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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第九章 仙人、武術大会二回戦編
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仙人、ウェルに事情聴取、正体を明かす

ウェルは非常に居心地が悪かった。出来るなら逃げ出したいくらいだが、正座をしている為、足が痺れている上に、入り口をある人物が立って塞いでいる為、それも出来なかった、


「エート……マサトさん、イズミさん対策はしなくていいんすか?」


入り口の前に椅子を置き、足を組みにらみを利かせている将人にウェルは恐る恐る聞く。


「それはおいおい考える、まだ時間はあるんだから。それより今はウェルさんの事色々聞かせて欲しいなあ…………」


「な、何すか? 自分のスリーサイズっすか? だったら数字を聞くより直に触った方がよりわかるってもんすよ」


「ウェルさん!!」


将人にぎろりと睨まれウェルは首をすくめる。


「ウェルさん、今はふざけないで下さい。気になる事をそのままにしていたらそれこそ負けてしまいます。今はウェルさんの事を聞くことがイズミさん対策だと思って下さい……という事で話してください」


「ンー、分かったっすよ。自分の命は将人さんの双肩にかかってるっすからね」


そういうとウェルはとつとつと話し始めた。


イズミとの戦闘が中断された後、ウェルをお姫様抱っこで担ぎ、そのままダッシュし将人の控室に連れ込んだのだ。ウェルに「誰もいない部屋に連れ込んで、ナニするつもりっすか? マサトさんだったらナニされても……」などとふざけた事を言ってくるものだからデコピンで黙らせた。大きめの布を渡し、体を覆わせ、事情聴取を始めたのだった。控室に入った直後、マサリア達がやってきたのだが、今は二人きりにしてほしいと言って控室を出てもらった。今も控室の外で待っているのが気配で分かる。


「マサトさんがご存知の通り自分は『滅び』の眷属です」


ウェルの告白に将人は深々と溜め息をついた。


「イズミさんの勘違いだと思いたかったけど……やっぱりショックだわ」


「マサトさん……」


「まあいいよ、じゃあ次の質問、どうして俺に近づいた? 俺を……殺す為に近づいたのか?」


「それは違うっすよ!! 自分はある人の命令で監視してるだけっすよ!! 殺すだなんてとんでもない!」


ウェルは顔色を変えながら訴える。そんなに人生経験が豊富ではないがウェルの必死さには嘘がないように思える。


「ある人物って誰の事?」


「それは言えないんっすよ。言おうとすると………」


ウェルが口元を押さえ激しく咳き込み、血を吐いた。


「言おうとすると内臓を激しく損傷し、死に至る制約の魔法がかけれれてるっす」


「そんな事は口で言って下さい!! 自分を傷つけてどうするんです!! バカですか!?」


「実際に見せないと信用されないと思ったっすよ……」


ウェルは口元の血を布で拭う。


「制約をかけられているのはその人物の正体のみでそれ以外は言う事が出来るから安心してほしいっす」


「じゃあ、さらに質問。その人物に命令された事は監視のみだったのか。状況によっては……暗殺しろとは命じられなかったのか?」


「それが変なんっすよねえ」


「ヘン?」


将人は首を傾げる。


「監視をするだけではなく、状況によっては味方になってほしいって命じられたんすよ」


将人は更に首を傾げた。もの凄くおかしな話である。『滅び』と相反する力である『氣』を使う事が出来る者を生かしておいても意味がない、それところが害になる。その相手の味方になれとは意味が分からなかった。


「訳が分からん!? 眷属って何なんだ!?」


「自分に言われても困るっすね。男を女に変容させるぐらいの変人の集まりっすから」


「男を女に変容?」


「そうっす。自分少し前までは男だったんすよ」


「オトッ!?!? イマ、オンナ!?!? ハァ!?」


これまでで一番の衝撃告白だった。ウェルの言葉に将人の頭は追いつかず、目を白黒させる。


「ついでに言うなら男の時の名前はウェゲルっす。覚えてるっすよね?」


将人は激しい片頭痛に襲われる。痛みをこらえる為こめかみを強く押さえる。


「……一つ一つ説明してくれ。頭が追い付かない……」


「いいっすよ。かつて自分は将人さんの抹殺しようとしたっす。その失敗を本部に報告した際、失敗の責任を取らされ処刑される事になったんすけど、ある人の一声で処刑を免れたっす」


「そのある人っていうのが」


「自分の制約の魔法をかけた人物っす。で、その人の下に付く事になったんすけど処刑から救った代償にある魔法の実験に付き合う事になって、その結果がこの女の体っす。そしてその人にさっき言った通り、状況によってはマサトさんの味方になってほしいと命じられたっすよ」


「そいつは何でウェゲルを女体化させたんだ? 一体何の魔法をかけたんだ?」


「属性を変容させる魔法だと言ってたんすけど詳しい事は自分には分からないっす」


「そんな訳の分からん魔法の実験に協力したのか!? 信じられん!?」


その魔法が失敗したら死んでたかもしれないというのに、ウェゲル=ウェルは自分を命を軽んじているのではないだろうか。


「しかし、属性を変容か」


将人には魔法の事はよく分からない。だが、この男から女に変容させるくだらない魔法が恐ろしい事の片鱗であるように思えてならなかった。


「………あえてウェルさんと呼ばせてもらうけど、ウェルさんは今のままでいいの?」


「不満はないっす。それどころか男の体だった時より…気持ちがいいんすよ。この良さを知ってしまうと戻りたいとは思わないっす」


ウェルの表情が艶っぽいものになるが、将人はそれに興奮する事はなかった。それどころか寒気を覚える。ある時期を境に男から女になるなど理解の範疇を越えている。


「自分の言える事はこれで全部っす」


全てを聞き終えた将人は溜め息をついた。


「謎が謎を呼ぶ内容だった……これは聞いて俺はどう行動すればいいんだろう?」


将人はしばらく腕を組んで考える。


「保留しよう。今は試合の事だ」


将人は考える事を放棄した。


ウェルさん、俺が負けたら逃げて下さい。イズミさんはおそらくだけど俺を殺さないと思いますから」


ウェルは首を横に振る。


「逃げたりしないっす。マサトさんとは一蓮托生、マサトさんが負けた時はこの首差し出すっす」


将人を信頼し笑顔で答えるウェルの顔を将人は見ていられず、顔を背ける。


「すっごいプレッシャーだわ」


「そう気負わず頑張ってください」


「……他人事のように……」


将人はウェルの額にデコピンを食らわせた。








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