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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第七章 仙人武術大会前日譚
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仙人、新たな装備品について考える、シゲルイ登場

「さて、みなさん、お疲れ様っす」


将人たちは一週間ぶりに王都へ戻ってきた。早速『岩の角』討伐を冒険者ギルドに報告し依頼料を受け取り全員で分ける。本来は上級冒険者が十数名で行うような依頼であった為、全員で分けても法外な依頼料が将人たちの懐に入った。


「流石、上級冒険者が受ける依頼ね。危険なだけに報酬も法外ね」


ファテマが報酬の金貨が入った麻袋を持ち上げて重さを確認した。


「今回はしょうがなくでしたけど皆さんまだレベルが低いっすから、レベルが上がるまでは絶対に受けないでくださいっす。上級冒険者に声をかけられてもっすよ。この中の誰かかけたら自分悲しいっす」


「当分は受けようとは思いませんよ、ウェル殿」


アベルドが今回の依頼を受けた事による被害を思い返しうんざりした表情をする。マサリアとパウラも同じようにウンザリした顔をする。今回『岩の角』を討伐するにあたって、装備のほとんどが喪失してしまった。『岩の角』は鉱石や鉄を好んで食べる。マサリアたちの剣や鎧は全て剥ぎ取られ食われてしまったのだ。マサリアたちが鉱夫の村の宿屋に戻ってきた時、ほとんど布を巻いているだけの状態だった理由はそれだった。唯一苦手だったのはゼロ鉄製の武具、防具だった。口に入れた途端、えづいていた所を見るとゼロ鉄―――クズ鉄は激マズなものだったのだろう。


「装備のほとんどを失ったって言うのは痛いわね」


「移動費や宿泊費、色々やりくりしてますが新しく装備を整えるというのは………」


パーティーの財政管理をしているマサリアとエミリアが現実的な事を相談し始める。


「私の装備どうしよう……」


パウラが泣きそうな顔になる。今回の依頼で一番被害がひどかったのはパウラだった。全身に金属を纏って戦っていたのだ。『岩の角』にしたらご馳走が目の前をうろうろしているようなものだったのだから。


「これを機に全身鎧って止めてみない?」


マサリアがパウラに言う。その途端パウラの瞳に涙がたまり始める。何かの拍子に零れるのではなかろうか。


「そんな……全身鎧はあたしの魂だよ! お兄ちゃんもそう思うよね」


ボンヤリと話を聞いていた将人はいきなり話を振られ慌てながらも考えてみる。


(全身鎧って見ただけでも分かるけど重たいんだよな、防御力は高いけど。普通ならその分機動力が殺されるんだけど身体強化の魔法をかければその問題は解消される。ファテマさんに聞いたけどパウラちゃんは特別で普通は身体強化してもパウラちゃんほど動けないらしいし。前衛を続けるならパウラちゃんの全身鎧は必要だよな、やっぱり)


「財政的にきつくてもパウラちゃんに前衛やってもらうなら防御力の強化は必須だよ。パウラちゃんの全身鎧は何としても手に入れた方がいいと思う」


「お兄ちゃん……」


パウラの表情がパッと明るくなったと思ったら両腕を思いっきり広げた。殺気が全くない為、将人の反応が遅れる。そして抱き着かれた。ウェルほどではないにしても豊満な胸に顔を埋められ将人は息が出来なくなる。


「パウラちゃん、羨ましいっすね。自分にもプリーズっす」


「ダ・メ!!」


「イケズッ!」


「相変わらず美男美女に囲まれてんな……顔は普通なのに何でモテてんだ? コツでもあるのか?」


将人はパウラの胸から顔を出し、無遠慮に言う人物を見て唖然とした。


「何でここにいるんですか、シゲルイさん?」


ラシェントの街の鍛冶職人、マサトのアイアスやゼロ鉄シリーズの作成者シゲルイ・アカマが立っていた。



将人たちは冒険者ギルドから近所にある武器屋に移動した。その武器屋の店長の顔を見て将人たちはまた唖然とした。


「同じ顔?」


「そう、双子の兄ちゃん」


二人が並びニヤリと笑われ、将人たちは引いてしまう。


「さっきも言ったが相変わらずモテてんな。今度は爆乳の姉ちゃんが仲間か。そういう美少女を仲間にするコツ、オジサンにも教えてくれよマサト?」


シゲルイが将人の首に腕を回し、耳元で小声で話す。


「いや、俺だってわかりませんよ。故郷ではモテた事ないんですから。それよりシゲルイさんはどうしてここに?」


「それはまさにマサト様様だ。感謝の言葉しか出ねえ」


シゲルイは大きな手で将人の頭をわしゃわしゃ撫でて、豪快に笑う。将人はアルヴァール国王にゼロ鉄製の武具、防具の作成者の事を話していたのだ。それに興味を持った国王はシゲルイを王都に呼び、ゼロ鉄製の武器を数点献上するように依頼したのだ。その依頼を受けたシゲルイは王都で武器や営む兄の元に身を寄せ、ゼロ鉄製の武器を作成し、献上したのだった。その時、将人たちがモンスター討伐の依頼を終え、こっちに戻ってくる事を知り、冒険者ギルドで待っていたのだ。


「お前ら、『岩の角』と戦ってきたんだろ。とすると武器や防具全滅しただろ?」


「分かるんですか、シゲルイさん?」


「俺じゃなくて兄貴の方が知ってたんだけどな。特徴聞いてゾッとしたぜ。鍛冶職人にとっては会いたくないモンスターだぜ………ところでだ、どこで装備品を買うか決めてるのか?」


「いや、王都の武器屋ってどこにあるか分からなかったし、ちょうどよかったと思ってましたけど」


将人の言葉にシゲルイの兄がニヤリと笑う。


「武器屋のアカマにようこそ!! どのような装備品をご所望ですか? 予算を言ってもらえればいい物を見繕いますよ」


シゲルイの兄が手をすり合わせながら将人たちに詰め寄ってくる。商人の目になっていた。


「兄ちゃん、落ち着けって」


シゲルイが兄の前に立つ。


「防具はこの店にあるものでいいと思うが武器の方は俺が作成したのを使ってもらうつもりだからよ」


「シゲルイさんが作った物って?」


「さっき話で出たろ、ゼロ鉄製の武器を献上したって。数点は献上したが残りは将人たちに使ってもらおうと思って取っておいてるんだ」


「ゼロ鉄製の武器。でもそれって既にあるんですけど」


「あれはお前の『氣』を籠める為の物だろ。通常じゃ使い物にならん。今回作ったのは通常のモンスターにも通用する武器だ。持ってくるからちょっと待ってろ」


シゲルイがカウンターから奥に入る。


「シゲルイも変わった事をするな」


シゲルイの兄が不思議そうな顔をする。


「ゼロ鉄って言ってるけどようはクズ鉄だろ? 魔法が効かないから一から作らないといけないし手間がかかりすぎる。俺も大概だがシゲルイは群を抜いてるぜ、変人の域だろ」


そんな事を話しているとシゲルイが六つの包みを持ってきて、近くのテーブルの上に置く。


「これがゼロ鉄製の武器だ」


シゲルイが自信ありげに言い、包みを解いた。



 

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