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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第九章 仙人、武術大会二回戦編
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仙人、予選二回戦二戦目開始、ウェルVSイズミ

時間は少し遡る。将人とユージンの戦いが終わった直後、倒れているユージンが王宮の魔法師団にてタンカで運ばれ、将人がそれについていく。

闘技場に誰もいなくなって数分ウェルとイズミが入場してくた。二人を姿を見て観客が特に男性が別の意味で声を上げる。そんな声を上げる男性を女性は軽蔑の目を向けていた。二人とも別の意味で美女であり、特にウェルは色々と危ない恰好をしているのだから男性が色めき立つのは仕方がなかった。

ウェルとイズミが闘技場の中央に立ち、一メートル程離れてところに対峙する。イズミは困惑の目でウェルを見ていた。


「……アナタは何て恰好をしているんですか?」


「何て恰好ってサービスっすよ」


ウェルはイズミに無邪気な笑みを向ける。


「サービスって……アナタ、馬鹿ですか」


「馬鹿って何すか、ひどいっすね!」


ウェルはムゥッと頬を膨らませる。普通の男性ならキュンとくるのだろうがイズミは女性、呆れたのかこめかみを押さえた。

ウェルはかつて将人をある意味苦しめた黒のワンピースを着ていた。スカートの丈が短い、胸元が大きく開いている、開いた胸の部分は黒い紐でクロスさせ下に落ちないようにしているが、紐が胸に食い込んでおり何かと煽情的なあの服だった。腰には愛用の片手剣のみで他には防具を装備していなかった。それに対してイズミは白いゆったりとした服、将人の世界でいう所のカンフースーツに似ていた。イズミは女性にしては身長が高くすらりとしている為、男装の麗人と言った感じで女性から黄色い声が上がっていた。


「声援に答えたらどうっすか?」


ウェルは屈伸運動や前屈、腰を振ったりしながら言う。屈伸運動する度に下着がちらりと見える、前屈をすると開いた胸元からあるものがポロリとこぼれそうになる、腰を振ると零れそうだったものがプルンプルンと揺れる。色々危険だった。


「アナタには羞恥心はないのですか!? いい加減にしなさい!!」


クールビューティーという感じのイズミでも流石に顔を赤くする。同性が見ても煽情的で見ていられなかった。


「皆さんのご期待に応えてるんっすよ。皆さん自分に釘付けかと思うと体が何とも言えず……」


ウェルは四方八方から監視られる視線に我慢できないといった感じで身をくねらせる。それを見てイズミは引きまくる。

身体強化の魔法は体の機能を強化する魔法であり、視覚の強化も出来るのである。魔力の低い者んでも体の一部分の強化は可能だった。男性客一斉に視覚を強化し、ウェルの嬌態を食い入るように見ていた。

前哨戦はウェルの圧勝だった。


「……アナタと話をしていると気が狂いそうになります。お話はここまでにして早く戦いましょう」


イズミはフゥゥと深々と息を吐き、上半身をウェルの方向に向け下半身を右側に向ける『八卦掌』独自の構え、『避正斜撃ひせいしゃげき』の構えを取った。


「余裕がないっすね……誰か好きな男はいないっすか。そういう態度だとだえも近づいてこないっすよ。女性としては悲しい人生贈る事になるっすよ、そんなだと」


「余計なお世話です!!」


「もう少し楽しみたかったんすけどしょうがないっす! 始めるとするっすよ!」


ウェルが腰の片手剣を抜きイズミに振り下ろした。イズミは足を上げず、スルスルと地面を滑るように動きウェルの側面に移動する。ウェルの攻撃は空を切り、片手剣が地面を叩きつけ、轟音が上がる。それが試合開始の合図となった。

イズミは足を上げず地面をするような歩法『趟泥歩しょうでいほ』と呼ばれる歩法で移動し、ウェルを中心として円周を回る。その滑るような動きなウェルは動けなかった。円周の動きから直線的な動きに変え、ウェルの背後から左掌底で突くイズミ。『八卦掌』はその名の通り拳は作らず、指先や手のひらで突く。イズミに左掌底がウェルの背に届く瞬間、時間の流れが急に緩やかになった。集中状態になり時間の間隔が遅くなったのだ。


(何故、今、集中状態になった!?)


そう考えるイズミの視線はわずかにこちらに向いているウェルの口元に向かう。ウェルの口元が僅かに吊り上がっていた。それを危険信号と見て、咄嗟に動きを止めようとするが止める事が出来なかった。足元から邪悪な颶風が吹き上げた。ウェルの片手剣の柄頭がイズミの掌底を下から弾く。そこで止まらずウェルの片手剣の刀身がイズミを襲う。イズミは再び『趟泥歩しょうでいほ』でウェルの側面に逃れる。


「その動き、中々厄介っすねえ。でも、こうしたらどうなるっすかねえ!!」


ウェルは遮二無二に片手剣を振るった。その度に刀身が地面に叩きつけられる。火炎魔法が何発もぶつけられてるようなもので地面が破壊され、瓦礫の山となっていく。イズミはやや動きにくそうにしており、滑るような動きに見る影もなかった。


「……なるほど、考えましたね」


イズミが感心したように言う。


「足場が悪い状態でその動き維持出来るっすか?」


「それはあなたも同じでしょう」


「自分はこうするんで関係ないっす」


ウェルは足元に魔力を集中し放出、突進力に変えイズミに迫る。イズミは相変わらず『避正斜撃ひせいしゃげき』の構え。


「それは通じないっす!!」


ウェルがイズミに肉薄し片手剣を振るう。今度こそ一撃が入る。そう思われたがウェルの片手剣はイズミをすり抜けた。幻を切りつけた様で呆然としているウェルの頭上にトンッと何かが乗っかった。イズミであった。ウェルは慌ててイズミを頭上から払い落す。イズミは払いのけた手の上に乗り勢いに乗って宙を飛びクルリと一回転し着地した。体重を感じさせないその動きにはウェルだけではなく観客も呆然とした。


「何なんっすか!? その重みを感じさせないその動きは!?」


イズミは『避正斜撃ひせいしゃげき』の構えを取りウェルを見据えて答える。


「私の学んだ武術『八卦掌』は『軽気功』を同時に学ぶのですよ」


「『軽気功』!?」


『軽気功』―――あるいは『軽身功』とも呼ばれ体を軽くする事を目的とする鍛錬法である。これを行う事で高く飛んだり速く走れるようになり、達人ともなると水面を渡る、垂直な壁を伝い登る事も可能だとされている。今回の場合は体重を軽減、跳躍し、ウェルの頭上に移動したのだ。


「そんなトンデモ技がある何て恐ろしい人っすね」


「何を言いますか、あなたこそ大したものです。私を相手にここまで食い下がれるとは思いませんでした。アナタは間違いなく強い!」


イズミは素直に称賛するがウェルはそれに面白くないといった顔をする。


「まだ勝利は決まってないっす! それなのにその上から目線、気に入らないっす! その顔泣きっ面にしてやるから覚悟するっす!!」


ウェル右手に片手剣を持ち半身に構える。イズミを見据えるウェルの顔から表情が消える。それも見てイズミは寒気を覚えた。



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