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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第七章 仙人武術大会前日譚
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仙人、焼き肉を食す、マルテナの登場、やっかいな頼み事

試し切りで使われた肉は皆でアカマ武器屋の調理室に運ぶ。シゲルイが肉の解体を行っている間に防具の方を見繕ってもらう。シゲルイはゼロ鉄製の武器は作成したが防具までは行っていなかった。アベルトは今回の武術大会の事を考え動きやすく、防御力もそこそこあるハードレザー・アーマーを購入。パウラは迷わずプレート・アーマーだった。プレート・アーマーの様な鉄製の物はオーダーメイドでサイズを測って型を取ってという作業が必要だと思ったが、魔法でサイズの調整できるようである。気に入った一品が見つかりパウラはホクホク顔だった。武術大会に出場しないマサリアたちは今回は防具の購入は見送っている。将人はボスコブリンとの戦闘でクロース・アーマーや鎖かたびらに損傷がない為、新たな防具の購入はしなかった。

それから将人たちは一端、アカマ武器屋を離れ、宿屋に荷物を置きに行く。鉱夫の村から即冒険者ギルドに向かった為、止まる宿屋を決めていなかったためだ。一人一部屋で部屋を取り荷物を置き、しばらく休憩し、夕方に宿屋を出てアカマ武器屋に戻る。

武器屋や道具屋に入り口には看板がかかっている。剣のマークが彫られた看板は武器屋、瓶のマークは道具屋といった感じた。この看板が外されている場合は閉店という意味になる。アカマ武器屋の看板も外されていた。だが、アカマ武器屋から肉の止めるいい匂い漂ってくるところを見るとアカマたちはいるようである。アカマ武器屋の横の狭い路地を通り抜けるとゼロ鉄製の武器の試し切りをした空き地に出る。そこではアカマ兄弟がレンガで簡易的なかまどを作成し、上に鉄板を敷き、火をガンガン燃やして肉や野菜を焼いていた。近くに酒瓶が転がっている所を見るとすでに飲み始めているようだ。


「オウ、マサト、先にやってるぜ!」


シゲルイが赤ら顔で笑いながら言う。


「シゲルイさん、もう出来上がってますね?」


「今日の肉はいい肉だからな、酒もうまいし。ホント、マサト様様だ」


酔っぱらっている為、いつもより陽気なシゲルイが将人に抱き着いてほっぺにキスをしてくる。


「女性ならともかく男にオジサンにヤラれたくねぇ! 誰かヘルプミィ!!」


将人をホールドするシゲルイを引きはがそうとアベルトとパウラが肩を掴むとすかさず、マサトのホールドを解きアベルトに抱き着い、キスの嵐をお見舞いする。


「止めて下さい、シゲルイ殿! 私のクチ…ビルは…マ………」


アベルトが気絶した。シゲルイはホールドを解き次の獲物を求めキョオキョロと辺りを見回す。マサリアたたはシゲルイと距離を取り、いつでも逃げれるようにする。


「気をつけろよ! シゲルイは酔うとキス魔になるからな!」


「早くいって下さいよ………」


将人はアカマ兄を恨みがましく見る。その視線を受けてアカマ兄はケラケラと笑う。


「シゲルイ、そこまでにしとけ。お前がそんなだとマサトたちが肉食えんだろ」


その言葉をシゲルイは聞き、アカマ兄の隣に座り、また肉を食べ始めた。シゲルイは落ち着きを取り戻した事を確認し、将人たちはかまどを囲うように座った。



ようやく食べれた焼き肉は非常に美味だった。とても柔らかく軽く噛むだけで噛み千切れる。肉汁が口いっぱいに広がる。塩と胡椒のみの味付けだがそれだけでも十分うまかった。


「うまい肉ですね、何の肉ですかこれ!?」


将人が興奮気味に聞くとシゲルイが答えてくれた。


「これはビックボアって言うモンスターの肉だ」


「ボアって事はイノシシか?」


「締め方にやり方があってな、それをちゃんと守ればうまい肉になるんだよ。マサトたちも解体する機会があるだろうからやり方を聞いとけよ」


「そんな肉で試し切りさせたんですか?」


シゲルイを非難がましく見る。いい肉で試し切りなどさせるなと、食べ物に対する冒涜だと将人の目が語っていた。


「まあ、いいじゃねえか。あのままじゃ解体もしずらかったしな。試し切りも解体も出来ていいことづくめじゃないか。無駄はねえんだからよ………メイドの姉ちゃん、俺が変わってやるからお前も食べろ」


シゲルイが逃げるようにエミリアの元に向かう。エミリアは肉を焼く役に徹しており、全く肉を食べていなかったのだ。


「いえ、私は………」


「いいから、いいから」


シゲルイがエミリアからトングと肉がのった皿を奪い、エミリアを座らせる。シゲルイが鉄板に肉を乗せ焼いていると上空から声が響き渡った。


「その肉、ワシにも食べさせるのじゃあ!!」


何者かが空き地にスタンッ着地した。突然の来訪者に将人たちは一瞬警戒するがすぐに警戒を解く。


「久しいのう、マサト」


「………城を抜け出していいんですか、マルテナさま?」


「固い事を言う出ない、マサト」


レ・ウォール王国第二王女マルテナは不満げな顔をする。


「ともかく肉じゃ、肉じゃ」


マルテナが受け皿とフォークをシゲルイから受け取ると焼けた肉を受け皿に取る。フォークに差し口に運ぶ。


「ウマい!! ウマいのう」


ウットリとした表情でさらに肉をがっつく。


(肉をがっつく王女様、肉食系王女様ってか? 何か違うよ、これって………)


将人の脳内で王女のイメージがガラガラと崩れる。思わず悲し気な表情になる。


「王女が肉食ってもいいじゃろが。勝手なイメージをワシに押し付けるな」


考えている事を読まれたかと将人は驚く。


「ワシがこうやって食べるところを見て父さまと姉さまが同じような顔をするからの」


将人は乾いた笑いでごまかす。

マルテナは黙々と焼き肉を食べ、やがて満足したというように受け皿とフォークを置き、腹を擦った。


「フゥ、満足、満足」


「マルテナ様はただ、焼き肉を食べに来たのですか?」


将人がマルテナにここに来た理由を聞く。


「そんな訳ないじゃろう。ここに来たのはマサトに頼みたい事があったからに決まっておろう」


「お断りします」


「まだ何もいっとらんだろが!」


「マルテナ様の頼み事って結構ヤバい事が多いんで怖いんですよ」


その言葉にマルテナは言い淀む。


「……確かにヤバい事かもしれんのう。これは成功しても失敗してもワシは文句は言わん。だから聞くだけ聞いてもらえんか? 結果がどうなっても報酬を払う事を約束するぞ」


「そういう事なら………」


「よかったのじゃ」


マルテナがホッとした顔をする。


「それで頼みたい事というのは?」


「マサトは今回の武術大会、上位入賞者を狙っておるようだがそれはやめてもらえんか?」


マルテナがやはりとんでもない事を言いだした。


「つまり、出場辞退しろと?」


将人が上位入賞者になりたい理由は自分の事をこの世界にいるであろう友人に見つけてもらうためだ。出場辞退など出来る訳がない。首を縦に振る事は出来ない。


「イヤイヤ、そうじゃない。それじゃワシが困る」


マルテナの言葉に将人はホッする。だが、そうなるとマルテナは将人に何をさせたいのだろうか?


「ならどうしろと?」


「上位入賞ではなく………優勝を目指してくれんか」


難易度が極端に上がった。やはりヤバい事だったと将人は頭を抱えた。

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