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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第七章 仙人武術大会前日譚
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閑話 暗殺行、ウェルの正体

ウェルが酒場を出たすぐ後、一人の男が酒場を出た。

この男、無類の女好きである。給料が入れば、この村唯一の娼館でほぼすべてを使い込んでしまうぐらいである。そしてつい先日、娼館への出入り禁止を言い渡される。理由としては持久力がありすぎて相手をした女性が体を壊してしまう為である。

出入り禁止となり有り余った〇欲を持て余したこの男はウルバー鉱山へ来た冒険者に目を付けた。正確には将人やアベルト以外の女性陣である。その中でもウェルは何としてもモノにしたい、色々といたしたいと考えていた。将人にしたって自分たちが戦っても勝てなかったモンスターに一人で勝ってしまう実力者である。その仲間なら体力も折り紙つき、自分のやる事にきっと耐えられるだろう。

酒をチビチビ飲みながら男はチャンスを待った。そしてチャンスはすぐにやって来た。ウェルが酔いを覚ます為一人酒場を出たのである。これはチャンスと男はウェルの後をつける。ふらふらした足取りで歩くウェルが不意に立ち止まる。空を見上げ「何かが近づいている」と独り言を言うと路地へと入った。男は見失うまいと小走りで路地に走る。そして顔だけを出して路地を確認するとウェルの姿はどこにもなかった。どこに行ったのかと周囲を見るが影も形もない。男は思った、これは首筋に刃物を当てられ追跡者を問いただすパターンだと。自分の背中にあの豊満なものが押し付けられるのかと思ったら顔が緩んでくる。首筋に来る冷たい感触と、背中に手られる柔こい感触を待ったがいつまでもそんな感触を得られることはなく、その場に棒立ちとなっていた。その後この男は酒場に戻りやけ酒をあおる事になるが、ウェルに会わなかった事がとてつもない幸運であった事に気付く事がなかった。



鉱夫の村から数十キロ離れた草原―――

月の光が地上を煌々とを照らす。その為、不自然に動く黒い影が五つ確認する事が出来た。影は身体強化の魔法ではありえない速度で移動していた。その影はある使命の元、鉱夫の村に向かっていた。その影が動きを止める。目の前の数メートルはあろうかという岩の上に誰かが座っていたからだ。月を背にしている為、逆光となり容姿は見えないがシルエットからして女性、しかもかなりスタイルがいいことが分かる。


「アンタらどこに行くつもりっすかあ?」


そのシルエットが影に向かって陽気に声をかける。その問いに対し、影たちが懐から短剣を抜いた。短剣の刀身は持ち手から放出された黒い霧に覆われる。


「貴様、何者だ?」


影の一人が岩の上に座っている女性に声をかけた。影は仮面に黒いローブを纏っており声がくぐもっている。


「自分が何者か分からない? ああ、仮面をつけていないから分からないっすか」


女性が岩から飛び降り着地する。影が女性に短剣を向け殺気をぶつけるが、その女性はどこ吹く風といった感じだ。女性が顔を撫でるとそこに現れたのは仮面だった。真っ白な涙滴形、視界を得る為の穴が二つ、口の位置に一文字の穴が開いているだけのそっけない仮面。それを見て影が驚いた声を上げる。


「あなたはウェゲルさま………なのですか?」


「何で疑問形っすか?」


「私が知っているウェゲルさまは………男性のはずなのですが?」


「ああ、そういう事っすか。自分、任務に失敗してその罰として大師さまにある魔法の実験体にされたっすよ。その結果、体が女性になったっすよ。今はウェゲルではなく―――ウェルっすよ」


「そういう事でしたか」


影が納得した事にウェゲル―――ウェルは軽く驚く。


「自分で言うのもの何なんすけど………よく納得したっすしたっすね?」


「あの大師さまがやられるのなら当然かと」


「それもそっすね。ところであんたらはどこに向かってるっすか?」


「我々はある人物に抹殺に向かう所です」


「その相手は?」


「マサト・クサケベです」


「ほう………」


ウェルの体から剣呑な雰囲気が漂い始める。


「アンタらに出来るっすか?」


「他の方々みたいに真正面からぶつかるのではなく暗殺するのなら恐らく可能かと」


「マサトさんは陰から狙われると弱いと所があるかもしれないっすね。そうなるとちょっとヤバいっすね」


ウェルが『滅び』の力を纏い動いた。その動きはまさに漆黒の風。影はその動きに対応する事が出来ない。五つの影はパタパタと倒れていった。意識はあるが手足を全く動かす事が出来ない。首を動かして手足を確認するとそこには間違いなく自分の手足がある。だが、その手足が突然作り物になったような錯覚に襲われとてつもない恐怖に襲われる。


