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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第九章 仙人、武術大会二回戦編
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仙人、試合後ユージンとの会話、将人走る!

とても穏やかで温かい魔力の波動を感じユージンは目を覚ました。そこには自分を治療する魔法使い、その後ろで将人が心配そうに見ていた。それを見てユージンは悟った。


「……拙者、負けてしまったでござるか」


「そうです。俺の勝利です」


「はっきり言うでござるな。少しは言い淀むとか答えにくく言うものではござらんか?」


「事実ですから」


ユージンがふてくされた顔をしながら上半身を起こす。それを見てユージンを治療していた魔法使いは後ろに下がった。


「ここはどこでござるか?」


「ここはユージンさんの控室ですよ。俺たちの戦いが終わった後、こっちに運ばれました。俺は心配でついてきました」


「そうでござったか……」


観客の声援が聞こえてくるがその声がやや遠い。


「そちらの拙者を治療してくれた魔法使い殿、しばらく二人きりにして欲しいでござるよ」


そう言われ、魔法使いは控室を出た。将人とユージンの二人きりになる。しばらく見つめ合い、将人は逃げ出したい気分になる。不意にユージンが勢い良く頭を下げた。


「教えて欲しいでござる。どうして拙者は打ち負けてしまったでござるか!? 拙者の双剣での一撃、あれは自分の剣技の仲では最強の技でござる。それをああも簡単に破られるとは納得出来ん!! どうか教えて欲しいでござる!!」


ユージンが頭を下げる。将人は困った感じで頬を掻く。だが、ユージンの気持ちも分からないでもない。自分の最強の技が敗れたのである、これが他の者にも出来るのなら心中穏やかではいられないだろう。


「今回の事が出来るのは多分俺だけですよ。他の人には同じ事が出来ないと思いますから」


「それは一体どういう事でござるか?」


「実は俺、ちょっとした特異体質で魔力が全くないんです」


そういう事にしておいた。異世界の人間であることを説明するのは正直面倒くさかった。


「数値にするなら零なんです。でもないんだったら別の力を持ってくしかありません。魔力とは別の力、それを『氣』と呼んでいます。そしてその『氣』は魔力を打ち消す作用があります。魔力を宿した武器に『氣』を当てると破壊する事が出来るんです」


「ナルホド、その『氣』の力で拙者の双剣を破壊したでござったか……それはマサト殿しか出来んでござるな」


合点がいったという感じでユージンが頷く。


「マサト殿の双拳の威力に『氣』の力が乗れば……ナルホドそれは勝てんでござるな」


「卑怯とか言わないでくださいね」


「言わんでござるよ。拙者の魔力、数値で出すと僅か一だし似たようなものでござる」


「イチッ!?」


将人から驚きの声が出る。身体強化の魔法にどれだけの魔力を使うのかは不明だが、僅かに一ではどんな魔法も使う事が出来ない事は容易に想像できる。ユージンにとってモンスターが跋扈する、魔法万能なこの世界は地獄に等しいものではなかったのだろうか。それなのに諦めず剣を取り一心不乱に剣を振り、武術大会に出場出来るほどの実力をつけたのだ。これを驚かずにはいられないだろう。


「ナルホドねえ。魔法が使えないから体術、剣術に磨きをかけたって事か」


「どうすれば素早く動けるか、剣を振るえるか手探りで探しながら研鑽する日々、中々面白かったでござる。生まれてこの方、三十四年、これほど面白い、いまだに飽きないものがあるというのは幸せでござるよ」


「ちょっと待って下さい。今、気になること言った。今、生まれてこの方、三十四年って言ってましたが、アナタの年齢って?」


「言った通りの三十四才でござるよ」


ユージンに平然と言われ将人は更に驚愕する。


「その童顔で三十四ってどう見でも十代後半じゃないですか!? 年齢詐称してません!?」


「ムッ、それはいささか失礼でござろう。拙者、年齢詐称などしてござらん」


「でもその若さって……思ったんですけど自分のほとんどの魔力ってその若さを保つ為に使われてませか?」


将人の言葉にユージンが目を見開く。


「……考えた事なかったでござる」


呆然と呟くユージンを見て将人は吹き出す。


「笑う事なかろう。十代ならともかく二十代、三十代と年食って全く容姿が変わらなかったでござるよ。周りからはエルフの血が入ってるんじゃないかって言われて調べてみてもそんな事実はないし原因不明だったでござるよ!? 周りは若くていいというが拙者は年食ってナイスミドルになりたかったでござるよ!!」


「言ってる事、おかしくなってますよ!」


将人は更に大爆笑。


「笑わないで欲しいでざる………」


ユージンが苦虫を噛み潰したような表情で情けない声で言う。


「ああ、すみません」


将人は目の端に浮かべた涙をぬぐう。表情を改めさっぱりしたような顔でユージンは


「さっきまで戦っていた相手とこうやって話が出来るというのは、お主が言っていた繋がりという奴でござろうな」


将人キョトンとした。


「自分の言った事なのに無自覚なのでござるか? 何とも無責任な。自分の言った事には責任を持つでござるよ」


テヘペロする将人を呆れ顔で見るユージン。


「さあ、もう行くでござるよ。お主の次の戦いはもう始まってるでござるよ。あの二人の女子のうちどちらと戦うか分からぬが、試合をみて戦力分析をしておくのは重要でござるよ」


「分かりました。では、お疲れ様でした」


将人はそう言って控室を出て行った。それを見送ってユージンは声を押し殺して泣いた。



将人は控室から一直線に闘技場に走る。観客の声がひと際高くなっている所を見るとどちらかの勝利が決まったのだろうか。

闘技場にでた将人が見たのは気を失っているのかぐったりしているウェルの首を掴み右手で持ち上げ、左手で胸を貫こうとするイズミの姿であった。将人は「ヤメロッ!!」と叫びながらイズミに向かって疾走した。









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