は後ろに下がる。せり上がってきたもの―――イズミが下がった将人を追いかけてくる。将人の体に密着したかと思ったら突然、車に衝突したような衝撃を受け、将人は派手に吹っ飛んだ。将人は地面に叩きつけられ、二、三度転がりうつ伏せに倒れた。その倒れ方を見て観客から声が途絶えた。試合そうそう決着がついたかと思われたが、イズミは再び『避正斜撃』の構えを取る。


「……起きなさい。私を誤魔化せると思っているのですか?」


イズミの言葉から数秒後「……ンー。やっぱり誤魔化せないか」と何事もなかったように将人は体を起こし立ち上がった。その途端、観客が一斉の声を上げる。もっと戦えと。観客の声に手を振って応えるも内心どうするかと考え、将人は内心汗をかいていた。


将人が『横拳』を出し、イズミを攻撃した時、イズミは後方へ逃れるのではなく、下に逃れていた。足をスライドする事で体を沈め、将人の拳を逃れ、立ち上がると同時に掌底で突くつもりが将人が後方へ逃れた為、それを追い将人に体当たりをするような感じで密着、右足、腰を捩じり密着していた肩から力を放出し、将人を攻撃した。密着した状態から行う発勁、いわゆる寸勁をイズミはやってのけたのだった。

本来ならこれで試合は終わるはずだったが将人も只者ではなかった。将人は密着した事により、イズミの力の流れを読み、力が放出される前に『爆発呼吸』と呼ばれる特殊な呼吸法により『丹田』に集めた『氣』を胸部に持ち上げ爆発させ、相殺しようとしたのだ。イズミの力の放出の方が早かった為、相殺しきる事が出来ず、派手に吹っ飛んでしまったのだ。力がきちんと通ったのなら派手に飛ぶ事はなく前のめりに倒れているはずだったのだ。そうならなかった事を不審に思いイズミは警戒を解かなかったのだ。


将人とイズミの攻防、互角のように見えるが将人の方が分が悪い。

剛の『形意拳』、柔の『八卦掌』、正反対の武術のよう見得るがどちらにも剛柔存在する。『形意拳』でも相手の技を無効する技術があるし、『八卦掌』でも力強い技は存在する。どちらも先人が研鑽を重ね磨き上げた素晴らしい技術であり優劣はない。なのに何故優劣が出てしまうのか。それはその武術を使う者の技量の差が出てしまうである。技量ではイズミが将人より一歩も二歩も先んじている。この差を埋める手段を考えなければ将人に勝利はなかった。


将人は再び『三体式』の構えを取り、そこから『五行拳』及び『十二形拳』、形意拳のあらゆる技法を用いて攻撃を敢行した。自分の柔の技ではイズミの柔の技にはかなわない、唯一勝っているのは剛の技のみである。将人は自分が覚えたすべての技を出す事でイズミの防御を突破するつもりだった。

イズミは将人の攻撃を躱す。スルリスルリと滑るように動く。あるいは繰り出される拳を逸らす。将人はイズミの防御を突破できない。逆に連続攻撃により作られた攻撃の壁はゆっくりと剥がされていった。そしてイズミの攻撃がヒットした。カウンター気味にイズミの掌底が将人の顎を跳ね上げたのだ。それで脳を揺さぶられ、攻撃が一瞬止まってしまう。そこからイズミの猛攻が始まった。

イズミが掌を振り下ろし将人の肩を叩く。強烈な一撃に将人は倒れそうになるがイズミはそれをさせない。今度は下から突き上げるように掌底で突き、将人を見るやり立たせる。棒立ちになった所へ掌底で突く。後方へ飛ばされる将人の腕を掴み、側面に回り込み体当たり、腕をしならせ掌で将人の背中を叩く。最後に両掌で将人の背中を突く。突き飛ばされた様な形になり、将人は頭から地面に突っ込んだ。

動かなくなった将人を見てイズミは構えを解いた。このまま起き上がらなければ自分の勝ちは確定する。自分の目的はあくまで『滅び』の眷属を殺す事で将人を殺す事ではない、このまま立たない事を願うイズミであったがその願いに反して将人は立ち上がった。視線は定まらず、足はふらつき真っ直ぐ歩く事もままならない。そんな状態であってもイズミを確認するとイズミに向かって前進する。


「もう止めなさい。アナタの負けは確定しました。これ以上はただではすみませんよ」


イズミの言葉が聞こえていないのか将人は歩みを止めない。一歩、また一歩前進し、イズミの懐に入り体を預ける。


「……アナタの戦いは終わりました。もう休みなさい」


気遣うようなイズミの言葉に将人は答えた。


「……ツカマエタ」


将人の言葉を理解したイズミは将人を引きはがそうとするが遅かった。イズミの腹部に太い杭を打ち込まれたような衝撃を襲う。後ろに吹っ飛ばされ、イズミは膝をつく。腹部の痛みに呻きながら将人を見る。将人は『崩拳』を繰り出した状態で固まっていた。


「……ようやく一発!!」


ニヤリと力強い笑みを浮かべた。


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