「ウェル様、なぜこのような事を!?」


影たちがウェルの突然の凶行に怒りの声を上げる。


「マサトさんはね………自分の大切なオモチャなんすよ。そのオモチャを赤の他人かかっさらって壊そうとするならその相手を排除するのは当然じゃないっすか」


「我々は上からの命令を受けているのですよ。それなのにこのような事!! 我々を裏切るつもりですか!?」


「それはおかしいっすねえ? 大師さまはマサトさんをしばらく泳がすとおっしゃってたっすよ。それを暗殺というのは凄くおかしいっすねえ? アンタたちに命令した人物ってのは誰っすか?」


影たちは誰も答えなかった。


「そういう態度を取るっすか。それならこっちにも考えがあるっすよ」


影たちは拷問を考えていた。拷問などで口を割ると考えているのなら随分と甘ちゃんだと影たちは高を括っていたがウェルが行った事は影たちの斜め上を言っていた。ウェルが服を脱ぎ始めたのだ。


「拷問では口を割らないと考え、色仕掛けですか? 浅はかにも程がある」


影たちが嘲笑するがウェルは気にしなかった。


「………男から女になって苦労も色々あるっすけど、よかったと思える事もあるんすよ。それをこれからアンタらに味あわせてあげるっすよ………」


ウェルは影の一人の横に座り、股間を一撫でする。すると影の意識に反して股間のあるものが起立した。


「何をするつもりですか?」


「言わなくても分かるっすよね………たっぷり楽しませてもらうっすよ」


仮面を被っている為ウェルがどんな表情をしているのか分からないが、どんな表情であったとしても影たちには恐怖しか感じなかった。



それから数十分、影たちのうち四人が死んでいた。四人ともあらゆる体液が抜かれ、ミイラとなって絶命していた。だが、その表情は恐怖に歪んだものではなく恍惚としたものだった。

ウェルは今五人目の影のある所で体を動かしていた。ウェル自身の汗と体液、影たちの体液で体を汚しながらもそれを拭おうともせず快楽をむさぼっていた。


「さあ…誰に…命令…されたか…喋るっす…そうすれば…逝かせて…あげるっすよ」


五人目の影は応えなかった。使命感と忠義心でもって快楽に溺れまいと耐えていた。ウェルが動きを止め影を見た。


「他の四人も決して口を割ろうとしなかった。思考も防御してこちらに読ませようとしなかった。死ぬと分かっていても口を割らないその忠義、見事っす。もういたぶる事はしないっす、気持ち良く逝かせてあげるっすよ」


仮面を被っている為表情は分からないが声色は優しいものになっていた。ウェルは影の上で激しく動く。影のある部分から何かかがこみ上げてくる。そしてウェルの中にそれを出したのと同時に絶命した。ウェルはしばらく余韻に浸っていたがやがてゆっくりと立ちあがった。物言わぬ五つの死体を一瞥すると自らの影に潜り込みその場から姿を消した。


その後ウェルは、どことも知れぬ泉で汗と体液を流しながら独り言ちる。


「いずれマサトさんを殺すのは自分っす。それを誰かに譲るつもりはないっすよ。どこのどなたかは知らないっすか奪おうというのなら覚悟していてくださいっすよ。楽には死なさないっすから」


体を一通り洗い流し、一息つくと影たちとの行為を思い出し余韻に浸る。


「女の子の体はいいっすね。色々と気持ちいいっす。いずれは男に戻るつもりっすけどもう少しこのままでいいすね。戻る前にマサトさんともやりたいっすね」


将人は行為に及ぶ時どういう風になのだろう? 行為をする時は荒々しく押し倒すのか? それとも自分にされるがままになるのか? その時はどんな反応をしてどんな声を上げるのだろうか? 色々考えているとある所からトロリッと汁が垂れてきた。


「ダメっす! ダメっすよ、自分!! マサトさんはまだまだっす。もっとおいしくなるのを待ってからおいしくいただくっすよ!!」


ウェルは自分の内から湧き上がる欲を抑え込む為、深呼吸する。


「ともかくマサトさんはもっと強くなって下さいっす。そしていつか自分が美味しく食べてあげるっすよ!」


ウェルは虚空に浮かぶ将人の姿を幻視し向かって叫んだ。







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