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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第八章 仙人、武術大会開始
155/190

仙人、情報収集を続ける。パウラVS……

まずはアベルトから話を聞いた。Bグループの予選通過者はユージン・リーキーという男性らしい。短剣の二刀流らしい。足さばきと体捌き攪乱し、左右連撃で一瞬で六連撃を入れる事が出来る達人であるらしい。アベルトとこのユージンという人物は最後まで残り一対一で戦う事になり、必殺技とも言える六連撃で敗北を喫したとの事だ。


「残念だったな」


「マサト殿の動きが目に焼き付いていたからこそ食い下がる事が出来たのですが」


「俺の動き?」


「マサト殿の動きと似ている部分がありましたからね。予選通過できてればマサト殿を驚かせられたのに残念です」


アベルトは将人の『形意拳』の動きをよく観察している。もし、予選通過し戦う事になったとすれば自分でも気が付かない欠点や癖を突かれ、苦戦を強いられたかもしれない。


「アベルト君……後で色々お話ししようか?」


「私、何か怒らせるような事言いましたか?」


将人の妙な迫力にアベルトは少し逃げ腰になる。


「いいや、違うから。俺の動きに欠点があったりするなら教えて欲しいかなと思っただけだから」


「そういう事でしたら幾らでもお付き合いしますよ」


「ああ、頼むよ。それで次はパウラちゃんに聞くんだけど………」


将人はパウラの方を見ると、珍しい事にパウラは顎に手を当て何やら思案顔だ。打てば響くようにペラペラと話し出すパウラにしては珍しい気がする。


「パウラさ~ん!」


「ワッ! 何、お兄ちゃん?」


「何って、ボウッとしてた様だから」


「ゴメン、お兄ちゃん。ちょっと考え事してたの」


「考え事って?」


「戦った人の事なんだけど………」


パウラは頭を抱え込みウンウン唸っていた。どういう事と隣のウェルに目で訴えるが自分に分かる訳ないっすとでも言うように首を振る。


「パウラちゃん、とりあえず色々話してみよう。そうするうちに何を言いたいのか纏まるから」


「ウーンとね、お兄ちゃんは突風何だけど、その人は竜巻みたいな感じというが」


「どういう事っすか?」


ウェルが首を捻ってアベルトを見るがアベルトも同じように首を捻っている。だが、将人には何となく言わんとする事が分かる。将人の『形意拳』の動きは直線的なものが多いがそれ故に素早い。だから突風という表現になるのだろう、だとするとパウラの相手の動きというのは円の動き、相手を巻き込むような動きをしていたという事なのだろう。この世界の戦士にしては珍しいのかもしれない。将人は興味をそそられ、さらに話すよう即す。


「ええっとね―――」



他のB~Dグループの試合も王都から離れた郊外にて、魔法を用いて人工の街を作り、その中での戦闘が行われた。その中でパウラは徒党を組まず一人で戦っていた。パウラの戦法を考えればその方が都合がよかったからだ。

パウラは魔力の九割を身体強化と全身鎧の防御力の強化に使い、残りの一割を足元に集中、放出し突進力に使ったのだ。体と鎧の防御力と突進力を合わせた突進技には、他の出場者の剣も魔法も通用せず、ギャグマンガが如く轢かれ宙を舞っていた。

パウラはそうやって移動と攻撃を繰り返し、開けた場所に出た。そこでもまた別の戦いが繰り広げられており、その光景にパウラは驚愕した。

数にして十数名の剣士や魔法使いが一人の女性に襲い掛かっていたのだ。加勢すべきと踏み出すがその足が止まってしまった。必要がなかったからだ。

剣士が振り下ろした長剣を少女は独特の構えから左側面に避け、足元からの捩じり、腰の捩じその捩じり力を腕に伝え掌で突いた。掌は剣士の顎を捕える。あまり力が入ってないように見えたその一撃は剣士の脳を揺さぶり意識を刈り取った。続けて襲い掛かってくる相手の間合いに女性は滑るように入り込み掌で突く、鞭のように腕を振るい後頭部を打つ、足を払うと同時に相手の胸部に腕を入れ腰の捩じりを利用して相手を後方に押し体勢を崩して倒すなどの攻撃を行い一人、また一人と倒していく。そしてこの予選会場に立っているのはパウラとその女性の二人の身となった。


「アナタが最後の一人ですか?」


女性がパウラに気付いて話しかけてきた。パウラは女性をまじまじと見つめる。年の頃は十四、五くらいか、赤い髪の長身の美少女。笑えば可愛いと思うのだが、今は険しい表情をしている。今まで戦っていたのだし、これから戦う相手に笑顔を振りまくなんてありえないのだから当然と言える。


「そうだよ、それにしても凄いね、お姉ちゃん! これ、一人でやったんだね!」


倒れている出場者を指差してパウラが言う。それに女性は軽くずっこけた。


「アナタもしかして女の子なのですか!?」


あかがみの女性が驚きの声を上げる。全身鎧で身を包み、顔も兜をかぶる事で隠れてしまっている、性別が分からないし、聞こえてきたのが女の子の声であれば驚かずにはいられないだろう。


「そうだよ、もしかして男性だと思ったの? ひどいなあ」


「普通女の子は全身鎧など装備しません」


「ひどいよ! 女の子が全身鎧を着ちゃいけないっていうの!?」


「そうは言いません。戦うものにとって防御力をあげるのは当然ですが、それでも女性が装備する物では………」


赤髪の女性は変な言い合いになっている事に気付き咳払いをして気持ちを切り替える。


「そんな事はどっちでもいいのです。それよりも今、この予選会場で立っているのは私とアナタの二人のようです。私たちのどちらかが予選通過となります。お互い正々堂々戦いましょう」


「うん、パウラ、頑張っちゃうんだもんね!」


パウラが陽気に言いながら両腕を伸ばし顔の前で組み合わせる。身体強化と鎧の脳魚力を上げる魔法を同時にかけ突進技の準備をする。


「パウラというのですか、アナタは。丁寧に名乗ってもらったのですから私も名乗るべきでしょう。私はイズミ……ハッケショウのイズミ・エナミド!!」


赤髪の女性―――イズミは名乗りを上げると上半身をパウラの方に向け、下半身は右側に捩じる。左腕を前に向ける。左ひじの下あたりに右手を添える。左掌の向こうにいるパウラを鋭い視線を向けていた。その視線にパウラは射すくめられ、ゾクリと寒気がしたが「イックヨー!!」と大声を出し気合を入れ、寒気を吹き飛ばし、足元に魔力を集中、放出し突進した。







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