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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第八章 仙人、武術大会開始
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仙人、残念会という名の情報収集

壮絶な予選が終わり王都へ戻ってきた将人はアカマの武器屋に向かう。『暗黒』のマティアスとの闘いでクロース・アーマーがボロボロになった為、新しい防具を調達する為だ。それ以前に普通の服も調達しなければならなかった。今の将人は鎖かたびらに手甲だけで上着はズタボロ、上半身に限っては裸に近い状態である。各所を包帯でぐるぐる巻きしている事でいくらかは隠れているが見る人が見れば劣情を催すかもしれない。下は半ズボン状態で何とか腰に巻き付いているような状態だ。そんな状態は恥ずかしいというのもあって、予選会場でフード付きローブを貸してもらい纏っている。フードで顔が隠れているのは都合がよく、誰にも呼び止められずに済んだ。

十数分ほど歩くとアカマの武器屋が見えてくる。入り口のドアをくぐると「おう、ラッシャイ!」という豪快な声がかけられる。カウンターにはシゲルイの兄がいた。フードを目深に被り顔を隠した客にシゲルイ兄は怪訝な顔をする。


「お客さん、うちは普通の武器屋だ。怪しいものは売ってないぜ」


「イヤイヤ、俺ですよ。アカマさん」


将人はフードを降ろす。


「何だ、マサトかよ。何でそんな怪しい恰好してるんだ?」


「まあ、今、こんな状態でして………」


将人はフード付きマントは外し、今の現状を見せる。シゲルイ兄はしばらく呆然としたかと思うとプゥーッと吹き出した。


「何つうセクシーな恰好してるんだ。別の店で金が取れるんじゃないか!?」


ゲラゲラと笑われ将人は顔を赤くする。


「俺一人で見てるんじゃ悪いな、みんなにも見てもらおうか。オーイ!!」


シゲルイ兄はカウンターの後ろの扉を開け声をかける。その声に反応して数人の足音と話声が近づいてくる。


(ん、この声は?)


カウンター裏の扉から顔を出したのはマサリア達だった。悲鳴を上げ、両手で顔を隠すものの指の隙間からちらちらと見る者、なかなか良い肉体だと称賛する者、ニヤけ顔をして涎を垂らす者、あるいは無表情な者、色々な感情が混ざった視線を向けられた将人はフード付きマントで体を隠し背を向けてその場に座り込んだ。シクシクという声が聞こえてきた。背中に哀愁が漂っていた。


将人はゼロ鉄製の武器の試し切りをした空き地に通される。そこでは数本の空になった酒瓶が転がっており、木の杯にはに見かけの果実酒が入っていた。

将人は地面に直に座る。アベルトに木の杯を渡され、果実酒を注いでくれた。


「視線で犯された………」


将人は涙目で果実酒をあおる。今は裸に近い恰好ではなく、ゆったりとした貫頭衣を着ている。シゲルイ兄が貸してくれたものだ。


「まあまあ、マサト殿、そんなに恥ずかしがらずに。男同士なら恥ずかしがる事ないじゃないですか」


アベルトが将人の空いた木の杯に果実酒を注ぐ。


「………お前が一番危ないんだよ」


将人は憮然としながら果実酒をあおる。空いた木の杯に果実酒を再び注ごうとするのだが、女性陣はお互いい牽制しあい注ぎに行く事が出来ない。ギスギスした雰囲気を改善すべく尋ねた。


「どうして昼間っから酒盛りしてるんだ?」


「それはね―――」


代表してファテマが話す。言うなれば残念会だった。予選B~Dグループの試合はAグループより早く終わった。アベルド、パウラ、ウェルは装備の修繕の為、自然とアカマ武器屋に集まったのだった。そこでお互いの勝敗を話す。ウェルは予選通過、アベルトとパウラは予選敗退だった。落ち込んでいるアベルトとパウラを慰めるべく残念会を開く事になった。マサリアたちはそれを聞き合流、将人は時間を見て呼びに行こうと皆で話していた。


「そうか、二人とも予選落ちしたか。こういうのは実力もさることながら運の要素も絡んでくるからな。次回の大会でまた頑張ろうよ」


将人がアベルトとパウラの木の杯に果実酒を注ぐ。


「ウウッ、マサト殿」


「お兄ちゃん……」


二人は涙目になって果実酒をあおる。


「マサトさん、自分にも注いでほしいっす」


そう言ってウェルがしなだれかかる。柔らかく気持ちのいい感触に耐えながらウェルを押しのける。


「アンタは予選通過してるでしょうが」


「勝利の美酒を味合わせて欲しいっす」


しょうがないと言った顔でウェルの杯に果実酒を注ぐ。それをウェルが一気に飲み干す。


「クゥーッ、ウマイっす。マサトさんに注がれた酒は一味違うっす!」


美酒に酔いしれるウェルはほおっておいて将人は二人の方を向く。


「BグループとCグループの予選通過した人の事を教えてくれないか? どちらか一人とは確実に戦う事になるだろうから」


「あ、それ自分も聞きたいっす」


ウェルが将人の隣りに座る。


「ウェル殿、さり気にマサト殿隣に座らないでください!」


「そうだ! そうだ!」


「言うなればここは勝者の席っす。予選敗退のお二人に文句を言う資格はないっす」


高笑いするウェルを悔しそうに見るアベルトとパウラ。


「いい加減にしなさい!」


将人はウェルの頭に空手チョップを食らわす。


「話がいつまでも進まないから。二人ともわかる範囲でいいから教えてくれ」


涙目になるウェルを尻目にB、Cグループの予選通過者の事を話し始めた。

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