表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第九章 仙人、武術大会二回戦編
161/190

仙人、マサリア達の激励、ユージンとの会話、そして試合開始

武術大会予選二回戦当日―――


将人は控室でいつもの装備を身に着けた上で『五行拳』、『十二形拳』の動作を一通り行い、自分の体調を確認していた。鎖かたびらやクロース・アーマー、手甲の重さはほとんど気にならず体の動きに淀みはない、いつも通り動けるのを確認する。次に呼吸を整えてまっすぐ立つ。背筋を伸ばし、足を肩幅に広げ腕は力を抜いて脇に垂らす。そういうリラックスした状態で目を閉じ、呼吸を整え自分の内部に意識を凝らすと体の各部分にエネルギーのうねりを感じられた。練習の後にこれをやると自分がこれまでやっていた練習の成果、まさに功夫を感じられるため、最近は特に好んでこの瞑想めいた事をやっていた。

そうやって自分の内部に意識を凝らしていると控室のドアがノックされた。将人は意識を凝らす事を止め、控室のドアを開ける。そこには激励に来たマサリア達が居た。マサリアたちはドカドカと控室に入っていった。


「……何というか殺風景ね」


魔法の光で照らされた室内を見てマサリアが呟いた。控室になるのは簡素なテーブルと椅子が一つだけだ。テーブルの上には果物の果汁と塩を水で溶いたものが入った瓶と握り飯が入った包みが一つだけだ。他には何もない空間なのだから殺風景というのも頷ける。


「これから試合だというのに華美な物があっても意味ないだろ。それに魔法で一日二日で作ったのならこれで上等だよ」


将人の言ったとおりである。将人たちが今いる闘技場は予選二回戦の組み合わせ抽選が終わったその翌日に魔法師団総勢で僅か一日で造られた物なのだ。闘技場建設の後の状態維持に魔力を回しているはずだから内部の構造にまで気など回していられないだろう。


「マサト君は通常運転だね」


ファテマが将人をマジマジ見ながら言う。ファテマたちは控室に来る前に観客席を見てきている。何百、何千という観客の中で戦うのかと思うとそれだけで動けなくなりそうだが普段と変わりのない将人を見ると感心せずにはいられなかった。


「そんなことありませんよ。今も緊張はしてるんですよ。やせ我慢という奴ですよ」


先程までは落ち着いていたのにマサリアやファテマの話を聞いて自覚をしたのか体が震えてきた。


「マサト殿、しっかりして下さい!」


アベルドが力強く将人の背中を叩く。鎖かたびら、クロースアーマー越しとはいえ衝撃が来る。アベルトに文句を言おうとするが言う事が出来なかった。柔らかいものが将人の顔面を塞いだからだ。


「お兄ちゃんに元気注入だよ!!」


パウラが自分の胸に将人の顔を引き寄せ、両腕でホールドしたのだ。今回は全身鎧を装備していない為、服越しとは言え直にその感触を味わう事になるが息が出来ない状況では色気もへったくれもなかった。鼻も口も塞がれ声が出す事が出来ずパウラの背中を叩いて離してくれと意思表示する。パウラはそれに答えホールドを解除する。


「どう、お兄ちゃん、元気出た?」


「……試合前に死ぬかと思った」


ショックを受け落ち込むパウラ。呆れ顔の将人はふとエミリアと目が合った。しばらく見つめ合う。


「……マサト様…ファイト」


エミリアに不意に無表情に無機質に言われる。テンポのずれに将人はガクッと来るがリラックスする事が出来た。


「みんな、アリガトウ。おかげで落ち着いたよ」


将人の謝礼に照れ笑いを浮かべるマサリア達。その時控室のドアがノックされた。入ってきたのは魔法師団の一人だった。


「マサト・クサカベ様、二回戦に第一試合がこれから始まりますのでよろしくお願いします」


「呼ばれたみたいだな、じゃあ行ってくるよ」


「私たちも観客席がら見てるから頑張ってね」


マサリア達の声援を背に受け将人は控室を出た。魔法の上りで照らされた薄暗いを通路を歩く。闘技場までは一本道迷う事はない。闘技場に近づくにつれ観客の声援が大きくなっていく。これから行われるであろう戦いに興奮を隠しきれないのだ。近づくにつれ、心臓の鼓動も少しづつ早くなっていく。走り出しそうになるのを抑えつつ闘技場に到着した。

円形の闘技場で直径で四百メートルほど。外周は段差式の観客席となっており、そこには老若男女、人種、種族問わずあらゆる者たちが声援の声を上げていた。

闘技場の中央にはすでにユージン・リーキーが待機していた。将人はユージンに向かって歩く。ユージン前の距離が二メートルぐらいの所で将人は立ち止まる。


「待っていたでござるよ、マサト殿」


ユージンはこれから戦うとは思えない様なのんびりした口調で話す。


「待たせた様ですみません、ユージンさん」


将人は謝りながらユージンを見る。ユージンは革の胸当て、腕当てを装備しており腰には二本の短剣を携えていた。リラックスして立つその姿は、悠然としていて弱々しい感じがない。『暗黒』のライバルだというのも頷ける。


「イヤイヤ、そんなことはないでござるよ。それより緊張はしておらぬか? もしそうなら深呼吸するでござるよ」


将人は思わず笑ってしまう。これから戦う相手の体調を気にするとは案外お人好しだと思った。


「緊張で力が出せずに即負けるなどしないようにしてほしいでござるよ」


「大丈夫、リラックスできてますから……ユージンさんを満足させる事が出来るような戦いをします。約束しますよ」


「それは重畳」


ユージンが満足げに頷く。その時上空でドンッという轟音が鳴り響いた。その音に観客の声が一層高まった。


「これが試合開始の合図でござるよ……では、これから思う存分し合うでござるよ」


ユージンは腰の二本の短剣を両手で抜き、ダランと脇に垂らした。体全体に過度な力をかけず、あらゆる事に対応出来る構えだった。将人も『三体式』の構えを取りユージンを見据える。一挙手一投足を見逃さず、動きを読み即時対応を心掛ける。二人の集中は否応なく高まっていった。

予選二回戦第一試合が始まった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