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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第九章 仙人、武術大会二回戦編
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仙人、『形意拳』VS『八卦掌』、直線対円の戦い再び

ウェルは将人に食らったデコピンで痛む額を押さえつつ、将人に聞いた。


「闘技場の修繕が終わる時間っすけど、何か対策はあるんすか?」


ウェルの問いに将人は難しい顔をする。


「……正直対策はないんだよなあ。イズミの技量も戦闘経験も段違い、正直勝てる所がないんだよ」


「……どうするんすか?」


ウェルは不安げな顔になる。


「これくらいしかできる事ないな」


そういうと将人は鎖かたびらを脱ぐ。ついで手甲を外す。素肌の上に直に鎖かたびらを着ていたため上半身素っ裸になる。それを見てウェルは鼻息を荒くする。


「マサトさんどうしたっすか!? 急に脱ぎ始めて!? そっか、そうっすよね。イズミさんっていう強敵と戦うんすから不安っすよね。そういう不安を取り除くのは女の役目、任せて欲しいっす。元は男っすから、男の気持ちのいい所は心得て……」


ウェルは体に纏ってる布を脱ごうとして動きが止まった。将人の右手に視線がいく。親指の腹に中指を当て力を込めているのが見て取れた。


「マサトさん、何するつもりっすか?」


ウェルが顔色を変え後退さる。


「何をするかは……分かってますよね」


ウェルが後退さった分、将人は前へにじり寄る。


「マサトさん、勘弁してくださいっす! それ以上されたら額が割れるっす!」


「そこは初めてなんですね。最初は血が出るけどそのうち気持ちよくなりますよ」


「マサトさんには下ネタは似合わないっす! そういうのは自分がやるから受けるっすよ!」


「言いたい事はそれだけですか?」


将人は右手をウェルの額に持っていき、力を解放する。ウェルは「ヒギィッ!!」という悲鳴を上げて後ろに倒れた。



試合の中断を言い渡されてからきっかり一時間後、闘技場の修繕が終わり、将人とイズミが闘技場に入場する。闘技場の中央で将人とイズミが対峙する。イズミは先程とほとんど変わっていない服装だが将人の方は装備が変わっており、それを見た観客にどよめきが起こる。それを見たイズミが怒りをあらわにする。


「どういうつもりですか……」


「どういうつもりって……これの事?」


将人は愛用のクロース・アーマーに鎖かたびら、手甲を外しており防御力皆無の状態だ。私服を纏っているだけだった。


「私の攻撃は防御するに値しないと言ってるのですか? 侮られたものですね」


「侮るつもりはないです。アンタの技量、戦闘経験共にこちらを上回ってて正直勝てない。だからこれは悪あがきだよ」


「死中に活を見出すつもりですか? だったらその考えは捨てなさい。私相手にそれは通じませんよ」


「そんな事全然考えていなかった……」


将人は首を振る。


「アナタを相手にするとなると、より緻密でより精密な動きが要求される。そうなると防具はむしろ重し、足かせにしかならない。これは少しでも身を軽くしてアンタの動きに追いつこうとする……悪あがきなんだよ」


将人の覚悟にイズミは感心したというように頷く。


「私に追いつく為にに防御を捨てる……私に対抗しようとするその心意気やよしと言っておきましょう。だが、それだけでは私に追いつく事は出来ません」


「だろうな……これ以上は言葉ではなくこっちで語らいましょうか」


将人は会話を中断させ、『三体式』の構えを取る。それに対しイズミが取った構えはいつもの『避正斜撃』の構えをではなかった。右掌を前に左手を腰にもっていくのは従来のものだが足の位置が違った。普段足の方向を右ないし左に捩じり左右に動くのだがその足が正面、将人の方向を向いていた。将人は一瞬驚いてしまう。驚く事で出来た将人の隙をイズミは見逃さなかった。イズミは『趟泥歩』を用いて前進した。足をほとんど上げずする様に移動。上半身がほとんど動かさず前進する為、将人にはまったく動いていない様に見えていた。だから間合いに入られた事に将人は驚かずにはいられなかった。

イズミは水の様な滑らかな動きで将人の間合いに入り、左足を内側に捩じり力の起点とし左掌底に伝えて突く。水の様な苛烈な勢いの左掌底は火によって防がれた。将人は伸ばしていた左腕でイズミの左掌底を下から持ち上げ掌底を防ぎ、腰に添えていて右拳でイズミを突く。『五行拳』の一つ『炮拳』、火の属性を持つ技であった。

イズミは踏み出した左足を更に捩じり一回転し、将人の右拳を回避、そして回転する力を利用して右肘で将人の背中を打つ。強打による痛みに呻きながらも将人は強く踏み込み、強制的にイズミの間合いから離れ、振り返りながら『三体式』の構えを取った。

乱れる呼吸を整え痛みをこらえる将人に対し、イズミは全く呼吸を乱していない。


「防具を身に着けていないほうが確かにいい動きをしますね。それでも私には届かない。これでは前の試合の焼き回しですよ」


「まだ始まったばかり、これからどうなるかは誰にも分からない」


「いいえ、あなたは負けます。そしてあの女は……私が殺します!!」


「それだけは絶対にさせない!!」


鼻息を荒くする将人にイズミは冷たい声で言う。


「言うだけなら誰にでも出来る」


「その言葉そっくり返す」


二人の視線がぶつかり合い火花を散らす。


『形意拳』と『八卦掌』の戦い、直線対円の戦い二回戦が始まった。。





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