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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第八章 仙人、武術大会開始
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仙人、武術大会予選終了後、馬車の中でのよもやま話

倒れている将人とマティアスの元に大量の黒い物体が集まり二人の下に潜り込むとグイッと持ち上げ、移動する。一体一体がずれのない統率が取れた動きで軽く二、三十キロの速度で動いていた。地面を滑るように移動できる感触は爽快なのだが、使い魔のビジュアルがあれだと思うと、分かっていてもサブイボが立ってしまう。

一分ぐらいで予選開始の時に集まったスタート地点に到着する。そこには予選Aグループの全出場者が集まっており、将人とマティアスを称賛していた。


「二人とも、凄かったぜ。『暗黒』の実力は当然として、こんな年端のいかない少年が『暗黒』を打ち破る何て今でも信じられんぜ!?」


「いいや、こいつは俺たち全員の攻撃を全て躱すなんて神業やってのけるんだぞ。勝って当然だろう」


「紙一重だろう。最後のあの技、『闇獄あんごく』だったか。あんな技、普通真っ向から立ち向かおうとか思わんだろ。あんなの来たら迷わず降参するぞ、俺なら」


「そんなんだからいつも予選敗退になるんだよ! もっと根性出せよ!」


「根性だけじゃ無理だって!」


そんな話が喧々囂々とされる中、一人の女性の魔法使いが将人に近づき治癒魔法をかける。だが、いつまでも傷が塞がらない事に驚きの表情を見せる。


「すみません。俺には魔法が効かないんで………奇麗な布か何かありますか? 自分で止血しますんで」


将人は体を起こそうとすると女性の魔法使いに優しく押さえつけられる。


「ちょっと待っててください」


女性の魔法使いは一旦、将人の前から立ち去りまた戻ってきた。手には薬箱を持っており、中には薬草をすりつぶして作った軟膏が入った瓶とカーゼが数十枚、そして包帯が入っていた。女性の魔法使いは手慣れた手つきでカーゼに軟膏を塗り、将人の傷ついた個所に張り付け包帯を巻いていく。


「傷の治療は魔法で行うのが当たり前だから薬なんて用意してないと思ってましたよ」


「普通はそうなんですが、魔法が常々使えると思うな、付けない状況も想定しろと国王様に言われてまして、王宮の魔法師団は魔法以外の治療法も学んでいるんです」


将人は女性の魔法使いから話を聞き素直に感心した。アルヴァール国王の様な転生者でなければ魔法が使えない状況というのは中々考えられないだろう。


「はい、これで治療は終わりました。立てますか?」


徐栄の魔法使いに言われ、立ち上がると眩暈が起こりその場にへたり込む。


「ムリそうです、分かりました。使い魔さん、頼みます」


女性の魔法使いがそういうとまた、大量の黒い物体が将人の足元に集まり持ち上げると幌が付いた馬車に向かう。


「これでAグループの予選は終了しました。これから王都へ戻りますので皆さんも馬車に乗ってください。皆さん、お疲れ様でした」


魔法師団のリーダーが声を上げると出場者もぞろぞろと動き出し、馬車に乗る。将人の隣りに座ったのはマティアスだった、ここに来た時と同じ状況だが違うのは勝者と敗者という事だった。勝者が敗者にかける言葉はないとよく言うが、無言が続くこの状況は中々辛い。同乗者も同じ気分だろう。何かネタはないかと考えていると以外のもマティアスの方から話しかけてくれた。


「魔法が効かないというのは本当だったのだな」


マティアスは包帯だらけの将人をマジマジと見ながら言う。


「そっちはもうピンシャンしてて羨ましい」


「俺は最後の『闇獄あんごく』で全精力、魔力を使い果たしただけだったからな。治癒魔法で簡単に直せた」


「だったら、自分で治癒魔法をかければマティアスが勝者になったんじゃないの?」


「俺も治癒魔法は使えんし、使えたとしてもあれ以上は戦おうとは思わなかった」


「何で?」


「俺の全てを出し尽くした技が敗れたのだ。それ以上はただの恥だ。それで『神剣』と戦っても誇る事は出来なかっただろう」


将人には理解できない考え方だった。


「それよりお前の話を聞かせて欲しい。魔法が効かないその身で武術大会に出場とは何を考えている。下手をしたら死んでいるぞ!?」


詰め寄られ将人は顔を引きつらせる。


「そうは言っても俺のいた国じゃ魔法が使えないのは当然だったし」


その言葉に馬車に乗っていた全員が目をむく。


「魔法が使えない人間がいる国だと!? 信じられん、モンスターが現れたらどうやって戦うんだ!? いや、待てよ、それが俺の『闇獄あんごく』を破ったあの力か?」


「そうそう、『氣』というんだが―――」


国の名前は、どこにあるという話になると非常に面倒だった。異世界の事など説明のしようがないのだから。だからそういう話になる前に話題を振って話を変えることにした。


「魔法よりは不便だがこの力を使うよりないし、『氣』を有効に使えるようにする為に体術が発展した。それが俺が使う体術、『形意拳』というんだけどね」


「ふうむ、国の風土によって使う武術、体術も変わってくるか。中々面白い」


将人が乗った馬車の中では武術談義が王都に戻るまで続いていた。








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